夏になると、クーラーや冷たい飲み物の摂り過ぎで、なんだかお腹を壊しやすい・・・そんな方が、年々増えてきているようです。
しかし、原因はそれだけではないかもしれません。一時的な下痢ではなく、長引いてしまっている場合には、他にも原因について考える必要があります。
夏を元気に乗り切るためにも、夏の下痢の原因を知り、早めに対策と予防をしていきましょう!
下痢のメカニズムについて
まずは、下痢について紹介します。
蠕動運動とは
普段、腸の中では蠕動(ぜんどう)運動という、便を肛門へ送り出すために腸が伸び縮みを繰り返す運動がおこなわれています。
同時に便から吸収した水分やミネラルを体全体に送る働きもあります。
この蠕動運動が弱ってしまうと便秘となり、逆に活発になり過ぎると便の中に水分が増えすぎてしまい下痢といった症状になります。
下痢の種類
下痢には大きく分けて2つのタイプがあります。
急性下痢
冷たい飲み物やクーラーによる刺激が原因で起こりやすいのがこちらの急性下痢になります。原因が分かりやすいのも特徴的です。
その他にウイルスや細菌による食中毒が原因となるものもあります。
慢性下痢
目安として下痢が3週間以上続く場合、慢性下痢に分類されます。
気づけばずっと下痢を繰り返しているなど、原因が曖昧なことも少なくありません。ストレスや緊張など精神面が影響している場合や夏バテなどの疲れが原因となることもあります。
また、胃腸系の病気などが原因となっている場合もあります。
下痢の役割
できればツライ下痢にはなりたくないものですが、下痢とは体の中に入った”有害”なものを早く外へ排出しようとする、体にとって大切な働きでもあります。
下痢止めを使う前に、まずは原因をしっかり見極めるようにしましょう。
夏の下痢の原因について
それでは、夏に起こりやすい下痢の原因とは一体どのようなものがあるのでしょうか。
冷たい物の多量摂取
冷たい飲み物を一気に飲んで、お腹がキュルキュルキュル・・・なんて経験、ありませんか?!
キンキンに冷えたビールや氷たっぷりのジュースをゴクゴクゴク・・・
暑い夏についついやってしまう例ですが、スッキリするのは一瞬だけです。確かに体を冷やすことはできますが、胃腸まで一緒に冷えてしまうことになり、結果的に下痢の原因となるのです。
その他に体を冷やす飲み物として
- コーヒー
- 牛乳
- 清涼飲料水
- ビール
- 緑茶
これらのように、暖かい地方で採れたもの(コーヒー)や、糖分を多く含む飲み物(砂糖が体を冷やすため)は胃腸を冷やす原因となります。
摂り過ぎには十分に注意しましょう。
また食べ物ではかき氷やアイスクリームの食べ過ぎにも気を付けたいものです。これらは比較的見当がつきやすいのですが、その他にも夏に採れる野菜や果物は体を冷やす作用があります。(トマト、きゅうり、茄子やスイカなど)
しかし、旬の食べ物は栄養が豊富で体に良い影響もあります。ですので飲み物と同じように、適量を意識して食べ過ぎないように心がけましょう。
細菌による食中毒
冬場のウイルスによる食中毒に比べ、夏は細菌による食中毒が発生しやすくなります。
食中毒の原因となる細菌は高温多湿の環境を好みます。そのため、湿度も高くなる梅雨頃から食中毒は増えやすくなります。
細菌による食中毒は大きく2つのタイプに分かれます。
感染型食中毒
食品に含まれた細菌が体内に入り、腸の中で増殖することで発症します。症状はどれも激しい下痢や腹痛、おう吐や発熱を伴う場合があります。下痢の症状としては、水様性が多く、粘液性や血便がみられることもあります。
*カンピロバクター
潜伏期間:2~5日間(他の細菌に比べ、やや長め)
- 原因食品:主に加熱不足の鶏肉に多い
- ピーク:5月~8月
- 特徴:初期症状は風邪と似ており、大抵の方は1週間で治癒します。
小さな子供や高齢者など抵抗力の弱い方は重症化する恐れがあるため注意が必要です。また、症状が落ち着いた数週間後に、神経麻痺や呼吸困難を引き起こすギラン・バレー症候群を発症する可能性があるといわれています。
- 対策:食肉は十分に加熱させること(特に中心部は高熱で1分以上)、また食肉の調理に使った包丁や容器は他の食品と分けて使いましょう。
使用後の調理器具はしっかり洗浄・殺菌をおこなうことや、触れた手の洗浄も忘れずおこないましょう。
*腸炎ビブリオ
- 潜伏期間:12時間前後(早くて2,3時間)
- 原因食品:魚介類の刺身や寿司などの生食
- ピーク:6月~10月
- 特徴:胃のあたりの激しい腹痛から始まることが多く、症状は2~3日、長くとも1週間もかからず自然治癒することがほとんどです。
- 対策:真水では生息できないため、必ず水道水でよく洗うこと、できれば十分に加熱することで感染を防ぐことができます。
