期外収縮という病気を知っていますか?これは不整脈の1種で、心臓のリズムや心拍数が一定でない病気です。この期外収縮は、30歳を過ぎた頃に誰でもなる症状だと言われています。その理由として、加齢やストレスにより引き起こされるからです。
胸がドキンとした場合、心臓が悪くなったかもしれないと心臓疾患を疑うかもしれませんが、年齢を重ねていくと、ほとんどの方がこの症状を感じます。今回ここでは、期外収縮という不整脈の概要や症状、治療方法について詳しくご紹介します。
期外収縮について
ここでは、不整脈の概要、期外収縮の概要と症状についてご紹介します。
不整脈とは?
不整脈とは、心臓のリズムや心拍数が一定でない病気のことです。不整脈には「徐脈」「頻脈」「期外収縮」と3つの種類があります。
■徐脈
成人の方で、安静時の脈数は毎分60~75回なのに対して、徐脈の方の場合は脈拍数が毎分60以下と脈拍が低下して遅いのが特徴です。徐脈の場合は、脳に十分な血液を送れなくなる為、めまいや失神、ふらつきなどが生じたり、理解力や記憶力の低下、ボケのような症状が見られます。40~50回程度になる場合もあり、このような状態になると突然死する危険性があります。別名で、洞性徐脈、徐脈性不整脈とも呼ばれます。
■頻脈
頻脈は徐脈とは逆で、心拍数が増加して早いのが特徴です。頻脈の方の場合は、心拍数が毎分100を超えます。いわゆる心臓の鼓動が早くなりドキドキしている状態です。この頻脈になる原因は心因性や運動性などが原因になることが主ですが、薬物や心臓疾患によって頻脈を起こすこともあります。
詳しくは、頻脈の原因を紹介!高齢者が注意しなければならない症状は?を参考にしてください!
■期外収縮
今回の題材でもある、期外収縮は、不整脈の中でも最も日常的に発生し、誰にでも起こる可能性があります。主な症状は、心臓がドキンと鳴るような、ウッと胸が騒ぐような感じがします。
30歳を過ぎたあたりから、このような症状を感じ始め、年齢を重ねるごとに症状を感じることが多くなります。心臓疾患にも関わる場合があるので、原因によっては様態が急変することもあります。
期外収縮とは?
心臓は毎分60回~75回のリズミカルに拍動します。この拍動は、体のすみずみにまで酸素や栄養素を含んだ血液を送り届ける働きがあります。その心臓を拍動させるのには、電気刺激をが送られて拍動します。この時送られてくる電気刺激が違う場所から発生すると、ドキンとウッとなるように胸が騒ぐ感じがします。この症状が、期外収縮です。
心臓は右心室、右心房、左心室、左心房の4つの部屋からできています。通常心臓を拍動する電気信号は、心臓の洞結節と呼ばれる特殊な組織から発生し、その刺激が心臓全体に伝わり拍動します。洞結節は、右心房の上大静脈の開口部近くに位置しています。
しかし、この洞結節とは別のところから電気信号が流れると、期外収縮の症状が現れます。別の電気信号は主に心臓の各4つ部屋から発生する電気刺激により起こるもので、右心房と左心房から発生した電気信号で生じる不整脈を、「心房性(上室性)期外収縮」と呼び、右心室や右心室から発生した電気信号で生じる不整脈を「心室性期外収縮」と呼びます。
また、心房性(上室性)期外収縮は、右心房、左心房だけでなく、肺静脈や上大静脈から電気信号が発生する場合もあります。
期外収縮の症状とは?
洞結節とは別の組織から電気信号が発生すると、リズミカルに行われた拍動の中に、脈が抜けたような感じのものが走り、リズムを崩します。期外収縮が発生すると、喉が詰まっているような感じを受けたり、動悸、めまい、胸の奥がドキンとするといった症状が起こります。
めまいや動悸が起きているときは、血圧が下がってそのような症状が現れている場合が多いです。また、この期外収縮は連続して発生する場合もあります。
期外収縮の原因とは?
