天然痘はワクチンで予防できる?予防接種や治療法を紹介!症状は?

天然痘という病気を知っていますか?天然痘は感染病の1つで、ワクチンの接種を受けていない人が感染すると50%の確率で死に至るといわれ、とても恐ろしい病気です。現在では天然痘のウイルスは自然界から完全に根絶されており、感染者を発見することはないと言われています。

しかし、現在テロや戦争が頻繁におきている中で、このようなウイルスを生物兵器として使われる可能性も否定できません。ここでは、天然痘の病気の概要や歴史、症状、ワクチンや治療方法について詳しくご紹介します。

天然痘について

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ここでは、天然痘の発祥から根絶までの歴史についてご紹介します。

天然痘とは?

天然痘は天然痘ウイルスに感染することで発症する病気です。天然痘ウイルスはとても強い感染力があり、体全体の皮膚に発疹を引き起こし、仮に完治しても痕が残ります。

また、高い致死率をもち、感染した患者さんの50%は死亡したと言われています。20世紀だけでも、2~3億人の人が天然痘が原因で死亡したと報告され、世界中で悪魔の病気として恐れられていました。 天然痘は別名、痘瘡(とうそう)とも呼ばれています。

天然痘の発祥は一説によると、1万年前から天然痘ウイルスが存在し、インドが発祥の地ではないかと考えられています。このウイルスは人から人に移るため、その後アジア、アフリカの農村で猛威をふるい、時間をかけて世界中に広がっていったと考えられています。

天然痘ウイルスは、感染力が強く、寒い場所や乾燥にも強いウイルスです。唾液や分泌物、大気中の粒子から感染する飛沫感染や気道感染、皮膚の接触などの接触感染が感染経路となり、人から人に感染するのが特徴です。また、発疹がかさぶたに変わった後でも、1年以上は感染力を持っています。

エジプトのラムセス 5 世のミイラの顔には、天然痘の特徴的な症状が残っているのが確認されており、天然痘が原因で死亡した最古の患者の1人です。また、死亡にまで至らなくても、顔や体など一目につきやすい場所に醜い痕が残る為、江戸時代には「美目定めの病」と言われ、嫌われたり、避けられたりと差別がありました。

そんな昔から存在していたウイルスですが、1796年5月14日にイギリスのジェンナーが種痘(しゅとう)と呼ばれる予防接種を開発しました。それ以降、予防接種の改良を重ねながら、全国に普及され、1980年以降は、WHO(世界保健機関)が地球上から天然痘ウイルスは撲滅したと根絶宣言を出し、ウイルスの存在は自然界で確認されていません。その為、昔の感染症の1つとして、風化してきています。

しかし、近年ではバイオテロの材料として入手されることが懸念されています。現在、自然界ではウイルスを確認することは出来ませんが、ロシアやアメリカの研究機関にはサンプルとして保存されています。戦争やテロが様々な国で起こっている今、いつこのウイルスが復活し、猛威をふるうか分かりません。

天然痘のワクチンとは?

古くからアジア諸国では、天然痘患者の膿疱から液体を取り出し、健康な人に投与して軽い天然痘を引き起こして免疫を得る予防接種が行われていましたが、安全性は十分でなく、イギリスでは予防接種を受けた2%の人は、重症化して死亡している例も報告されています。

1796年にイギリスの医師、エドワード・ジェンナーが、牛が感染する牛痘の膿疱から液体を取り出し、予防接種に用いる方法が予防接種として成功し、広く普及されるようになりました。この牛痘は牛痘ウイルスに感染する感染症で、ネコ科動物や牛など種々の動物を宿主として感染する病気です。

この牛痘ウイルスは、天然痘ウイルスと同じポックスウイルス科オルソポックスウイルス属に属しており、DNA塩基配列が非常に似ていることや、牛痘ウイルスは人には感染力が弱いことから、安全に免疫を作ることができる予防接種方法として確立しました。

このワクチンが効果を示し、世界中に普及したことがきっかけになり、天然痘ウイルスを抑制する事ができました。また、その後、ワクチンの改良を重ね、更に効果のあるワクチンが開発されました。近年まで使用されていたものは、牛化人痘ワクチンと呼ばれるワクチンです。

このワクチンは、天然痘ウイルスをサルやウサギの睾丸に接種して弱毒化させ、更にその発痘を、子牛のお腹に接種し出来た発痘を取り出し、0.6%石炭酸グリセリンで4~5倍に薄めたものです。

日本では、牛痘由来の予防接種の材料が取り入れられたのは、1848年です。1946年には、約18,000人の感染者が見られましたが、予防接種が取り入れられてから抑制し、1956年以降は国内での発症は確認されていません。

根絶までの背景

種痘というワクチンの接種が普及された後でも、天然痘を発症する人はいました。その理由は、貧富の差や衛生状況の悪い場所では、予防接種を行うことが出来なかったからです。これを受けて、ソ連が世界保健機構(WHO)総会で天然痘を地球上から根絶しようと提案し、1958年にこの提案は可決され、世界中で根絶計画が始まりました。根絶できる感染症は限られており、条件があります。

