胎便吸引症候群という病気を聞いた事はあるでしょうか?まだ妊娠した事がないという方には聞き慣れない言葉かもしれません。
この病気は、妊娠したらどんな赤ちゃんやお母さんにも起こりうる病気です。是非、妊娠出産した際に、この病名を聞いて不安にならないよう、今のうちにこの記事を読み、予習しておきましょう!
この記事の目次
胎便吸引症候群とは?
一番最初にも書いたように、この胎便吸引症候群という病名は聞き慣れない方が多いのではないでしょうか。○○症候群という病名である事から、重病なのでは?と思う方もいるかもしれません。
今回、そもそも胎便って何?というところからはじまり、胎便吸引症候群はどんな病気であるのか、治療が出来るのか、ご説明します。
胎便とはなにか?
胎便という単語自体、妊娠出産経験がないと聞き慣れない単語ですね。
この単語の意味をご説明します。胎便とは、胎児が産まれる以前に赤ちゃんの腸内で作られる、濃い緑色から黒色をした無菌性の便のことです。この色に関してですが、胆汁や腸液が混ざったものであるので、色は問題ありません。この胎便は通常、胎児が出生した後、目安12時間から24時間で排泄します。かかっても数日で、大抵の赤ちゃんは全ての胎便を排出します。
しかし、胎便が数日中に排泄されない事によって、新生児黄疸や、今回の胎便吸引症候群を引き起こしてしまう恐れがあります。
どんな病気なのか?
胎便吸引症候群とは、赤ちゃん或いは胎児が母体から出生する以前、或いは出生時と出生後に肺や気管支に胎便を吸い込んでしまう事により起こる呼吸障害のことを指します。
胎内にいる時は羊水によって酸素を補給している赤ちゃんも、出生後は自分の肺や気管支を使って呼吸をします。しかし、この胎便吸引症候群で出生してしまった赤ちゃんは、肺呼吸をするのに必要な肺胞や気道に胎便が詰まってしまっています。この事により、自らの力で酸素を吸引する事が出来ず、呼吸困難状態で産まれてきます。
これは赤ちゃんの抵抗力が弱ってしまい、様々な感染症などの病気にかかりやすくなっている事を意味します。実際に、抵抗力等が弱まってしまっているため、新生児遷延性肺高血圧症など、様々な病気を続発する事が多いです。どんな病気にかかりやすいか等は後述を参照ください。
胎便吸引症候群は治るの?
軽症の際は適切な治療法を施せば生存しますが、重症であったり、持続性肺高血圧症という病気を続発した場合は死んでしまう可能性もあります。
とはいえ、一般的には重症の胎便吸引症候群で出生してくる赤ちゃんは少なく、1年に1回見るか見ないか位の稀な病状です。基本的には軽度の胎便吸引症候群で産まれてくる赤ちゃんが多いです。
しかし、この状態で出生してしまった赤ちゃんは皆、酸素が不足している為、酸素を即座に補給する事が求められます。赤ちゃんによる自然呼吸が困難な際は、人工呼吸器を使う事もあるそうです。
胎便吸引症候群、どんな症状があるの?
さて、胎便吸引症候群とは、赤ちゃんが胎便を吸い込んでしまう事により起こる呼吸障害を起こしてしまう病気であり、適切な治療を施せば生存可能性が高いということはお分かりいただけたと思います。
では次に、この病気はどんな症状を持つのか、主に見受けられる症状3点をご説明します。
呼吸困難
この胎便吸引症候群を発症してしまった赤ちゃんの特徴として、上手く肺呼吸ができない為に呼吸スピードが速くなり、息を吐く際にうめき声をあげるという呼吸困難の症状を見せます。胎便を排出した後の、お母さんの胎内にある羊水が汚れてしまっているというのは想像できるでしょうか。
この汚れた羊水を吸い込むことにより、肺に繋がる気道や気管支に胎便が詰まってしまったり、気管支の奥に存在する肺胞が詰まってしまう事が起こります。
胸部のへこみ
この胎便吸引症候群が基になり起きた呼吸困難により、呼吸をする際に肺が潰れた状態になってしまう事があります。これは陥没呼吸という名前で扱われていて、肺の機能の低下により身体に酸素を取り込む事が難しい状態となってしまいます。
また、これは肺が潰れた状態である事から、気道がふさがっていて空気が通れなくなります。そのため、呼吸しようとしても胸が広がらず、肺の中でうまく空気が循環しません。
チアノーゼ
また、外見的特徴として、呼吸困難によるチアノーゼを起こすこともあります。チアノーゼとは、呼吸が上手くできない事により、酸素を上手く取り入れる事が出来ず、血中酸素濃度が下がってしまう事です。
これにより、新生児の皮膚が青みがかった色で出産されたり、肺血圧だけでなく、全体の血圧が低下してしまう事が見受けられます。これは人工呼吸器を使用し、酸素を与える事によって戻る事がほとんどです。
胎便吸引症候が、起こってしまう原因とは?