ここでは、原因についてご紹介します。主にストレスが原因で引き起こされますが、それ以外の原因として心臓疾患が挙げられます。
ストレス
ほとんどの期外収縮の理由は、ストレスが原因です。ストレスと一言で言っても肉体的なストレスと精神的なストレスがあります。肉体的なストレスとは、加齢が挙げられます。若い時と同じことを行ったとしても、筋肉も他の臓器も全て衰えている為、体に負荷がかかります。
寝不足や過労、寒さなどの天候の変化や激しい運動なども身体的にストレスを与えます。30歳以降になると、肉体的なストレスが原因となり、誰にでも期外収縮の症状が現れ始め、歳を重ねるごとに、このような現象は増えてきます。
また、不安や緊張、恐怖などを感じた際には精神的ストレスとなり、症状が現れます。緊張したり不安を感じた際は、誰もが心臓が激しく鼓動するのを体験したことがあると思います。このように精神的ストレスは、心臓に影響を受けやすいです。しかし、ストレスが原因で起こる、期外収縮はほとんどの場合は、心臓が悪いといったことや、生命の危険には全く関係ないです。
心筋梗塞
心筋梗塞とは、心臓疾患の1つです。冠動脈血管と呼ばれる心臓の筋肉細胞に酸素や栄養素を届けるために血液を流す管があります。この血管の内側にコレステロールや脂質などが溜まると血管が狭まったり、閉鎖する動脈硬化が起こります。
動脈硬化が起こると、血液の流れる量が減り、心筋が酸素や栄養が不足している状態になり、壊死します。この状態を、心筋梗塞と呼びます。通常は、急性で発症することが多く、急性心筋梗塞や心臓麻痺、心臓発作、ハートアタックなどとも呼ばれます。
強い胸の痛みや苦しさが15分以上続き、期外収縮だけでなく、顔面蒼白、冷や汗、除脈、血圧の低下、脈拍の上昇などを伴い、意識不明になる場合があります。
心筋梗塞については、心筋梗塞の前兆は?症状を知って適切な処置を!を参考にしてください!
狭心症
狭心症は、心筋梗塞の一歩手前の病状です。動脈硬化などが原因となって、血管が狭まり、血液の流れる量が減り、胸痛や胸部圧迫感などの症状が起きます。主な症状は、締め付けられるような胸の痛みを感じることです。
痛みは前胸部に感じることが多いですが、心窩部から、頸部や左肩など胸の周りで感じる場合もあります。発作が起こると15分以内には収まります。期外収縮以外の症状として、動悸や呼吸困難、頭痛、嘔吐などが現れます。
治療をせずに放置すると、心筋梗塞になったり、心室細動という心臓の心室が小刻みに震えて全身にうまく血液を送ることができない状態になります。これらの病状が現れると、死に至る危険性があるので大変危険です。
この病状は男女差に大きく差があり、中でも更年期の女性に多く発症します。女性ホルモンのエストロゲンが減少することで、引き起こされやすくなると言われ、閉経後の女性がかかりやすいです。
詳しくは、狭心症の症状をチェック!種類や原因、治療方法を紹介!を読んでおきましょう。
心筋症
心筋症は、心臓の機能障害を伴う心筋疾患です。心筋症は心臓の筋肉そのものが障害を受けており、心臓移植が必要になる重大な心臓疾患の1つです。心筋症は初期の状態では自覚症状が少なく、疲れやすいと感じたり、動いた時に軽い動悸や期外収縮が起こる程度で気づきにくいです。
心筋症には、肥大型、拡張型、拘束型、不整脈原性右室心筋症、分類不能型という種類があります。中でも、不整脈原性右室心筋症というタイプは心室頻脈と合併症状をおこしやすいです。この症状は、期外収縮の症状が連続して起こり頻脈を起こす病状です。この状態になると、心室細動という心臓の心室が小刻みに震えて全身にうまく血液を送ることができない状態になり、死に至る危険性があるので危険です。
期外収縮の検査・診断
期外収縮の検査を行うには、一般的に12誘導心電図、心臓超音波検査、ホルター心電図、イベント心電図などを使って検査します。
12誘導心電図
心臓は筋肉から出来ており、筋肉は電気刺激を受けて動き出します。心電図はこの電気刺激の活動を読み取り、グラフの形に記録することが出来る機械です。電気生理学的検査の代表的なもので、日常の診察に幅広く利用され、心疾患の診断や治療に役立っています。
この12誘導心電図は電気刺激がどこから発生するのか特定することができます。その為、心房や心室から電気刺激が発生していることや、どれくらいの頻度発生するかを確認でき、期外収縮の診断を行うことが出来ます。
心臓超音波検査
心臓超音波検査は、人には聞こえないほどの超音波を心臓に送り、返ってくる波を受診して、心臓の様子を画像で確認できる検査方法です。この機能を使って大きく分けて2つのことが分かります。
1つ目は心臓の形状を確認することができ、異常を発見できます。2つ目は、心臓は拍動を確認し、心臓の働きを見ることが出来ます。実際に体の中で行われている動きをそのまま映像に映し出したように確認することができます。
この心臓超音波検査を通じて、心臓の心室や心房、弁の大きさや形状、壁の厚さや各それぞれの機能の動きを確認できます。また、カラードップラー法を実施すると、血液の流れなど心臓の全ての働きを詳細にみることが出来ます。
一般的な検査方法は、ベットに仰向けの状態になり、胸部を露出してゼリー剤を塗り、プローブと呼ばれる超音波発信機を肋骨の隙間に沿って押しあてることで映像を確認できます。検査にかかる時間は20分~30分ほどです。
