舌を噛んだ時の処置方法は?早く治すにはどうする?

舌を間違って噛んでしまい、痛い思いをしたことは、誰でも経験があるでしょう。でも、そのことについて深く思い悩む人は少ないのではないでしょうか。

「被害」も大したことはありませんし、「原因」も「舌と歯と食べ物の位置の微妙なずれ」ぐらいしか思い浮かばないでしょう。でも実は、この小さなトラブルには、思わず「へえそうなんだ」といってしまうような原因が潜んでいるのです。

舌とは

舌

人がモノを食べるときに使う器官は、唇、頬、歯、あご、そして舌です。

捕食と舌

「捕食」と聞くと、ライオンがシマウマをつかまえて食べるシーンを思い浮かべる方がいるかもしれませんが、「人がスイカを食べる」ときも、医学用語では「捕食」といいます。

捕食は、目で「これは食べ物だ」と認識することから始まります。次に手や道具を使って、食べ物を口の中に入れます。このとき使う器官は唇と歯とあごです。

そして口の中に入った瞬間に、舌が食べ物に触れます。このことで、食べ物の温度や特性といった情報が脳に送られます。そうして、目で見た「食べ物」が、確かに食べ物であることを認識できるのです。

本物そっくりの「食べ物見本」を口に入れても、瞬時に吐きだすことができるのは、こうした「捕食の一連の流れ」があるからです。

咀嚼と舌

捕食できたら、次に「咀嚼(そしゃく)」を行います。歯で食べ物をすりつぶす行動です。咀嚼をする目的は、食べ物をできるだけ小さくして胃の中に送り込み、消化と吸収を助けることです。

咀嚼でも舌は活躍します。上の歯と下の歯の間に食べ物を置くのは、舌の仕事です。また、咀嚼されて小さくなった食べ物が、「歯の向こう側」つまり「歯と唇の間」に行かないように、舌がディフェンスをします。ディフェンスしきれず「歯と唇の間」に食べ物が入ってしまった場合でも、舌がかき出してくれます。

舌の仕事はまだあります。十分にすりつぶされず、大きな形を残している食べ物を探し出さなければなりません。探し出したら、再び上の歯と下の歯の間に送り、すりつぶします。

これにより、例えば「実の中の種」を探し当てることができます。「実の中の種」は、視覚ではとらえることができなかった物質です。「食べ物か食べ物でないか」を判断するには、目と舌によるダブルチェックが欠かせないのです。

嚥下と舌

飲み込む動作のことを「嚥下(えんげ)」といいます。口から喉に食べ物を送る行為です。いわゆる「口」と、いわゆる「喉」が接触する場所を「咽頭」といいます。咽頭から喉に食べ物を押しこむときは、十分な力が必要です。押し込む力が弱いと、逆流してしまうからです。舌の最後の仕事は、この「押し込み」です。

人は逆立ちしていても食べ物を胃に送ることができます。それは重力に逆らって舌が食べ物を喉に押し込み、喉は喉で、入ってきた食べ物をしっかりキャッチして胃に送り届けることができるからです。

そのほかの仕事と舌

舌は「食べる」ことを助ける以外にも「声を出す」ことや「呼吸」にも関与しています。

通常は舌は噛まない

食べる

これだけ複雑な動きをしていたら、舌を噛んでしまうのも当然--とはなりません。私たちは普段、どんなに急いで食べているときでも、舌を噛まずに食べ終えることができます。舌には「噛みそうで噛まない」仕組みが備わっているのです。

反射

舌は、下あごにくっついています。つまり舌の動きは、下あごの影響も受けるのです。例えば、舌で「口の天井」を触ってみてください。そのまま下あごを下げてください。そうすると舌と「口の天井」も離れてしまいます。つまり、舌の動きは、下あごによって制限されてしまうのです。

舌は口の中で、リズミカルに動いています。餅つきのようなものです。杵(きね)を振るう人と、餅が入った臼(うす)を管理する人が息を合わせることで、安全に餅をつくことができます。このとき、2人がリズムを合わせると、速く餅をつくことができます。

さて、口の中で舌がリズミカルに動くことができるのは、脳の働きによります。口の中の情報が、電気刺激として脳に送られ、脳は次の動きを舌と下あごに指示するのです。これを「瞬時に」「何回も」行うのです。

筋肉

舌の「材質」は、ほとんど「筋肉」です。筋肉なので、脳の矢継ぎ早な命令にも素早く対応できるのです。

舌を噛む原因

体調不良

噛みそうで噛まない仕組みが備わっている舌を噛んでしまうのは、なにかしらの原因があるからです。

ストレス

大きなストレスを抱えているときに、舌だけでなく、頬の裏や唇を誤って噛んでしまうことが分かっています。「イライラしているから噛む」わけではなく、そこにはちょっと難しい原因があります。

