もう誰もがその名を知っているDHA、青魚に多く含まれるというその成分は、本当はどんな効果があるのでしょうか。宣伝しているサプリメントを摂るだけで大丈夫なのでしょうか。最近聞くようになったオメガ3脂肪酸も気になりますね。
なんとなく体によさそうだなとは思っていても、どういいのかと聞かれるとよくわからないのが実情ではないでしょうか。
もう一度、基本的なことをおさらいしつつ、意外なDHAの効果や問題点、そしてDHAの効果を最大限に生かす方法を探ってみましょう。
DHAとは
まずは、DHAについて紹介します。
DHAとは何のことでしょう
ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid)のことで、DHAは略称です。
別名、セルボン酸とも呼ばれます。沢山ある不飽和脂肪酸のひとつで、オメガ3脂肪酸に分類されます。人間の体内では作ることはできませんので、食べ物から摂取する必要があります。
不飽和脂肪酸とは
分子の結合の仕方で、オメガ3系統、オメガ6系統、オメガ9系統などがありますが、動物はオメガ9系統のみ合成できます。アラキドン酸、リノール酸、γ(ガンマ)-リノレン酸(どれもオメガ6脂肪酸に属する)は必須脂肪酸と呼ばれ、人が体内で作りだすことのできない必須栄養素のひとつです。
DHA、EPA、そしてα(アルファ)-リノレン酸は、オメガ3脂肪酸に属し、やはり必須脂肪酸と呼ばれます。
*ガンマ6脂肪酸はリノール酸、ガンマ3脂肪酸はα-リノレン酸を原料として、同系列の脂肪酸を体内で合成できるため、この二つのみを必須脂肪酸として扱われることもありますが、αーリノレン酸からEPAやDHAに変換される割合は10-15%程度と考えられるため、体内で合成出来る量だけでは必須量に満たないとする考えもあり、判断の分かれるところです。
DHAと一緒によく聞くEPAとは
エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid)の略称です。DHAと同じく、不飽和脂肪酸の一種であり、オメガ3脂肪酸に属します。人間の体内で作ることはできないのですが、必須脂肪酸のひとつなので、食べ物から摂取する必要があります。
DHAとEPAを一緒に摂ると、青魚を食べたときと同じようなバランスになるので、EPAについても知っておきましょう。
必須脂肪酸はたくさんとればいいのでしょうか
必須脂肪酸の1日の摂取量は、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」によるとオメガ6脂肪酸については1日に9g前後が適正であり、摂取の上限は一日に摂取するエネルギーの総量の10%としています。
DHA、EPAなどのオメガ3脂肪酸は、成人で1日に1g-2gあればよいとされており、摂取上限は特に示されていませんが、過剰摂取は男性には前立腺がんなどのリスクもあるため、注意が必要とされています。
日本人はオメガ6を摂りすぎている?
日本人は平均して、オメガ6脂肪酸を1日13-15g摂取しており、オメガ6脂肪酸(リノール酸)の摂りすぎと、代謝酵素が重複するためにオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)との摂取バランスがこわれて過敏性が増加することで、アレルギーが起きやすくなっているのでは、という見方もあります。
オメガ3脂肪酸の適切な摂取量は
DHAとEPAを合計して、男性は1日に2.0-2.4gくらい、女性は1日に1.6-2.0gくらいを摂取するのが望ましいのです。
また、オメガ6脂肪酸を過剰摂取してしまうと、オメガ3脂肪酸とのバランスがくずれて、せっかく摂取したオメガ3脂肪酸は無駄になってしまいます。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取の望ましい割合は、1:1~1:4と言われています。
オメガ3脂肪酸を1日に2gとするならば、オメガ6脂肪酸は2g~8gまで、ということになりますね。
DHAはどんな効果があるのか
世間では、DHAとEPAを摂取することで、血液がサラサラになる、頭がよくなる、と言われていますが、本当はどうなのでしょうか。
よく言われるDHAの効果
- 脳の細胞を柔らかく保ち、記憶力などの脳の力のアップをサポートする。
