洞不全症候群という言葉を聞いたことはありますか?知らない人がほとんどではないかと思いますが、これは高齢者に多くみられる病気です。心臓や脳に異常が起きることで様々な症状を引き起こし心停止などが起こる可能性もあります。
洞不全症候群はどんな病気なのか、症状や治療法、対策などについて触れていきたいと思います。
洞不全症候群とは?
洞不全症候群(どうふぜんしょうこうぐん)とは心臓を一定の速さで動かしている洞結節と呼ばれる場所が、正常に機能しなくなってしまうことで起こります。それによって心臓の動きが弱まり、様々な症状を引き起こし脳や心臓などの臓器に様々な障害が現れる病気で不整脈の1つとされています。
洞結節(どうけっせつ)は心筋(心臓を構成している筋肉)を動かすために必要な電気を生産している部分です。この部分に異変が起こることで洞不全を引き起こし脈が極端に遅くなってしまいます。脈が遅くなることで脳や心臓に障害が現れますが、心房の異変が合併してしまうと脈が速くなりリズムが崩れることで失神してしまったりすることがあります。失神することで事故や思わぬ怪我をしてしまうことがあります。
洞不全症候群は心電図により、1分間の脈の数が50回以下に減ってしまう持続性の洞性徐脈(Ⅰ型)、洞結節から伝えられる電気がとまってしまう洞停止又は洞房ブロック(Ⅱ型)、1分間に脈の数が300回を超えてしまう徐脈頻脈症候群(Ⅲ型)の3つのタイプに分けられています。
洞不全症候群の原因
洞不全症候群は加齢が主な原因としてあげられています。年齢を重ねると共に洞結節の機能が下がったりすることや、高血圧症、心筋梗塞、膠原病(こうげんびょう)、虚血性心疾患、甲状腺疾患、リウマチ性心疾患など様々な病気が原因で発症すると言われています。
しかし病気だけでなく高血圧や不整脈に使用される治療薬でも発症する可能性があると考えられており、洞不全症候群の90%以上が明確な原因はわかっていないようです。加齢が原因としてあげられるため高齢者の人に多くみられます。
洞不全症候群の症状
めまい、息切れ、全身の倦怠感、立ちくらみ、失神、乏尿、ろれつが回らなくなる、狭心症などの症状が出ます。通常、運動をしたりすると脈拍数は多くなりますが、洞不全症候群の場合運動をした時や発熱した時でも心臓の動きに変わりがなく脈拍数が上がることがありません。めまいや失神など脳虚血によって起こる発作のことをアダムストークス発作といいます。
また急に脈が止まり一定の間心臓が動かなくなってしまうというようなことが起こる人もいます。心臓の動きが回復しない場合もあり突然死してしまう可能性もあります。これらの症状が出ている場合は治療を行うことが必要です。
洞不全症候群の治療法
洞不全症候群の治療には薬物療法とペースメーカー治療の2つの方法があります。症状がない場合、治療をせず様子をみることもあります。
・薬物療法
薬物療法は経口薬、静注射の使用などがあります。洞結節の自発的興奮の回数を増やすことが目的で効き目はありますが、必ず効果が出るわけではなく他の不整脈が起こってしまうリスクが高くなるといった副作用もあり、安定した治療効果が得られません。
また、症状が悪化している場合などは危険を伴うためその場合、薬物療法は行われません。薬に反応しない場合や薬をやめると症状が強く出てしまうなどがみられた時にはペースメーカー治療が必要となります。
・ペースメーカー治療
ペースメーカーとは脈が遅くなったりリズムがずれた時に心臓の代わりに信号を出す機械のことです。ペースメーカー自体は小型のものでその機械をカラダの中に埋め込む手術です。薬物療法よりも長い期間安定した効果があるといわれているため、ペースメーカー治療を行うことが勧められています。この手術はカラダの負担も少ないため高齢者や病気を抱えている人でも受けることができます。
埋め込んだ機械から電線を出して血管の中に電線を通します。そのまま心臓まで移動し、心臓の中へと繋げます。心臓の動きなどを常にチェックし信号が出せるようにします。除脈が出た時に心臓を刺激し、心拍数を戻すことで除脈を防ぎます。
ペースメーカー治療による合併症
手術を行うとどうしても合併症の心配が出てきてしまいますよね。ペースメーカー手術を行うことにより起こる可能性のある合併症を書いていきたいと思います。
気胸
血管の中に電線を通す際に針を使用するため、その針で肺を傷つけてしまうことがあります。傷ついた部分から空気が漏れてしまう症状です。
詳しくは、肺に穴が空く病気って?原因や治療方法を紹介!を参考にしてください。
出血
手術には出血を伴うことがほとんどです。カラダにメスを入れたり、血管の中に電線を通すため多少の出血があります。
感染
ペースメーカーの機械や繋いでいる電線に菌がついてしまうと感染症を引き起こす可能性があります。感染してしまった場合手術をし取り換えなければなりません。
心臓穿孔
わずかな可能性ではありますが、電線が原因で心臓に穴が開いてしまうといったことがあるようです。その場合手術で穴を塞がなければなりません。
