鼻づまりで夜眠れない、という症状に困っていませんか。あなたを、この苦しみからの解放に導く、3つの原因と、4つの治療法と、5つの簡単対策を解説します。
鼻づまりで眠れない「3つの原因」
鼻づまりで眠れないのは何故なのでしょうか?
「交感神経と副交感神経」
鼻がつまると眠れない原因を知るには、神経について知っておく必要があります。
人の臓器は、神経によって動いたり休んだりしています。神経は、細く長い糸のような形状で、脳から伸びています。脳の命令が、神経を伝わって、さまざまな臓器を動かしたり休ませたりしているのです。
その神経は、交感神経と副交感神経の2種類あります。交感神経は、人が活発に動くときに働き、その間、副交感神経は働きません。副交感神経は、人がリラックスしているときに働き、その間、交感神経は動きません。交感神経と副交感神経は、このように「バトンタッチ」する関係にあるのです。
さて、鼻づまりの原因のひとつに、鼻の奥の空間の血管が膨らむことがあります。血管が膨らむことで、鼻の奥の空間が狭くなり、「鼻呼吸が困難になる=鼻づまり」というメカニズムです。
交感神経は血管を収縮させます。副交感神経は血管を膨らます。交感神経は日中に働きます。副交感神経は夜に働きます。
ただでさえ、鼻の異常で膨らんでいる血管が、夜になって副交感神経の働きによってさらに膨らんでしまうのです。なので、鼻づまりは夜、つまり眠っているときに症状が悪化するのです。
「炎症」
鼻の穴は喉につながっていますが、鼻の穴と喉の間には、広い空間が広がっています。その空間を副鼻腔といいます。ここが細菌やウイルスにやれると、炎症を起こします。副鼻腔炎といいます。
副鼻腔の表面はとても繊細で、人が細菌やウイルスの攻撃を受けると真っ先に影響を受けます。炎症によって血管が膨らみ、鼻が詰まります。副鼻腔炎については、蓄膿症が臭い!症状や予防方法を知っておこう!の記事を読んでおきましょう。
肥厚性鼻炎(ひこうせいびえん)も、鼻の炎症のひとつです。鼻の奥の表面のことを「粘膜」と呼び、この粘膜がなんらかの原因で腫れてしまうのです。表面が張れて厚くなるので、呼吸の通り道が狭くなり、鼻づまりの症状となるのです。
アレルギーでも粘膜が腫れることがあり、これをアレルギー性鼻炎といいます。
「鼻の形」
鼻中隔湾曲症という病気でも、鼻づまりが生じます。
鼻中隔(びちゅうかく)とは、左右の鼻の穴をへだてている「壁」です。異常がない人は、左の鼻の穴と、右の鼻の穴の大きさはほぼ同じだと思います。しかしこの「壁」が湾曲(わんきょく)してしまうことがあるのです。
鼻中隔湾曲症は、鼻に大きな衝撃が加わって生じますが、それ以外でも、成長期の子供がそうなってしまうことがあります。それは、鼻中隔が軟骨という軟らかい骨でできているからです。均衡を失って成長してしまった場合、軟骨は簡単に形を変えてしまうのです。
鼻中隔湾曲症では、狭くなった方の鼻の穴がつまることが多いのですが、両方の穴がつまりやすくなる人もいます。そして、鼻づまりだけでなく、頭痛や味覚障害を引き起こすこともあります。
鼻づまりで眠れない「4つの治療法」
では、そんな時はどのようにすれば良いのか紹介します!
