精神分裂病の症状をチェック!治療方法を知って向きあおう!

精神病・精神疾患というと、すぐ精神分裂病とかうつ病、躁うつ病などが思い浮かびます。その中でも、精神分裂病は昔からよく知られています。芥川龍之介や夏目漱石など優れた文学者が精神分裂病と診断されています。また、詩人で彫刻家の高村光太郎の妻、高村智恵子も、精神分裂病で苦しみました。

現在では統合失調症と呼ばれます。精神分裂病を発症すると、社会生活を送ることが困難になります。「恐ろしい精神病」という印象が強く、自分自身はもちろん、家族や周囲の人々も悩み苦しみます。

でも、精神分裂病を発症しても、決して悲観することはありません。早期に発見して、適切な治療を受ければ、社会復帰することができます。最近では、効果的な治療法もいろいろ開発されています。

精神分裂病の症状と治療法、社会復帰の方法について、お話ししますね。

精神分裂病(統合失調症)とは・・・

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「精神分裂病」という病名は、2004年まで使われましたが、現在では「統合失調症」と呼ばれます。ドイツ語では「schizophrenie」英語では「sghizopherenia(スキゾヘレニア)」、略してSZと言います。「物事をつなげて考える働きに障害がある」という意味で、「精神が分裂している」という日本語訳と少し違っているようです。

ここでも、統合失調症という病名を使いたいと思います。

統合失調症とは、「思考と行動を統合し、まとめる能力が低下して、妄想や幻覚が生じて、まとまりのない行動をとるようになる」精神疾患です。「認知・思考・感情・知覚・言語などの働きに歪みが生じて、幻聴・幻覚・異常行動などの症状が出る」精神疾患とも言います。

[統合失調症(精神分裂病)は脳の病気、それとも心の病気?]

精神、つまり心に歪みが生じて、感情や行動が異常になることを、「精神疾患」「心の病」と言います。かなり広い意味で使われ、その中に精神病が含まれています。

ノイローゼ(神経症)や心身症、多重人格などは、精神疾患です。脳に器質的異常はなく、心理的・社会的要因によるストレスなどが原因となることが多いようです。まさに、心の病気と言えます。

精神疾患の中には、心理的発達障害・精神遅滞・人格障害なども含まれます。精神病は、外因性と内因性の2種がありますが、どちらも脳に異常があります。

外因性の精神病

➀脳に外傷を受けたり、炎症や脳梗塞を起こしたりして、脳に器質的な異常を生じて発症します。脳腫瘍・アルツハイマー症・脳血管痴呆・脳梗塞による認知症などです。

②アルコールや覚せい剤、麻薬などにより精神・行動に異常を生じることです。アルコール等の依存症、麻薬等の薬物中毒症などです。

内因性の精神病

まだはっきりしていませんが、脳の神経細胞や神経伝達物質などの異常が疑われる精神疾患です。

➀統合失調症

考えがまとまらないため、支離滅裂な言動をとり、日常生活を送ることが困難になります。幻覚や妄想があります。

②双極性障害(躁うつ病)

気分障害・感情障害といわれます。正常範囲を超える高揚した気分や落ち込んだ気分が長く続きます。「うつ病」「躁病」が含まれます。

③非定型精神病

統合失調症と双極性障害のどちらとも言えない状態です。

統合失調症(精神分裂病)は、広い意味では心の病気と言えます。しかし、今は、「脳の神経に障害が生じる」として、脳の病気という精神科医が多いようです。

[統合失調症(精神分裂病)を発症するのは・・・]

統合失調症を発症しやすい年代は、10代後半から30代前半が多いとされています。若い時に発症しやすいので、昔は「破瓜症」と呼ばれました。破瓜とは「16歳の少女」のことです。高齢者や子供は、あまり発症しません。

子供はまれに「小児分裂症」と呼ばれる精神病を発症します。高齢者は、症状が似ていても「認知症」や「脳腫瘍」など他の病気のことが多いものです。

100人に1人、120人に1人は発症すると言われます。それほど珍しい病気ではありません。統合失調症の発病には、いくつかの要素が関係しています。

1つは遺伝的要因です。「母親か父親のどちらかが統合失調症であれば、子供の発症率は10倍、両親ともであれば、40倍になる」という統計結果が出ています。そのため、遺伝が関係していると考えられますが、遺伝子があるからといって、必ず発症するものではありません。

