「コレステロール」と聞いて、どんなイメージが浮かびますか?恐らく肥満や生活習慣病、心筋梗塞など、大きな病気の原因となるような悪いイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。
特にお酒や喫煙習慣のある中年以降の方は、健康診断でコレステロール値の結果を知るのはドキドキしますよね。そんな悪者扱いされているコレステロールですが、実は体に必要な大切な物質だということをご存知でしたか?
”コレステロール値が高いと危ない”ということばかり話題になりやすいのですが、大切な物質であるならば、値が低い場合にも問題はあるのかも知れませんよね。そこで今回は、コレステロールの役割、値が低い場合に気を付けなければならないことについてまとめてみました。
コレステロールの種類と役割
まずはコレステロールについて知っておきましょう。
コレステロールとは
冒頭に記載した通り、コレステロールは私たちにとってとても重要な物質です。その理由は、コレステロールは私たちの体を成り立たせている無数の細胞を包む膜(細胞膜)を作る原料となっているからなのです。
また、タンパク質や糖質の代謝に必要な副腎皮質ホルモン、脂肪の消化・吸収を助ける胆汁酸の原料にもなっています。
そしてこのコレステロールには、善玉コレステロールと悪玉コレステロールの2種類があることはご存知かと思います。この2つをあわせて総コレステロールと呼びます。
それぞれ役割は全く違うものになりますので、ご紹介していきます。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)
一般的に善玉コレステロールと呼ばれているコレステロールのことを「HDLコレステロール」と言います。
HDLコレステロールは、体中に必要なコレステロールを運んだあと、余ったコレステロールを肝臓に運んでくれる役割があります。
肝臓は体内で作られる60~70%のコレステロールを作っている場所です。つまりHDLコレステロールは、コレステロールの余剰分を回収し、製造元に戻してくれる働きがあるのです。その為「善玉」と呼ばれているようです。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
コレステロールの悪いイメージの原因となっていると思われるのが「LDLコレステロール」いわゆる悪玉コレステロールと呼ばれるものです。
このLDLコレステロールも、HDLコレステロールと同様に、体内に必要なコレステロールを運ぶ役割があります。
しかしHDLコレステロールと違い、LDLコレステロールは余分なコレステロールを回収してはくれません。その為増えすぎた場合、コレステロールは脂質ですので血液がドロドロになっていきます。そして放置することで動脈硬化を引き起こしてしまうのです。
どちらが高くても要注意
悪玉であるLDLコレステロール値が高いと問題があることは分かりましたが、善玉のHDLコレステロール値なら高くても良いのではないか、と思うかもしれません。
実際、HDLコレステロール値は多少高くても問題はありません。ですが、高過ぎる場合は要注意。100mg/dlを超えると「高HDL血症」という状態になります。
高HDL血症の主な原因はお酒の飲み過ぎが考えられます。何か症状がある訳ではないのですが、動脈硬化、狭心症、心筋梗塞を引き起こす可能性が高くなると言われています。
他にも遺伝的要素があることも分かっており、お酒を飲まなくても健康診断でのチェックが必要です。善玉だからといって高くても良い訳ではないことを覚えておきましょう。
コレステロール値が低いと問題なのか
コレステロールは必要な物質ですが、増え過ぎると問題になるということが分かりました。それでは値が低過ぎる場合はどうなのでしょうか。
HDLコレステロール値が低い場合
既に挙げた通り、HDLコレステロールは、余分なコレステロールを回収する役割があります。その為HDLコレステロール値が低いと体内のコレステロールが増えすぎ、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞を引き起こす可能性が高くなります。
つまり、HDLコレステロール値は高過ぎても低過ぎても、冠動脈疾患を起こす可能性がある訳です。
また、HDLコレステロール値が低いことで総コレステロール値も低くなってしまうと、コレステロールの役割(細胞膜、副腎皮質ホルモン、胆汁酸の原料)が果たせなくなってしまい、
