金曜の夜、せっかく仕事が終わったのに飲み会が……お酒に弱いと、考えただけで憂鬱になりますよね。頭痛や嘔吐、二日酔いはなんとしても避けたいところです。
しかし上司や先輩、親戚からすすめられると断りにくいのも現実。断ったせいで人間関係が傷つくのも厄介です。
いったいどうしたら強くなれるのでしょう。果たして、遺伝で決まってしまうものなのでしょうか。生まれながらの体質は仕方のないことなのでしょうか。
今回は、お酒に困っているあなたを手助けする方法、教えます。
「酔う」仕組みとは
まずは「酔う」というメカニズムについて紹介します。
ポイントとなるのは酵素!
アルコールは消化器官→血管→肝臓を通るうちに分解されていきます。分解には酵素が使われます。実は、この酵素のはたらきの強さは、お酒に対する強さに大きく影響しています。
ではさっそく、アルコールが分解される流れを追ってみましょう。
アルコールが分解される流れとは?
①胃と小腸
- アルコールの約2割は胃で、残りのほとんどは小腸で吸収されます。
- 吸収されると血液に溶け込み、全身に流れていきます。
②肝臓
- 第一段階の代謝:ADH酵素(アルコール脱水酵素)やMEOS酵素(ミクロゾーム・エタノール酸化系酵素)の力でアルコールがアセトアルデヒドという物質に変わります。
- 第二段階の代謝:ADLH酵素(アセトアルデヒド脱水素酵素)により、アセトアルデヒドが酢酸に分解されます。
- 代謝できなかったアルコールは再び血液に溶け、全身を巡ります。
③肺
- 酢酸から生じた水と二酸化炭素が、肺から呼気に排出されます。
(代謝できなかったアルコールも含む)
要するに、
アルコール→アセトアルデヒド→酢酸→二酸化炭素と水と分解される過程でアルコールやアルデヒドが脳に運ばれた結果、酔ってしまうのです。
お酒に強くなるには、脳に運ばれるアルコールやアルデヒドの量を少なくする他ありません。
アセトアルデヒドとは?
化学の授業で学んだ方もいらっしゃるかもしれません。アセトアルデヒドはアルコールから生じた有毒な物質で、顔が赤くなったり、吐き気がしたりする原因になります。それだけでなく、なんと発がん性までも指摘されています。
この物質は、たばこの煙や建築材にも含まれています。シックハウス症候群の原因物質でもあります。そんなに恐ろしい毒を、体は必死で分解してくれていたのです。人体のすごさを感じずにはいられませんね。
日本人は酔いやすいのか
日本人は欧米人に比べ、お酒に弱いと言われています。なぜなら、欧米人はALDH1酵素という強い酵素を持つのに対し、日本人はALDH2酵素という弱い酵素を持っているからです。だからアルデヒドの分解がうまくいかないのです。
また、日本人の中でもその働きには違いがあります。ALDH2酵素すらほとんど持っていない人や、はたらきが弱い人もいます。
お酒に強いかどうかをチェックする方法は?
お酒に強いかどうかをチェックする方法を紹介します。
アルコールパッチテストの紹介
あなたがどのようなタイプのALDH酵素を持っているか、まずはアルコールパッチテストで確かめてみましょう。保健の教科書にも載っている有名なテストです。
方法はとっても簡単。ご家庭ですぐにできます。まずはあなた自身について理解を深めましょう。
テストの方法
- 絆創膏に消毒用エタノールをふくませる
- 腕の内側に貼り付け、7分ほど待つ
- 絆創膏をはがし、すぐに皮膚の色を見る(1回目)
- 10分後、もう一度見る(2回目)
結果はどうだったでしょうか?赤くなってしまいましたか?それとも変化しませんでしたか?
ちなみにALDH酵素の働きが強い順に並べると、
- 1回目、2回目ともに赤くならなかった人
- 2回目に赤くなった人
- 1回目に赤くなった人
の順になります。つまり、変化がなかった人ほどお酒に強いと解釈することができます。
「皮膚につけるだけで本当に変色するの?」と疑われるかたもいらっしゃるかもしれません。
いえ、とんでもない。本当に変わります!私も実際に高校生のころ授業で行いましたが、人によって様々な結果が出ていました。実は、皮膚にもALDH酵素がちゃんと存在しているのです。
お手軽にできるテストですので、ぜひめんどうくさがらずにやってみてくださいね。
1回目で赤くなった人
ALDH酵素のはたらきは遺伝性ですので、残念ながら強めるのは困難です。ここはもう諦めるしかありません。
他の酵素はどうでしょう。たしかに、MEOS酵素は訓練次第で強くなると言われています。しかし、肝心のアセトアルデヒドを代謝する酵素がとても少ないので、限界があります。
さらに、ALDH酵素の働きが弱いと、アルコールによって病気になりやすいことも知られています。例えばお酒に弱い人が無理に飲み続けると、お酒に強い人の1.6倍もアルツハイマー病にかかりやすいと言われているのです!
