ストックホルム症候群とは?恋愛に発展することもある?症状や原因、治療法を知ろう!

人の心というのは不思議なもので、環境や他人の意見にすぐに影響を受けることがあります。それは一見して、とてもおかしいと思えるようなことでも、本人にとっては当たり前のことということもあります。

ストックホルム症候群はそんな人の心の不思議なことの1つです。この症状は「被害者が加害者に対してかばうような態度や主張をする」という症状です。

被害者は加害者から強い精神的な苦痛や肉体的な暴行を受けいているにも関わらず、加害者をかばってしまう。そんな不思議なことが起きるのです。では、このストックホルム症候群について詳しくみていきましょう。

ストックホルム症候群とは?

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ストックホルム症候群とは冒頭でも述べたように、被害者が加害者をかばうような態度が見られる状態です。これら症状は生死に関わるような極限状態下で起こることが多いです。

病名の由来にもなった事件があります。1973年。スウェーデンの首都ストックホルムで銀行強盗事件が発生しました。ジャンエリック・オルソンが4人の銀行員を人質に立てこもります。

その後、5日間の立てこもりの後、警察は強行突入を決行。犯人は捕まり、人質に怪我もなく、事件が一件落着したように思われました。しかし、ここから奇怪なことが起こります。

5日間の監禁の中で、人質たちの心境に変化があったのです。それは犯人の睡眠中に人質が警官に銃を向けたり、逃げるスキがあったにも関わらず、犯人のもとに戻るといった行動が見られました。

この段階で、すでに人質たちはストックホルム症候群が発症していたのでしょう。客観的に見れば、ありえないことですが、このメカニズムはどのようになっているのでしょうか。

ストックホルム症候群はどうして起こる?

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銀行強盗など、銃を持った犯人がそばにいるような生死に関わる事件。そのような極限の状態で、人の精神はどのように変化をするのか。このメカニズムは至極合理的です。

事件の環境下で生き延びるためには、犯人の意思に従うということが最良の選択肢です。もし、抵抗でもしたら犯人になにをされるかわかりませんよね。

そのための行動をとったり、強く思い続けてしまうと、その気持ちがだんだん大きくなります。「自分が生きるためには犯人が必要」。やがてそう思い始めるほどになります。

生き残るためには犯人をかばい、そして添い遂げることが最も良い選択である。心の奥底でそう判断してしまうのです。ストックホルム症候群はこのようにして発症するのです。

同情がストックホルム症候群を招く?

ストックホルム症候群を発症する過程の中で、「同情」がきっかけとなることがあります。人は他者に対して、共感する力がありますが、時としてそれが症状を招くことがあるのです。

先の強盗事件のように、極限状態の中。例えば犯人がどうして強盗をしてしまったのか、ということを人質に話したとします。それは犯人の辛い生い立ち、人生、苦悩。それらが強盗に走ってしまった原因だと犯人は言います。

このような辛い環境下では、何気ない不幸話でも人質の心には深く刻まれることがあります。犯人に対して同情心が芽生え、結果として犯人をかばうような行動を取ってしまうのです。

小さな安らぎがきっかけに?

他にも様々なことがストックホルム症候群のきっかけになることがあります。例えば、長い監禁時間が続いている中、トイレに行くことを許される、食事や水を与えられるといった生を感じる瞬間。このようなときもまた、症状にかかりやすいと言われれています。

生きるか死ぬかのわからない状況で、生きている実感を得られる。その実感を与えてくれているのは犯人である。そう判断していまうのです。それが先に述べたような犯人をかばうといった行動に繋がるのです。

生きてる実感、感謝、安らぎ。これらのことが極限条件下では、無条件に好意に変わってしまうのです。それは人間の根底にある生きることに関係しているからなのでしょう。

ストックホルム症候群の発症過程

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病名を名付けたアメリカの精神科医によると、病気は以下の過程を辿るといいます。

  1. 被害者の中で加害者に対する愛情・同情が生まれる
  2. その想いに対し、加害者は報い、気遣うようになる
  3. 被害者・加害者ともに外の世界に対して反発するようになる

1のステップでは、先に述べているように極限の状態が、人の心理状態を変化させます。加害者に寄り添うことこそが自分の生きることができる選択だと無意識に思うようになります。

2のステップでは、そんな被害者に対して、加害者側も心を通わせるようになります。強い愛情を感じることもありますし、ひどいことをしつつ、安心や受容といったことをすることもあります。

3のステップでは、外界に対する強い抵抗を示します。被害者も加害者も、外界は生きることを脅かす存在と捉えるようになります。被害者自身も加害者が生きる選択肢と確信していますから、加害者を傷つける警察に対して強い抵抗を示します。