根絶できる条件

  1. 感染した時に、一目で明確な症状が現れる。
  2. 病原体の宿主人のみに限られる。(猫や犬など他の動物に自然に感染しない)
  3. 良質で効果的なワクチンがある。

天然痘は、上記の根絶できる条件を満たしている為、根絶できる可能性が非常に高いと考えられていました。その為、資金調達やワクチンの品質管理をきちんと行い、天然痘が未だに発症していた33の国全員に種痘の予防接種を行うことを進めました。

しかし95%の予防接種を行っても感染を防ぐことは出来ませんでした。戸籍や住民票のない地域の方への予防接種が上手くいかずに、根絶までには時間を要しました。その為、天然痘患者を見つけ、患者の周り全員に予防接種を行うという集団接種計画という作戦に変更しましたが、当時は資金不足により根絶することができませんでした。

新たに予算を組みなおし、1967年に天然痘根絶本部が設けられ、集団接種計画を再度始めました。また、天然痘患者を発見した場合、1ドル賞金を出すという内容を加えることで、特に貧困の国では賞金の為に、必死になって天然痘患者を探し出すという効果も加わり、患者を見つけ出して、その周り全員にワクチンをするという計画を順調に進めることが出来ました。

賞金の金額は次第に大きくなり、最終的には1,000ドルにまで金額が上がりましたが、この頃には患者はいなくなりました。患者がいなくなってから、そのままの状態が2年経過した場合は、天然痘は根絶されたと考えられています。

1977 年 10 月 26 日にソマリアで感染した患者を最後に、その後は現在に至るまで感染は見られていません。ソマリアで感染した患者と周り全員に予防接種を行い、2年間感染者が現れなかったことから、1980年5月WHOから天然痘の根絶宣言が出されました。

現在でも、自然界で天然痘ウイルスを確認することはなく、サンプルとしてロシアとアメリカのバイオセーフティレベル4の施設で厳重に保管されていると言われています。噂では経済事情の理由から、ロシアの研究者の1人が天然痘ウイルスを他の国に売ったという話があります。噂の信憑性については分かりませんが、本当であればいつか天然痘ウイルスがテロの生物兵器として使われるのではないかと懸念されています。

2001年9月にアメリカで同時多発テロが起こりました。その同じ年の10月には、炭疽菌テロが起こり、当時のブッシュ大統領と兵士を中心とした約60万人が種痘の予防接種を受けました。天然痘ウイルスがいなかったことは、後になって分かりましたが、このようなアメリカの行動は、天然痘ウイルスが生物兵器として使われてもおかしくない状況であることを示しているような行動であるといえます。

天然痘の症状とは?

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ここでは天然痘がどのような経過をたどって症状をあらわすか、感染から感染したあとの症状について詳しくご紹介します。

感染

天然痘ウイルスは、唾液や口や鼻の分泌物、大気中の粒子から感染する飛沫感染や気道感染、皮膚の接触などの接触感染が感染経路で、人から人に感染するのが特徴です。

ウイルスは、口や咽頭などの気道粘膜から入り込みます。その為、近距離で天然痘患者と話しをするなどして、大気中の粒子を約10回吸い込んだだけでも感染すると言われています。

潜伏期間(7日~16日)

天然痘は、7~16日の潜伏期間を経て、急な発熱(40度前後)とともに発症します。頭痛、四肢痛、腰痛などの全身の痛みやだるさなどが症状として現れます。小さい子供が発症した場合は、吐き気や嘔吐、意識障害などの症状が現れる場合もあります。

発疹期(発症から2日後)

発疹期には、主に顔・腕・脚をはじめとし、手の裏や足の裏まで体全体に発疹がたくさん現れます。天然痘の発疹は他の発疹に比べて大きいのが特徴的です。他の病気で現れる発疹は、約1~5mmの大きさが一般的ですが、天然痘の場合で出来た発疹は約5~10mmと他のものと比べて大きく現れるのが特徴的です。

天然痘の発疹は、紅斑、丘疹、水疱、膿疱、結痂、落屑といった症状に変化していきます。2日~3日発熱が続いた後、少し盛り上がりを見せた白色の豆粒の丘疹や水疱が現れ、体全体に広がっていきます。この頃には少し熱が下がる傾向にあります。

再熱期(発症から7日~9日)

発症してから7日~9日ほどで40度前後の発熱が再度見られます。発疹が化膿を起こし、膿疱になることで起こる現象で、体の表面の皮膚だけでなく、呼吸器官や消化器官をはじめとする内臓にも現れ出します。

これにより肺が損傷を起こして呼吸困難や呼吸不全を起こしたり、その他器官の働きが低下するなどを引き起こし、最悪の場合は死に至ります。

治癒期(発症から2週間~3週間)

