眠っていた人が突然起きだし、部屋を歩き回ったり会話をしたりしてまた眠ってしまう、翌朝になると動き回った本人はそんなことは覚えてないと言う・・・そんなことを経験したことはありませんか?それは夢遊病と呼ばれる病気かもしれません。
今回は、夢遊病になる原因は何なのか、夢遊病になってしまったらどうしたら良いのか、夢遊病の人にどう接したらいいのかなど、気になる内容について紹介します。
夢遊病とは
夢遊病とは、広義で「睡眠時随伴症-すいみんじずいはんしょう-(パラソムニア)」と呼ばれる睡眠覚醒障害のうちの1つです。「夢中遊行症」と呼ばれることもありますが、正式な名称は「睡眠時遊行症」と言います(ここでは夢遊病で統一させていただきます)。
人間は眠りについてから、脳が休息して体が覚醒している状態の「ノンレム睡眠」と、脳が覚醒して体が休息している状態の「レム睡眠」を交互に繰り返すと言われています。ノンレム睡眠は、睡眠の深さによって4つのレベルに区分されます。
そのなかでも最も深い眠りを表すレベル3からレベル4の睡眠時に夢遊病が起こります。眠りについてから1~3時間後のノンレム睡眠の時に発症することが多くあります。つまり脳は眠っている訳ですから、夢をみて思わず行動をしているのではないのです。
夢遊病の症状
眠っていたはずの人が起きてきて、普通に歩いたり食べ物を食べたり喋ったりしますが、その本人は全く(もしくはほとんど)そのことを覚えていません。
また、脳が眠っている状態なので、会話をしてもうまくまとまらずにちぐはぐだったりするのも特徴です。ほとんどの人は幼児期に発症し、その多くが4歳から8歳頃にピークを迎え、成長し思春期を過ぎる頃までには自然と治ることがほとんどで、治療を必要とするケースは少ないようです。
また、常に活動する訳ではなく、ただボーっとしていたりお風呂やトイレなどに行ったりする場合もあります。およそ数分から30分前後で再び眠りにつきますが、もっと長く症状がでることもあります。
脳が眠っていて細かい気配りや判断力がきかない為、家の階段から落ちて怪我をしたり外出をして事故にあったりすることもあるので注意が必要です。見ていてハラハラするからと、無理に起こそうとして声を掛けたり軽く叩いたりしても中々起きません。また、無理に起こそうとしたことによって、凶暴になったり悪化するというケースもあるのでやめたほうが良いでしょう。
夢遊病になる原因
では、夢遊病の原因について紹介します。
子供の夢遊病
子供の夢遊病の多くはまだ未発達な脳が原因により、眠っているはずの脳の一部が活性化することによって引き起こされるとも言われていますが、これといった詳しい原因は解明されていません。また、強いストレスや深く眠りについた子供を無理に起こそうとすると発症することがあります。
身に危険が及んだりといった心配が無ければ、特に治療は必要ありません。「そろそろ寝ようか?」などと、自然に寝るように仕向けると良いでしょう。
また、てんかんや他の病気の症状として夢遊病行動が認められる場合もあります。
大人の夢遊病
日常生活から受ける強いストレスなどの、精神的な問題が原因になっていることが多いです。
女性に多いのは、極端なダイエットによるストレスで、睡眠関連摂食障害(睡眠時の過食行動)を伴った夢遊病を発症することが知られています。一時的なものとしては、寝ている人を無理におこそうとしたり、睡眠導入剤の副作用によって引き起こされるものもあります。
大人の夢遊病の場合も、てんかんや他の病気が原因となって引き起こされるケースがあります。
子供の場合、その多くが自然に治っていきます。ですが、思春期を過ぎても治らないケースや、行動範囲が広く危険な為に治療を受けたいと思います。次の項目からは大人になって発症した夢遊病も含めて、治療と対処方法について説明していきます。
夢遊病の治療方法は?
