歯根嚢胞の治療には手術が必要?症状や原因も紹介!放置すると危険な場合も?

人生で「食事が楽しみ」という方は、さぞたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。美味しいものを食べて、お腹を満たすことができたときの喜びと安らぎは、何ものにも変えられません。

また、健康のための栄養を摂取するという意味でも、食事は非常に重要なものであると言えるでしょう。そして、食事を楽しむためにも欠かせないのが、「歯の健康」です。おそらく、歯の病気と聞くと、虫歯や歯槽膿漏などをイメージする方が多いかもしれませんが、これらのように外から見ただけではわかりにくいものもあるのです。

それが、今回ご紹介する「歯根嚢胞」と呼ばれる病気です。歯根嚢胞を放置しておくと、全ての歯に悪影響が出るだけではなく、身体にも症状が出ることがあります。

そこで、ここでは、歯根嚢胞とは、どのような病気なのか、その原因や症状などについて、ご紹介いたします。

歯根嚢胞とは

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歯根嚢胞とは、病名を見ればおわかりいただけるように、歯の根に嚢胞ができてしまう病気です。嚢胞というのは、組織のある部分に病的な液状成分が溜まり、その周りを膜で覆われた袋状のものを示します。

歯根嚢胞になっていても、わかりやすい自覚症状が出ないケースも多く、歯医者での定期検診や、ほかの虫歯の治療をしているときに発見されることも珍しくありません。

歯根嚢胞はどのような病気なのか?

歯は、口を開けたときに見える白い部分のみではなく、歯茎の奥深くにまで根を伸ばすようにして生えています。肉眼で見える白いエナメル質の下には象牙質があり、そこから歯根に向かって歯髄、根管といった組織が存在し、歯根を取り巻くようにして、歯根膜という膜が存在します。

この歯根膜があることで、歯と歯槽骨(歯を支える骨)がつながれ、容易に抜けないように形成されています。

歯根嚢胞とは、根管の先端部分が、何らかの理由で細菌感染して化膿し、膿が袋状になって現れる病気です。初期段階では、わかりやすい症状が出にくいため、自分でも気づかないうちに、嚢胞が拡大してしまうこともあるようです。

どのような歯に起こりやすいのか?

歯根の先端部に膿が溜まるのは、何らかの経路を通って根管に細菌が侵入してしまうことが原因となっています。細菌が侵入する経路がなぜできるのかに関しては、以下のような原因が考えられています。

<神経を抜いた歯>

程度のひどい虫歯を治療するために、歯の神経を抜くことがあります。もしかすると、皆さんの中にも神経を抜く治療を受けたという人がいらっしゃるかもしれません。

神経を抜く治療では、「神経を全て除去すること」「除去した部分にできた空洞(もともと神経があった場所)の充填をしっかりと行うこと」が重要なポイントになります。

しかし、空洞が残った状態になっていたり、詰め物が劣化した状態になると、そこから細菌が侵入してしまうことがあります。そして、炎症を起こし始めると、身体の機能が、それ以上細菌が広がらないようにと膜を形成するため、嚢胞となってしまうのです。

<歯にヒビが入る>

神経を抜いた歯は、通常の歯よりももろくなると言われています。そのため、少し硬いものを噛んだだけでも歯にヒビが入ってしまうことがあるのです。このヒビが歯根部分まで及ぶと、細菌が入り込み、化膿してしまいます。

また、健康な歯の場合においても、怪我などで歯が割れたり、ヒビが入ることもあります。神経の残っている健康な歯根部分は、無菌状態に保たれているため、この部分に細菌が侵入すると、容易に感染してしまうのです。

<重症度の高い虫歯>

虫歯を放置しておくと、どんどん侵食部分が深くなり、神経にまで及ぶことがあります。上記であげたような感染とは異なり、これは虫歯から細菌感染してしまうので、非常に激しい痛みを伴うのも特徴です。

この時点で歯科医院で治療を受ければ、まだ良いのですが、これ以上放置すると、神経が死滅し、痛みがなくなってしまうこともあるようです。痛みがないからとそのままにしておくと、骨にまで病巣が広がる可能性もあります。

歯根嚢胞の症状について

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前述のように、歯根嚢胞は初期段階では、自覚症状がないケースもあります。そのような場合は、歯科医院で口内のレントゲン写真を撮影したときなどに、黒い影となって発見されるようです。

嚢胞を成長させないためにも早期発見が大切です。ここでは、歯根嚢胞で見られる症状についてご紹介します。

しかし、症状は現れたり消えたりすることもあるので、以下にあげる症状で当てはまるものがあり、一度症状が和らいだ場合においても、早めに歯科医院を受診することをおすすめします。

歯茎に白っぽいできものができる

嚢胞に膿が溜まると、体内の免疫機能が反応して、骨や歯茎を突き抜け、膿を出すための通り道を作ろうとします。この通り道から膿を体外へ排出しようとするときに、歯茎に白っぽいできもののようなものができるのです。