*病原性大腸菌(O157など)
- 潜伏期間:12~72時間
- 原因食品:肉類や魚介類など多種にわたる
- ピーク:6~9月
- 特徴:激しい下痢から始まることが多く、よく知られるO157などは腸管出血性大腸炎と呼ばれ、出血を伴う腸炎や溶血性毒素症候群(HUS)を引き起こして重篤化する恐れがあります。
他の食中毒に比べわずかな菌の数でも発症し、ヒトからヒトへ感染することもあります。
- 対策:熱に弱いため、十分な加熱調理をしましょう。
*その他、卵の殻からの感染で有名なサルモネラ菌や、大量に作ったカレーなどで起こりやすいウェルシュ菌、輸入品のナチュラルチーズで発症する可能性があるといわれるリステリア菌があります。
毒素型食中毒
食品の中で細菌が増殖し、その細菌から出た毒素を摂取することで発症します。加熱で菌は殺せたとしても、毒素に耐熱性があればこの毒素によって感染を引き起こしてしまいます。
主な症状は、激しいおう吐や腹痛が多く、下痢を伴う場合もあります。
*黄色ブドウ球菌
- 潜伏期間:1~5時間(早ければ数十分)
- 原因食品:食品は多岐にわたりますが、ヒトの手が触れたおにぎりや弁当に多いことが報告されています。
- ピーク:8月~9月
- 特徴:普段からヒトの皮膚の表面やホコリの中などに存在する菌なのですが、特に皮膚の傷口や化膿部分で増殖します。
食品の中に菌が入ると、たちまちエンテロトキシンという耐熱性の毒素を生み出します。この毒素は100度で30分加熱しても毒性を消すことができないため、菌を食品に入れない対策が何より重要です。
- 対策:手指に切り傷や手荒れがある場合は、手袋の着用などで食品に直接触れないようにし、十分な手洗いと手指の消毒が大切です。
その他、米や小麦が原料の食品中で繁殖しやすく、夏にピークを迎えるセレウス菌や、1歳までの乳児にハチミツで感染する可能性があるといわれているボツリヌス菌があります。
夏はバーベキューなど野外で食事をする機会も増えます。生肉などは菌が発生しやすく特に注意が必要です。
海外では赤痢やコレラ菌に感染する可能性がありますので、海外渡航の予定がある方は生水を飲まないようにしたり、渡航先の感染情報を事前に確認するようにしましょう。
もし下痢の症状が明らかに普段と違って激しかったり、発熱や嘔吐を伴うようであればこれらの食中毒の可能性が考えられます。その場合は早急に病院へ行きましょう。
飲みかけのペットボトル
食品以外でも夏場に注意したいのが、飲みかけのペットボトルです。
一度口をつけると、ペットボトルの中には口腔内に存在した食べかすや菌が混入することになります。
たったわずかな量でも、飲料の栄養でどんどん繁殖し始め、さらに夏場は菌にとっての適温であるため、あっという間に増殖することになります。飲料の種類にもよりますが、水や緑茶などの糖分が含まれていないものでも増殖しやすく、ある実験では3時間後に菌が1,000倍に増えたというデータもあるほどです。
菌はというと、大腸菌や黄色ブドウ球菌など様々で食中毒の原因となる可能性もあります。
- 対策:1度口をつけたペットボトルは早めに飲みきり、野外で長時間放置することを避け、冷蔵庫などで保管するようにしましょう。
胃腸機能の低下
年々暑さも尋常ではなくなってきており、熱中症対策の為にもクーラーが推奨されるようになってきました。
しかし、クーラーが効いた部屋で1日のほとんどを過ごした方が急に気温の高い屋外に出てしまうと、体温調整がうまくできず自律神経の働きが乱れてしまいます。すると結果的に胃腸まで弱ってしまい下痢を引き起こす原因となってしまいます。
また、ストレスや疲れ、睡眠不足でも自律神経の働きは乱れてしまいます。そうなると、いわゆる夏バテの症状を引き起こして下痢も起こしやすくなるのです。
過敏性腸症候群
夏場は冷たいものの摂り過ぎやクーラーによる体の冷え、夏の疲れでも下痢を起こしやすいですが、何度も繰り返していると慢性化してしまう可能性があります。
いわゆる「慢性下痢」への移行です。過敏性腸症候群とは、腸が”知覚過敏”状態となり、そこにストレスが加わることにより下痢を繰り返す、または下痢と便秘を繰り返すといった症状を引き起こします。
病院へ行って様々な検査をしても異常が見られないため、さらに悪化するケースも少なくありません。
最初の原因はささいな事であったりするため、肉体的・精神的にも体力の消耗しやすい夏場は注意が必要です。
一度慢性化してしまうとなかなか自然治癒が難しいので、まずは内科や消化器系内科を受診しましょう。それでも治らない場合は精神科や心療内科を受診することをおすすめします。
過敏性腸症候群については、過敏性腸症候群の症状をチェック!治療方法は?を参考にして下さい!
