日常生活の中で火傷はそう頻繁に起きるものではないため、いざ火傷をしてしまうとどう処置してよいかわからないですよね。とりあえず水道の水で冷やしたり濡れタオルで抑えたりしますが、対処法を誤ると痕が残ってしまうこともあります。
ここでは適切な処置と火傷の水ぶくれについてご紹介します。
火傷の種類と原因について
まず始めに、火傷の種類にはどのようなものがあるか見ていきましょう。
温熱熱傷
熱湯、火、鉄板やアイロンなどの熱による皮膚や粘膜が損傷した状態です。
低温熱傷
低温熱傷は温熱熱傷に含まれますが、カイロや炬燵、湯たんぽ、ホットカーペットなど低温のものに長時間触れていることで起こる熱傷です。低温熱傷は皮膚の深層部分を損傷するため、重症化しやすく注意が必要です。
化学熱傷
酸やアルカリ性の化学薬品や物質が肌や粘膜に触れてできる熱傷です。
薬品によっては皮膚の内部が長時間にわたって損傷する場合があり、またその薬品を吸い込んでしまうと呼吸器官や粘膜にも影響が出ることがあるので注意が必要です。
電撃熱傷
感電や落雷による熱傷です。皮膚組織などが破壊されます。
放射線熱傷
過度な放射線を浴びたことによる熱傷です。温熱熱傷とは違って、DNAの破損により皮膚や組織が再生されない状態になります。
⑥気道熱傷
火災などで煙や高温の空気、有毒物質を含んだ気体を吸い込んだ時に起きる熱傷です。これにより呼吸困難になる場合もあります。
火傷の深度
次に火傷の状態を見ていきましょう。火傷は「深度」で表されます。
①Ⅰ度熱傷(表皮のみ)
ヒリヒリして赤くなる表皮のみの損傷で、数日で自然に治ります。跡が残ることもありません。日焼けはこれに含まれます。
②浅達成Ⅱ度熱傷(表皮から真皮上層)
痛みが強く水ぶくれができます。処置の仕方によっては跡が残る場合があります。通常2週間前後で治ります。
③深達成Ⅱ度熱傷(表皮から真皮深層)
赤く腫れて白っぽい水ぶくれができます。痛みは軽度ですが跡が残りやすい熱傷で、感染のリスクが高くなります。治るまで3週間以上かかります。
④Ⅲ度熱傷(表皮から皮下組織)
皮膚全層の損傷です。感覚が失われるため痛みはなく、皮膚の表面は白く乾燥して水ぶくれになりません。火傷の跡ははっきりと残るので、手術や皮膚移植が必要です。
水ぶくれの正体は?
軽い火傷であれば、赤くなるくらいなので冷やせばすぐに治りますが、水ぶくれになってしまうとなかなか厄介です。そもそも水ぶくれの中身は何なのでしょうか?
皮膚は一番上が表皮、その下が真皮、一番奥が皮下組織の3層になっています。水ぶくれは熱傷が真皮まで達した時に、表皮と皮下組織の間に液体が入り込んで膨れることにより発生します。真皮には毛細血管が通っており、火傷によって切れてしまった毛細血管から血漿(けっしょう)と呼ばれる血液中の液体成分が熱傷部分に入り込み水ぶくれになるのです。
血漿は血液の成分なのになぜ透明なのでしょうか。それは血液中の細胞成分(赤血球、白血球、血小板)を除いた液体成分だからなのです。採取した血液に抗凝固剤を入れて遠心分離機にかけると、細胞成分が沈殿し2層に分かれます。この上澄みの透明な液体部分が血漿です。
血漿には、たんぱく質やミネラルなど細胞を維持するためには欠かせない成分が溶けており、全身の細胞に栄養を運ぶ役割を持っています。とても大切な働きをするものなので、必要以上の血漿が体外に流れ出てしまうと血漿製剤を輸血しなくてはならなくなります。
火傷をしたときの処置について
火傷の程度によっては跡が残ってしまう場合もあります。そうならないようにするためにも正しい対処法を知り、適切な処置を行いましょう。
流水で冷やす
火傷をしたらすぐに流水で冷やしましょう。この時、流水は患部に直接ではなく少し離したところにあてます。酷い場合は勢いよく流水をあてたことで皮膚が剥がれてしまうこともあるからです。