さて、この胎便吸引症候群は一体どのような事が原因で起きてしまうのでしょうか。今回では主に原因として挙げられている2つをご説明します。
1つめは胎児が受けてしまう生理的ストレス、2つ目は過期出産といわれるものです。
胎児が受ける生理的ストレス
この病気の根本的原因は、胎児がストレスにあてられてしまう事にあります。
このストレスとは、血中酸素濃度が不足している、臍帯圧迫、胎盤機能不全、感染症等が挙げられます。このような生理的ストレスを胎児が受ける事により、胎児が分娩前にもかかわらず、胎便を羊水内に排泄してしまう事があります。
このような事により、胎便が胎内に排泄されてしまい、赤ちゃんがその胎便を呼吸する事により吸引してしまう事がおきます。
胎便吸引症候群を引き起こす原因②過期出産
胎便吸引症候群を起こしやすくしてしまうものの1つとして、過期出産があります。過期出産とは、子宮内で42週以上経過してからの出産のとこで、この過期出産で産まれた赤ちゃんの事を過産児といいます。
通常、出産に至るまでは42週以内の出産であれば問題ありません。しかし、42週以上を経過すると様々な問題が生じてしまいます。
過期出産は何が問題なの?
出産予定日、或いは約42週以上を経過すると、胎盤の機能が低下し始めます。
この事は、まだ出生されていない、胎内にいる赤ちゃんへの栄養や酸素の供給が少なくなってしまうという事を意味します。この事により、通常の出産より母子ともに、出産が困難となってしまい、分娩の際には自然分娩から帝王切開を切り替える場合もあります。
また、酸素不足により、胎児が仮死状態になってしまい、胎内に胎便を排出してしまい羊水混濁を起こす事も少なくありません。これにより、赤ちゃん側からすると、苦痛が引き金により反射的に深く息を吸い込むという事が発生しやすくなります。
そうすると、胎児は胎便が混じった羊水を肺に吸い込んでしまい、胎便吸引症候群を起こしてしまうという可能性が大きくなってしまいます。
胎便吸引症候群によって、他の病気が引き起こされる事はあるの?
胎便吸引症候群によって、胎児が上手く成長しない、胎児機能不全という状態が起きてしまいます。これは様々な病気は誘発してしまうという事が起こり得ます。
一体どんな病気が引き起こされて可能性があるのか。何故発症してしまうのか、3つの病気を使ってご説明します。
低酸素症・無気肺
通常の新生児は呼吸開始後に成人と同じような呼吸方法に切り替わります。この事により、肺へ血液が流れやすくなります。しかし、今回では胎便吸引症候群を原因として、気管支が閉鎖してしまうことにより、無気肺や低酸素症などが発症してしまいます。
これによって肺動脈が上手く機能しなくなってしまい、通常の胎便吸引症候群より強いチアノーゼを起こしたりすることが多いです。
呼吸窮迫症候群
凄く重病そうな名前ですね。これは赤ちゃんの肺機能が未熟な為に起こる、呼吸器疾患の1つです。症状としては、呼吸困難、陥没呼吸、低酸素血症であるチアノーゼ等が挙げられます。
肺胞を覆っている、サーファクタントという物質の事をご存知でしょうか。このサーファクタントという物質が不足していることにより、赤ちゃんの肺胞が異常を起こす事により生じる病気です。本来、胎児の頃に正常な状態で育てば、このサーファクタントは産生されます。
しかし、胎便が気管支を通じ、肺に混入してしまう事によりサーファクタントが上手く生成されない事が起きます。この事により、呼吸窮迫症候群は発生してしまいます。
科学性肺炎
胎便を吸引してしまう事により、本来排出されるべき物質が、体の中に混入してしまいます。
胎便が吸引されることにより、赤ちゃんの体内の様々な組織を刺激してしまいます。このことに肺炎等の感染症にかかってしまう確率は各段と上昇します。この肺炎については、抗生剤を赤ちゃんに投与する事により治療されます。
胎便吸引症候群、一体どうやって診断されるの?
一体胎便吸引症候群はどのような点を持って診断されるのでしょうか。この診断基準は3点のみですので、全て簡単にご説明します!
