歯牙腫は放置すると危ない?その理由や治療法を知ろう!症状や原因も紹介!

歯牙腫(しがしゅ)とは歯の腫瘍の一種です。必要のない小さな歯のような組織が、顎の骨の中に埋まっている状態をイメージしてくださいね。良性腫瘍ですから、心配することはありません。10代~20代の若い人に発症することが多いと言われます。

自覚症状もあまりありません。歯医者さんの定期健診を受けたり、歯列矯正を相談したりして発見することが多いようです。

良性腫瘍ですから、放っておいてもいいように思われますが、歯並びが悪くなったり、痛みが出たり、まれに悪性化したりすることがあります。早めに治療する方が無難です。治療してしまえば、再発することもほとんどなく、スッキリします。

ただ、歯牙腫の治療は手術しかありません。歯牙腫の手術は、なかなかハードです。ちょっぴり勇気が必要です。

歯牙腫とは何か、その種類や原因、症状、そして治療法について、お伝えしますね。

歯牙腫とは?

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歯牙腫とは、歯原性(しげんせい)良性腫瘍の1種です。歯原性良性腫瘍には、歯牙腫の他に、エナメル上皮腫と角化嚢胞性(かくかのうほうせい)歯原性腫瘍があります。

歯牙腫は、「顎の骨の中に発生する歯と同じ構造の組織群」で、「歯牙腫瘍」とも言います。つまり、顎の骨の中に不必要な小さな歯のような組織が埋まっている状態なのです。

[歯牙腫の原因]

人間の歯が形成される時に、「歯胚(しはい)」というものが生じます。歯胚は、歯の芽です。歯胚から、エナメル質・象牙質・セメント質・歯髄など歯の組織ができます。歯胚が育つ途中で形成異常を起こし、歯の組織の全部または一部が増殖してしまうと、歯牙腫になります。

「なぜ歯胚に形成異常が起きるのか?」ということについては、まだよくわかっていません。

歯胚が育つ過程で、何か外傷を受けたために形成異常を起こすという説があります。

遺伝性の要因で歯が正常に形成されず、形成異常を起こすとも考えられます。

歯胚が成長しようとしてもスペースが不十分なため、圧迫されて形成異常を起こしたり、何か炎症が生じて歯胚の成長を妨げ、形成異常を起こしたりする可能性もあります。

[歯の構造]

歯の構造について、簡単に説明しますね。歯は表面に出ている部分を歯冠、歯茎に埋もれている部分を歯根といいます。

歯冠の表面をおおっている部分がエナメル質です。その下に象牙質があります。象牙質は柔らかく、歯の主成分です。象牙質の内側に歯髄があります。歯髄は、神経の通っている組織です。

歯根の表面は、セメント質におおわれています。セメント質の下に象牙質、その内側に歯髄があります。

[歯牙腫の種類]

歯牙腫には、2種類あります。複雑性歯牙腫と集合性歯牙腫です。

➀複雑性歯牙腫

歯は、表面からエナメル質・セメント質、その下が主成分の象牙質、象牙質の内側に歯髄があるという構造になっています。

複雑性歯牙腫は、この歯の構造組織がバラバラになって、不規則に顎の骨の中に埋まっている状態です。歯の各組織が複雑に折り重なっています。

複雑性歯牙腫は、下顎の大臼歯付近、つまり下顎の奥歯の骨の中にできやすいようです。下の左右の奥歯2~3本の辺りの骨の中です。

②集合性歯牙腫

集合性歯牙腫は、歯の構造組織とよく似た組織が骨の中に埋まっている状態です。小さな歯がいくつも骨の中に埋まっていると思ってくださいね。本来ならば、歯の無い場所に不要な歯がいくつもできているのです。

集合性歯牙腫は、上顎の門歯や糸切り歯の付近の骨の中にできやすいようです。

歯牙腫の症状と治療が必要な理由

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歯牙腫は時間をかけてゆっくりと発生します。自覚症状は、ほとんどないことが多いようですが、腫瘍が大きくなると症状が出てきます。

[歯牙腫が発生しやすいのは・・・?]

