鍼(はり)治療ってなんか痛そうだなーと思っているあなた。実はそんなことないですよ。
確かに西洋医学に比べると身近ではないかもしれません。しかし、東洋医学にも長い歴史があります。
東洋医学の根底には流れているのは、あなたが受けている西洋医学の治療とは異なる発想なのです。
今回は鍼治療の思想から効果まで、あなたの知らない情報をお伝えします。この記事を通して、きっと鍼治療が身近に感じられることでしょう。
鍼治療には、あなたの知らなかった魅力がきっと隠されていますよ。。
鍼治療とは?
鍼治療について紹介します。
鍼治療の発想
東洋医学のひとつで、脈診、腹診、舌診などで診断し、発見された身体のバランスを整えるものです。そのための一つの手段として針を用いるのです。
具体的には、人の身体に数百個ある経穴(ツボ)の触診により状態を把握し、さらにツボに鍼で刺激を与え、免疫力や自然治癒力の向上を目指します。
経穴とは、気血(精神エネルギーや栄養)が流れるルートである経絡が合流したり別れたりするポイントのことです。症状を検査して原因を把握し、化学的・物理的に直接処置する西洋医学とは根本的に異なっています。
鍼治療の歴史
鍼治療の知識が日本に伝来したのは6世紀ごろの飛鳥時代で、朝鮮半島からのことでした。その後朝廷により、鍼博士・鍼生といった官職が設けられていきました。
鍼治療と当時の政府の強いつながりが伺えるエピソードですね。
平安時代まで、鍼治療は灸治療の補助的な存在として、外科的処置に用いられましたが、室町時代後期に再び鍼が盛んになりました。 当時のイエズス会士の記録にも鍼に関する記述が見られ、国内では様々な流派が生まれていたことが分かります。
特にツボ(経穴)と経脈の研究が進み、江戸初期には研究書が編纂されます。戦後長く民間療法的な扱いを受けてきた鍼ですが、当時は正統派な学問だったわけです。
日本では鍼を管に挿入した状態で刺入するという特徴がありますが、これが編み出されたのもこの時期でした。痛みの少ない治療が容易に行えるため、 現在でも広く用いられています。
しかし、戦後GHQは鍼灸を禁止しようとしたため、鍼灸は存続の危機に瀕することになってしまいました。
そんな中、転機が訪れます。
1979年、WHOが43疾患もの鍼灸に対する適応疾患を発表し、1997年には米国国立衛生研究所が、手術後の吐き気、妊娠時のつわり、歯科手術後の痛み軽減について、効果を認める声明を発表しました。
このようにして効果が認められてきたため、一時は国内の治療が禁止されかけた鍼灸の知名度はどんどん上がっていったのです。
鍼治療を受けるにあたって
鍼灸師、鍼灸院の数
日本で鍼治療を施すには、「はり師」という国家資格が不可欠です。受験には、高校卒業後、指定された教育機関で3年以上勉強することが必要になっています。
厚生労働省統計によれば、約8万人の鍼師が就業しており、鍼灸院は全国に2万か所前後もあります。鍼灸になじみのない方にとっては意外に映るかもしれません。一都道府県あたり平均人数は1700人以上で、平均施設数は400か所以上。
このように見てみると、鍼は意外と身近な気がしますね。あなたの家の近くにもきっと見つかるはずです。
鍼の保険治療の仕組み
日本において、鍼治療は混合治療が認められています。混合治療とは、保険が適用されない自由診療と、保険診療を同時に行うことです。
一つ気を付けなければならないポイントがあります。それは、保険治療には医師の同意書が必要となっていることです。鍼灸院での治療の前に医師の診断を受けなければならず、これが鍼灸へのハードルを高いものにしているという意見もあります。
加えて、鍼灸院での治療中は医師の治療が受けられないので、医師・鍼師双方とのとのコミュニケーションが求められます。
鍼の保険治療を受けるのは、様々な制約があるというのが現状です。
保険治療が適用される症状
保険が適用される症状は以下に限られています。
・神経痛、リウマチ頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頚椎捻挫後遺症、またはこれらに類似する症状
鍼灸の普及は医療費の削減にむしろ役立つという声もありますが、鍼灸の治療効果が十分に認められていないのが実情です。
鍼をもっと有名にするには、同意書の廃止や症状の制限撤廃など、保険治療を拡大する政策が必要だと思われます。もっとも、鍼効果のより科学的な実証や医師会との交渉など、課題は山積しているという問題はあります。
鍼治療の料金
一部、保険治療が認められていますが、基本は自由診療となっています。。そのため、料金は鍼灸院ごとに異なっています。
東京23区では診察料が5,000~6,000円、初診料が0~2000円となっていますが、地方では都市部より安いことが多いなど、地域間の差も大きいようです。
