唾液の出る、唾液腺といわれる部分が腫れたりしていると、気になりますよね?しかも、この部分が腫れるのは何の病気かわかりにくいため、不安になるのではないでしょうか?
そこでここでは、唾液腺炎の理由やその治療法、また、唾液腺炎の原因の一つといわれる過食嘔吐症について、紹介していきます。
◆唾液腺とは
唾液腺とは、口の中に唾液を分泌する器官です。人間には、耳下腺、顎下腺、舌下腺という、3箇所の唾液腺が、それぞれ左右に1対ずつあります。これらの唾液腺は口の外にあり、唾液を口の中に分泌するための、導管といわれる管がつながっています。
○耳下腺
耳下腺とは、耳の前あたりから、頬の部分、また下顎の後ろの皮膚の下に広がる、一番大きな唾液腺です。耳下腺のあたりには、顔の神経が集まっています。
耳下腺の導管は、頬の粘膜につながっています。この耳下腺から出てくる唾液は、さらさらとしています。
○顎下腺
顎下腺とは、顎の下にある唾液腺です。顎下腺の導管は、舌の下の中央につながっています。この顎下腺から出てくる唾液は、さらさらした唾液と粘り気のある唾液が混ざり合ったものです。
○舌下腺
舌下腺とは、舌の下の粘膜の下にある唾液腺です。舌下腺の導管は、舌の下につながっています。この舌下腺から出てくる唾液は、粘り気があります。
◆唾液腺炎の原因は?
唾液腺の場所がわかったところで、なぜ、唾液腺が炎症を起こすのか、主な原因を幾つか紹介していきましょう。
○ウイルスや細菌によるもの
ウイルス性の唾液腺炎として有名なのが、おたふくかぜです。正式には「流行性耳下腺炎」と言われ、ムンプスウイルスという、唾液などに多く含まれるウイルスに感染すると発症します。
このおたふくかぜは、一回感染すると免疫ができるため、その後、再び感染することは生涯ありません。おたふくかぜは、潜伏しているのが、おおよそ2、3週間で、小さい子供がよくかかる病気ですが、免疫がないと、大人になってからかかることがあります。
その場合、睾丸炎、卵巣炎などに発症して不妊となってしまうことがあるため、注意が必要です。
このおたふくかぜは、まれに顎下腺で炎症を起こすこともあり、はじめは片側の顎に炎症が発生し、それから数日経ってもう片方にも炎症が現れることが多いようです。唾液の量が不足している場合に発症しやすい病気が、細菌性唾液腺炎です。口の中の常在菌が、唾液の分泌される部分から入り込み、炎症が発生した状態をいいます。
おたふく風邪については、おたふく風邪は大人でもなる!症状や似ている病気を紹介!を参考にしてください!
急性だと唾液腺に痛みや腫れを感じ、唾液の分泌される部分から膿が出たりすることもあります。慢性になると、唾液腺から唾液の出る量が少なくなったりします。
○石によるもの
唾液腺炎の原因の一つに、唾石症という症状が考えられています。
これは、唾液腺内や、唾液が分泌される導管に石ができて、詰まってしまった状態です。
顎下腺に石ができることが多く、砂粒くらいの小さなものから、数センチに至る大きなものまであります。石のできる原因は、導管が炎症を起こしたり、唾液を分泌する機会がなかったり、唾液の成分が変わってしまったりすることなどによるようです。
症状としては、食事の最中に、顎の下あたりが腫れたり、激しい痛みを感じたりしますが、放っておくと、だんだん症状がおさまっていくことが多いようです。
○乾燥によるもの
唾液腺炎の原因の一つに、口の中が乾きすぎてしまう、というものがあります。
年を取ると、唾液の分泌が少なくなって、口の中が乾いてしまう傾向があります。また、口の中が乾燥したり、目が乾きすぎてしまって角結膜炎を生じる、シェーグレン症候群という病気もあります。
これは、耳下腺や顎下腺などの唾液腺が炎症で萎縮することで、唾液の分泌が少なくなった状態で、自己免疫疾患の一種と考えられています。
○腫瘍によるもの
唾液腺の腫瘍は、耳下腺にできることがいちばん多いようです。その次に多いのが、顎下腺や小唾液腺で、舌下腺に腫瘍が発生することは少ないようです。
小唾液腺や舌下腺の腫瘍があると、口の中に違和感を感じます。
通常、唾液腺の腫瘍は良性のことが多いといわれます。ただし、舌下腺にできた腫瘍には、悪性が多いとされています。
良性腫瘍の場合には、境目がはっきりしていて、だんだん大きくなることが多いため、痛みや神経の麻痺を感じないのが通常です。ところが、悪性腫瘍になると、悪化とともに痛みや麻痺を感じます。
耳下腺の腫瘍の場合には、耳の前の部分に痛みを感じたり、顔面神経が麻痺したりします。また、顎下腺や舌下腺に腫瘍ができると、舌に痛みを感じたり、麻痺が現れます。通常、年配の方に多いようです。
○過食嘔吐
過食とは、ひとたび食べ始めると途中で止めることができなくなり、通常食べる量より明らかに食べ過ぎてしまうことです。
そのため、体重が増えすぎないよう、自分で喉に指を突っ込むなどして、吐き出そうとする状態を、過食嘔吐といいます。
このような症状だと、過食で普通の何十倍も食べるため、多くの唾液が必要となり、耳下腺から唾液を出す量が増え、耳下腺が発達します。
ところが、嘔吐すると、胃酸で口の中が荒れてしまい、炎症を起こしてしまいます。
耳下腺の唾液を分泌する部分まで腫れてしまうと、唾液の分泌量は多いのに、腫れで唾液の分泌口が狭くなり、耳下腺が腫れてしまうのです。
◆唾液腺炎は何科を受診したらいいの?
