日常の中では怪我をしないように気を付けていても、調理中に包丁で指を切ったり、転んで膝を擦りむいて切り傷が出来たりと、些細なことがきっかけで怪我をしてしまうことがよくあります。
特にお子さんがいる、ご家庭では、切り傷の処置を家庭で行うことが多いでしょう。一昔前は、傷口を消毒液で食毒し、ガーゼや絆創膏で保護し、傷が良くなるまで毎日、消毒やガーゼ交換などをし,やがて傷を乾燥させかさぶたにしていましたね。
しかし最近では、このような手当ては、傷を早く、きれいに治すためには有効的ではないことがわかっています。
では、現在、有効とされている、切り傷の処置はどのような方法なのでしょう。正しい切り傷の処置の方法をご紹介しながら、家庭で出来る切り傷の処置の程度や、切り傷を治すメカニズムをお教えします。
この記事の目次
切り傷の正しい処置の方法
はじめにお伝えしました通り、ひとむかし前とは傷に対する対処方法が、大分変わってきました。正しい処置を行うことで、傷の治りを良くし、また傷跡も残りにくいと言われています。
以前に比べ何がどう変わったのか、処置の方法を比較してみしょう。
一昔前の切り傷の処置の仕方
一昔前までは、切り傷など怪我の場合、家庭でも病院でも、傷口をきれいに消毒することが常識でした。
転倒などでできた、砂や泥、汚れを落とすため、より清潔とされる生理食塩水で傷口を洗い、マキロンなどの消毒液で傷の殺菌をしていました。これには痛みが伴い、大人であっても苦痛を感じるものでした。
消毒後は、リバノールに浸したガーゼなどを当て、油紙や包帯などで傷口を保護していました。
こうした切り傷の治療中は、ガーゼなどを濡らすことができず、ビニールで防水や、患部を湯に浸けない方法などの工夫をしながら、入浴していました。
また、患部の消毒やガーゼ交換は、毎日行うことが基本で、傷口に張り付いたガーゼを剥がすのにも、苦痛を伴うものでした。
現在の切り傷の処置の仕方
現在は、傷口から出る「浸出液」を利用した処置の方法を行います。
傷口の汚れは、水道水でよく洗い流します。転倒などでできた傷は砂や、泥、汚れがたくさん付いているので、シャワーなどを使ってよく洗い流します。
傷口の汚れを水道水できれいに落としたら、家庭にあるラップで傷口を保護します。ワセリンがあれば、傷面に触れるラップに塗っておきましょう。痛みが早く引き、湿潤を保ちやすくなります。
ラップを当てたら、保護用のテープでラップをしっかり止めます。傷が大きく浸出液が多いようでしたら、染み出た浸出液を吸収するためにラップの上からガーゼや包帯で保護します。
入浴やシャワーの際には、ラップを外し、傷口を流水でしっかり洗い、お風呂上がりに、初めの処置と同じようにラップを当てます。
夏場などの汗をかきやすい時期は、ラップにより、かぶれやあせも、ただれが起きやすいので、1日二回 朝夕で水道水できれいに洗って、ティッシュやきれいな布で軽く拭き、傷口が乾燥しないうちに、再びラップをしましょう。
ラップを当てることで、患部が湿潤し、切り傷の治癒を促す、浸出液を排出させやすいのです。薬局などでは、傷治療のケア用品としてキズパワーパッドなどが販売されています。ラップではなくそのようなのもを利用するのは手軽ですね。
このような最近の処置方法を湿潤療法とか、モイストヒーリングなどと呼びます。
浸出液が傷の治癒に有効な理由
浸出液は、以前はよく、「汁が出た」といって、不潔なものと認識されきれいに拭き取り、消毒されていたものでした。しかし最近では、この浸出液こそが、傷の治癒を助けるものとして利用されています。
浸出液とは、透明、また少し黄色がかったサラサラした液体で、この液のなかには、出血を止めようとする働きの血小板や、傷口の細菌と戦う白血球や、皮膚の再生を助ける細胞など傷を治すにはとても有効な成分が入っているのです。
家庭での処置の失敗例
簡単に出来る、モイストヒーリングですが、ポイントを間違えるとうまく切り傷を治すことができません。この処置で大切なのは、浸出液を利用することです。
ケガをしてから時間がたってすでに傷が乾燥していては、ラップをすることが逆に不潔になってしまい、傷口が化膿したり、悪化する恐れがあります。
また、流水で洗い流しが不十分だったときも同じようなことが起こってしまう可能性があります。
傷口をきれいにしたとしても、ラップを貼りっぱなしにしていて、定期的に洗浄・交換をしていなかった場合、不潔な浸出液を閉じ込めてしまうことで、傷口が化膿してしまったり、傷口には問題がなくても、ラップを当てているほかの部分にあせもが出来たり、ただれたりすることもあります。
また、ゴムアレルギーのある方は市販されている湿潤療法の絆創膏でアレルギー反応を起こすこともあるので、事前に成分の確認をすることをオススメします。
浸出液は「膿」とは違い、色も透明に近く、いくらか匂いはありますが、膿のような腐ったような匂いもしません。また液の状態はネバつきはなく、比較的サラサラしています。
