アデノイドもしくはアデノイド顔貌、という言葉を耳にしたことがありますか?耳にしたことがなくても、顎が細くてほとんどない、おまけに少し出っ歯かも?と言った特徴のある顔をしている方を見かけることが、これまでもあったのではないでしょうか?
もし、ご自身がこのような特徴がある顔をしているのであれば、悩んでいらっしゃるの方も多いのではないでしょうか?驚くことに、アデノイドの顔の特徴は、遺伝や生まれつきではないのです。
ここではアデノイド顔貌の特徴と症状、原因と治療法・対処法についてご紹介します。
この記事の目次
アデノイドとは
まずはあまり聞き慣れないアデノイドと言うものについて紹介します。
アデノイドとは
アデノイドとは、鼻と喉の間に存在するリンパ組織のことです。咽頭扁桃という風にも呼ばれます。
喉の周辺には多くのリンパ組織があります。「アデノイド(咽頭扁桃)」もその一つで、鼻の奥の「口蓋垂(いわゆる”のどちんこ”)」の裏側にあり、目から見える場所ではありません。
アデノイドは、3歳頃から大きくなり、6歳頃に最も大きくなります。その後は段々と小さくなり、大人になる頃には見てもほとんど分からないぐらいの大きさなります。
この器官は誰にでも存在するもので、このアデノイドが肥大化することで様々な症状を発症します。またアデノイド増殖症のことを単にアデノイドということもあります。
咽頭扁桃増殖症とは
「アデノイド増殖症」もしくは「アデノイド」とは、アデノイドが何らかの理由で、極端に大きくなってしまった状態のことを言います。
アデノイドが大き過ぎると、空気の通り道である気道を遮った状態になることから、鼻から空気を非常に吸いにくくなります。鼻で呼吸しにくいため、その代わりに口で息をするので、口から直接、細菌や病原菌が入りやすく、喉、鼻や耳などの不調や病気になることが多いようです。
アデノイドの肥大により耳管開口部を塞いでしまうことや、アデノイドで引き起こった炎症が耳管に及ぶことで症状が現れることもあります。
近年ではこの特徴を持った子供が多く生まれている傾向があります。
アデノイド顔貌の特徴 ~顔~
顎の特徴
まず、アデノイド顔貌で最もよく見られる特徴は、顎がほとんどないことです。考えられる原因は、口呼吸を長い間続けると、あまり使わない顔の筋肉が弛んだからとされています。
顎が小さくなるため、顔の形が尖ったように見えます。上の顎が下の顎の位置に比べると出ているので、いわゆる出っ歯の状態になりやすく、歯の噛みあわせも悪くなります。また、二重顎になっている方もよく見られます。
首と顎のラインの区別がつかず、一直線に見えるという特徴があります。
頬の特徴
口呼吸のため、あまり使われない頬の筋肉が緩んでしまいます。その結果、顔が面長になり、また鼻の下も長くなるので、しまりがない顔に見られることがあります。
頬の筋肉が上がっておらず、下に垂れているような状態になり、頬がぷっくりしているという印象があります。頬筋の機能が低いので年齢を重ねるごとに特に頬が垂れ下がった状態になっていきます。
歯の特徴
顎の位置の関係で、出っ歯になりやすいため、歯の噛み合わせも良いとは言えないでしょう。また、口でいつも呼吸しているので、前歯が唇や舌で支えられていないので、前歯の歯並びが悪くなるという特徴もあります。
歯列矯正を行わなくては行けないケースも多く、歯列矯正を行うことで多少の顎のラインの回復も見込まれます。しかし、いつまでも口呼吸での呼吸法を続けていると口周りの筋肉が衰えてしまうので顔の特徴が改善しない場合もあります。
アデノイド顔貌の特徴 ~行動~
いつも口が開いている
本人には口を開けているという自覚はないようですが、口呼吸をしていると、口が常時開いたままにどうしてもなります。
リラックスしているときや、無意識のうちに口が自然と空いてしまうのでなかなか改善が難しいようです。口呼吸になることで口内が乾燥傾向に傾き歯周病や虫歯や口臭などの口内環境の悪化につながります。
食べる時の特徴
いつも口呼吸をしているので、食べる時にも口を開けて食べる傾向があります。口を開けて食べていると、どうしてもクチャクチャと音がたってしまいます。
また、歯の噛み合わせが悪いためか、食べる時にいつも同じ側の歯を使っていることが多いようです。体の他の場所でも同じことが言えますが、いつも同じ側で作業をすると体のどこかに歪みが出てきます。いつも同じ側の歯で噛んでばかりいると、顔に歪みが出る可能性が指摘されています。
いびきをかく
いびきは咽頭という部分でかきます。もともと咽頭部分は狭く、また、周りに骨がないため狭まりやすく、更に息を吸うと狭くなります。