- 神経系機能が低下し運動障害が起こる
- 血管がもろくなり貧血を起こしやすくなる
- 将来的に記憶力の低下、アルツハイマー病のリスクを高める可能性
といったことが発生しやすくなります。
低くなる原因としては、喫煙や高脂質の食生活、運動不足、肥満などが考えられます。
LDLコレステロール値が低い場合
悪玉コレステロールであるLDLコレステロール値が低いことは喜ばしいことだと思います。しかし低過ぎる場合は、何らかの問題が潜んでいる可能性があるのです。
主に考えられる問題は、
- 甲状腺疾患
- 肝疾患
- 低栄養
の3つです。
甲状腺疾患となると代謝が異常に高くなる為、脂肪もどんどん代謝されLDLコレステロール値が低下します。この場合、体重が急激に減少しあり、動悸や震えなどの症状が現れます。
また、コレステロールを合成する肝臓に疾患(肝炎、肝硬変等)がある場合も、LDLコレステロール値が低下します。
そして肉や卵等の動物性脂質、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE等の摂取が極端に不足している場合も低下します。
コレステロール値の改善方法
このように、コレステロール値は高過ぎても低過ぎても良くありません。HDLコレステロール、LDLコレステロール二つのバランスが大切です。
健康的なコレステロール値にする為の方法を幾つかご紹介します。
バランスのとれた食事
コレステロール値改善の基本はバランスのとれた食生活です。野菜ばかり食べる、お肉ばかり食べるといった偏りは良くありません。
理想的な食事の栄養バランスは、炭水化物60、タンパク質20、脂肪20だと言われています。脂肪についてですが、バター等の動物性脂肪は控え、さんま、イワシ等の青魚の油やサラダ油等の植物性油を摂るようにしましょう。
<おすすめの食品>
・きのこ類(しいたけ、しめじ等)
・海藻類(もずく、ひじき、わかめ等)
・野菜類(モロヘイヤ、ごぼう、ほうれん草等)
・豆類(納豆、豆腐、あずき等)
いずれも食物繊維を豊富に含む食材で、コレステロールの排泄を促す作用があります。
<控えた方が良い食品>
・動物性脂肪(バター、ラード、生クリーム等)
・コレステロールの多い食品(レバー、たらこ、塩辛等)
いずれも全く摂らない訳ではなく、摂り過ぎに注意しましょう。
禁煙
喫煙はLDLコレステロール値を上げる大きな原因となります。他のことに幾ら気を付けていても、喫煙しているだけでその効果はなくなってしまうのです。
現在喫煙していてコレステロール値が正常でも、将来的に異常が出てしまう可能性がありますので、今のうちに禁煙することをお勧めします。
アルコール量を減らす
アルコールはコレステロール値に影響を与えます。とはいえお酒が好きな人にとって適度な飲酒はストレス発散となりますし、HDLコレステロールを増やす効果もあります。
注意すべきはやはり飲み過ぎの場合です。アルコール摂取の目安は1日に20g。それぞれのお酒の種類で換算すると以下となります。
ビール:中ビン1本または500ml缶1本
ワイン:グラス2杯
酎ハイ:350ml缶1本
ウィスキー:ダブル1杯
日本酒:1合
ほどほどに楽しみましょう。
有酸素運動
健康に欠かせない運動は、コレステロール値を整える為にもやはり必要となります。
お勧めは1日30分以上のウォーキングを1週間に3回以上です。忙しくて時間がとれない場合は一度に行わなくても、数回に分けて合計30分を超えれば大丈夫です。
その際、ダラダラ歩いては効果が低いので、腕は大きく振り、足はできるだけ大股に、背筋を伸ばして歩くように意識すると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。コレステロール値は高いことばかりではなく、低過ぎにも注意が必要だということが分かりました。
年に一回は必ず健康診断を受け、血液検査でHDLコレステロール値、LDLコレステロール値、総コレステロール値をそれぞれチェックするようにしましょう。
また、普段から基本的な健康的生活を習慣づけることが一番大切です。
食事、運動、睡眠のバランスをとることが、コレステロール値のバランスにも繋がるのです。
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