長く付き合った恋人との別れは、離婚と同様に辛く悲しいものです。「世の中が真っ暗になった」「生きているのも嫌になった」と感じます。しかし、どれほど大きな悲しみであっても、時が癒してくれます。失った恋人を忘れられなくても、立ち直って、前に進んでいきます。
中には、失恋の悲しみ・苦悩から立ち直れず、気分がどんどん落ち込んで、うつ状態に陥り、うつ病を発症してしまう人もいます。
失恋からうつ病になりやすい人の特徴と、うつの克服方法について、お伝えしますね。
失恋でうつになる?
1960年代に流行した「The end of the world」という歌があります。「なぜ太陽は輝き続け、鳥は歌い続けるのだろう?世界が終わってしまったことを知らないのだろうか?恋人が別れを告げた時、世界は終わってしまのに・・・」と、失くした恋を嘆きます。
失恋すると、だれでも「世界の終わり」という気分になります。松任谷由実さんの「翳りゆく部屋」では、「今、私が死んでも、愛の輝きは戻らない」と歌い、失恋した人の「生きる気力もなくなった」気持ちをよく表しています。
[失恋すると、だれでも悲しみで心が閉ざされる]
失恋すると、だれでも気分が落ち込みます。それは、男性でも女性でも同じです。別れた恋人のことを考えると、涙が出て止まりません。何をする気にもなれず、「もう二度と恋なんかしたくない」と思います。自殺を考える人さえいます。なんとか復縁できないかと考え、ストーカーまがいの行為をする人もいます。
恋人との関係が親密であればあるほど、別れの悲しみ・辛さは強くなります。同棲していたりすると、離婚と同様のショックを受けます。片思いの相手に恋人がいたことがわかり、失恋した場合は、それほど親密な付き合いではありませんから、比較的早く立ち直れます。
喪失の悲しみのピークは2年・失恋のピークは1週間から1ヶ月
人間の脳や心はうまくできています。時間が経つにつれて、恋人や配偶者を失った悲しみも、少しずつ薄らいでいきます。離別でなく死別でも、時が心を癒(いや)してくれます。
子供を事故や病気で死なせてしまった母親でも、悲しみのピークはおよそ2年間といいます。
失恋の悲しみのピークはおよそ1ヶ月です。1週間から1ヶ月もすると、恋人や配偶者を忘れることはできませんが、失恋の辛さに慣れてきて、心の痛みは和らぎます。友達や職場の仲間達と普通に付き合えるようになり、人生に前向きに取り組めます。
落ち込んだ気分から脱け出せない
多くの場合、時が過ぎるとともに失恋の悲しみや痛手から立ち直ります。しかし、人によっては、日が経つにつれて気分が落ち込んでいき、職場や学校に行くことができず、部屋に引きこもったり、自傷行為をしたり、生活全般に対する意欲が低下します。マイナス思考に陥り、脱け出すことができません。
落ち込んだ気分が長く続き、うつ病を発症する可能性もあります。
日本人の15人に1人は、一生のうちに1度はうつ状態もしくはうつ病になるといわれます。うつ病を発症するきっかけはいろいろですが、失恋がきっかけとなることも少なくありません。
[うつ病とは?]
「うつ病」とは、気分障害の1つである精神疾患です。うつ病の原因は、まだ全部解明されていません。
遺伝的要因や性格、体質、幼少期の心の傷・人間関係のトラブル・昇進や退職・生活の変化など環境面の要因、過労・睡眠不足・病気など身体面の要因が複雑にからみあい、発症するようです。
うつ病の原因はストレス
うつ病の大きな原因はストレスです。ストレスは失恋や離婚、人間関係などの精神的ストレスだけではありません。構造的ストレスといって、背骨や骨盤、頭蓋骨など骨格の歪みも脳にストレスを与えます。栄養素や化学物質、温度や湿度の変化などもストレスになります。
いろいろなストレスが重なったり、強いストレスを受け続けたりすると、脳内の神経伝達物質ノルアドレナリンとセロトニンの働きが低下します。脳内の神経伝達物質の働きが鈍化して、うつ病が発症します。
脳内神経伝達物質が心の平常を保つ
人間の心は、ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニンという神経伝達物質によって機能しています。
ドーパミンは、やる気や意欲を生じさせますが、暴走すると、際限のない欲望に駆られます。ノルアドレナリンは、気分を高揚させますが、暴走すると、不安障害・パニック障害を起こします。
セロトニンは、ドーパミンやノルアドレナリンの暴走を抑制し、心を平静に保ちます。気持ちを明るくします。セロトニンの分泌が不足したり、欠乏したりすると、うつ状態になります。
ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニンがバランス良く働くことで、人間の心は平常を保つことができます。
(セロトニンの不足・欠乏がうつ病を引き起こす)
ノルアドレナリンやセロトニンなど脳内神経伝達物質は、強いストレスや過剰なストレスにより、働きが鈍り、うつ症状を引き起こします。ことにセロトニンが不足・欠乏すると、抑うつ症状が生じます。
うつ病の患者さんは、セロトニンが不足または欠乏しています。しかし、薬物治療などでセロトニンを増やしても、根本にあるストレスを解決しなければ、また、セロトニンが減少して、うつ病が再発する可能性があります。しかし、ストレスの完全な解決策はありません。
[失恋でうつになりやすい人]
だれでも、一生に1度や2度は失恋するでしょう。でも、失恋した人がみんな、うつ・うつ病になるわけではありません。遺伝や体質にもよりますが、「失恋で鬱になりやすい」性格があるようです。
失恋で鬱になりやすい男性の特徴
男性は女性よりセロトニンの量が多いので、うつになりにくいと言われます。しかし、そのためにうつ病の発見が遅れがちで、重症化する傾向があります。
男性は、恋愛の相手をなかなか忘れられません。別れの後も愛した女性を忘れられず、パソコンでいうならば、「別ファイルに保存」状態です。特に死別した女性を忘れることができず、思い出の中で美化する傾向があります。しかも、他人に失恋を知られることを嫌がり、独りで悩み苦しみます。失恋で自殺する人は、女性より男性が多いようです。
失恋でうつになりやすい男性は、ひたむきで真面目です。失恋というストレスが大きすぎて、対処能力を超えてしまい、自信を喪失して落ち込んでしまうのです。
失恋で鬱になりやすい男性の特徴は、次の通りです。
- 完璧主義者で、デートも含めて何事も計画通りに行かないと満足できない。
- 仕事は常に全力で取り組み、少しのミスもしないようにする。
- 頼まれると断れず、何でも引き受けてしまう。無理をする。
- 周囲には「できる人」「良い人」という印象を与え、弱みを見せない。
失恋で鬱になりやすい女性の特徴
女性のうつ病発症率は男性の2倍と言われます。失恋してうつ病になるのも、女性が多いようです。それは、女性ホルモンのエストロゲンが関係しているためです。エストロゲンは、毎月の生理周期により増減し、加齢とともに減少します。
女性ホルモンのエストロゲンの分泌が不足したり、急に増減して乱れたりすると、エストロゲンの感情に対する働きが弱まり、気分が落ち込みます。
しかし、女性のうつ病は発見しやすいので、早期の軽症のうちに治療ができます。また、女性の場合は「上書き保存」状態なので、「別れたら、次の人」と新しい恋をしやすいようです。
失恋でうつになりやすい女性の特徴は、次の通りです。特に変わった性格でもないので、女性はだれでも、失恋するとうつになる可能性があると言えます。
- 彼氏のために、時間や労力、愛情など全てをささげてしまう。
- 彼氏に合わせようとして、独りでガマンし、自己主張しない。
- 何事も予定通り運ばないと、パニック状態になる。
- 極めて几帳面で、潔癖症である。
- 他人の目を必要以上に気にして、悪い噂を立てられることを心配する。
- 他人と自分を比べる傾向が強い。
失恋によるうつと精神障害
失恋すると、だれでも気分が落ち込み、やる気を失います。しかし、失恋というストレスが「最後の一撃」となって、適応障害やうつ病を発症することがあります。
また、幼児期に愛情不足だった人は、恋愛依存症からうつ病に発展する可能性があります。
[うつ病の自己診断]
人はだれでも常にさまざまなストレスを受けながら生きています。学校でも職場でも家でも、精神的ストレスや身体的ストレスを受けています。対人関係のストレスは家族の間にも生じます。過労や睡眠不足も大きなストレスです。
「重い荷物を大量に積んだラクダに、ワラ1本を載せただけで、ラクダの背骨が折れてしまうことがある」といいます。このワラを「最後の一撃」と呼びます。日常のストレスが積み重なっているところへ失恋したら、重荷が許容量を超えて、うつになってしまうのです。
うつ病になると失恋から時が経っても、立ち直れない
ただ気分が落ち込んで、何事にもやる気が起きない状態ならば、原因となるストレスから離れたり、解消したりすれば、気持ちを立て直すことができます。失恋で気持ちが沈んでいるだけなら、時間が解決してくれます。