地域間の差が大きいのは、病院より一般のお店と似ていますね。自由診療だからこその特徴です。
ただ、価格をあなたはどう思われるでしょうか。少し高いな……というのが本音ではないかと思います。もちろん保険診療が適用されると、初診料・治療費ともに安くなりますが、前述したように様々な制限が問題となっています。
鍼治療を受けてみよう
鍼治療の痛み
痛みは予想ほど大きいものではありません。鍼という言葉のイメージが先行している気がします。
勘違いされている方が多いのですが、鍼治療の鍼は縫い針や注射針などとは全く異なります。鍼の太さは0.14㎜が主流で、採血に使われる注射針の3分の1ほどしかありません。
注射針は液体を注入するため内部に空洞があり、どうしても太くなってしまうのです。それに対し鍼治療では空洞のない銀・金・ステンレス製のものを使用します。
もちろん部位によって鍼の使い分けは徹底されています。顔など、皮膚の薄い場所には細い鍼を、肩や腰などには太い鍼が多く使われます。
鍼治療の効果
無意識の活動をつかさどっている自律神経には2種類あります。交感神経は筋肉の緊張や血管の収縮、副交感神経は筋肉の弛緩を生みます。
鍼の主な作用の1つ目は、交感神経活動の抑制です。鍼刺激によって筋肉が緩み、血流が増加すると副交感神経が優位になり、リラックスした状態になるのです。交感神経の抑制によって自律神経のバランスが良くなり、ストレスが軽減されます。さらに。自律神経がつかさどっている内臓機能や循環機能への効果もあります。
2つ目としては、痛みに対する効果が挙げられるでしょう。鍼の刺激は、痛みを抑えるホルモンを分泌させるとともに、痛みを脳に伝える神経を抑止する働きがあるのです。鍼治療の痛み止め効果は、前述したWHOによる報告でも触れられており、広く認められた効果だと言えます。
3つ目として、病気ではないけれども病気の手前の状態、いわゆる「未病」の状態にも効果的だと言われています。免疫力を高め、自然治癒力の向上を目指す鍼ならではの特徴です。西洋医学は病気の症状から原因を突き止めて治療するので、このようなことはできないのです。未病に対応できるのは東洋医学ならではの特徴です。
鍼治療の副作用
鍼灸治療には「瞑眩(めいげん)」という考え方があります。
瞑眩とは、治療後に主に体がだるく感じたり、眠くなったりする症状のことです。他には疲労感、痛み、めまい、かゆみ、吐き気などです。
また、最も強い痛みを解消したがために、次に痛いところが自覚されやすくなることもあります。これは回復のプロセスとして正常なものです。
しかしこのような副作用が出る場合はとても稀です。多くの人は何も起こりませんし、起こっても2日以内になくなることがほとんどです。
副作用が全くないわけではありませんが、あまり気にする必要はありませんよ。鍼がたくさんン刺さった様子はビジュアル的に心配になるかもしれませんが、抜いてしまえば問題が残りにくいというのが特徴です。
薬で治療する西洋医学とは180°異なっていますね。
鍼と年齢
子供にも鍼は効くのか
答えはYESです。子供は気血のめぐりがよいので、より少ない治療回数でも効果があります。
効き目が強い一方、子供の身体は未成熟なため、経穴がはっきりいていないという特徴があります。そのため、小児鍼という子供用の鍼を用い、優しく治療したり、大人用の鍼を使っても刺さずにさすったりします。
極端な話、赤ちゃんの治療も可能だそうです。
高齢者と鍼治療
子供だけではなく、高齢者にも鍼治療は効果的です。
マッサージなどと異なり骨にかかる負担がとても少ないので、安心して受けることができます。骨を損傷するリスクはほとんどありません。
高齢者に多いぎっくり腰やむちうちの痛みに対し、鍼は効果を発揮してくれます。定期的に受けることで体調を管理するのもおススメです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。鍼を少しでも身近に感じていただけましたでしょうか。
- 鍼治療は意外と身近
- 保険治療も一部適用可能
- 痛みや「未病」に効果アリ
- 副作用は稀にしかない
確かに、保険治療に手間がかかったり、内容に制限がかかったりと、効果がまだ広く認められていない感じはあります。
一方、保険診療の医療費は西洋医学よりも少なくなる傾向があります。もしかしたら将来、医療費の削減に一役買うかもしれません。
副作用や痛みも、イメージほどではありません。怖がらずに挑戦してみてはいかがでしょうか。鍼灸院はあなたの想像よりたくさんあります。かかりつけの鍼灸院を見つけてみてはいかがでしょうか。
きっと西洋医学とは異なった世界が広がっていますよ。