治療法①「内服薬」
アレルギー性鼻炎で効果が高い内服薬は、抗ロイコトリエン薬と、抗トロンボキサンA2という薬です。この2つを数週間服用するだけで、鼻づまりを解消することができます。
それ以外の炎症では、一般的な抗炎症薬を飲むことで、改善がみられることがあります。抗生物質が投与されることもあります。
治療法②「点鼻薬」
「アレルギーといえば」というくらい頻繁に使われる薬、ステロイドは、点鼻薬として服用します。薬成分が含まれる液体を、直接、鼻の粘膜に吹き付けます。鼻づまりを起こしている血管の膨らみを抑制して、さらに、血管を収縮させる効果が期待できます。
治療法③「ネブライザー」
ネブライザーは、コンプレッサーで薬成分が含まれる液体を霧状にして吹き出す機器です。喘息の治療では、薬の液体の霧を、喉に吹きかけます。
鼻づまりの治療では、ステロイドや抗ヒスタミン薬の液体を霧状にして、鼻の奥に流し込みます。鼻の奥の空間は、洞窟のように入り組んだ形をしているので、すべての「壁面」「床」「天井」に薬成分を付着させるには、ネブライザーが作り出す霧が活躍するのです。
治療法④「手術」
肥厚性鼻炎は、鼻の奥の表面である「粘膜」腫れている状態なので、手術で粘膜を取り除くことで、腫れを解消することができます。使用する器具は、高周波やレーザーなどです。「取り除く」というより「焼き切る」といったイメージです。
物理的に腫れを取り除くので、大きな効果が期待できます。ただ副作用があり、手術後1週間は、逆に、鼻づまりが悪化してしまうことがあります。また、粘膜を取り除くということは、表面と血管までの距離が縮まることになるので、鼻血が出やすくなることもあります。
鼻づまりで眠れない「5つの簡単対策」
鼻づまりで眠れない時の対策方法を紹介します。
対策①「匂い」
「ユーカリ」というアロマオイルの匂いをかぐと、鼻づまりが楽になることがあります。玉ねぎをかぐことも、鼻づまり解消につながるのですが、臭いが強烈なので、就寝前の使用は適さないでしょう。
対策②「蒸しタオル」
これも単純な方法ですが、夜眠るときに、蒸したタオルを額に乗せると、血行がよくなり、鼻通りも改善します。
「蒸しタオルを用意するのが面倒そう」と思った方へ。
レンジとラップがあれば、簡単にできます。十分に濡らしたタオルを、あまりきつくしないで絞ります。水滴が落ちない程度でOKです。それをラップにくるんでレンジで1~2分で蒸しタオルができます。
対策③「湿度を上げる」
室内の渇きは鼻づまりを悪化させますので、加湿器を使いましょう。湿度は60%が最適です。加湿器がない家庭では、濡れタオルを干すだけでも効果が期待できます。
対策④「鼻腔拡張テープ」
鼻の奥の空間が狭くなるなら、鼻の外を広げよう――という考えで考案されたのが、鼻腔拡張テープです。スポーツ選手が「細いばんそうこう」のようなものを、鼻の上に水平に貼り付けているのを見たことはありませんか。いびき解消にも効果があります。
対策⑤「寝る姿勢」
つまっている方の鼻を下に向けて横になると、鼻呼吸がしやすくなることがあります。寝返りで逆向きになっては逆効果になってしまうので、タオルケットやクッションなどを、持ち上げたい肩の下に入れるとよいでしょう。
その他の鼻づまり
その他に考えられる鼻づまりを紹介します。
鼻茸(はなたけ)
鼻の中に茸(きのこ)のようなものが生えることから、この病名が付いています。茸の正体はポリープです。副鼻腔炎が悪化して生じます。膿を持つと、嫌な臭いがします。
茸が大きくなり過ぎると、手術で取り除くしかありません。
点鼻薬の副作用
点鼻薬は鼻づまりを解消するために使うのですが、速効性があり、すぐに快感が得られるため、ついこの薬に頼り過ぎてしまいます。この薬を使いすぎると、鼻の粘膜が硬化し、効果が薄まります。それでさらに点鼻薬の量が増えてしまう、という悪循環に陥ります。
粘膜の硬化が悪化すると、厚みを持つようになり「頑固な鼻づまり」になってしまいます。そうなると手術で取り除くしかなくなってしまいます。
腫瘍
鼻の中に腫瘍ができることがあります。ほとんどの場合、良性腫瘍なのですが、腫瘍はかたまりなので、呼吸の道をふさいでしまいます。胃や大腸にできた良性腫瘍は、あえて放置することがありますが、鼻づまりの不快を解消するには、良性であろうと手術で腫瘍を取り除くしかありません。
また、まれに悪性腫瘍、つまりがんが発生することがあります。「鼻腔がん」「副鼻腔がん」という病名が付いています。家具製造業や金属メッキ業など、職場で化学薬品に接する機会が多い人は、リスクが高いです。珍しいがんなので、違和感を感じて病院にかかっても、特定が遅れて悪化することがあるそうです。
まとめ
鼻腔がんを例外とすると、鼻づまりは命のかかわる病気ではありません。しかし睡眠障害を引き起こしていると、生活に支障が生じます。ここで紹介した「対策」で改善しない場合は、耳鼻科医にかかりましょう。
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