このところ、有名人の病気などで胸のしこりについて多くの人の関心を集めるようになりましたが、あなたはきちんとセルフチェックや検診に行っていますか?
毎日きちんと自分の胸のチェックをしている人は良いのですが、普段何気なくしか見ていないと自分の胸の異常に気がつきにくいものです。ましてや触ったときにしこりのようなものがあった場合とてもびっくりしますね。それが正常範囲内のものなのか、異常であるのか普段チェックしていないと不安になるものです。
ここでは胸のしこりについて疾患の可能性やセルフチェックの方法などをまとめてみました。自分の胸の状態を知る良い機会です。胸やしこりについて正しく理解を深めましょう。
乳房の仕組み
いわゆる胸といわれる部分には、乳房、大胸筋、小胸筋、腋窩動静脈、リンパ、リンパ節などが含まれます。乳房は、乳腺と呼ばれる腺組織と脂肪組織で作られています。
乳房の中の乳腺は15~20の乳腺葉の集まりから成り立っていています。そこには乳汁を作る小葉と乳汁が通る乳管があります。小葉で作られた乳汁は乳管を通って乳頭へと運ばれます。乳頭の先には15から25の乳口が開いていて、授乳期にはそこから乳汁が分泌されます。
またこの乳腺は女性ホルモンと密接な関係があります。女性ならば誰でも経験があるかも知れませんが、月経の周期にあわせて胸が張るように感じたり、痛くなったりするのもこの乳腺が大きくなっているからなのです。胸のしこりを感じるのも月経周期でこの女性ホルモンが関係しているときがありますが、それだけでなく重大な疾患が隠れている場合もあります。
しこりの状態や可能性のある疾患を事前に知っておくことで、重大な疾患を未然に防ぐことが出きるかもしれません。
しこりがあるときに考えられる疾患
ちょっと触ってみてしこりがあると思ったときに私たちはどんな疾患を疑えばよいのでしょう。
乳がん
乳がんは人間が普通に生活していく過程で、乳房付近の細胞が放射能や細菌、ウィルスなどの影響を受けて傷がついたりして突然変異し、がん細胞へと変化したものです。そして全身へと転移していく可能性の多いがんです。
また乳がんは、そのほとんどが乳腺を形成する乳管や小葉の上皮細胞からがんになるといわれます。そしてこの乳がんの発症やそれを進ませる原因は、女性ホルモンであるエストロゲンが関係しています。
女性にとって美しさや健やかさを保つホルモンであるエストロゲンですが、乳がんに関してはがん細胞の成長を助ける働きをしてしまうのです。このことから乳がんはホルモン依存性のがんといわれます。よってこのエストロゲンが多く影響する期間が長ければ長いほど乳がんになる可能性が高くなるといわれるのです。
乳がんの場合、しこりの形状は様々で中のしこりが原因で皮膚がへこんだ状態になるものやしこりの境界線がはっきりとしていなかったり、状態がでこぼこしている感じがするなど、個人差がありますので気になったら早めに対応の医療機関に相談してみましょう。
線維腺腫
よく乳がんと間違えられやすい疾患のひとつです。
良性の腫瘍で多くが30歳以下の女性にみられる疾患です。しこりの形は丸くその境界線がよくわかり、触ると良く動くのが特徴です。またしこりは複数個できることもあります。痛みも無く突っ張るような感じもしないので、自分では気がつきにくいものです。
対応医療機関では、大きさが10ミリ以下の時は経過観察になることが多いようですが、周りの皮膚の様子やしこりの状態によっては細胞診断などの検査を受けることもあります。大きくなってしまったものや急激に大きくなるような場合は、良性でも手術でしこりを取り出すこともあります。
乳腺症
主に30歳から50歳の女性に多く見られる疾患です。良性の乳腺疾患です。しこりの状態がでこぼこしていたり、しこりの境界線がはっきりしないものが多く、弾力性の高い大きさの違うしこりが何個もできたりするのが特徴です。
月経周期とともに突っ張り感や痛みを感じることが多く、ホルモンバランスの乱れが原因とも言われます。またしこりや痛み以外の症状として乳頭から透明の分泌物がでたり、稀にリンパ腺の腫れなどもあります。
治療には漢方薬やホルモン剤、痛みを抑える鎮痛剤などの処方がされますが、ホルモンバランスが整ったり閉経したりすることで症状は和らぎます。この乳腺症は良性のしこりなので乳がんに移行することはありませんが、稀に乳がんとの併発もあるので、自己判断は危険です。対応の医療機関に受診しましょう。
乳腺嚢胞