歯牙腫が発生しやすいのは、10代から20代と言われます。

この年頃は、歯列矯正の必要があったり、永久歯の生えるのが遅いのが気になったりして、歯医者さんを訪れることが多くなります。歯牙腫は、歯医者さんでレントゲン撮影をすれば、すぐにはっきりわかりますから、歯医者さんを訪れて、偶然発見されることが珍しくありません。

若い人の歯牙腫が発見されやすい理由はわかりますが、なぜ若い人に発症が多いのか、歯牙腫の原因がまだ不明な点が多いのと同様、よくわかっていません。

遺伝的に歯牙腫が発生しやすい人もいるようですが、まだはっきりしていません。

歯牙腫の発生には男女差はないようです。

[歯牙腫の症状]

歯牙腫はゆっくりと成長します。自覚症状はほとんどありません。しかし、腫瘍が大きくなると症状が出たり、支障を生じたりするようになります。

➀歯の生え変わりが遅い・永久歯がなかなか生えてこない

歯牙腫が大きくなると、永久歯が生える場所を塞いでしまうことがあります。そのため、なかなか永久歯が生えてこないので、歯の生え変わりが遅くなります。

ようやく永久歯が生えてきても、歯牙腫に邪魔されているので、歯並びが悪くなります。

歯の生え変わりが遅いのを心配して歯医者さんを訪れ、歯牙腫が見つかることが、よくあります。

②歯並びが悪くなる(歯列不正)

歯牙腫が大きくなると、健康な歯を圧迫して歯並びが悪くなります。初めはきちんと並んで生えていた歯が、いつの間にか歯列が乱れて、歯並びが悪くなるようなら、歯牙腫の可能性があります。歯医者さんに相談することをオススメします。

歯並びが悪いと、食べ物を噛みにくくなります。発音にも支障が出ます。それだけではありません。10代のような成長期に歯並びが悪いと、顎の骨の形成に支障が生じたり、舌や唇の筋肉の働きに悪影響が出たりします。また、歯並びが悪いと、唇や口の中を傷つけやすくなります。歯ブラシが行き届かず、虫歯や歯周病の原因となります。

「たかが歯並び」と思いがちですが、歯並びは健康を維持するために重要なのです。

③歯根吸収

歯牙腫が歯根を吸収することがあります。歯根は歯を支えているので、歯がグラグラになります。歯が倒れて、歯列が悪くなることもあります。

④痛みや腫れが生じる、顎が変形することも・・・

歯牙腫は成長すると、顎の骨の内部から外部へ向かって大きくなります。そのために、歯牙腫があるところが、腫れて痛むようになります。

歯牙腫が大きくなって顎の骨が膨らみ、顎が変形してしまうこともあります。

歯牙腫が大きくなると、細菌感染を起こすこともあります。炎症が生じて、激しく痛むことがあります。

「口の中が腫れて痛い」と言って、歯医者さんを訪れ、歯牙腫が発見される場合も多いようです。

[歯牙腫を放っておいては、いけないの?]

歯牙腫は良性腫瘍です。しかも、ゆっくりと成長しますから、長年、何の症状もなく、自分では全く気づかなかった人が少なくありません。虫歯治療などで歯医者さんを訪れて歯牙腫が見つかり、ビックリする人もいます。

何の症状もない良性腫瘍ならば、放っておいてもいいように思いますよね。痛みもないのに、わざわざハードな手術を受けるなんて、イヤですよね。

でも、いずれ、腫瘍が大きくなれば、痛みや腫れなどの症状が出てくることもあります。それだけでなく、歯牙腫は、積極的に見つけ出して、早めに手術で摘出する必要があるのです。

1, 歯牙腫のために、痛みや腫れ、顎の変形を生じる

症状に書いたように、歯牙腫が大きくなると、顎の骨を内側から外側に圧迫し、痛みや腫れを生じたり、顎が変形することがあります。

顎が変形すると、嚙み合わせが悪くなったり、発音しにくくなったりします。見た目も悪くなりますね。歯や歯茎にかかる負担が大きくなります。

2, 歯牙腫が他の健康な歯を圧迫して成長を妨げる

歯牙腫が大きくなると、他の健康な歯を圧迫して、正常な成長を妨げます。歯牙腫が発症するのは、成長期の人に多いので、歯の正常な成長が妨げられると、いろいろな支障が出ます。

3, 歯牙腫のために歯列不正が生じる

歯牙腫が大きくなると、永久歯が生える場所を塞いだり、歯並びを悪くしたりします。また、歯根吸収で歯がグラグラしたり、他の健康な歯を圧迫したりして、歯列を乱します。

歯牙腫があると、歯列矯正を行うこともできません。

歯並びが悪いと、虫歯や歯周病になりやすいだけでなく、顎の骨の形成や舌や唇の筋肉の働きにも支障が生じます。健康面でいろいろな問題が生じるのです。

4, 歯牙腫はまれに悪化することがある

歯牙腫は良性腫瘍ですが、絶対に悪化しないという保証はありません。まれに悪化して、悪性腫瘍に変化することがあります。早めに摘出する方が無難です。

歯牙腫の治療

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歯牙腫の治療は、口腔外科による摘出手術しかありません。かなりハードな手術で、身体にかかる負担が大きくなります。歯牙腫の状態によっては、長時間の手術になるので、入院する場合もあります。手術後に永久歯が生えやすいように処置することもあります。

[どの病院へ行けばいいの?]