もう1つの要因は脳の神経伝達物質の異常です。「特にドーパミンが深く関係している」という説がありますが、まだはっきりしていません。

3つめの要因が心理的・社会的ストレスです。ストレスは統合失調症再発の引き金となります。ただ、ストレスが単独で統合失調症の直接原因となることはありません。

この3大要因が互いに影響し合って、統合失調症が発症するようです。精神的に脆弱な体質を受け継いでいる人が、何らかの原因で脳内の神経伝達物質に乱れが生じ、そこへ強い心理的・社会的ストレスが加わると、発病してしまうようです。

また、母親が妊娠中にウィルス感染したりして、脳神経に障害が生じることが発症に関係するという説もあります。

統合失調症(精神分裂症)の症状とは・・・

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統合失調症(精神分裂病)の最も大きな特徴は、思考や感情が分裂して、日常の家庭生活や社会生活を営むことができなくなるということです。

他人と話している時、相手が何をいっているのか、自分がどう対応すべきなのか、わからなくなってしまい、言動がぎくしゃくします。服を着たり、料理をしたりする時、順序立てて考えることができず、作業の手順がわからなくなります。ふつう、当り前にしていることができなくなり、悩み苦しみます。

統合失調症(精神分裂症)の症状には、陽性と陰性があります。

[陽性症状]

幻覚・幻聴があり、妄想が生じます。安定感が失われ、興奮状態になります。「眠れなくなり、リラックスできない」と感じます。

幻聴とは、「実際に聞こえるはずのない声や音が、聞こえてしまう」ことです。「通りすがりの人に悪口を言われた」「電磁波が聞こえる」「頭の中に、神が話しかけてくる」などと言います。

幻覚には、幻視(幻が見える)・幻味・幻臭などがあり、ふつうは感じない身体的症状を感じ取ることもあります。

知覚が過敏になります。音や臭い、気配に対して過剰に敏感になり、光を眩しく感じます。

妄想とは、「客観的に考えてあり得ないことを事実だと確信する」ことです。あり得ないことを事実と信じ込むために、異常な行動をとるようになります。

妄想にはいろいろあります。「クラスメートに嫌がらせをされている」などという被害妄想、「監視カメラで見張られている」という注視妄想、「俺はノーベル賞候補だ」という誇大妄想の他、「電磁波攻撃を受けている」「神のお告げが聞こえる」「夫は他の女を愛している」などと信じ込みます。妄想には幻聴をともなうことが多いようです。

[陰性症状]

集中力が続かず、意欲が失われ、自信がなくなります。感情が鈍化して、喜怒哀楽がはっきりしなくなります。倦怠感疲労感が強く、勉強や仕事を続けることができません。一見、怠けているように思われます。

考えがまとまらないので、こみいった話ができなかったり、話があちここ飛んだりします。人と会話するのが苦手になり、自分で物事を決めていくことが難しいと感じます。

無表情になり、自閉傾向(自分の内部に閉じこもる)や「ひきこもり」が起きたりします。人と交わることをしなくなり、全く口を利かなくなったり、面会を拒否したりします。

自傷行為(自分で自分を傷つける)をすることもあり、自殺に至ることもあります。

[その他の症状]

認知機能に障害が出ます。記憶力・注意力・集中力・判断力・理解力・実行力などの知的能力が低下します。

不安感・緊張感・抑うつ感が高まり、時にはパニック発作を起こします。逆に、強い挑戦的態度をとることもあります。

自殺率が高く、患者の10%以上と言われます。陽性症状が強い患者は、妄想から逃げようとして自殺することが多く、陰性症状が強い場合は、わずかな不安感から自殺に走ります。

統合失調症(精神分裂病)の治療と社会復帰の道

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統合失調症(精神分裂病)は、「治療不可能」とか「重度の精神病」などと言われ、絶望的な暗いイメージがありました。しかし、現在では、病気の原因を解明する研究も進み、早期に発見すれば、早く社会復帰することができるようになります。

診断と治療は、精神科で受けます。心療内科を受診しても、たいてい精神科を紹介されます。精神科は「精神疾患・精神病」を扱い、心療内科は「主として心身症」を扱います。

[治療法]

治療法は、➀薬物療法 ②心理療法 ③社会におけるリハビリテーション の3つに大別できます。治療の中心となるのは、薬物療法です。

薬物療法

統合失調症(精神分裂病)が、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質のアンバランスと大きく関わっていることがわかってから、効果的な治療薬がいろいろ開発されています。第二世代抗精神病薬と呼ばれるものです。