家庭の中でも起こるストックホルム症候群

ストックホルム症候群は、銀行強盗や監禁といった極限条件下でしか起こらないと考えられてきました。しかし、実は家庭内でも同じようなことが起こります。

それはドメスティックバイオレンス(DV)や親から子への家庭内暴力が代表的です。これも先の事件と同様、被害者と加害者の心理が環境によって変化してしまう結果起こります。

例えばDVの場合は、暴力をする側は心身的な不安定や何かの依存症を患っているなど社会的に弱い立場にいることがあります。こういう人はその不満を付き合っている相手に発散します。

しかし、暴力を受けている被害者は「私がいなければこの人はダメになってしまう」という強い想いを持っていることが少なくありません。それは優しさではない、強い依存心といえるでしょう。

親から子への暴力も同様です。子供は家庭の中では弱い存在であり、親の保護なくして生きることはできません。暴力受けたとしても、親をかばうなどの言動が見られることは、自分が生きるための選択なのです。

ストックホルム症候群の問題とは

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どの事例にしても、その問題は被害者側がその状態を客観的にみることができず、心の底から相手をかばってしまうということなのでしょう。環境が人の心に与える影響はとても大きいのです。

被害者を現実の世界に引き戻す、その環境がおかしいと理解するためには、加害者や環境から離れる必要があります。精神的な安定、環境的な安定があって初めて考える余裕が生まれるのです。

事実、ストックホルム症候群を発症した被害者は、環境から抜け出すとこれまでの感情が嘘だったように、本来の精神状態に戻ります。強い精神的ストレスから解放されることが症状を緩和する方法なのです。

反対にいつまでもそのような環境が続くようであれば、ストックホルム症候群から抜け出すことは難しいでしょう。環境がどんどんと心を蝕み、おかしい状況を普通と捉えてしまいます。

実際にDVを受けている人は、自分が悪いと捉えることが多く、人に相談することがあまりありません。それゆえ、DVが発見されるのが遅くなるなんてこともあります。

自分の置かれている環境を自分のせいにし、それを恥ずかしいことと思ってしまう。そして、相手は何も悪くないといい、相手に依存し、そこに生きているという価値を感じてしまう。ストックホルム症候群はこのような怖い面も持っているのです。

ストックホルム症候群と恋愛

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家庭内の問題だけではなく、最も身近な例で恋愛があります。それはいわば、ダメな恋人にはまってしまうようなケースで、幸せを実感できない人に多いといいます。

ストックホルム症候群の根底には、相手への理解や同情があります。相手を知る入り口が普通とは異なったとしても、その人に強い感情があると、ダメな人と分かっていても好きになってしまうのです。

それは例え、自分が幸せと感じていなくても、相手に依存していまいます。その延長線上にDVといった暴力で付き合うような関係になっても、離れることがありません。

暴力を受けている人にとっては、相手が私を必要としていると考えているため、そこに自分の価値を見出そうとしているのです。それが自分の生き方とまで言ってしまうこともあるでしょう。

DVとまでいかなくとも、強い感情を相手や自分に対して思い続けていると、その思いは生活に反映されてしまいます。それはつまり、意図しない恋愛関係を結びつつ、そこに愛を感じてしまうことです。

ただ、本当の愛とは何か。その意味は人それぞれ違います。相手に依存し、相手を助け、自分の幸せを捨て、身を捧げることが愛なのか。ストックホルム症候群とも思えるような恋愛をしているようであれば、それは注意が必要なのかもしれません。

ドキドキが好意に変わる「吊り橋効果」

吊り橋のような高い場所にいると、心臓がバクバクするなんてことがありますよね。そんなとき、異性の人といるとなんだか頼りたいという気持ちが沸き起こります。

このドキドキはなんのことはない、ただ高いところにいるから起こるのですが、これを恋愛のドキドキとして勘違いし、相手のことを好きになってしまうことがあります。これを「吊り橋効果」といいます。

ストックホルム症候群と症状が似ているようにも思えますが、このような環境的な要因が人の心を簡単に動かしてしまうことがあるのです。

リマ症候群

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ストックホルム症候群とは対比される症状として、リマ症候群があります。これは犯人が人質に同情・共感することで、人質への態度が優しくなる症状です。