しかし、うつ病を発症すると脳内物質の働きが低下しますから、精神科の医者や心理カウンセラーなど専門家の治療や助けが必要です。相談する専門家は、「専門家プロファイル」というサイトで探すことができます。
うつ病の自己診断チェック
失恋して1ヶ月過ぎても、次のような症状があれば、うつ病の可能性があります。
- 身体がだるくてたまらない。いつも疲れた感じがする。(倦怠感・疲労感)
- よく眠れない。寝つきが悪い。夜中に何度も目が覚める。(睡眠障害)
- 気分が沈んで重く、何もやる気が起こらない。特に、朝が無気力になる。
- 何をしても楽しくない。
- 何を食べても味気なく、食欲がない。
- 人と会うのが面倒くさい。人に会いたくない。
- 頭痛や肩こりがひどい。
[恋愛依存症]
恋愛すると、普通は幸せな満ち足りた気分になるものですが、破局を恐れて不安感が強くなり、常にイライラして、心身ともにストレスが溜まってしまう状態を「恋愛依存症」といいます。大好きな恋人に夢中になりすぎてしまう心の病気です。
恋愛依存症は女性に多く発症します。恋愛依存症の人が失恋すると、うつ病に発展しやすくなります。
恋愛依存症の原因
恋愛依存症になりやすい人は、幼児期に両親、とくに母親と健全な愛着を築くことができていません。親に無視されたり(ネグレクト)、暴力を受けたり、心身の虐待を受けた子供や、両親が厳しすぎて、十分に甘えることができなかった子供、両親が不仲だったり、離婚したりした子供など、機能不全家族の中で育つと、親から受けられなかった愛情を恋愛の相手に求めるようになります。
恋愛依存症の症状
恋愛の相手、または恋愛そのものに異常に執着し、仕事や勉強など自分のするべきことが、手につかなくなってしまいます。相手に全てをささげて尽くしますが、相手にも無条件で自分を愛することを期待します。そのため、相手の気持ちを試すような言動をします。
相手を「運命の人」と思い込み、「あなたがいないと、わたしはダメ」と思ってしまいます。見捨てられ不安が強く、相手を束縛します。メールの返事が少しでも遅れたりすると、「嫌われてしまった」と落ち込みます。
恋愛依存症がうつ病に発展するきっかけ
恋愛依存症は、失恋によりうつ病に発展する可能性が大です。
相手から別れを告げられたり、相手が浮気など自分を裏切っているという確証を得たりすると、うつ症状が生じます。また、相手の自分に対する気持ち(愛情)に疑問を感じるだけで、うつ病に陥ってしまうこともあります。
恋愛依存症にならないためには?
女性の多くは、相手の男性を好きになると、時間も愛情も全てささげてしまう傾向があります。自分の生活を犠牲にしても、相手に尽くそうとします。決して悪いことではありませんが、恋愛依存症や失恋うつを起こしやすくなります。
失恋によるうつ状態を起こさないためにも、自分の意見・主張をしっかり持ち、必要以上に相手に合わせないようにします。まして、自分の生活を犠牲にすることはありません。「生まれ育った環境が違うのだから、意見や考え、好き嫌いが異なるのは当然」と考え、相手とうまく折り合うようにします。
[適応障害]
「適応障害」は、さまざまなストレスによって引き起こされる心の病気の1つです。
社会生活では、精神的ストレスをはじめさまざまなストレスがかかります。ストレスが長く続いたり、強すぎたりすると、自律神経系のバランスが崩れます。そのため、異常なストレス反応を起こし、職場や学校、家庭での生活に著しい支障が生じるようになります。ストレスにうまく対応できなくなるのが、適応障害です。
失恋という大きなストレスで、適応障害を起こすことはよくあります。
適応障害の症状はうつ病と似ている
適応障害の症状はうつ病とよく似ています。強い不安やイライラ・気分の落ち込み・無気力・絶望感などの精神的症状、頭痛・腹痛・背中や腰の痛み・倦怠感などの身体症状、暴力行為などの問題行動が見られます。引き籠って、生活費を稼ぐことができなくなる人もいます。
適応障害はストレスの経過と密接な関係がある
適応障害は、ストレスの経過(発生から解消まで)と密接な関係があります。原因となるストレスが解消されると、適応障害のうつ症状は軽減します。うつ病になると、原因となるストレスが解消されても、抑うつ状態が改善することはありません。
失恋による適応障害は、時間とともに失恋の悲しみや心の痛みが薄らいでいくと、うつ症状が軽くなり、回復します。
適応障害はうつ病の入口
適応障害は、適正に治療すれば、比較的短期間で回復します。しかし、重症化すると治りにくくなり、うつ病に発展する可能性があります。
失恋のうつを克服するには?
