門脈とは何なのか、これにより何が生じるのか、どういう症状が挙げられるのかなど、日々耳にすることのないこの「門脈圧亢進症」という病気に関して今回は触れていきたいと思います。
恐らく病状そのものというより、ある特定のことが上昇する病気の総称を説明することがこの病気の根本になると思いますので、噛み砕いてご説明したいと思います。
門脈圧亢進症とは何か?
では、まずこの門脈圧亢進症が何なのか、というところから触れたいと思います。
門脈の圧が上昇する症状の総称
門脈圧亢進症とは、門脈の圧が上昇する病気の総称のことをまとめて門脈圧亢進症と言います。門脈とは、消化管から肝臓へかけて繋がっている血管のことです。
血液を大量に運ぶ重要な3本の血管の1本で、大静脈の1本でもあります。この血管なのですが、腸管から吸収される栄養や毒素などを門脈系の血管を通って下大静脈から全身へと送られるシステム構造となっています。体内では重要な役割を果たしている血管の一つで、この血管が詰まることにより門脈の圧が上がり様々な症状を引き起こすことを門脈圧亢進症と総称して言います。
主に挙げられる詰まりの部分は肝臓の手前、肝臓の中腹、肝臓の後部に当たります。この肝臓部分の血管が詰まることによって門脈の圧が上昇するということなのです。
肝臓の血管には重要なものが3つほど通っています。個別に言うと、肝臓に血液を送る、つまり肝臓に血を入れる血管である肝動脈というものと、先ほど挙げた、消化管から栄養を吸収したものを肝臓へと運ぶ役目を果たす門脈というものと、最後に、肝臓から血液を送り出す役目を果たす肝静脈というものの3つがあります。この中でも、門脈という血管は肝臓に運び込まれた血液の7割ほどが流れる重要な血管なのです。
つまり肝臓内、肝機能を正常に保つにあたってこの3つが正常に働かないと肝機能に異常を来たすということになります。肝機能はこの門脈圧亢進症とは直接的には関係ありませんが、肝臓から血液を運用するにあたってとても重要な働きを及ぼすということはお分かりいただけると思います。
門脈系統という言葉も使われます。門脈系統とは主に胃や腸管、膵臓や脾臓などの静脈血液が門脈の本幹(細かく分かれる前の太い門脈血管)に集まって肝臓内部で処理されたものを肝静脈に集められる血液経路のことを指しています。
この門脈が詰まり圧が上昇することによって伴う症状を挙げると、食道や胃静脈瘤、脾腫、または脾臓機能更新症や腹水などや胸水、肝性脳症などの病気が発症します。
門脈圧亢進症の原因とは?
門脈圧亢進症の原因は幾つかあげることができます。
肝硬変や特発性門脈圧亢進症、肝外門脈閉塞症やバッドキアリ症候群、日本住血吸虫症などが挙げられます。原因はこれだけ存在しますが、このほとんどが稀な症状であり、この中でも圧倒的な原因として挙げられるものが肝硬変です。門脈圧亢進症を発症した患者の約8割以上をこの肝硬変が原因であるものが占めています。なので、俗には肝硬変による病気とも言われているほどです。
肝硬変が最も多いとは言っても、皆さんは肝硬変についてどれだけの知識をお持ちでしょうか?恐らく名前は聞いたことがる人がほとんどでしょうが、実際肝硬変がどのような病気であるかは知らない人がほとんどでしょう。なので肝硬変について少し触れたいと思います。
肝硬変は一言で言うと肝臓が硬くなる状態、変化することを言います。発症原因はアルコールの多量摂取や肝炎ウイルすの感染などが挙げられます。アルコール分解が体質的に低い人にも言えることで、アルコールによる肝硬変が今現在最も多いと言われています。
アルコール多量摂取による肝臓細胞の著しい破壊によって、通常なら再生力が高い肝臓でありますが、その再生に追いつかず、耐えきれなくなり、傷ついた部分を修復する際にできると言われている繊維やたんぱく質が増加し、肝臓全体に拡大し、ゴツゴツした臓器になる状態のことを肝硬変と言います。文字どおりに肝臓が硬くゴツゴツとしたものに変化することを肝硬変と言われています。その見た目は、目で見てもわかるほどに黒くゴツゴツしたものになり、収縮したように大きさも小さいものになります。
これがなぜ門脈圧亢進症に関係するのか、と言いますと、この肝硬変になることによって肝臓内部の血液の循環、つまり血液を正常に流入したり流出したりする機能から、肝臓内部で様々な臓器から集められた門脈血管の血液がうまく静脈に行き渡らなくなり詰まるったりすることよって門脈の圧が上昇するということになります。簡単に言うとつまりの原因で門脈の血圧が著しく上昇するということですね。
門脈圧亢進症の症状について
では、門脈圧亢進症によって生じる主な症状と、その詳細についてご説明します。
主な症状とは?