この病名のきっかけとなった事件は、ペルーのリマで起こりました。リマにある日本大使館に武装したテロ組織が乗り込み、大使館を占拠したのです。

127日間の監禁生活の中で、テロ組織の人はそこにいた人質と会話し、他の地域の文化や知識を知ります。そのことがきっかけとなり、人質に興味を持つようになりました。

テロは犯人グループの全員の射殺を持って解決しましたが、犯人が人質に危害を加えることはありませんでした。

ストックホルム症候群の事例

ストックホルム症候群は1973年の事件をきっかけとして、名称がつきましたが、それ以降も銀行強盗のような精神的に強いストレスを伴う事件が起こった時、人質に同様の症状がみられます。代表的な事例として以下のことがあります。

エリザベス・スマート事件

14歳のエリザベス・スマートという少女が誘拐された事件です。エリザベスは誘拐され、9ヶ月間の監禁生活を送ります。しかし、監禁生活とはいっても、外を歩く自由がありました。ただ、顔はベールで隠し、ひっそりとした生活を送ることになります。

最終的に犯人が逮捕されたとき、エリザベスは犯人を自分の両親である、と言ったり、自身の名前を犯人に教え込まれたオーガスチンであると言ったことがストックホルム症候群の一症例としてあげられます。

よど号ハイジャック事件

1970年に起こった「よど号ハイジャック事件」。犯人は日本航空「よど号」をハイジャックし、北朝鮮への亡命を画策した赤軍の人でした。

人質は一部福岡空港で解放され、赤軍の人はそのまま韓国の空港へ向かいます。この際、人質が犯人へ激励の言葉等を送ったことがストックホルム症候群の関連であると推測されています。

環境がいとも簡単に人の心を変える

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「人間は環境の生き物」とはよく言ったもので、人の心は気候や季節といった自然的な環境から、人間関係によっても簡単に変化します。

怖い上司を一目見るだけで、気分が憂鬱になることあれば、好きな人とすれ違っただけけで、テンションが上がる。至極当たり前のことですが、私たちは常に周りの環境に反応しています。

ストックホルム症候群は生きるか死ぬかというような極限状態下で発症することが多いです。そのような環境下では、自制心を保ち続けることは容易ではないでしょう。

また、そうではない環境であっても、継続的で強いストレスがかかるような生活環境があれば、ストックホルム症候群を招く可能性があるかもしれません。

人は生きるために人間関係を結びます。ただ、その結び方が間違ってしまうと、そのつながりを自身で断ち切ることは難しいのかもしれません。では、実際にストックホルム症候群になってしまった人はどのように治療をしていくのでしょうか。

ストックホルム症候群の治療とは

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精神的に強いストレスがかかるような事件に巻き込まれ、ストックホルム症候群と思われる症状がみられたとき、どのように治療をしていくのでしょうか。

先に述べたように、ストックホルム症候群は環境がきっかけとなって発症します。そのため、最も効果的な方法は「環境を変える」ことです。

環境を変えるというのは、生活環境や人とのつながりといったものがあげられます。事件のことから一旦離れ、元の生活に戻ることで症状を緩和することができます。

治療が進んでいく中で、事件のことを思い出すと、強い怒りや恨みといった感情が現れることがあります。これは事件によって封印されていた感情を正確に捉え始めるため起こります。

ストックホルム症候群のほか、事件をきっかけとして、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症するケースも少なくありません。このような場合はカウンセラーと長期的な治療が必要となることもあります。

精神的な病気や症状は、その傷の深さが目で見ることができません。そのため、カウンセラーだけではなく、家族や友人の支えも治療では必要になってきます

また、短時間で治ることは少ないですから、被害者・家族ともに根気のいる治療が必要とされるでしょう。大きなストレスは心に大きな傷を残すことがあるのです。

心の問題の捉え方

ストックホルム症候群ではありませんが、心の病気というのは現代社会においてとても大きな問題となっています。うつ病の発症者数は年々増え、伴って自殺者も増えています。

心の問題は先に述べたように、目に見えないものですから、その進度を測ることができません。ただ、周囲から見れば、言動がおかしいと判断することは難しくはありません。

問題は本人が気付いていないことがある、ということ。それはストックホルム症候群と共通しているのかもしれません。おかしいということに、本人が気付いていなければ、周囲が気にしない限り、治療が開始されることはないでしょう。

心の問題の第一歩は周囲が気付いて、治療を促すこと。病気を発病している人は、自分が普通だと思っていますから、そのまま進み続けてしまいます。そうならないよう、周囲が動く必要があるのです。

まとめ

銀行強盗の犯人を人質がかばう。普通では考えられないようなことでも、環境によって人はそう行動してしまうことがあります。それほど人の心は変化しやすいのです。

そして、変わってしまった心を元に戻すのは、怪我を治すこと以上に力のいることがあります。時間がかかり、家族のサポートも必要でしょう。ストックホルム症候群を患ってしまうような事件に、巻き込まれないことを願うばかりです。

  
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