患部から異臭がしたり、色のついた粘り気のある液体がラップの中にあるときなどは、モイストヒーリング失敗と言えます。その場合は、速やかにお医者さんに診てもらいましょう。
体 験 談
・浸出液をとにかく、閉じ込めて湿潤させればいいのかと思い、一度貼ったラップを交換せず貼り続けたため、傷口が化膿し、、また汚れた浸出液により傷周辺がかぶれてしまった。
・もともと、真新しいゴムボールなどを皮膚の柔らかい部分に当てると、赤くただれていたのですが、特に気にしていなかった。そんな中、転んでできた膝の切り傷に市販の湿潤療法のテープを貼ったところ、みるみる浸出液が流れ出し、テープからも溢れるほどでした。浸出液が有効と思うあまり、剥がずにそのままにしていたら、次第に痒くなり、たまらず外してみたら、患部ではないところが、赤く腫れ上がっていました。あわててお医者さんに相談したところ、ゴムアレルギーであることが判明しました。
切り傷に対する処置は特別な道具や技術もお必要なく、家庭でも簡単に出来る処置です。しかし、家庭内で対処することから、失敗したり、失敗しても気づかずにかえって傷の治りを遅くしてしおまうこともあります。
正しい、処置の仕方を理解し、確実に行うことが大切です。
どんな切り傷にもモイストヒーリングが有効なの?
擦り傷であれば、傷の深さも浅く、モイストヒーリングが有効ですが、なかなか血が止まらなかったり、傷が深いときなどは必ずしも、適切な処置とは言えません。
傷が深くて、なかなか血が止まらないとき、また傷口がパックリきれいに割れておらず、裂け目がギザギザで上手く重なり合わないときは病院での処置が必要になります。
また、ガラスなど粉々に砕けるようなもので切ったときや、動物などに噛まれた傷の時は必ずお医者さんに手当てしてもらいましょう。
血が止まらない時の適切な止血方法は?
切り傷を作る原因は日常の中で多々あります。調理中に包丁で切る、工作中にはさみやカッターできる、日曜大工中にのこぎりや彫刻刀などで切るくらいの傷であれば、清潔な布で患部を2~3分抑えます。それでも、血が止まらなかったら、更にもう2~3分抑えましょう。自分で止血する場合の時間の目安は10分です。
10分以上止血しても、血が止まらないときは病院で手当てが必要です。
よく、患部より心臓に近いところを、タオルなどできつく縛ったり、小さな傷であれば、患部を強くぎゅうっと抑えるなどと言いますが、これは誤りです。
からだの一部を切断するような傷であれば、きつく縛って出血を抑えますが、そのような傷でない場合は、強く抑えることで血流が止まってしまい、細胞が壊死してしまうことがあります。
家庭での止血は、患部を優しく抑えて10分以内に止血を完了させることがポイントになります。
傷をきれいに治すには紫外線を当てたらいけないの?
怪我の傷跡がからだに残ってしまひとつの原因は「紫外線」があります。患部に紫外線が当たることでメラニンの色素沈着が起こります。
皮膚を再生している最中の患部は、皮膚が弱く紫外線の影響を受けやすいのです。衣服などで患部を紫外線から守れない場合、紫外線を防ぐテープなども販売されています。
モイストヒーリングで手当している傷はどのようになれば処置終了なの?
モイストヒーリングは浸出液を使った、治療法です。ですので定期的に患部をきれいに洗い、ラップを交換している間に、浸出液が出ていることを確認します。
だんだんと、患部が目立たなくなるほど、傷口が盛り上がり、皮膚が形成されてくれば、浸出液もでなくなってきます。
浸出液が出なくなったら、もうラップをする必要がありません。まだ、皮膚は柔らかく、うすピンクのツルンとした皮膚になります。
まとめ
ここでご紹介したとおり、むかしと今では切り傷に対する処置の方法が、かなり変わってきています。
ひとむかし前までは患部を消毒することで雑菌や細菌だけでなく、浸出液のような傷を治すのに必要な成分まで、消毒して取り去り、今とは真逆で湿潤ではなく、乾燥することを推奨していました。
消毒液や、傷を乾かすパウダー等はむしろ、逆効果だったのです。モイストヒーリングによる手当ては、専用のケア用品などのCMなどで、一般的にも大分、浸透してきました。
しかし、まだ家庭の救急箱には、ひとむかし前のケア用品が入っていたりします。あなたのおうちの救急箱は大丈夫ですか?この機会に、きちんとした処置ができるように救急箱の確認をしましょう。
モイストヒーリングは家庭で出来る、手軽な処置です。傷跡が残りにくく、治療に苦痛を伴わず、自分の浸出液を利用する自己治癒力を使ったりメリットの多い処置の方法なので、諸注意事項に気をつけながら、ぜひ取り入れて見てください。
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