夢遊病の症状は様々ですが、治療法はそう多くはありません。
大人の夢遊病
◇ストレス
大人の夢遊病は、強いストレスによって引き起こされる事が多く、そのストレスをいかに解消するかが鍵となります。幼児期からの夢遊病が大人になっても治らないケースでも、ストレスが原因と考えられます。
睡眠不足で疲れが溜まっていたり、大人の夢遊病の患者さんにうつ病を患っている方が多いことからも、ストレスによる影響が濃いと思われます。
会社でのストレスや家庭でのストレスをすぐに無くすことは難しいでしょう。しかし、ストレスを溜め込まずに発散させることが大切です。
♪散歩をして綺麗な景色を楽しむ
♪気の許せる友達と楽しく遊ぶ
♪好きなお笑いを見て思いっきり笑う
例として3つを挙げましたが、自分が楽しいと思うこと・自分がスッキリした!と思えることならなんでも良いのです。※他人に迷惑を掛ける行為や犯罪はもちろんダメですよ!(笑)
◇その他のケース
・睡眠導入剤による副作用
睡眠導入剤の服用をやめることによって夢遊病は改善されるかもしれませんが、睡眠導入剤を服用するに至った理由があるはずなので、通院している病院の先生に夢遊病の相談をしてアドバイスを受けてください。
・別の病気によって引き起こされるもの
てんかんの症状や、睡眠時無呼吸症候群の症状にも、夢遊病に似た行動を起こすものがあるので注意が必要です。他の代表的なものに「レム睡眠行動障害」という病気があります。これは、しばしば夢遊病と間違われることもありますが、レム睡眠時に起こる全く別の睡眠障害です。
・その他の原因
海外など時間差のある場所へ行ったり、仕事の都合で昼夜を逆転させたりなどすると、発症することがあります。
治療が必要なケース
◇夢遊病の治療は「睡眠障害クリニック」や「睡眠科」の記載がある病院へ
大人の夢遊病は子供のそれよりも行動範囲が広く、活発に動くことが知られています。家の外に出かけていったり、自転車や車の運転をしたり、暴力的な行動をとったりもします。悲しいことですが、夢遊病が原因の殺人事件や事故などが起こっているのも事実です。
全てがそうではありませんが、もしもそのような兆候が見られる時は、すみやかに病院を受診しましょう。また、夢遊病が何度も繰り返される場合は、慢性化や他の病気が原因になっている可能性があるので、こちらも治療が必要なケースと言えそうです。
病院での治療の内容は?
睡眠障害にはぱっと見には区別のつかないものもあるので、睡眠時の異常行動などを数値として記録できる「終夜睡眠ポリグラフ検査」というものが行われます。この数値と目に見える行動とでお医者様が夢遊病と判断すれば、夢遊病の治療開始となります。その他の睡眠障害などと分かれば、そちらの治療となります。
夢遊病の原因自体がはっきりと分かっているわけではないので基本的には、夢遊病が発症しやすい深い睡眠に入りづらくする、ベンゾジアゼピン系のお薬などを使用しての対症療法が行われます。
夢遊病と診断されたら、心のストレスを無くす為にも診療内科へ相談をしたり、家族へ協力をお願いするといいでしょう。
まとめ
◇夢遊病ってどんな病気?
・本人の意思とは関係なく寝ている時に行動してしまう睡眠障害
・寝ている時に行動したのを覚えていない
・発症は子供に多く脳の発達とともに自然に治ることが多い
・寝ているのに外出したりご飯を食べたりすることもある
・大人の夢遊病の原因はストレスが多い
・時には危険な行動を取ることもある
・発症の原因はよく分かっていない
◇どう接したらいいの?
・無理に起こそうとしない
・ストレスを与えない・発散させてあげる
・「もう寝よう」などと自然に寝るように仕向ける
・危ない行動をしないか他の病気の可能性が無いか見守ってあげる
◇治療方法は?
・夢遊病が発症しづらくなるようなお薬での対症療法
・診療内科での心のケア
・他の原因が見つかった場合はそちらの治療を優先する
自分だったらどうすればいいか、家族が夢遊病になったらどうすればいいか理解を深めておくことで、もしもの時にあわてずに済むかもしれません。また、日頃からストレス発散を心がけ、夢遊病の予防や再発の予防に努めましょう!
関連記事として、
・寝言に返事してはいけない理由は?睡眠の質との関係性について
これらの記事も合わせてお読みください!