唾液腺に炎症を生じた時には、耳鼻咽喉科か、口腔外科を受診すればよいでしょう。
それぞれ、どのような専門なのか、紹介していきます。
○耳鼻咽喉科
耳鼻咽喉科は、耳や鼻、喉などのトラブルに関する診療が受けられる専門科です。
例えば、先に述べたような、おたふくかぜや耳下腺炎、顎下腺炎、唾石症、シェーグレン症候群などにも、耳鼻咽喉科なら対応してもらえます。
また、検査についても、喉に管を通してのカメラ検査や、X線撮影、エコー検査などが可能です。もし、精密な検査や、入院、手術が必要な時には、適切な治療を受けることができる他の医療機関を紹介してもらえます。
耳鼻咽喉科のある病院は多いので、耳や首などに腫れや痛みを感じた時には、まず、耳鼻咽喉科を受診してみることをオススメします。
○口腔外科
口腔外科は、大学病院などの大きな病院にある専門科ですが、最近では、一般の歯科でも口腔外科診療を行う病院ができてきました。
主に、咀嚼や嚥下、発語ができるようになるための機能を維持したり、回復したりするための専門科です。
通常の歯科医院では、治療が難しい疾患を治療してくれます。
唾液腺炎も、口腔外科で診療を受けることができますので、特に、腫瘍ができている心配がある、という時には、口腔外科を受診するのがオススメです。
◆唾液腺炎の治療方法は?
おたふくかぜのような、ウイルス性の唾液腺炎は、症状を軽くするための対処療法が施されます。
通常は、熱を下げる薬などが処方されます。また、腫れた箇所に冷湿布を貼ったり、うがいをしたりして、安静にしておくのが大事です。
おたふくかぜなら、7~10日くらいで治りますが、感染が拡大する危険があるため、通学、通園には許可証が要ります。
細菌性の唾液腺炎なら、急性の時にはうがい薬などで口の中を殺菌しつつ、抗菌薬で対処します。慢性の唾液腺炎で、「口の中が乾燥しているな」という場合には、うがい薬や人工唾液で潤いをキープする方法もあるようです。
また、シェグレーン症候群が原因の腫れには、唾液分泌を促す薬が処方されます。漢方薬が処方されることもあり、患者さんによっては効果的なようです。
○手術
唾液腺炎の中でも、唾石症が原因の場合には、口の中で切開手術をして、石を取り出すこともあります。
また、良性の腫瘍でも、再発したり、悪性化したりする場合があるため、早い段階で手術して取り出します。
悪性の腫瘍の時には、手術で全部取り出すことが必要です。また、放射線による治療や、薬での治療を行うこともあります。
◆過食嘔吐を治すには
過食嘔吐の症状が出ている人は、ストレスを抱えていることが多いそうです。そこで、日常の生活でも実践できる対処法を紹介していきます。
過食嘔吐の人は、「やせたい」という気持ちが過剰に強いことが多いようです。また、完璧主義な性格が裏目に出てしまい、ストレスを感じていることも多いです。
そこで、「自分は自分」と、前向き思考で物事に取り組むのが大切です。また、趣味でストレスを解消したり、泣いたり笑ったりして感情を発散することも有効です。
また、できるだけ多くの人と、楽しみながら食事を摂るとよいでしょう。
また、カウンセリングや精神薬を処方されることで、改善していくこともありますので、じっくりと治療に取り組んでいきましょう。
◆唾液腺炎の予防には?
唾液腺炎を予防するには、唾液の分泌を促すことが効果的です。それには、よく噛んで食べるのが効果的。また、レモンや梅干しは、見るだけでも唾液が分泌されます。
規則正しいリズムで生活を送り、リラックスを心がけることもオススメです。
ガムを噛むことも、唾液分泌に有効ですので、日頃の生活習慣の中に取り入れてみてはいかがでしょうか?
さらに、食後や就寝前に、うがいをしたあと、薬局で入手できる保湿ジェルを指につけ、耳たぶの下の頬骨のでっぱりの内側の頬をゆっくり10回マッサージする、唾液分泌マッサージも効果的ですよ。
◆まとめ
いかがでしたか?
唾液腺炎は、口の中や頬の周りなど、自分も他人も気になる部分に炎症ができるため、悪化すると、人と会いたくなくなってしまったりすることも考えられます。
日頃から、先に述べたような予防法を取ることで、できるだけ口の中の感想を防いでいくことが大切です。
もちろん、腫瘍などが原因で炎症が引き起こる場合もありますから、少しでも違和感を感じたら、耳鼻咽喉科や口腔外科を早めに受診するようにしましょう。