第二世代抗精神病薬とは、ジプレキサ・ルーラン・リスパダール・セロクエルなどのことです。

第二世代抗精神病薬は、陽性症状だけでなく、陰性症状にも効果があります。従来の薬は、「陽性症状にしか効かない」と言われていました。また、手足が震えたり、身体が強張ったりする副作用がないので、社会復帰しやすくなっています。

第二世代抗精神病薬は、扱いに注意が要ります。➀ 1種類の薬しか投与しません。従来は、効き目の同じ薬を多種類投与していました。② 適正量を服用します。適正量を超えて多量に服用すると、効果は上がらず、副作用ばかり増えます。

ですから、第二世代抗精神病薬は、必ず精神科医の指示に従って服用することが大事です。

心理療法

心理療法は、薬物療法の効果を高めるために、薬物療法とともに行います。認知行動療法と心理教育が行われることが多いようです。

認知行動療法は、現在、心理療法の中心となっています。認知療法とは、患者さんの考え方を修正して適正方向に導きます。行動療法は、患者さんの行動をより適切に変えていきます。

心理教育は、患者さんに「自分は統合失調症を発症していて、思考や感情に歪みを生じている」ことを意識してもらうようにします。病気の意識を持つことで、薬物療法や心理療法をきちんと受けることができます。

[社会復帰への道]

第3の治療法「社会におけるリハビリテーション」は、社会復帰への道でもあります。

適切な指導により、患者さん自身が「自分が統合失調症であることを自覚し、治療に必要な事柄を理解する」ことができるようになります。それができたら、病院で治療を続けるより、地域社会の中でふつうの生活を送りながら、治療を続ける方が効果的です。

地域の中でふつうに生活することが、何よりのリハビリテーションになります。病気のために家庭生活や社会生活がうまく送れないようになったのですから、地域社会の中で、人々とのコミュニケーションを少しずつ取り戻していくようにします。

ただ、統合失調症は、心理的社会的ストレスにより再発しやすいといわれます。再発を防ぐためには、患者さん自身が「どんなストレスに弱いのか」を知る必要があります。ふつうの社会生活を送りながら、ストレスを避けたり、対処したりする方法を見つけ、自分で再発を予防できるようにします。

長く入院するよりも、できるだけ早期に退院して、地域の中でふつうに暮らすことが、社会復帰の第一歩です。

ただ、症状の進行は速いのですが、回復には時間がかかります。特に、妄想や自傷行為が生じたりしていると、回復はゆっくりとしか進みません。患者さんも御家族も周囲の人達も、あせらないで、のんびりとリハビリテーションを続けてください。

[早期発見が大事]

どの病気でも早期発見・早期治療が大事です。統合失調症(精神分裂病)も早期に発見し、早いうちから薬物療法を行えば、効果が高く、早期に社会復帰できます。発見が遅れてこじれると、なかなか治療効果が上がらず、長期療養となります。

統合失調症(精神分裂病)を早期に発見するには、4つのサインを見逃さないことです。

➀ブツブツ独り言を言ったり、理由もなくニヤニヤ笑ったりします。不安そうで、いつも緊張しています。時には「みんなに悪口を言われている」などと言います。

②仕事や勉強にミスが多くなり、モタモタ行動するようになります。話にとりとめがなく、相手の話の内容をつかめず、会話がぎごちなくなります。

③趣味や遊びにも興味を失い、ゴロゴロしていることが多くなります。人と会うのを嫌がり、引きこもりがちで、身なりもかまいません。

④喜怒哀楽をあまり感じないで、無表情になります。他人の感情を理解しにくくなります。

家族や周囲の人は、以上4つのサインを見逃さないようにしてください。また、自分自身でも、「あれ?おかしいな?」と思ったら、4つのサインが出ていないか、考えてくださいね。

まとめ

統合失調症(精神分裂病)は、決して珍しい病気ではありません。最近では、病気の原因解明などの研究が進み、とても効果的な治療薬が開発されています。心理療法も進歩しています。適正な治療を受ければ、早期に社会復帰できる病気です。悲観的になる必要は全くありません。

どんな病気でも早期発見が大事です。統合失調症の兆候を早くに見つけて、精神科で治療を受けることが、早期社会復帰につながります。

ただ、心の病、精神疾患は、統合失調症の他にもたくさんあります。症状や兆候が同じようでも、全く違う病気のこともあります。決して素人判断をしないで、精神科のお医者さんに気軽に相談してくださいね。

  
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