門脈圧亢進症によって起こる主な症状は上記でも挙げましたが再度記載します。これは門脈圧亢進症の状態などが長期に渡って続いた場合に起こる病気となります。
主に挙げられるのは、食道静脈瘤や胃静脈瘤、脾腫、または脾臓機能亢進症、腹水や胸水、肝性脳症などです。どれも恐ろしい病気なので一つ一つ説明してきましょう。
食道静脈瘤
食道静脈瘤を来す主な病気は門脈圧亢進症ですが、肝硬変や慢性肝炎などにも直結しています。
食道静脈瘤とは、食道にある粘膜の静脈が太くなり、最終的に破裂する病気のことを言います。破裂することにより、吐血や下血などの症状がみられます。これは門脈圧亢進症もそうですが肝硬変の主な死亡例の一つで、早急な治療が必要となる症状です。
これの主な原因は肝臓で血液がうまく循環しない、もしくは詰まること、つまり門脈圧亢進症によりうまく血液が循環しないためにあります。うまく循環しない血液は別の場所から心臓へと戻ろうとするのです。その際に通るのが食道の粘膜下層に通る静脈で、それがだんだんと太くなり、破裂するという経緯になります。食道とは毎日食物が通過する部分でもありますので、静脈瘤が大きくなればなるほど破裂しやすくなるというわけです。
胃静脈瘤
胃静脈瘤とは、実は食道静脈瘤とほぼ同じ症状や経緯で起こるものです。
主にこれも肝臓でうまく血液が通らなくなり詰まったことによって血液が逆流し、心臓へと戻ろうとする際に胃の粘膜下層にある静脈を通ることによってできる静脈瘤で、胃もまた毎日頻繁に働く部分であり、静脈瘤が大きくなればなるほど破裂する可能性が高くなるということです。
食道静脈瘤にも言えることですが、この病気は破裂する前に処置をしないと大変危険な病気です。一度破裂すると死亡する可能性がぐんと上がります。内視鏡検査などで発見ができるものなので日頃の検査などが重要となってきます。
脾腫・脾機能亢進症
門脈圧亢進症によりこの症状を引き起こすのはあまりありませんが、それでも主な症状であるのは間違いありませんのでご説明させて頂きます。
脾腫の原因となる病状は数々存在していて、両手両足の指の数では足りないほどです。その中に門脈の圧迫によるものがあります。しかし主な原因は感染症によるものが大きく血管の圧によるものが原因なのは少ないです。
脾腫の主な症状は、脾臓の肥大にあります。左腹部が盛り上がったようになるので触診により発見が可能となっております。その他にもX線による検査でどれだけの大きさであるのか判断が可能となっています。
脾機能亢進症とは、脾腫にも言えることですが、この病気になると血球や血小板が少なくなってしまいます。その原因は脾臓がこの血球や血小板を過剰に取り込んでしまうことにあります。これにより脾臓の肥大につながり、この血球や血小板を過剰に取り込むこと自体を脾機能亢進症と言います。これにより、悪循環が生まれ、次第に正常な赤血球までもを捉えるようになり、異常な赤血球と同じように破壊されるようになっていきます。
この悪循環が生む最終的なものは脾臓の血液循環がうまくいかず脾臓の一部が壊死し始めます。そうなる前の治療が必要です。この病気の症状は脾臓の肥大ですが、それまでに気づくこともできます。少量の食事にも関わらず満腹感を覚える、または食事をしていないのに満腹感があるなどの症状が出ます。また症状が進行した場合は触診で左腹部が肥大していることに気づくことができるほか、左腹部から左腰にかけての痛みなども症状に挙げられます。
もし症状が進みすぎていて壊死が酷い場合は一部の切除、もしくは膵臓の摘出の可能性もある重大な症状へと進行してしまいます。これも早期の発見が何よりです。