歯牙腫はふつうの歯医者さん(歯科医院)で発見できますが、治療は「口腔外科」で行います。

口腔外科医のいる歯科医院もありますが、入院設備まである歯科医院はめったにありません。総合病院か大学病院の口腔外科へ行くことをオススメします。

麻酔も、全身麻酔をすることもあるので、設備の整った総合病院や大学病院の方が、いろいろな問題に対処できます。

かかりつけの歯医者さんとよく相談して、紹介状を書いてもらうといいですよ。

[手術前検査]

歯牙腫は、X線検査(レントゲン撮影)とCT検査の画像で診断します。歯牙腫は画像にはっきりと出ますから、患部の位置や大きさを確認できます。

ただ、やはり腫瘍の一種ですから、組織を採取して病理検査を行い、良性腫瘍であることを確認します。

[摘出手術]

まず、口腔内を念入りに清潔にします。摘出手術中・手術後には細菌感染が起きやすくなりますから、手術前は、ふだんよりも念入りに口腔内を清潔にします。

次に麻酔をかけます。局所麻酔にするか、全身麻酔にするかは、患者さんの年齢・健康状態・歯牙腫の大きさや位置、摘出する歯の数によって決めます。

口腔内を切開して、歯牙腫のある場所の骨を削って、歯牙腫の本体(歯の組織)に至ります。歯牙腫本体を器具を使って摘出します。この時、外に取り出しやすくするために、歯牙腫本体を削ったり、割ったりすることがあります。

歯牙腫本体を全部摘出できたかどうか確認した後、洗浄して削りカスなどを残らず除去します。歯牙腫を摘出した後の空間を徹底的に洗浄します。

永久歯が歯牙腫によって生えるのを邪魔されていた場合は、歯牙腫を摘出した後で、骨を削るなどして、永久歯を生えやすくします。「萌出誘導(ほうしゅつゆうどう)」という処置です。

歯茎の切開した部分を縫合して完了です。

摘出する歯の数が多いと、手術は長時間かかります。萌出誘導まで行うと、数時間かかることもあります。しかし、歯牙腫を全部摘出してしまえば、再発することはほとんどありません。

[薬剤投与]

歯牙腫の摘出手術をする場合、術前・術後に抗菌剤や抗炎症剤、鎮痛剤などを服用します。

歯牙腫のために口の中が腫れて痛みがある場合は、抗炎症剤を服用して炎症を抑えてから手術することが多いようです。

手術中・手術後は細菌感染しやすいので、抗菌剤と抗炎症剤を服用します。また、術後の痛みを抑えるために、鎮痛剤を服用します。

[歯牙腫の治療は健康保険が適用できるの?]

歯牙腫の治療には、健康保険や社会保険が適用されます。

入院する場合は、疾病保険や生命保険の入院給付金や手術給付金が出ることもあります。手術する前に、保険会社に問い合わせるといいですね。

まとめ 歯牙腫は積極的に見つけて、治療しよう!

歯牙腫は良性腫瘍で自覚症状もあまりなく、気づかないことが多いようです。たいてい、歯牙腫が大きく成長して、症状が出たために見つかるのです。

しかし、自覚症状がなくても、歯牙腫は永久歯が生えるのを邪魔したり、歯並びを悪くしたり、健康な歯の成長を妨げたりします。歯並びが悪かったり、健康な歯が育たなかったりすると、健康面でいろいろな問題が生じます。歯は口の中だけのことではなく、全身につながっているのです。

歯牙腫は10~20代の人に発症しやすいのですが、歯の健康な成長は高齢者になってから大きく影響します。自分の健康な歯が残っている人ほど健康で長生きできます。認知症の発症を抑えたり、進行を遅くしたりします。歯は一生を左右するものなのです。

ですから、歯牙腫は「見つかるまで知らん顔をする」のではなく、「積極的に見つけて治療する」ことが大事なのです。定期的に歯医者さんの健診を受けて、虫歯などの治療するついでに、歯牙腫の有無を確かめるといいですね。X線検査で簡単に見つかりますから、面倒なことは少しもありません。

歯牙腫が見つかったら、できるだけ早く摘出手術を受けてくださいね。歯牙腫が小さくて、痛みや腫れなどの自覚症状が出ていない方が、手術も簡単です。ただ、身体にかかる負担は大きいので、体調の良い時を選ぶことが大事です。

健康と美容のために、歯牙腫は積極的に見つけて治療することをオススメします

  
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