また、衣服が患部にくっついている場合には無理に剥がさず、その上から水で冷やします。衣服が付くほど酷い場合は、すぐに病院に行ってください。
病院にいかなくても大丈夫なくらいの火傷であれば水でしっかりと冷やした後、炎症を抑える成分の入った軟膏やクリームを塗りましょう。感染症を防ぐためにもガーゼや包帯を巻いておきます。ワセリンやオリーブオイルを塗ってサランラップを巻くという湿潤療法も効き目があるようです。
市販薬を使用する
火傷に効く市販薬にはどのようなものがあるのでしょう。
まず最初に思い浮かべるのはオロナインH軟膏ではないでしょうか。これはステロイドを含まない軟膏なので副作用を気にせず、誰でも安心して使うことができます。肌に負担をかけたくない場合に有効なお薬です。
火傷の炎症に即効性を求めるのであれば、ステロイドを含む軟膏を選びます。痛みや赤みに対して効果がありますが、免疫力を低下させるため多用しないよう注意が必要です。
なおワセリンは薬ではなく、保湿成分なども入っていない自然の油です。火傷の患部を乾かさないために使用するものなのです。ワセリンを塗っているから火傷が治るのではなく、火傷から出る浸出液を乾燥させないようにするサポート役であることを覚えておいてくださいね。
水ぶくれができたときは?
水ぶくれはつぶしたほうが良いのでしょうか?
これには賛否両論あるようですが、つぶれてしまった場合は仕方ないにしても、水ぶくれをつぶすと細菌感染しやすくなり症状が悪化するからそのままで!という意見が多くあります。
Ⅱ度の熱傷の場合、病院に行った方が良いレベルの火傷ですので、ご自分で判断せずに病院で処置してもらったほうが良いといえます。
つぶして傷パワーパッドを貼るという意見もありますが、火傷の深さによっては湿潤療法で治療できない場合もありますので、火傷の状態を見ながら慎重に対処してください。
もしも水ぶくれが破けてしまったら、流水で洗い流し清潔に保ちます。皮を剥がしたりしてはいけません。跡が残る場合もありますので必ず病院へ行きましょう。
火傷の範囲が広い場合は?
成人の場合は火傷の範囲が体の20%以上、子供の場合は体の10%以上であれば命の危険があるため、すぐに救急車を呼びましょう。免疫力が低い高齢者やお子さんは傷口から細菌が入り感染症のリスクが高くなります。
低温熱傷の場合は?
低温熱傷も温熱熱傷同様水ぶくれができますが、低温熱傷は皮膚組織の深い部分を損傷しているため温熱熱傷より重症です。
対処方法も通常と違い、冷やしても回復しないので患部をガーゼなどで覆って必ず病院に行きましょう。火傷の範囲が広い場合は、皮膚移植をしなければならなくなる可能性もあるのです。
湯たんぽや電気毛布などを使用する際は一晩中使わずに寝る直前に取り出したり電源を切るなどの対処をし、使い捨てカイロは必ず服の上に貼るなど、普段から低温熱傷にならないよう心がけてください。
特に、皮膚の薄い人は発症率が高いので十分に注意してくださいね。
まとめ
火傷の深度
・Ⅰ度熱傷(表皮のみ)
・浅達成Ⅱ度熱傷(表皮から真皮上層)
・深達成Ⅱ度熱傷(表皮から真皮深層)
・Ⅲ度熱傷(表皮から皮下組織)
火傷の種類
・温熱熱傷
・低温熱傷
・化学熱傷
・電撃熱傷
・放射線熱傷
火傷をした時の処置
・流水でしっかり冷やし、患部を空気に触れさせない
・衣服は無理に剥がさない
・水ぶくれはつぶさずに病院へ行く
・火傷の範囲が広い場合は救急車を呼ぶ
・低温熱傷は重症な場合が多いため必ず病院へ行く
以上が火傷に関するまとめになります。
火傷をしても慌てず適切な処置をして、「これくらい大丈夫」と自己判断せずに病院に行くことをお勧めします。