気持ちを安定させる効果があるセロトニンという物質は、噛むことで増える性質があります。ガムを噛むと気持ちが落ち着く効果は、セロトニンが分泌されるからだと考えられています。

ですので、ストレスがたまって体が本能的にセロトニンを必要としたときに、「噛む」という行動が起きる、と考える専門家がいます。ただこれはどうも「一説」に過ぎないようです。

こういうことです。

「ストレスがたまると、舌を間違って噛むことがある」これは事実です。「噛むとセロトニンが増えてストレス軽減に効果がある」これも事実です。しかし「ストレスがたまるとセロトニンを増やそうとして自然に噛む行為が増えてしまう」これは確たる証拠がないのです。ただ、セロトニン説は、「ストレスがたまると舌を噛む」という現象をきちんと説明できているのです。

体調不良

体調がすぐれないときに舌を噛むことが多いことも分かっています。これは体調不良によって、体の機能と脳の働きが落ちるからだと考えられます。

口の中の食べ物の情報は、舌などが電気信号で脳に送ります。情報の受け手である脳の働きが悪いと、情報を素早く分析できません。脳から出る「舌への指示」が間違ってしまう可能性もあります。

また舌の運動量が低下していると、脳からの指示に対して機敏に動くことができなくなります。舌は、効率よく食べることをアシストしています。その舌がノロノロ動いていては、歯の動きの邪魔になってしまいます。

舌の治療

舌を噛んだことで傷ついたとき、治療はかなりやっかいです。口の中は①外気に触れない、②常時湿っている、③雑菌が多い――という特殊事情があるからです。

炭酸ガスレーザー

傷ついた舌に炭酸ガスレーザーを当てる治療法があります。これは口内炎の治療でも使う方法です。「傷にレーザーを当てたら、さらに悪化するのでは?」と思いますよね。安心してください。レーザーのエネルギーによって、傷周辺のタンパクが固まるのです。そして傷口がふさがります。

炭酸ガスレーザーでの治療は、痛みが減る効果も期待できます。また、殺菌効果もあるので、口の中の雑菌から傷を防御することもできます。

アズレン

アズレンは薬の成分名です。正式名称は「アズレンスルホン酸ナトリウム」といいます。商品名は「アズノール」や「ハチアズレ」があります。

アズレンは「うがい薬」です。舌が傷つくと、炎症が起きます。アズレンは、炎症を抑える効果があるのです。

アズレンと同じ「うがい薬」でも、イソジンは殺菌効果があります。しかしアズレンには殺菌効果はありません。

縫う

間違って噛んだぐらいでは、そのようは傷を負うことはありませんが、例えば転んだひょうしに舌を強く噛んだり、または、歯の治療中に器具が舌を切ってしまった場合、大量に出血します。こうした事故が起きたら、迷わず救急車を呼んでください。病院で針と糸で縫ってもらうしかありません。

舌を噛まない方法

噛む

舌を噛むのを予防する方法を紹介します。

体調を整える

ストレスや体調不良といった原因が明白のときは、原因を取り除くようにしましょう。ただ「舌を噛まないようにする」という目的だけでは、ストレス除去のモチベーションとしては弱いでしょう。ですので、「舌を噛んでしまうくらい、大量のストレスがたまっているんだ」と認識してはいかがでしょうか。「舌を噛んでいる」ことを、ストレスのサインとみなすのです。

ゆっくり噛む

「食べる」は「歯」と「舌」と「食べ物」の絶妙な位置関係と動きによって成り立っています。ですので、食べる速度が速くなればなるほど、食べる行為は難易度が高まります。そこで、ゆっくり食べてみてください。食べる行為が簡単になり、舌を噛むという間違いを防止できます。

またゆっくり食べることは、ダイエット効果も期待できます。胃の中が満杯になってから、満腹中枢が「満腹」を知らせるまでには、タイムラグがあります。人は、満腹中枢が「満腹」のサインを出すまで「満腹になった」と認知できません。肥満の人は、このタイムラグの間に食べてしまうので、太ってしまうのです。

ゆっくり食べれば、胃が満腹になったと同時に「満腹」のサインが出るようになります。満腹になった時点で、食べることを終えることができるのです。

噛みしめない

いまあなたの口の中はどうなっていますか? もしいま、上の歯と下の歯がくっついている状態ですと、眠っているときに噛みしめている可能性があります。口の中に食べ物が入っていなくて、リラックスしている状態のときは、上の歯と下の歯は、くっついていない方が良いのです。
噛みしめの癖がある人は、舌を噛みやすいといわれています。

まとめ

舌を噛んでしまうことを含めて、「普段なら間違わない間違い」が起きたら、体の異変か、環境の異変を疑ってみてください。

生活を見直す良い機会になるかもしれませんよ。

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