腹水・胸水
腹水とは、腹部にある腹腔という場所に体液が蓄積した状態のことを指します。腹水はお腹に水が溜まることによっていう病気というイメージで、あまり重要ではないように捉えられがちではありますが、この病気によって引き起こされる新たな病気などは大変危険なものであると言えます。溜まる量が増えるにつれてその弊害は上々に増していきます。
また、これも勘違いしがちなのですが、腹水はお腹に水が溜まるから抜けばいいと考えられる方も多いとおもいます。しかし、この体液は体にとって重要な要素も含まれているため、処置は十分注意が必要であることが言えます。
腹水は腹腔に異常な量の水が溜まるという状態を指しています。主な原因としては急性的なものよりは慢性的な病気による発症が多いというデータがあります。門脈圧亢進症も慢性的な症状の一つですのでこれに繋がるというわけですね。具体的にどうして門脈圧亢進症が腹水に繋がるかと言いますと、これは主に内臓の炎症による血管の損傷や、血管の逆流などが考えられます。門脈が詰まり、これが破裂や損傷などの状態になるとそこから滲出液が漏れ出します。その漏れ出した滲出液が腹腔内部に溜まり腹水となる、こういう経緯が挙げられます。
ただ、この病気の主な原因は癌であると言われています。急性ではなく、慢性的な癌が原因で腹水になることが多いと言われています。しかし、門脈圧亢進症もその一つであることには違いがないので気をつけて頂きたいのも事実です。門脈圧亢進症による腹水の発症率も決して低くはありません。全ては血管に関係してくるのがこのもん脈圧亢進症の特徴ですので、血管に、特に門脈の負担がかかり慢性化すると腹水になる可能性もあるということです。
続いて胸水についてです。胸水とは、胸部にある胸膜腔部分に体液が異常に溜まる状態のことを指します。これの原因については主に感染症が挙げられますが、その他にも肺血管の血栓によるものなどが挙げられます。血液の循環に関する症状は門脈圧亢進症の一つですのでここで繋がることがわかります。
症状としては主に、呼吸困難や胸痛などが挙げられます。これは呼吸時にも現れる現象でとても症状としては分かりやすいものであることが挙げあれます。その他にも咳などをした時に胸部が痛むなどの症状もこの胸水の主な発見に繋がると思われます。
検査はCTやX線検査で行われることが殆どです。これにより症状がどの程度なのか、どこまで進行しているのかがわかります。
肝性脳症
門脈圧亢進症の大きな要因の一つでもある肝性脳症ですが、この肝性脳症とは一体どんな病気なのか、というところを詳細に挙げたいと思います。
肝性脳症とは、肝臓の働き、主に血管に関する働きが悪くなることによって引き起こされる脳の障害の疾患のことを指します。
細かく言うのであれば、肝臓の主な働きに準じます。肝臓は体にとって不要なものを分解、毒を分解する役目を果たす働きがあるのですが、主にアンモニアなどの体によって有害な物質を分解ができないことによって引き起こされるとされています。アンモニアなどの有害な物質が肝臓でうまく除去、つまり分解されないと血液中に戻ります。血液中に戻り、そして全身へと広がること、これが脳へと行き渡り障害を来たす主な原因となっています。さらに、門脈圧亢進症により血管が詰まることによって逆流した血液が脳へと戻ることによって脳の機能が低下するというデータもあります。
これが肝性脳症の主な原因となっています。主な症状としては、脳機能障害やアミノ酸のバランス崩壊なども挙げられます。脳という部分は体にとってとても重要な要素となっています。すべての司令塔であり、この部分に障害を来してしまうと全身のすべての機能がうまく作用しなくなる恐れもあります。