失恋してうつ状態に陥ってしまったら、克服法は2つあります。1つは自分でうつを克服する方法です。もう1つは、病院の精神科など医療機関で専門家の治療を受けることです。
精神科の医師の治療を受けながら、自分でもうつを克服するように生活や考え方を変えると、いっそう効果があります。
[自分でできるうつ対策]
自分でできるうつの対処法は、まず、失恋の痛み・悲しみを和らげることです。そして、溜まっているストレスを軽減するように生活習慣を改善します。ただし、うつ病は、自分の力だけでは克服できません。医師など専門家の助けが必要です。
①失恋を受け入れる
片思いの相手を諦めるのは、比較的容易ですが、長年付き合った恋人や同棲相手との別れや破局から立ち直るのは、時間がかかります。まして、死別となると、その悲しみは一生忘れられません。まず、「失恋した」という事実をしっかりと受け止めます。
失恋の理由を考えて、自分を責めない
失恋すると、破局に至った理由をあれこれ考えます。反省して、次の恋愛で同じ失敗を繰り返さないようにするのは良いことです。しかし、「私のここが悪かったから、ダメになった」などと自分を責めると、気分が落ち込むばかりです。
恋愛も結婚も破たんするのは、双方に理由があります。男だけが悪い、女だけに理由があるということは、決してありません。
復縁したければ、一度はきっぱりと別れる
失恋の理由が、些細な意地の張り合いや気持ちの食い違いだったり、理由がはっきりしなかったりすると、復縁できるように思えます。しかし、復縁を願う場合でも、一度ははっきりと別れる方が、お互いに気持ちの整理がつきます。
親しい人に失恋のグチを聞いてもらう
親しい友達や兄弟姉妹などに失恋したことを打ち明けると、自分でも失恋した事実を受け入れることができます。失恋を打ち明けたついでに、グチを聞いてもらうと、心がスッキリします。心理カウンセリングと同じで、悲しみや苦しみを聞いてもらうことが対処法になります。
相手は自分に合わなかったと考える
好きになった相手を「自分に合わなかった」と考えます。「わたしには、すぎた人だ」とか、「わたしなんかでは満足してもらえない」などと、自分が悪かったと考えず、「あんな人を好きになるなんて、どうかしていた」「ダメになって良かった」と、失恋を正当化します。
②心も身体もゆっくり休む
うつは、心身ともに疲労して、悲鳴を上げている状態です。失恋して気分が落ち込み、勉強も仕事も、何もやる気が起こらなければ、ゆっくりと休養することです。失恋で沈んだ気持ちを隠して頑張ろうとすると、ストレスが増えるばかりです。うつ症状が悪化する可能性があります。心身ともに休める状況にします。
傷心旅行は効果がある
失恋して家に引き籠っているのは、休養にはなりません。温泉に入って心身ともにゆったりしたり、おいしい料理を食べたりすると、気分転換になります。腹を割って話せる友達2~3人で旅行し、夜はグチを聞いてもらったり、相手の悪口を言い合ったりすると、気分が晴れます。
③セロトニンの分泌を促す
脳内物質のセロトニンが不足・欠乏していると、うつ症状が生じます。セロトニンの分泌を促して、気分を明るくし、心の平静を回復するようにします。
朝陽を浴びて運動したり、良質の睡眠を十分に取ったり、規則正しい生活をしたりすると、セロトニンの分泌が促進されます。
セロトニンの増加には、食事療法も有効です。3度の食事を規則正しく食べ、必須アミノ酸を豊富に含む肉・魚・乳製品など動物性タンパク質や、納豆や豆腐など大豆食品で植物性タンパク質を摂るようにします。
荒木式断糖食
セロトニンの分泌促進とは関係ありませんが、うつに有効な食事療法としては、「荒木式断糖食」があります。糖質の摂取をできるだけ抑える方法です。これを行う場合は、医師とよく相談する必要があります。
[うつになる前に]
失恋したら、うつに陥る前に対処するようにします。それは、前述の[自分でできるうつ対策]とも重なります。しかし、うつ症状になってしまったら、自分だけでは克服できません。
うつにならないためには、失恋の事実を受け入れた上で、失恋によるストレスをできるだけ発散するようにし、早めに生活を立て直します。
①泣きたいだけ泣く
とにかく泣きたいだけ泣きます。泣いて、相手の悪口を言いまくります。
一晩程度なら、やけ酒・やけ食いもストレス発散の効果があります。
②生活を恋愛以前に戻す
恋愛している間は、どうしても恋人中心の生活になります。失恋したら、生活を恋愛以前の状態に戻し、趣味など自分の好きなことをするようにします。自分中心の生活を取り戻します。