主に30歳から50歳の女性に多く見られる疾患です。乳腺の疾患です。乳腺細胞からの分泌物が溜まってしまい、良性のしこりのような状態になったものです。授乳期にミルクが溜まってしまったときは「ミルク嚢胞」と呼ばれます。
しこりの状態は、つるつるとしていて押すとすこしやわらかい感じのしこりです。痛みは無く稀に乳頭からの分泌物が出る場合もあります。しこりを自覚することで超音波検査などをして発見されることが多い疾患です。
自然に治ることも多いので経過観察の場合もありますが、嚢胞の中にがんが出来ることもあるので検査には注意が必要です。しこりの状態や程度によっては中に針を刺して液体を吸引したり、嚢胞内部細胞を取り出し検査することもあります。
慢性乳腺炎
慢性乳腺炎は、乳腺の部分に慢性的な炎症が発生していることをいいます。
主な自覚症状は
・乳房の腫れや痛み、発熱や乳房の皮膚が赤く腫れる
・乳輪の下に痛みのあるしこりができ次第に大きくなり赤くはれ上がる
・膿が出る
などの炎症症状です。
炎症の原因としては授乳期などが多いといわれます。この時期は乳頭から細菌などが入るためで、ひどい時には膿が溜まることもあります。
また慢性乳腺炎は、授乳経験のない女性や陥没乳頭の女性もかかる可能性が高いといわれます。慢性症状になると一回治ってもまた繰り返し膿を持ったり、炎症を起こしたりするので注意が必要です。
予防には乳頭やその周辺を清潔に保つことが必要です。また陥没乳頭などの場合は食事療法も有効な手段です。和食など健康的な食生活を続けることで乳頭のつまりを防ぐことが出来ます。
もし再発した場合も早めの受診で症状を軽く済ませることができます。この慢性乳腺炎は乳がんの症状とも似ているところがあるので、気になったら早めの医療機関への受診をオススメします。
しこりがあるときの検査手順
では、しこりの検査はどのような手順を踏むのでしょう。通常の検診やセルフチェックなどでしこりを見つけた場合などは、問診からスタートします。
①問診
セルフチェックや日常生活についてなどの項目を問診します。
②しこりの有無の確認
視診や触診などでしこりの有無の確認をします。
③マンモグラフィ
マンモグラフィはアクリルの板で乳房を片方ずつ挟みこんで、平らに押しつぶしたところを縦横から撮影します。この検査は石灰化したしこりを見つけることができる検査方法ですが、年齢が若すぎると乳腺の発達から鮮明な画像が映らずきちんと判断出来ない場合があります。その場合は超音波検査が有効になります。
④超音波検査
乳房の上から超音波を当てる検査です。痛みもなく放射線の心配もありません。しこりの形や状態、しこりの周りの状態も分かるため、良性か悪性化の判断もできる有効な手段です。
⑤乳管造影検査
分泌物が出ている乳頭から入管口に管を入れて造影剤を入れます。それからマンモグラフィを撮影します。造影剤の影響で乳管を鮮明に映し出すことが出来ます。そのため乳管の圧迫や気道が狭くなっていることを判断することができます。
⑥乳管内視鏡検査
乳頭から分泌物が出ているとき、分泌物の出ている乳頭からカメラつきのファイバースコープを入れて乳管の内部を直接見ます。
セルフチェック(自己触診)の仕方
しこりを確認する場合、一番良いのは病院での検査ですが、進行の早いしこりを毎日検査することは難しいですよね。そこで自分で出来る検査方法(セルフチェック)を知っておくとよいでしょう。毎日チェックすることで万が一の重大疾患の早期発見に役立ちます。
①鏡の前に立ちます。
両方の腕を上げて後ろ手に組みます。わきの下から乳房にかけてをじっくりと観察してみてください。突っ張ったような感じや皮膚のへこみはありますか?また左右の乳房の大きさに極端な違いが見つけられますか?
②乳房全体をじっくりと触って確かめる。
ボディソープやボディクリームなどのすべりの良いものを塗ってから全体を触って確かめましょう。円を描くように触ることでしこりの有無を確かめましょう。わきの下なども注意して確かめましょう。
③分泌物があるかどうか確かめましょう。
左右の乳首を軽くつまんで見ましょう。分泌物はありますか?血や透明な液体、色つきの膿のようなものは出ませんか?
まとめ
いかがでしたか?
胸のしこりは重大な疾患につながることもあるので心配ですね。もしセルフチェックや検診で見つかった場合はすぐに対応の医療機関に受診して詳しい検査をしてみてください。早期発見早期治療が身体の負担を軽くします。
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