- 視力を改善する
- 老人性痴ほう症の予防・改善に役立つ
- アレルギーを緩和する
- 血栓をつくらせない血小板凝集抑制作用があるため、脳梗塞や心筋梗塞を防ぐ効果がある
- 悪玉コレステロールを下げ、善玉コレステロールを上げる作用があるため、動脈硬化を防ぐ
- 高血圧を下げる
- 中性脂肪を減らす
- アレルギーを緩和する
と言われています。
本当の効果はどうなのか
実は、科学的に根拠があるのは、2つだけなのです。
- 中性脂肪を減らす(DHA、EPAともに)
- 血小板凝集を抑える(男性は主にEPA、女性は主にDHA)
残念ながら、うつ病に効果があるとか、頭がよくなるとか、ダイエットできる・・・といったことに関しては、科学的な根拠はいまのところ、ありません。
中性脂肪が減ると得られる効果
DHAやEPAを取り込むと、中性脂肪が減少するということが科学的に証明されています。
中性脂肪を減少させることで、動脈硬化や高血圧という生活習慣病にかかるリスクを下げる事ができます。
逆に、中性脂肪が増えると、悪玉コレステロール(LDL)が増えることがわかっています。悪玉コレステロールが増えると、血管の壁にコレステロールが取り込まれ、血管の壁が厚くなってしまい、それが動脈硬化につながったり、高血圧になったりなどの危険性が高まります。
ですから、中性脂肪を減らすためには、DHAやEPAの摂取は必要なのです。
DHAやEPAをしっかり取っていれば安心か
ただ、中性脂肪だけが、上記の病気の原因になっているわけではありません。あくまで、生活習慣病の原因のひとつでしかありません。
積極的にDHAやEPAを摂っても、他に過剰にオメガ6脂肪酸をとっていたり(食用油などを多用した食べ物をたべるなど)、お酒を飲み過ぎたりしては、せっかく摂取したDHAやEPAも無駄になります。
血小板凝集を抑えると得られる効果
血小板凝集とは、血が固まることです。EPAやDHAは体内でプロタグランジンという物質に変化して、血小板凝集を抑える作用をします。血小板凝集を抑える効果は、DHAもDPAも同じようなものなのですが、男性にはEPAのほうが、女性にはDHAのほうがより効果があるという実験結果も出ています。
血小板凝集を抑えることで血が固まりにくくなるため、血栓ができにくくなるわけです。血栓ができにくくなれば、脳梗塞や心筋梗塞を予防することができるのです。
生活習慣病は、何かの重大な病気に発展する可能性のある原因が沢山ある状態のことをいいます。そして、何より自ら普段の生活で気をつけることができるのが、生活習慣病なのです。
食事に気をつけることで、中性脂肪を減らすことができれば、命にかかわるような重大な病気を予防することができる、というわけです。健康で長生きするためにも、日ごろから気をつけたいですね。
DHAもEPAも摂りすぎてはいけません!
だからといって、DHAやEPAを過剰に摂取することは避けた方が良いのです。
血小板凝集を抑制し過ぎると、出血した時に血が固まりにくくなってしまうので、かさぶたが生産されづらくなります。部位によっては出血が長時間になると貧血になる可能性もあります。
歯医者さんに行って、血がとまるまで次の作業はできませんと何度も歯医者さんに通った男性もいます。内臓系の怪我などでは、死につながる危険さえあるのです。
DHAとEPA どちらかだけを摂ってもおなじことでしょうか
どちらも、オメガ3脂肪酸という栄養素で、効果も働きもとてもよく似ていますが、少しだけ、違いがあります。
・EPAは男性、DHAは女性の血小板凝集を抑えやすい
・DHAは脳にあるが、EPAは脳に存在しない
などです。なお、DHAは脳に必要な成分ではありますが、摂取したからといって頭が良くなるわけではありません。
DHAやEPAを効果的に摂る方法
DHAやEPAを摂取することで、高血圧や動脈硬化といった生活習慣病の予防に役立つことが考えられます。しかし、何をどれくらい食べればいいのか、ということについては、明確にされていないのが現実です。効率のよい摂取法をお教えしますね。
普段の食事で気をつける
DHAやEPAなど、オメガ3脂肪酸は青魚に多く含まれていることはご存知かもしれません。でも、そう聞いただけでは、「いわしなんて普段食べない」「お寿司やお刺身なんて毎日は無理」と頭から無理だと決めつけてはいませんか?