これは重症化した場合のみですが、それでも肝性脳症とは恐ろしい病気であることがわかりますね。
門脈圧亢進症の検査方法
では、どうやって門脈圧亢進症を知るのか、それをご説明します。
検査方法の一覧
門脈圧亢進症の検査方法は以下の通りになります。
・血液検査
脾機能亢進症などを発症しているかどうかを調べます。貧血や白血球減少、血小板減少が見られるかどうかの確認や、肝性脳症の可能性を表す高アンモニア血症の症状を確認します。他にも最も多いとされている肝硬変の有無や程度を確認するために肝機能などのチェックを行います。
・腹部超音波検査
エコーによって肝臓の形態、脾腫や腹水が見られるかどうかを確認することができます。また他にも門脈を流れる血液の速度の計測や、方向などがきちんと行われているかどうかもこれで調べることが可能となっています。
・腹部CT検査
腹部のCT検査で肝臓・腹水・血管の状態や形態について具に知ることができます。他にも血行状態や血行の動態も評価が可能となっています。
・上部消化管内視鏡検査
これは食道や胃の静脈瘤を調べることができます。
・門脈造影検査
門脈系統の血管の中に直接的に造影剤を注入するという方法です。これにより門脈圧を測定することができるので慢性化しているかどうかもこれではっきりとわかります。
・肝静脈カテーテル
肝静脈と言う部分いカテーテルを入れて血液の流れを調べます。正常に機能しているのか、それとも逆流などの異常が見られるのかもこれで判断が可能となっています。
門脈圧亢進症の主な治療法について
では、門脈圧亢進症の治療法について触れていきたいと思います。
門脈圧亢進症に原因を突き止めて原因元の治療を行う
まず初めに、この門脈圧亢進症になる主な原因を調べ、そしてその原因の元を治療する方法が今の門脈圧亢進症の主な治療法となっています。つまり、それぞれの病気でそれぞれの治療を行うということです。
最初に門脈圧亢進症を回復させるためにβ遮断薬やバソプレシン、オクトレオタイドなどで門脈圧亢進症の緩和を試みます。血管が詰まっている原因を取り除く方法として現在の医療方で確立されています。
そしてそれぞれの病気の対処法に従って治療を行うのがこの病気の主な治療法です。
食道や胃の静脈瘤なら内視鏡を使い静脈瘤を凝固剤で固めます。腹水の場合は塩分の制限と、スピロノラクトンなどの利尿薬を服用、または投与する治療法です。これにより腹水を回復させます。肝性脳症の場合、アンモニアが主な原因となっているのでタンパク摂取量の制限を行い、腸管からアンモニアの吸収を抑制させるためにラクツロースを投与します。これによりアンモニアの吸収抑制と腸管の浄化、抗菌が期待できます。
脾機能亢進症の場合は、脾臓の機能亢進を抑制するということで、栄養の補給を主とする動脈の一部を塞ぎます。これにより異常な血球や血小板の吸収を抑えることが可能となっています。しかし、重症化している場合は手術により脾臓を摘出することも稀にあります。
このように、それぞれの病気を治療するというのがこの門脈圧亢進症の治療に繋がるということですね。
まとめ
では総括に入ります。
慢性化する前に治療を行う
これは肝臓の血管が大元であることは間違いないので、肝臓の血管の流れをよくする、つまり慢性化し、他の病気が発病する前に門脈の正常な働きを取り戻す必要があります。
これは早期発見が重要となっています。慢性化してしまうと上記で挙げた様々な病気の発症につながるので、その前に検査を行い治療をすることを心がけましょう。