アデノイド顔貌の方は、顎が小さく、下顎が前顎に比べて後ろに下がっているため、舌を支えている範囲が狭くなっています。そのため、仰向けで寝ると舌が気道を塞ぎ、いびきが出ることになります。
睡眠時無呼吸症候群になりやすい
アデノイド顔貌の方は睡眠時無呼吸症候群という、寝ている時に呼吸が止まる病気になりやすいと言われています。
睡眠時無呼吸症候群では、平均的には30秒、長い時には2分以上も呼吸が止まります。睡眠時無呼吸症候群の方は、いびきが非常に大きいことも知られています。無呼吸になった後にあえぐような激しい呼吸を行い、その後いびきをかきながら呼吸をするという特徴があります。
睡眠中に無呼吸の状態があると、体は十分に休むことが出来ません。睡眠時無呼吸症候群が原因の、交通事故も報告されています。睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に起こっているため、本人は気づいていないことが多いようです。
アデノイド増殖症の合併症
耳管とは中耳腔から鼻へつながる管で、耳管開口部は耳管が鼻の奥に向かって開いている部分を指します。
アデノイドが大きくなり過ぎると、耳管開口部を塞いでしまうことがあります。また、アデノイドに起きた炎症が耳管にまで及んでしまうと、急性中耳炎や滲出性中耳炎、副鼻腔炎が起こりやすくなります。
また、口で呼吸をしていると、細菌やウィルスが侵入しやすく、口や喉の病気に罹るリスクも高くなります。
アデノイドの症状
アデノイドの基本的な症状は先程紹介したアデノイドの特徴である鼻声になることや鼻詰まりや口呼吸やいびきなどです。
症状自体はそれほど重いものではありませんが、アデノイドの肥大によってさらにその他に合併症を引き起こすことがあります。
合併症
アデノイドの症状による合併症としては、アデノイドが肥大することで直接耳管開口部を塞ぐことで発生する急性中耳炎や滲出性中耳炎などや副鼻腔炎などを繰り返し発症するケースがあります。
慢性的な呼吸障害や、扁桃腺の肥大などの症状も合併症のひとつとされます。
これらの病気が治りにくい場合に検査を行った結果アデノイドの肥大が原因となっているという場合もあります。
アデノイド増殖症の原因
アデノイド増殖症の詳しい原因は今のところまだ解明されていません。現時点で予測される原因としては免疫機能繰り返し機能することによる炎症や先天的な要因としてアデノイドの異常発達や脳神経の障害や自己免疫疾患やホルモンバランスの乱れやストレスやアレルギーなどの可能性が考えられます。
子供に多く疾患が認められるため、まだ免疫機能が安定していないことが発症の大きな原因ではないかと推測されます。
アデノイドの治療法
アデノイドの治療方法について紹介します。
診察
まずはアデノイドの診察方法について紹介します。アデノイド肥大の診断方法としては顔の横からレントゲンを撮る方法か鼻から小型カメラを挿入し患部の確認を行う方法があります。
患者の多くは子供に確認されるため、子供の検査の場合は刺激のないレントゲンでの診察が一般的です。レントゲンがないなどの事情がない場合を除いては子供の嫌がる鼻からのカメラの挿入は行われないでしょう。
抗生物質、消炎鎮痛剤の服用
風邪やインフルエンザなどで、アデノイドが一時的に大きくなっている場合は、抗生物質や消炎鎮痛剤を飲んで、アデノイドを小さくします。
症状が慢性化し合併症などが起こっている場合にはまずは合併症の症状の沈下を図りその後症状が再発する可能性がる肥大が認められれば外科手術での切除をする場合がります。
アデノイド切除手術
アデノイドの肥大が一時的なものではない場合は、アデノイドを取り除く、切除手術も治療として視野に入れられます。手術が必要かどうかの判断基準は以下を参考にし、専門医にご相談下さい。
- 睡眠時無呼吸症候群の兆候がある
- いつも口を開けていて、集中力がない
- 子供の場合、顎や歯並びの発育に影響が出る
- 口峡炎(アンギーナ)やのど風邪に罹りやすく、勉強や仕事に影響する
- 風邪をひいたり、体調不良などの免疫力の落ちている時に微熱が出やすい
- 中耳炎や副鼻腔炎を繰り返す
- 扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍を繰返す
- 腫瘍の疑いがある
手術は口を大きく開けて行います。喉を切開して行うわけではないので時間も30分ほどで終了します。その後しばらく院内で様子を観察し、経過に特に問題が確認されない場合は1週間ほどで退院となります。
痛み止めや抗生物質で感染症の予防をしながら、経過を観察していきます。痛みが強く現れるのでつばを飲み込むことや声をだすことででリハビリを行っていきます。
アデノイドの対策方法