ホルター心電図
ホルター心電図は、携帯用の小さい心電計をホルダーに入れて、吊り下げるもしくはベルトで固定して日常生活の心電図を24時間記録する装置です。24時間確認できることにより、一時的に発生する不整脈も確実に確認できます。
この装置は、いつでもどこでも簡単に心電図がとれる検査装置で、不整脈や虚血性心疾患の診断には有効な検査方法です。装着した後に日常生活で不整脈や心筋虚血などの心疾患が起きるのかどうか、また心臓に影響を与えるものかなどを診断する事ができます。
最高、最低心拍数や不整脈の種類、数、発生時間や心拍数を確認し、不整脈の診断以外にも、ペースメーカーの機能評価や薬物治療効果を判定できると言われています。メーカーによって大きさは異なりますが、100g~200g程度の軽量で持ち運びが簡単にできます。また、タイプによっては、防水加工されている場合があり、入浴対応している場合もあります。
装着方法はとても簡単で、胸に電極を取り付け、小型の測定器を腰の位置に携帯するだけで、心電図を記録する事ができます。記録した心電図は、コンピューターを通じて解析、診断を行うことができます。
イベント心電図検査
イベント心電図検査は、動悸や不整脈をはじめとする、心臓系の病状が少ない頻度で現れる患者さんに向けて用いられる心電図です。携帯できる大きさの心電図機器を使った検査方法で、いつでも検査することが可能です。不整脈の症状が現れた時に、自分で心電図を用いて計測し、データはFAXなどを使って医療機関に送信し、解析・診断が行われます。
ホルター心電図のように24時間連続で装着できるわけではないので、全てを記録することは出来ません。しかし、ホルター心電図と比べると、患者の負担が少なくなるのがメリットとして挙げられます。
上記で挙げたような診断方法を用いて、期外収縮と診断されます。期外収縮と診断された場合、心臓疾患などの病気の有無や原因も一緒に確認した方がいいでしょう。
期外収縮の治療方法について
ここでは、期外収縮の治療方法についてご紹介します。期外収縮は、ストレスや加齢など、誰でも起こる原因の場合は、一般的には治療を必要としません。しかし、期外収縮の発生回数が多くなってきたり、発生回数は少ないけれど、収縮が強く感じられる場合は、医療機関を受診し、治療を検討しましょう。
薬物療法
期外収縮と診断された場合、β遮断薬などの抗不整脈剤を服用したり、静脈注射薬を行うことで、症状を緩和する事ができます。また、興奮状態が頻繁に起こる場合などは、精神安定剤を投与される場合があります。
治療する薬物の量や種類は、患者さんの自覚症状、年齢、発生している場所、心臓の形状や拍動の働き、心臓の既往症などを確認した上で、決定します。
植え込み型除細動器(ICD)
心臓疾患が理由で、期外収縮が発生する方には、植え込み型除細動器の方法を取り入れる場合があります。この装置は、体内植え込み式で、頻繁におこる致死的な不整脈を解消し、心臓の働きを改善する補助人工臓器です。薬物治療に効果が見られない方や、カテーテルアブレーションなどの根本治療が難しい方に適用されます。
この装置の「ペーシング」と「電気ショック」という2つの方法を用いて不整脈を止めることが可能です。心拍が少し早くなったと感じた場合は、ペーシングを治療方法を用いる場合があります。ペーシングは、不整脈よりも少し速い速度で心臓に電気刺激を与え、心臓を正常な調律に戻します。動悸が症状として現れる場合がありますが、不整脈による痛みを感じることはなくなります。
しかし、心室頻拍や心室細動といったタイプの速い速度不整脈の場合は、電気ショックが必要な場合があります。高エネルギーを作り出して電気ショックを与えることで、不整脈をとめ、心臓の調律を整えます。電気ショックを行う際には、電池を充電してから放出するまでに10秒ほど時間を要する為、その間に失神したり意識がもうろうとし、痛みを感じない人もいます。しかし中には、胸の中を蹴り飛ばされたような激しい痛みを感じる人もいて、痛みの感じ方は人それぞれです。
経皮的カテーテル心筋焼灼術
この方法は、多くの不整脈の治療に取り入れられています。一般的にはカテーテルアブレーションと呼ばれています。この方法は、足の付け根部分に局所麻酔を行い、血管にカテーテルいう柔らかい細い管を通し、血管を通って心臓まで運びます。
カテーテルが心臓に到着すると、カテーテルの先に取り付けた電極と体の外にある機器を合わせて、高周波電流を流す準備をします。不整脈の原因となる、電気刺激を発生させる心筋の一部に高周波電流を流すことで、軽いやけどを負わせます。これにより、不整脈の原因を取り除くことが出来ます。この方法に成功すると、不整脈を根本的に治療することが出来ます。治療時間は1時間~数時間と言われ、期外収縮の成功率は80%~95%です。
この方法は、薬物投与や植え込み型除細動器の効果が現れない方、他の病気によって薬物を投与できない方、発作の頻度が多い方を対象に適用される方法です。
おわりに
期外収縮は、不整脈の1つです。期外収縮は30歳を過ぎたころに誰でも感じる症状の1つでもあります。この症状が起こった場合、原因のほとんどはストレスや加齢が原因ですが、中には心臓疾患が原因となり、引き起こす場合があります。
頻繁に胸がドキンとするような感じを受けるようであれば、一度医療機関で検査を受けることをおススメします。