揺さぶられ症候群というのは、生後間もない赤ちゃんに強い揺れを与えてしまうことで様々な症状や外傷が起こってしまうという状況です。
生まれた赤ちゃんの可愛さについつい抱っこをしながら揺らしてみたり、泣いている赤ちゃんをあやそうとして揺さぶってみたり、お母さんやお父さんと赤ちゃんとの接し方の中には揺さぶってしまう状況が意外と多く出てきてしまうと思います。
ではこの揺さぶられ症候群とは具体的にどういうものなのか、また、どの程度の揺さぶりがダメなのかを一緒に考えてゆきましょう。
揺さぶられ症候群とは?
揺さぶられ症候群とは病気などの名称ではなく、強い力で揺さぶることによって引き起こされてしまう様々な症状の総称です。
例えば椎間関節炎やスプリングバック、仙腸関節炎、筋・筋膜裂傷という症状があるとします。これらを全てひっくるめて急性腰痛(ぎっくり腰)というように表現しますが、これと同じで、揺さぶられ症候群という大きなくくりの中に、様々な症状や外傷が存在します。
その中には思いもよらない症状や、考えもしなかったタイミングで発症してしまう場合もありますので、症状を出さないようにする為にはどうすることが必要なのか、実際に揺さぶられ症候群と思われる症状が出てしまった場合にはどのように対処して行かなければならないのか、詳しく説明してゆきます。
揺さぶられ症候群になる原因は?
赤ちゃんは大人とは違い、身体の発育がきちんと決まっておらず、それは身体の機能ももちろんそうですが、骨格や筋肉の発育もできていません。
また、大人と比較すると身体の大きさと頭部の大きさとの割合が違い、身体に対して頭部が大きく、その頭部を支えている首の筋肉や骨格も定まっていない為、とても不安定なバランスとなっております。
その為、大人が頭部を揺らした時の数倍〜数十倍の衝撃が脳内に加わると考えて下さい。
- 「赤ちゃんの頭部の頭蓋骨はきちんと発達していない為、揺れをうまく吸収できない」
- 「頭部を支える首の筋肉が発達していない為に揺れに対して頭部を固定できない」
- 「首の骨格が不安定な為に、揺れの遠心力が頭頂部に多くかかってしまう」
- 「頭蓋骨内部のクッション性が発達していない為に脳に対する衝撃が大きい」
主には赤ちゃんの身体の発育が不十分な為に起こってしまうことが大部分で、特に頭部を支える筋肉や骨格が不安定な為に脳内にかかる衝撃が強く、それに関連した様々な症状が起こりやすくなってしまいます。
特に生後〜6ヶ月くらいまでの赤ちゃんは発症する(または将来的に発症してしまう)可能性が高くなります。
揺さぶられ症候群によって起こる症状
揺さぶることによって起こってしまう代表的な症状が発生する部位は頭に関連する症状がもっとも多く、また、揺さぶりによって起こる脳に関する症状全般のことを言います。
人間の脳はなにも、赤ちゃんだけが繊細にできているのではなく、大人もかなりデリケートにできてはいますが、最初の方でも触れたように、その脳を取り巻いている身体の環境が赤ちゃんと大人とでは大きく異なっています。
その為、大人では何の影響もないような揺れ方でも、赤ちゃんにとっては時には重篤な症状を招いてしまう危険性もあります。
- 「脳内出血」
- 「クモ膜下出血」
- 「眼底出血」
- 「脳挫傷」
- 「硬膜外血腫」
- 「その他血腫や水による脳内血管の圧迫」
脳症状が起こっている場合の赤ちゃんの兆候
それでは脳内症状が発生している時に見られやすい赤ちゃんに現れる前兆症状のお話しをしてゆきたいと思います。
ここで説明する前兆は、他の症状によっても起こることがあり、下記のような前兆が現れているからといって必ずしも脳内出血や脳挫傷などによる症状とは限りませんが、複数の前兆が重複していたり、明らかにおかしい状態であれば速やかに脳外科での受診を行って下さい。
その際、ご自宅の車で病院へ行くのではなく、必ず救急車を手配して行くようにして下さい。その後の診察などが速やかに行える為です。
- 「目の焦点が合っていない」
- 「母乳やミルクなどを全く受け付けない」
- 「顔色が明らかにおかしい」
- 「泣き止まない」
- 「ひきつけを起こしている」
- 「全く笑わない(無表情に近い)」
- 「耳の近くで物音が鳴っても反応がない」
このように、例えば泣き止まないという状況はなにも脳障害だけで起こる特定症状ではない為、複数の兆候がいくつも起こっていたらばすぐに病院へ電話などを入れて医師の指示に従うようにしましょう。
脳障害以外に起こりうる症状として
揺さぶりによって起こってしまう症状の中には脳障害以外のものも起こる可能性が十分に考えられます。ただしこれは揺さぶり症候群としての分類ではなく、運動器障害や呼吸器障害となるケースに由来しており、それぞれ別な症状としての診断名称がありますので、揺さぶり症候群とは少し線引きをした上で、揺さぶってしまうことで起こるその他の症状として覚えておくと良いでしょう。
- 「揺さぶりによる鎖骨、肩鎖関節などの脱臼」
- 「後頭部後方移動による脊髄損傷による身体付随」
- 「むち打ちによる頭痛やめまい、吐き気」
- 「頸部の呼吸器気道圧迫による窒息」
- 「耳の障害による歩行障害」
症状に対する対策よりも予防が大切
ここで考えるべき対策としては、症状が出てしまってから考えることよりも重要となるのが、そのようにならないように日頃から気をつけるべきことだと思います。ようはどの程度の揺さぶりを行った時にそのような症状になる可能性があるのか、
また、やってはいけないこととはどのようなことなのか、それを考えることが必要です。一般的には、常識的な範囲内の揺さぶりであれば問題はないとされておりますが、赤ちゃんに日々接する上で重要なポイントを考えてゆきましょう。
- 「抱っこをする時にはきちんと手で後頭部や頸部を支える」
- 「あやす際に、前後へ動かすような揺さぶりの動作は行わない」
- 「抱っこをして急に上げたり下ろしたりしない」
- 「育児や家庭のことなどに対してイライラしないで常に気持ちに余裕を持つ」
- 「赤ちゃんを抱いて歩行している時には急な動作をさける」
まとめ
揺さぶられ症候群は、先天性や後天性の病気、自分で動作している際の外傷などとは大きく異なり、周囲(親)の方からの外的な要因で生まれてしまうとても残念な症状です。なぜ残念なのかというと、故意に揺さぶるつもりはなくても、赤ちゃんが喜んでしまう為についつい「高い高い」や揺さぶる動作をしてしまいがちです。
しかしそれによって重大な障害を我が子に与えてしまう可能性が生じてしまうからです。揺さぶられ症候群の一番大きな対処法は、「赤ちゃんに対して思いやりと小さな心がけを持って接する」ということだけなのです。
それだけで防ぐことができる簡単な症状であるということを忘れないで生活を送るように心がけましょう。