アデノイドが原因でない場合も、口呼吸が日常化してしまうと、生活面にも支障が出るだけでなく、病気に繋がることもあります。呼吸というものは、日頃、無意識に行っているものなので、特に大人の場合は口呼吸を鼻呼吸に変えるには、相当な努力をする必要があり、また治るまでの時間も掛かるでしょう。
しかし、口を意識して閉じることを続けると、これまであまり使われていなった筋肉を使われるため、顔の形に変化が出ることには間違いがないでしょう。以下に、比較的簡単に実践出来る、呼吸を変えるための効果的な方法をご紹介します。
ガムを噛む
ガムを噛むと、口の周りの筋肉や顎の筋肉、顔の筋肉を鍛えることが出来ます。ガムを噛む時はしっかり唇を閉じて、鼻で呼吸することを意識しましょう。
常に口呼吸をしている方は、無意識に右か左側のどちらかの歯だけで噛んでいることが多くことが指摘されています。これはガムを噛む時だけではなく、食事の時も言えることです。普段から、何かを噛む際は、左右同じぐらいの割合で噛むように常に意識して、習慣づけましょう。
舌先の位置をチェックする
口呼吸を普段からしている方は、正しい位置に舌先がないことが多いようです。実際にご自分の舌先がどこにあるか、舌の先が何を触っているのかを、チェックしてみて下さい。
自然に口を閉じた状態でチェックをする必要があります。舌の先は、上顎のへこんだところと前歯が歯茎に入り込んでいるところとの間にあるのが正常な位置です。もし、舌の先が正常な位置にないと気づかれた場合は、意識的に舌先を正常な位置につけておくように、普段から努力をしましょう。
鼻腔拡張グッズを使う
鼻で呼吸をしにくいと、どうしても口で呼吸するようになってしまいます。特に睡眠中は、無意識に口呼吸になっていることが多いでしょう。鼻腔拡張テープの「ブリーズライト」は、鼻腔を外側から拡張することで、鼻呼吸をスムーズにします。
また、鼻にクリップする「いびきクリップ」という製品もあります。このクリップは内側から鼻腔を広げることで、鼻呼吸を楽にします。
その他、鼻の中に直接入れる「O2アップ」という製品があります。鼻の入り口部分から数センチ奥のほうまで押し込むことで、非常に空気が通りやすくなります。
口にテープを貼る
前述の口呼吸防止グッズとは違い、口にシールを直接貼ることで、半ば強制的に鼻呼吸を促す「ネルネル」という商品もあります。使うたび毎に使い捨てが出来るため、衛生面も安心です。肌への粘着力は良い割には、剥がす際に痛くはなく、口呼吸改善、いびき防止にかなり効果があるとの報告があります。
歯並びを治す
出っ歯などの歯並びが悪いことで口呼吸になっている場合、歯の矯正を行うことで、口呼吸が治ることがあります。歯の矯正装置と言われると、金属のワイヤーやブラケットなどが目立ち、口を開けるのが恥ずかしくなるようなものを思い浮かべる方が多いのではないのでしょうか?
現在は矯正装置の開発が進み、口を開けても目立たなかったり、見えない矯正装置などもあります。もちろん、強制装置の種類により特徴があり、良い点も悪い点も違ってきます。どこの歯並びを矯正したいのか、またライフスタイルに合わせた矯正装置を見つるためにも、一度歯科医に相談すると良いでしょう。
顔の整形
アデノイドによる顔の輪郭が気になる場合は整形手術を受けることで、顎や鼻や頬の特徴をなくすことが出来ます。費用は高額になりますし、腕のいい医者にかからないと、術後の経過が良くなく、傷が残ったり、逆に顔の変形などが起こる可能性もあります。
身体への負担も大きいため出来れば選択したくない手段ですが、どうしても治したい場合は整形による改善しか無いでしょう。歯列矯正でも若干の輪郭の改善が認められるのでこれも高額ですが検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
アデノイドが肥大し口呼吸が習慣化してしまうと、成長期の時期に症状が現れることで顔の形が変わってしまうだけでなく、色々な疾患に繋がったり、生活に支障が出ることがお分かり頂けたと思います。
大人になってからのアデノイドは、普段の生活ですぐに治るようなものではありません。諸症状に悩まされ、生活にも支障が出ていて、アデノイド自体を取り除く切除手術をお考えであれば、一度、専門医に手術の必要性やメリット・デメリットを確認されたほうが良いでしょう。
切除手術を行う、行わないに関わらず、口呼吸を続けると色々な弊害が出てきます。普段から口で呼吸をする癖がついている方は、鼻呼吸を習慣づけるために、ここでご紹介した方法を試してみてはいかがでしょうか?
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