確かに、普段の食事から青魚を積極的に意識して食べようとしても、なかなかそうは行かないのが、現代生活ですよね。
そこで、一人暮らしの食生活の中で有効にDHAやEPAを摂取する方法をご紹介してゆきます。特別な栄養価の計算などしなくても、1日に必要な量のDHAやEPAを摂取することができるようになると思います。
魚を焼くのは面倒。一人暮らしの場合のDHA摂取
サバの缶詰やサケフレークの缶詰は、隠れた助っ人です。
有名メーカーのサバの水煮缶詰190gには、100gあたりに
- DHA 1200-2600mg(1.2-2.6g)/100gあたり
- EPA 800-1700mg(0.8-1.7g)/100gあたり
DHAとEPAの合計で100gあたり2.0g~4.3g、つまり1缶にはDHAとEPAの合計で3.8g~8.17gほど含まれているわけです。1日に、1/3缶で充分ですね。サラダにのせたりして気軽に取れる量だと思います。
その他、さんまかば焼き缶、サバ味噌煮缶、味付けイワシなど、お気に入りを探して、裏の表示を見てみてくださいね。
*摂りすぎには充分注意してください*
DHAやEPAを含む健康食品やサプリメントを利用する
特定保健食品(トクホ)のものは、その有効性や安全性が国によって調査されているものです。そのため、他の健康食品やサプリメントよりも、効果や安全性に信頼がおけます。
ただ、EPAは酸化しやすい物質です。サプリメントの瓶にはいっていても、空気にふれていると酸化がすすみ、効果がなくなります。買いだめは控えたほうがよさそうですね。ビタミンEなどの酸化防止剤が配合されている場合は比較的酸化は防げるようです。
その他、DHAやEPAが含まれる食品例
それぞれ、可食部の100gあたりの含有量です。DHAやEPAが多く含まれるからといって、身体に合わないものを無理して食べたり、1種類だけを食べたりして栄養のバランスを崩さないよう気をつけましょう。
DHAを多く含む食材
アンコウ(肝)3650mg
本マグロ(トロ)2880mg
ブリ(焼き)2284mg
サバ(生)1780mg
ブリ(生)1780mg
うなぎ蒲焼1490mg
さんま(生)1400mg
さんま(焼き)1140mg
アジ(焼き)1107mg
EPAを多く含む食材
アンコウ(肝) 2300mg
すじこ 2100mg
しめさば 1600mg
みりん干し 1400mg
焼きのり 1200mg
などです。カロリーの高いものも多いですし、食塩を控えなければならない方は、吟味して食材を使ってくださいね。
バランスをくずすオメガ6脂肪酸の摂取を適正にもどす
オメガ6脂肪酸も必須脂肪酸なのですが、揚げものに使われる食用油をはじめとし、納豆や豆腐などほとんどの食品に多く含まれるため、現代の日本人の生活では過剰摂取になりがちになっているのが現実です。前述のとおり、この過剰摂取により、バランスをくずし、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の割合は、1:1~1:4まで、を頭に刻んでおきましょう。
だからといって、オメガ6脂肪酸にあわせてオメガ3脂肪酸を増やせばいいわけではありません。適正量を摂取するのが、効果を最大に発揮させるコツです。
DHA・EPAを過剰摂取しないこと
先にも述べましたが、過剰摂取は他の病気のリスクを高めることもあります。特に男性の過剰摂取は前立腺がんのリスクを高めます。
まとめ
・DHAとEPAは生活習慣病の予防になる。
・DHAにはダイエット効果はない。
・適正量をとることで、最大限の効果を発揮する。
・過剰摂取は禁物。
・DHAとEPAは案外簡単に摂れる。
誰でも、健康で長生きしたいもの。それには、生活習慣病の予防が大切です。その予防に役立つのがDHAやEPAです。効果的に無理なく、適正な量を摂取して、はつらつとした毎日を送りましょう。