羊水混濁の存在を確認
赤ちゃんが生まれてくる時、一緒に羊水が出てきます。本来であれば、この羊水は透明、或いは白っぽい色が確認されます。
ですが、今回の胎便吸引性症候群の原因となる胎便により、羊水が黄色、或いは緑がかった色が確認される事があります。この状態を目視で確認できた際、羊水混濁と判断されます。
出生時における気管内に胎便を確認
大人でも、喉の気管支に食べ物が詰まってしまったりすることはありますね。それは何処から起こるでしょうか。答えとして、口に食べ物を入れる事から起こります。或いは鼻に異物が詰まってしまう事によっても気管が上手く動かないという事があります。
今回の胎便吸引症候群も同様に、口や鼻に胎便が詰まってしまう事により起こります。出産の際に、赤ちゃんを一番最初に目視するのは医療スタッフです。お母さんがみたらわからないかもしれない、色のついた胎便のつまりを医師等が確認する事によって機気管に胎便が詰まっている事が確認されます。
呼吸障害を伴う胸部X線写真による異常陰影の存在
赤ちゃんの気管支に胎便が詰まってしまう事により、気管支につながっている肺は無気肺という状態になります。このような状態を胸部X線写真で撮影すると、ある点が普通の写真とは異なります。
ある点とは、写真の胸元付近に白いモヤがかかっている事です。本来、健康な赤ちゃんのX線写真では胸元に白いモヤが写る事もなく、骨以外の白い部分はほぼ写りません。しかし、胎便吸引症候群の赤ちゃんの写真では、胸元、つまり肺の部分には白いモヤが写真に現れます。
白いモヤは一体なんなの?
白いモヤの正体として、胎便が挙げられます。気管から入ってしまった胎便が、肺や肺胞自体に入ってしまう事は想像できるのではないでしょうか。この胎便は化学反応を起こす事により、石灰のような白い塊と化します。
この事によって、X線写真には、胎便吸引症候群の際には肺付近に白いモヤのようなものが確認されます。ですので、赤ちゃんのX線写真を撮影した際に白いモヤが写っていたら、石灰化した胎便であると考えたらよいのではないでしょうか。
羊水混濁は防ぐことができるの?
まず、需要な事として「羊水混濁を確認する事は非常に困難である」という点が挙がります。破水をして、羊水を目視できる状態になれば別ですが、妊婦健診のエコー検査をするだけでは、羊水混濁を確認する事が出来ません。
ですが、羊水混濁を予防する事自体は可能です。羊水混濁が起こる理由として、赤ちゃんが低酸素状態になってしまう、或いは生理的ストレスを受けて胎便を排泄してしまう事が挙げられます。低酸素状態になる事は胎盤機能に基づきます。妊婦健診では、胎盤機能の状態を確認してもらう事は可能ですので、是非担当医には確認しておきましょう。
胎便吸引症候群、どうやって治療をしてもらえるの?
出産時に、胎便によって混濁した羊水と共に娩出された、胎便吸引症候群である全ての赤ちゃんに対して、緊急治療が施されます。今回では、そんな緊急治療と、容体が安定した後の治療について説明します。
胎便吸引措置
胎便吸引症候群によって呼吸窮迫が起きている理由は、羊水混濁が起き、気管支や肺等に胎便が詰まってしまっているからですよね。それならまずすべき事は、詰まってしまっている胎便を除去する事が優先です。
これを早急に行わないと、二次的な病気が続発してしまいます。呼吸緊迫症状が続く事によって、遷延性肺高血圧症や肺炎、ないしは脳の発達に異常をきたす可能性もあります。
気管内洗浄
さて、①で詰まってしまった胎便は除去が出来ました。ただ、これで終わりではありません。泥が詰まってしまったパイプを想像してみてください。詰まった泥を取り除いても、まだとりきれなかったものがパイプの中にへばりついていますね。
実は胎便は粘着性が強く、肺胞や気管支にへばりついている為、ちゃんと洗浄をしないと、後々に新しい病気を続発させてしまいます。ですので、吸引が終わったら温かい食塩水等で積極的気管内洗浄を行います。
酸素投与
さて、①と②により気管に詰まってしまった胎便と、こびり付いた胎便の処理は完了しました。残りは、赤ちゃん自身が、自らの肺の機能により呼吸できるようにする事です。
そのためにはまず、今まで取り入れられなかった酸素を投与する事が必要となります。高い濃度を持つ酸素で満たされた保育器に赤ちゃんを搬入する事で、多くは酸素投与を行います。軽症であれば、1日も酸素吸入を行うと自発的な呼吸を開始するため、保育機を出て母親と同じ部屋で生活する事も可能となります。
まとめ
さて、胎便吸引症候群について大体わかっていただけたのではないかと思います。今回の記事をまとめてみましょう。
胎便吸引症候群とは、胎内にいる赤ちゃんが口や鼻を通して胎便といわれる排泄物を吸い込んでしまい、肺や気管支に支障を来す呼吸障害の事をいいます。主な症状としては、呼吸困難やチアノーゼが挙げられます。この病気は、適切な治療を施せば助かりますが、重症であったり、他の病気を続発してしまうと、長期的な治療が必要になります。
この病気は赤ちゃんが生理的ストレスを感じる事、過期出産等により起こってしまいます。また、診断には羊水が濁っているか、気管内に胎便を確認できるか、X線写真を撮った際に白いモヤが写るか等により診断されます。
治療法としては、胎便吸引症装置を使用する事により、大まかな胎便を取り除き、気管を洗浄した後に酸素を投与する事が挙げられます。
もし出産した赤ちゃんがこの病気にかかってしまっても、冷静に対応が出来るようにこの病気について、把握しておき、赤ちゃんにとって良い治療を行えるように心掛けておきましょう!
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