発症してから2~3週間ほどで、発疹が膿疱になり患部が乾燥して黒い色をしたカサブタに変わります。カサブタが剥がれ落ちると、皮膚の色が薄く変化を見せます。元の皮膚の色には数週間~ 数ヶ月要することもあり、瘢痕(あばた)と呼ばれる醜い痕としてのこってしまう場合もあります。この痕が残ると、一生消えない場合もあると言われています。

また、カサブタが剥がれるまでの間は感染する恐れがあります。治癒した後は免疫抗体が生成されている為、基本的には、二度とかかることはありませんが、稀に再感染する方や再発症する方もいます。

天然痘の予防接種(ワクチン)について

%e3%83%af%e3%82%af%e3%83%81%e3%83%b31ここでは、予防接種(ワクチン)について詳しくご紹介します。

予防接種とは?

人間の体には免疫システムがあり、自分と違う異物を攻撃する仕組みになっています。

その為、ウイルスや細菌などの微生物が入ってきた場合にも、攻撃をして感染から体を守ってくれます。また、一度入ってきたウイルスや細胞に対しては、免疫記憶をし、それ以降に入ってきた場合には、以前作った抗体を大量につくるという強い防御システムを作り出すことが出来ます。この体の免疫の仕組みを利用したものが、予防接種の概念です。

予防接種とは、発病に至らないほどにまで毒素を弱めたウイルスや細菌を、健康な人の体内に入れることで、その病気に対する抗体を作りだします。そして、この抗体を事前に作り出すことで、病気に感染しにくくさせることを予防接種と呼び、その投与するものをワクチンと呼びます

ワクチンとは?

ワクチンには、大きく分けて「生ワクチン」「不活化ワクチン」「トキソイド」の3種類あります。

■生ワクチン

生ワクチンは、病原体となる細菌やウイルスを培養して、病原性を低下させたものを作り出したものです。生きている病原菌と利用したワクチンのことを生ワクチンと呼びます。病原体そのものを利用することで、抗体を確実に作り出し、他のワクチンと比べて免疫力は非常に高くなると言われています。病原性を低下させたとしても、副作用を起こす場合もある為、体調の悪いときには絶対に行わないようにしましょう。

不活性化ワクチン

不活化ワクチンは、病原体となる細菌やウイルスを死滅させて毒性を低下させたものです。病原体が死滅している為、体内で増殖をしたり、接種することで副作用を起こす心配はありませんが、免疫力は生ワクチンに比べて低く、接種する薬によっては、数回行う場合があります。

トキソイド

トキソイドは、病原体となる細菌やウイルスが作る毒素のみを取り除き、毒性を低下させたものです。不活化ワクチンと同様に、免疫力は生ワクチンに比べて低く、接種する薬によっては、数回行う場合があります。

天然痘のワクチン

天然痘のワクチンは種痘(しゅとう)と呼ばれ、有効期間は3~5年です。日本が製造している、種痘は生ワクチンで細胞培養ワクチン(LC16m8)と呼ばれ、最も優れたワクチンだと言われています。

毒性が弱く、副作用がおきにくいのが特徴ですが、接種後は、水泡が現れたり、リンパの腫れや発熱、だるさなどが見られる場合もあります。また、10~50万人に1人の確率で、脳炎が現れる場合があり、脳炎になった場合の致死率は40%と非常に高いです。

このような副作用の確率は低い為、万が一ウイルスの出現が再度確認された際には、ワクチンを接種することをおススメします。

天然痘の治療方法とは?

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天然痘にかかってしまった場合の対処方法についてご紹介します。

対症療法

天然痘にかかってしまった場合、抗ウイルス剤が存在しない為、主要な症状を出来るだけ緩和させる対症療法が用いられます。発熱にたいしては解熱剤や鎮痛剤を用いたり、輸液や点滴など患者さんの様態に合わせて行います。

ワクチン

ワクチン未接種の患者が、天然痘に感染した場合、約20%~50%が死亡するといわれるほど、死亡率が高いです。感染した場合に効果的な抗ウイルス剤が存在しない為、基本的には、対症療法になりますが、感染してから7日以内の潜伏期間内であれば、ワクチンを投与することで発症を抑えられることが可能と言われています。

予防ワクチンの有効期間は3年~5年です。その為、感染しても、症状が進行したり重症化することを防ぐことが可能です。

おわりに

天然痘は感染症の1つで、発熱とともに発症し全身に発疹が現れる皮膚の病気です。ワクチンを受けていない方がこの天然痘ウイルスに感染すると、20~50%という非常に高い確率で死に至ります。WHOが天然痘ウイルスの根絶活動を進たことで、ウイルスが完全に根絶され、現在では天然痘患者さんは見られません。

自然界では見られませんが、天然痘ウイルスは、サンプルとしてアメリカとロシアの研究室で厳重に保管されています。これらが持ち出されるもしくは、他の国で培養されてテロの生物兵器になる可能性があると言われています。そうならないことを祈りますが、なってしまった時には、対処方法として是非この記事を役立ててください。

  
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