洞不全症候群に関係する病気
洞不全症候群に関係している病気について3つ書いていきたいと思います。
心不全
心不全は心臓の機能が低下することで起こります。
心臓はカラダ中に酸素が含まれた血液を送る大切な働きをしていますがこの働きが低下すると、血液の流れがスムーズにいかなくなってしまいます。その結果血液が滞ってしまい、うっ血状態になってしまうのです。心臓になにかしらの異常が起きて発症することもありますが、高血圧や貧血が原因となることもあります。心臓に過度な負担がかかってしまっていたり長期間そのような状態でいると心不全を起こしやすくなってしまいます。
カラダに十分な血液が回らなくなるため、息切れ、動悸、疲れやすい、息苦しいなどの症状が現れます。症状の進行によって呼吸困難に陥ることがあります。悪化してしまうと寝ている間にも呼吸困難になることもあるため注意が必要です。
心不全については、心不全とは?症状や治療方法、予防方法を知っておこう!を参考にしてください。
狭心症
狭心症は心臓の冠動脈が何かしらが原因となって狭くなることで、心筋に必要な血液や酸素が足りなくなってしまうものです。血液や酸素が不足することによって胸に痛みが出たりし、誰にでも起こる可能性はあります。ほとんどの原因が、冠動脈の動脈硬化によるものですが、動脈硬化が見られないのに冠動脈が痙攣し縮んでしまうといったこともあるようです。
狭心症は症状が起こる状況によってそれぞれ名前が付けられています。
・労作性狭心症
重い荷物を持ったり階段をのぼったりなど力を使うときに胸が苦しい、痛むといった症状が出るものは労作性狭心症といわれています。力を使うと心臓が多くの血液をカラダ中に送らなければならないのですが、冠動脈に異常があると十分な血液を送ることが出来なくなってしまうのです。そして血液が不足してしまうことで労作性狭心症が引き起こされます。
・不安定狭心症
心筋梗塞の前兆で頻繁に狭心症の発作が出るようになります。力を使わず静かにしている時にも起こる場合には不安定狭心症といわれています。発作が頻繁に起こることで心筋梗塞ができてしまう可能性があります。
・安静時狭心症、冠攣縮性狭心症
安静にしている時に起こる発作で眠っている時、明け方などに胸が苦しくなるといったことがあります。冠動脈が痙攣を起こすことで縮まり血液が一時的に止まるようにすることを攣縮性狭心症といいます。
・微小血管狭心症
狭心症の発作が出ていても冠動脈に異常がみられない場合を微小血管狭心症といいます。冠動脈ではなく心筋の血管に異常が起こっていると考えられており、ほとんどの場合が微小血管狭心症であるという決定的な診断はされないようです。
狭心症については、狭心症の症状をチェック!種類や原因、治療方法を紹介!を参考にしてください。
アダムス・ストークス症候群
アダムス・ストークス症候群は心臓から脳に送られる血液が不足してしまい脳の酸素が少なくなってくることで、めまいや失神、全身痙攣、除脈などの症状を引き起こすものです。
これは洞不全症候群による心停止や除脈性不整脈、心室細動などの頻脈性不整脈が原因となって引き起こされます。突然症状が出ますが症状の重さは人それぞれで、症状の継続する時間も異なります。
洞不全症候群が起きてしまった場合の対策
洞不全症候群が起こるとめまいや失神といった脳虚血と呼ばれている症状がでます。このような症状が起こると気を付けなければならないのが、思いもよらない事故や怪我などです。
そういった被害を出さないためにもできる対策をしていきましょう。
無理に立とうとしない
めまいなどの症状が出た場合はすぐその場に座る、横になることが大切です。外出先ではその場に座り込むのに抵抗があるといった場合でも、事故や怪我を防ぐためにもしばらく座って落ち着くまで待ちましょう。
無理に立っていたりすると倒れてしまったり転倒してしまう恐れがあります。横になれる場合はまず横になり症状が落ち着くまで楽な姿勢でいましょう。二次被害を出さないように注意する必要があります。
脈拍を測る
通常の場合、脈拍は安定した一定のリズムを保っており、一般的に大人の場合1分間に50~100回程の脈をうっています。脈を測っておくと病院で診察を受けた際に参考になります。
脈を測るときには楽な体勢で、どちらかの手で反対側の手首の内側を指3本でおさえます。そして1分間の間にどれだけ脈があるのかを測ります。
症状が治まらない場合はすぐに病院へ
症状が出てから落ち着くまでしばらくは様子をみますが、一向に症状が治まらなかったりした場合は心停止など引き起こしてしまう可能性があるためすぐに病院を受診しましょう。
まとめ
洞不全症候群は高齢者に多く発症し、めまいや失神などの症状により、転倒し怪我をしたり、事故にあってしまったりといった二次被害が多く発生しています。
症状が現れた場合にはその場から動こうとせずに座り落ち着くまで安静にしてください。症状が治まらなかったり、繰り返し起こる場合にはすぐに病院を受診することが良いでしょう。