歯根に膿が溜まり始めると、このできものが腫れ、やがてそれが潰れると、そこから膿が出ます。ところが、この状態のまま放置しておいても自然に穴がふさがるため、膿が溜まる→腫れる→潰れるというサイクルを何度も繰り返してしまうようです。

できものと聞くと、痛みが生じるように思いますが、痛みがない場合も多々あるようなので、気づかぬうちに、嚢胞が拡大してくというケースも少なくありません。

あまりに嚢胞が大きくなりすぎると、歯根の周りにある骨も溶かされてしまうため、そのできものから、まるで流れるようにダラダラと膿が出てくることもあるようです。しかし、このときも、痛みが生じないケースが多いと言われていますが、膿が出てくると、口臭がひどくなるので、そこで初めて自覚症状として捉える人もいるようです。

噛むと痛みが出る

歯根嚢胞が進行すると、食べ物を噛んでいるときに痛み、あるいは違和感を覚えることがあるようです。

先にご紹介した歯とそれらを支える骨をつなぐ役目をしている歯根膜には、自分が噛んでいるものの硬さを判断する役目も持っています。このうち、硬いものを噛んだときに痛みが生じることがあります。

また、嚢胞が大きくなり、歯根膜にまで細菌感染が及ぶことで、痛みが生じるケースもあるようです。

歯が浮くような感覚がある

歯根嚢胞は、細菌感染が原因です。細菌に感染すると、体内の免疫機能はそれらをなんとか体外へ排出しようと作用することは、皆さまもご存知のとおりでしょう。

歯根嚢胞の場合においても同様で、膿の袋を体外へ排出しようとすることで、歯が浮くような感覚を覚えることがあると言います。

また、もう一つの理由としては、嚢胞があるのは歯根ですので、その嚢胞の圧力によって歯根が圧迫され、そのような感覚が生じるというケースもあるようです。

歯茎の腫れ、激痛

さらに歯根嚢胞が進行して、多量の膿が溜まり過ぎると、急激に歯茎が腫れ始め激しい痛みを伴います。これは、歯根に溜まった膿が外へ排出されない状態になっているため、内圧が高くなってしまうことによって生じる症状です。

とくに、疲れやストレス、あるいは寝不足などで、身体の抵抗力が低下しているときなどによく見られる症状として知られています。

このような症状は、歯茎を切開して膿を出し、内圧を下げることで一時的に治まりますが、根治にはつながりません。

頭痛

上の奥歯に歯根嚢胞ができた場合、頭痛を伴うことがあります。これは、副鼻腔と呼ばれる鼻の空洞が隣接していることから、歯根嚢胞の原因となっている細菌が、副鼻腔にまで感染することが起因していると考えれています。

このように、あまりにも歯根嚢胞を放置したままでいると、副鼻腔炎や蓄膿症なども生じることがあるので、早めの治療が大切です。

掌蹠膿疱症を誘発する

掌蹠膿疱症とは、手足に嚢胞が現れる病気で、明確な原因は不明と言われていますが、慢性的な炎症が原因となって生じる可能性もあると考えられています。

代表的なものとして知られているのが、金属アレルギーです。たとえば、金属アレルギーの人が、歯科治療のために装着した歯科用金属にアレルギー反応を起こした状態が続くと、掌蹠膿疱症を発症することがあると言われています。

歯根嚢胞の場合も、自覚症状が出にくいものの、炎症状態が継続して起こっていることは確かですので、掌蹠膿疱症を誘発する一因となるとも言われています。

詳しくは、掌蹠膿疱症の原因はストレス?治療方法も紹介!を参考にしてください!

歯根嚢胞の治療法について

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大切な歯と、身体の健康を守るためには、できるだけ早い段階で治療することが重要です。状態が悪化すればするほど、治療法も大変なものになり、また治療期間もその分長くなってしまいます。

さて、ここからは、歯根嚢胞の治療法にはどのようなものがあるのかを、ご紹介いたします。

感染根管治療

前述のように、根管には本来神経が通っています。感染根管治療では、細菌に感染している部分を、ファイルと呼ばれる針金状のヤスリのようなものでこすり落とし、まずは汚染されている部分を除去します。

そして、そこを消毒し、専用の薬で根管を塞ぎ、再度細菌が侵入するのを防ぐことを目的とした治療法です。

ほんの少しであっても感染部位が残っていると、細菌が繁殖し、何度も歯根嚢胞を繰り返してしまうので、徹底した感染部位の除去が治療のカギとなります。

治療の手順は以下のとおりです。

<1:根管への細菌の侵入を防ぐ>

治療する根管に唾液や歯石が入ると、細菌感染しやすくなってしまうため、唾液を除去する「ラバーダム」と呼ばれるゴム膜のようなものを歯の周囲に装着したり、「ZOO」と呼ばれる管のような医療器具を装着して治療を進めます。

<2:歯の神経を全て除去する>

私たちは、どの人の場合においても、健康な歯には神経が通っていますが、その神経管の本数は人によって異なります。また、歯根に向かって枝分かれしているケースもあるようです。これらの神経を一本でも残してしまうと、歯根嚢胞の再発につながりますので、全て除去します。