友人達との付き合いや職場の飲み会に、積極的に参加します。合コンやお見合パーティーなど出会いの場にも出かけます。新しい出会いがなくても、気持ちをふっきる助けになります。
ただし、心の弱みに付け込む相手には用心する必要があります。
[うつ病の治療]
失恋でうつ病になる人は決して珍しくありません。「失恋くらいで精神科へ行くなんて、医者に笑われる」などと考えて、重症のうつ病になってしまうことが多いものです。うつ病は早期発見早期治療が何より大事です。軽症でもうつ病の治療は長くかかります。こじらせてしまうと、うつ病と一生付き合うことになります。
うつ病の治療法は、①心と身体の休養 ②薬物療法 ③精神療法 の3つです。
①心と体の休養
うつ病は、頑張りすぎた結果、心身ともに疲れ果てた状態です。発症のきっかけが失恋であっても、心身ともに十分な休養が必要です。
精神的ストレス・身体的ストレスをできるだけ解消できるように、医師は生活する環境を整える指導をします。
家族や周囲の人は温かい目で見守る
家族や周囲の人たちは、失恋うつの患者さんに、「失恋くらいで、いつまでもクヨクヨするな」とか「さっさと次の恋愛相手を見つければ、うつ状態なんか治ってしまう」などと言うのは厳禁です。精神科医のアドバイスに従い、ゆっくり休ませるようにします。
②薬物療法
精神疾患の薬物療法を嫌う人が少なくありませんが、医師が適正に行う投薬は効果があります。ことに神経伝達物質が不足したり、ホルモンバランスが崩れていたりする場合は、薬物で補充する必要があります。
セロトニンが不足・欠乏している時は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬を投与して、脳内のセロトニンの量を増やすようにします。副作用が少ない薬剤で、抗うつ薬として使用されます。セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬を投与することもあります。
③精神療法(心理療法)
物事の見方や思考を適正な方向に変えていきます。認知療法・対人関係療法・カウンセリング・リラクゼーションなどがあります。薬物や物理的刺激などは使いません。
認知療法・認知行動療法は、人の思考や物の見方、つまり認知に働きかけて、気持ちを楽にしたり、適正な行動を取ったりできるようにします。
心理カウンセラーと話すだけでなく、患者さん同士で失恋の体験を話し合うこともあります。自分の体験や心理、状況を話にまとめ、言葉にすることが治療になります。コミュニケーション技法も向上します。
対人関係療法は、特に重要な他者との関係を変化させ、自尊心を高めます。回数限定の短期精神療法ですが、施療後も治療効果が持続します。
[失恋うつは時間が治す]
失恋によるうつは、容易に克服できるものではありませんが、時間が解決してくれます。失恋の悲しみや心の痛手は、時が癒してくれます。
うつ病になってしまうと、失恋ストレスが解消しても治りませんが、適切なうつ病治療を行えば、必ず回復できます。
うつの時は冷静な判断ができない
ただし、うつの時は、冷静な判断ができる状態ではありません。「失恋の治療薬は、次の恋愛」などと言われて、新しい恋人をつくると、破局に至るケースが多いようです。新たな失恋ストレスが、うつを再発させたり、悪化させたりすることがあります。
まとめ 失恋でうつになることは、珍しくない
現代は、精神的ストレスをはじめ、いろいろなストレスが溢れています。仕事や勉強などで頑張りすぎて、心身ともに過労になりやすい状況です。いろいろなストレスが積み重なっているところへ、失恋という精神的ショックが加われば、うつを発症しやすくなります。
失恋すれば、だれでも気分が落ち込み、生きる気力を失います。たいていは1週間から1ヶ月もすれば、気持ちを取り直して、前向きに生きようとします。しかし、気分が落ち込み続け、うつに陥り、うつ病に発展してしまうことは、決して珍しくありません。
失恋して1ヶ月以上経つのに、気分が落ち込んだまま、何事にもやる気が起こらず、生活に支障が出るようならば、うつ病の可能性があります。精神科の医師や心理カウンセラーなど専門家に相談して治療を受ける必要があります。
専門家の治療を受けるとともに、自分でも生活環境を改善して、心と身体をゆっくり休ませ、セロトニンの分泌を促します。
失恋のうつはだれにでも起こります。早期に気がついて治療すれば、重症化しないで、早めに回復できます。
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