ですので、パッチテストですぐに赤くなってしまった方は、お酒飲まないことを強くおすすめします。体質的にお酒を受け付けないこのタイプは、日本人の実に4%だと言われています。
もちろん外見とは関係ありません。筆者の知り合いでも、筋骨隆々な人が全く飲めなかったり、おとなしそうな人が強かったりします。
遺伝的なことですから、飲めないことを恥ずかしがる必要はありません。きちんと周りに説明して、全く飲めないことを理解してもらいましょう。自分の体を守るために、勇気を出してください。
1回目で変化がなかった人
ALDH酵素は機能していますが、もちろん個人差はあります。体調や量によっては、頭痛や吐き気、二日酔いに悩まされる可能性があります。飲む方法やタイミング、食べ合わせなどを身につけて、悪酔いや二日酔いを防いできましょう!!
お酒に強くなる方法は?
では、お酒に強くなる方法を紹介します。
どうやって飲めばいいの?
代謝に時間をかければ、血液に流れるアルコールやアセトアルデヒドを減らすことができます。つまり、脳に回る量が減って酔いが軽減されるのです。
以下、望ましい飲み方をいくつかご紹介します。飲み会などの際に、ぜひ参考にしてくださいね。
・血行が良い状態で飲まない
血行がよいと、アルコールがすぐに肝臓に到着してしまいます。結果、肝臓の代謝機能が限界を迎え、アルコールは分解されないまま脳に向かってしまいます。
特に入浴や運動は厳禁です。急激にアルコールが回るので、いつもなら大丈夫な量でも体調を崩す恐れがあります。
・一気飲みをしない
一気飲みは、体にアルコールを分解する暇を与えてくれません。よって、単なる体調不良だけでなく急性アルコール中毒のリスクも大きくなります。
昏睡状態や死に繋がる恐ろしい飲み方ですので、することもさせることも絶対に避けてください。
・最初のうちはゆっくり飲む
始めから飛ばしてしまうのは無謀です。お腹が慣れていないからです。まずは少しずつ「準備運動」のつもりで飲んでみましょう。ペースをあげるのはそれからでも遅くはありません。
・濃いお酒は割って飲む
濃いお酒にはそれだけ多くのアルコールが含まれていますから、消化器官や肝臓にかける負担も大きくなります。いつもはビールでも、たまにワインや焼酎を飲むという方は特に注意です。絶対にいつものペースで飲んではいけません。
飲む前にしっかりとアルコール度数を確認しましょう。
何と一緒に飲めばいいの?
有名なのは納豆や豆腐、お刺身や焼き魚など、たんぱく質を多く含んだ食品です。
たんぱく質には、次のような効果があります。
- 胃の内壁をお酒から保護する
- 肝臓のダメージを修復する
- 酵素を合成する材料になる
たんぱく質が多く含まれていても、チーズやベーコンなどは避けるようにしましょう。頭痛の原因となることがあるからです。
もちろん乾杯してまずお酒を飲むことが多いとは思いますが、できるだけ早めにこれらの食品を摂ることをおすすめします。可能なら飲み会前に自分で摂っておくとよいでしょう。
もし上のような食品が無理でも、飲酒前には必ず何か食べてください。空腹時の飲酒はアルコールの素早い吸収につながるため、酔いが早く回る結果になります。
適正飲酒量を知ろう!
むろん個人差はありますが、体重の大きい人の方が多く飲める傾向にあります。血液量が多いため、アルコールの血中濃度が上がりにくいからです。
ただし、アルコールは脂肪に行くわけではないので、脂肪の多い方は体重のわりに強くないことがあります。ここで、適正飲酒量の一例をご紹介します。血中濃度は0.1%未満に抑えるのがよいとされています。
適正飲酒量(ml)=0.1(%)×833×体重(kg)÷アルコール度数(%)
という式で算出することができます。(833は指数)
もし体重65キログラムの人がビール(5%)を飲む場合、
適正飲酒量=0.1(%)×833×65(kg)÷5(%)=1082.9(ml)となります。
これはビール瓶2本弱です。(もちろん弱い人はこの量でも危険です)しかし、50キログラムの人が同じビールを飲む場合、
適正飲酒=0.1(%)×833×50(kg)÷5(%)=833(ml)となります。
これはビール瓶1本半程度の量になります。体重によって適正飲酒量が全く異なることが分かってもいただけたでしょうか。人のペースに惑わされず、自分のペースを守ることが大切です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
- まずはパッチテストで自分の体質を知る。
- もともとALDH2酵素がはたらかない人は、お酒は飲まない。
- はたらく人も、飲み方や食べ合わせに注意する。
- 適正飲酒量を守る。
アルコールが分解される仕組みを理解し、以上の点を守るだけで、不快な思いをすることは減るはずです。
しかし、あなたが正しく理解していても、周りの多数が理解していないこともあります。そうなればあなたはペースや適量を守ることができなくなってしまいます。
ぜひこの記事を多くの人に読んでいただき、楽しい飲み会を実現していただきたいものです。