神経を全て除去したら、根管を綺麗に消毒し、仮の蓋をして炎症が治まるのを待ちます。多くのケースでは、1~2の作業を繰り返し行うようです。

<3:根管の形を整える>

この次の治療で薬を入れるため、根管の形を整える必要があります。根管は、楕円形や三角形、あるいは二本に分かれているなど、決して単純な形ではありません。薬をきちんと入れるためには、この形を整えて、薬を入りやすくさせる工程が必要不可欠です。

<4:薬を入れる>

再度、根管を消毒した後、薬を入れていきます。薬は、樹脂(天然ゴム)でできているガッタパーチャと呼ばれる薬を使用します。

神経を全て除去している歯は、非常に細菌感染しやすい状態になっているため、空気をいれないように、密に詰めていかなければなりません。細菌が侵入する隙を作らないためにも、歯科医の技術が求められます。

歯根端切除術

上項目であげたような、感染根管治療でも歯根嚢胞が完治せず、再発を繰り返す場合や、根管が曲がっている場合、あるいは土台が入っている場合には、歯根端切除術が行われることがあるようです。

3番目にあげた「土台」というのは、あらかじめ神経を抜く治療を行った歯に見られます。神経を抜いた歯が割れるのを防ぐため、金属の土台が入っていることがあるのです。この土台があまりにも頑丈に入っていると、歯そのものが割れてしまうケースがあるので、それらを回避するために歯根端切除術が用いられるというわけです。

治療法としては、以下のような方法で行われます。

<1:根の治療>

感染根管治療と同様に、まずは根の治療を行います。上項目の1~4全ての工程を終えて、一度炎症が治まるのを待ちます。

<2:CTレントゲン検査>

CTレントゲンで口腔内の状況を確認しながら、原因部位の詳細を見ていきます。傷口を最小限の大きさに抑えて手術を行うためには、このCT検査での原因部位の見極めが重要になります。

<3:嚢胞を除去する>

局所麻酔をして、歯茎を切開し、嚢胞を除去します。嚢胞が残ると、細菌まで残ってしまうので、綺麗に取り除き、丁寧に洗浄します。

<4:根管の先端を切除する>

細菌に感染しているのは、根管の先端部分ですから、原因となっている部位を切除します。このとき、嚢胞が拡大しすぎて、骨にまで影響が出ている場合には、骨を再生させるための膜を置いておかなければなりません。

また、歯の表面にもMTAセメントと呼ばれるセメントを詰めることで、歯の再生を促します。

<5:歯茎の縫合と消毒>

ここまでの治療を終えたら、切開部分を縫合して、消毒し、様子を見ながら一週間から10日後に抜糸します。術後は腫れが強く出る場合もありますので、その際には、頬を冷やすなどで、対処してください。

また、麻酔が切れるまでは、できるだけ食事を控え、その後食事をする際には、傷口に触れないように配慮しながら食事をすることも大切です。

<6:骨の再生を待つ>

嚢胞と細菌によって溶けてしまった骨が再生するのを待ちます。人によっても異なりますが、だいたい半年近くはかかると言われているようです。

再植術と歯根端切除術

これは、ここまでにあげた2つの治療法が行えない場合の治療として行われます。たとえば、下の奥歯は下顎の骨も厚く、歯茎からの歯根端切除が困難なため、この治療法が適用されます。

再植術と歯根端切除術を組み合わせて行う場合は、一度抜歯して、抜歯した穴から嚢胞を除去し、再度歯を戻すという方法で行われます。

しかし、根が曲がっている歯は、抜歯が難しいため、この治療法を行うことはできません。

部分抜歯

これは、できるだけ根を残すことで、患者の負担を軽減させることができる方法です。奥歯にある根は、一本のみではなく、2本~4本と複数本存在しています。そのため、歯を削って、そこからこのうちの1本のみを嚢胞とともに抜くのです。

そうすることで、ほかの根をそのまま残すことができ、連結歯の土台にすることも可能になります。

抜歯

あまりにも状態が良くない場合は、そのまま歯を残しておくことができないケースもあります。その場合、抜歯後、歯が生えていた穴から嚢胞を取り除くという方法しか行うことができません。こうなる前に、少しでも早い段階で治療を受けることをおすすめします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。歯の健康は、身体の健康にもつながります。症状が悪化してしまう前に、少しでも異変を感じたら、検査を受けるのがベストです。

また、このようなトラブルを招かないためにも、普段から入念に歯磨きをして、虫歯を防ぐことも大切です。

虫歯ができてしまった場合においても、歯を丈夫に保つためには、できるだけ神経を抜く治療を避けるのも重要なポイントになります。できるだけ自分の歯を残すことを考え、丁寧に診察・治療を行ってくれる歯科医を探しておけば、どんなときでも安心して歯科医院を訪れることができます。

丁寧な治療のために、治療時間をゆっくりととってくれる歯科医院であることも、歯根治療においては、欠かせません。これを機に、行きつけの歯科医院を探してみてはいかがでしょうか。

  
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