その他の原因
風邪をひいた時によく病院で処方される抗生物質の薬は、悪い菌を退治すると同時に体に必要な善玉菌まで退治してしまうため、下痢の原因となることがあります。
また、慢性下痢の中には大腸がんや腸の疾患、胃腸系の病気が原因となっている可能性も0ではありません。
夏の下痢にどうも当てはまらないという場合は、これらも参考にしてみてください。
夏の下痢の対策について
もし夏に下痢を起こしてしまった場合、どうすれば効果的なのでしょうか。
水分を補給する
下痢により体の水分が不足している中で、さらに夏場は汗をかくので過度の水分不足や脱水症状が心配されます。意識して水分をこまめに補給しましょう。
ここでまた冷たいものを飲んでしまうと逆効果なので、白湯やお茶、温めたスポーツドリンクなどをゆっくり時間をかけて飲むようにしましょう。
OS-1などの経口補水液は、感染性腸炎や下痢を伴う脱水症状にも適していて、水分と同時に体に必要な電解質と糖質もバランスよく摂取できるとの事なので大変オススメです。
どうしても冷たいものしかない場合などは、一度飲み物を口に含んでから数回噛むようにしてから飲み込むということだけでも、胃への負担が少なくなるようです。
また、嘔吐を伴う下痢では水分補給が難しいため、病院で受診をして点滴を受けましょう。
胃腸を休める
下痢を引き起こすと体力が消耗されるため、栄養のあるものを摂取しないといけないように感じますが、胃腸はかなり弱っている状態です。
食欲がない場合や食べてもすぐ下痢になってしまう場合は無理に食べず、胃腸を休めてあげることも大切です。
少し食欲が出てきたら、1度休めた胃をいたわる意味でもお粥など消化のいいものから始めるようにしましょう。
食生活を見直す
下痢が一度治りかけたとしても、不規則な食生活や脂っこい食べ物やカロリーの高い食事が続けば、たちまち下痢になりかねません。
規則正しく1日3食の食事を摂るということは、その間、胃を休めることができるのです。胃にずっと食べものがある状態では、満腹中枢がうまく働かず肥満の原因となったり、胃腸に負担を与える続けることになって胃腸の働きが低下することになります。
腹八分目という言葉も、胃腸に必要以上に負担をかけないためには理にかなった言葉です。
知ってはいるけどやっぱり満腹になるまで食べたい!という方・・・想像してみてください。
美味しいからもう少し食べたい!という所でSTOPすると、美味しい、幸せ!!で終わり、幸せ気分はずっと続くことになります。しかし、欲に勝てず一線を越えてしまえば、さっきまでの美味しさはすっかり忘れ、気持ち悪くなったり罪悪感で満たされてしまうことになります。
・・・話は少しそれましたが、満腹になると胃腸はそれだけ負担をかけることとなるので、腹八分目は胃腸に良いということです。
ぜひ体のためにも、「美味しい!けど気持ち悪くなるのはもったいないからここで止めておこう♪」を実践してみてくださいね。
薬を有効的に使用する
冒頭でもお伝えしましたが、下痢には体にとって害になるものを外に出す役割もあるため、下痢になったからといってすぐ下痢止めを使うのは危険です。
しかし、ストレスなどで慢性下痢となっている場合は、電車や移動中、学校や会社の会議など、いざとなった時にサッと飲めるように常備しておくと安心です。
薬の中には漢方や胃腸の環境を整える整腸剤の役割がある薬もあります。これらは体に負担をかけにくいだけでなく、胃腸の働きを助ける効果もあります。
下痢はいつやってくるかわからないため、ご自分に合った”My胃腸薬”を持っておくことをおすすめします。
手洗い・うがいの徹底
やはり欠かせないのが手洗い・うがいです。まずは徹底して菌が体に入り込むことを防ぐことが大切です。
十分睡眠をとる
夏は暑さで思った以上に体力を消耗しています。1日の疲れをリセットするために、睡眠時間をしっかり確保しましょう。
しかし、夏は夜でも寝苦しい日が続いたり、夜に出かける機会も増えると思います。
そんな時は”午睡”つまり昼寝がおすすめです。「昼寝」とは夏の季語だということをご存知でしたか?俳句で親しまれる程、昔から夏を乗り切る知恵として昼寝がおこなわれてきたのです。
仕事の合間にとることはもちろん、休みの日にやさしい音楽をかけながら風通しの良い部屋でお昼寝をするなど、心地のいい環境をつくればリラックス効果にもつながります。
時間は20分程度が1番効果的とのことです。日中の暑さで疲れた体を昼寝で効果的に回復して、夏バテを予防してみませんか。
まとめ
いかがだったでしょうか。夏特有の冷えからくる下痢だけでなく、食中毒などの恐ろしい原因も夏の下痢の可能性として考えられます。
下痢の原因をいくつか知っておくことで、これからの予防にすることができます。そして、体の異変に気づいたら早めに対処しましょう。
みなさんにとって、充実した素敵な夏が訪れますように・・・