褐色細胞腫とは?診断方法や症状、治療法を詳しく知ろう!

褐色細胞腫という病状を知っていますか。この病気は、副腎にある副腎皮質に出来る腫瘍のことです。

この病気は他の病気の症状と似ていることから、症状の特徴だけで、褐色細胞腫と判断するのはとても難しく、また症状がない時に血液検査や尿検査を受けても数値が正常を示す場合もあり、この病状に辿り着くまでに時間を費やす場合もあります。

実際に健康診断で副腎に腫瘍が見つかった方でも、半年以上かかって褐色細胞腫と診断された方もいらっしゃいます。どんな病気も早期発見・早期治療が大切です。

ここでは、この病気の症状や原因を知り、同じような症状が現れているなどの疑いのある方の情報収集や病気への早期発見に繋がれば幸いです。

褐色細胞腫について

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褐色細胞腫の病状の概要と、副腎皮質やカテコールアミンの役割について詳しくご紹介します。

褐色細胞腫とは

副腎皮質に出来る神経内分泌系の腫瘍です。この腫瘍ができると、腫瘍からカテコールアミンが分泌され、心拍数や血圧の調整が出来なくなります。この状態になると、高血圧になったり、頭痛や血糖値の上昇など様々な症状が現れます。

この副腎皮質に腫瘍が出来たとしても、ほとんどのものは良性で、骨や肝機能などの他に転移を繰り返すような悪性のものは10%程度の低い確率だと言われています。しかし、検査の結果から腫瘍が発見されたとしても、その腫瘍が悪性のものか良性のものかを判断するこは難しいので、手術で摘出するのが一般的な治療方法です。

しかし、良性のものを手術で取り除いたとしても、再発したことも報告されており、手術後も長い期間に渡り経過観察をする必要が出てきます。悪性だった場合の治療方法は、残念ながら今のところ有効なものがない為、延命治療になります。

この病気は男女差は特に関係なく40代~70代に発症しやすく、高血圧や糖尿病と合併症を引き起こしやすいので、そうなる前に生活習慣の改善が必要です。腫瘍の大きさは様々ですが、直径5cm~6cmで、重さ50g~200g程度あると言われています。

副腎皮質とは?

人には生命維持のために必要な臓器が体の中にたくさんあり、それらの臓器は無意識の内に日々活動を続けています。その内の1つに、腎臓の上に覆いかぶさるように位置する副腎と呼ばる臓器があります。

副腎は、副腎皮質と副腎髄質という2つで構成されています。副腎皮質からは血圧や糖、性ホルモンの調整を行う、ステロイドホルモンが分泌されます。

副腎髄質からはカテコールアミン(ドーパミン、アドレナリンやノルアドレナリンと呼ばれる神経伝達物質)が分泌されて、主に体におこるストレスなどをコントロールしています。これらの神経伝達物質を分泌して脳に情報が伝達し、心拍数や血圧を上昇させて、やる気や意欲が出たり、思考回路が活発に働きます。

カテコールアミンの役割とは?

ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンを神経伝達物質の1つで、これらを総称したものをカテコールアミンと呼びます。ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリンの順序で生成されている為、これら3つの役割はほとんど似ています。

幻覚や幻聴、異常行動がみられると言われている総合失調症患者や一部のうつ病患者はこれらの分泌機能が低下していると言われているように、やる気や意欲などの精神面や運動能力向上などに主に関ってきています。

■ドーパミン

アドレナリンやノルアドレナリンを生成される前段階のものを指します。ドーパミンは、運動機能の調整、ホルモン調整、喜びの感情、意欲や学習などに大きく関っています。

■アドレナリンとノルアドレナリン

この2つは名前も似ているように、同じような役割をしています。ストレス反応の役割を中心とし、アドレナリンが分泌されると脳に心拍数や血圧、血糖値を上昇させたり瞳孔を開くように伝達されます。

通常では興奮したときや危険を察知すると、これらが分泌され、心拍数や血圧・血糖値を上昇させて、適度な緊張感をつくり、やる気や意欲、集中力、判断力を上げたり、感覚の麻痺などの効果があります。また、これらの他にアドレナリンには筋肉を増強して運動能力を高める効果があります。

アドレナリンとノルアドレナリンの2つに特に大きな違いはありませんが、アドレナリンは運動能力を向上させ、ノルアドレナリンは精神にも作用して感情をコントロールするという特徴があります。

褐色細胞腫の原因と主な症状

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ここでは主な原因と症状をまとめ、どのような方法でこの病状が発見されやすいかを紹介します。

褐色細胞腫の原因

副腎皮質に腫瘍細胞が出来、その腫瘍細胞からカテコールアミンと呼ばれる神経情報伝達物質が過剰に分泌されることで、血圧や血糖、心拍数の調整に影響をきたす病気です。

原因は残念ながら明らかにされておらず、急に腫瘍が発生することが多いですが、一部の患者さんの中には遺伝的に病気になりやすく、このような腫瘍ができる場合があります。

主な症状

カテコールアミンが多く過剰に分泌されることにより、様々な症状が現れます。カテコールアミンの役割としている心拍数、血圧、血糖値が上昇する身体的な異常と、不安になるなどの精神的な症状がみれられます。

身体的な異常

  • 高血圧
  • 頻脈
  • 血糖値の上昇
  • 慢性的な脱水症状
  • 顔面蒼白
  • 頭痛
  • 発汗過多
  • 動悸
  • 嘔吐
  • 体重が減少する
  • 胸が痛い
  • 見えずらいなどの視力障害
  • 便秘

精神状態の異常

  • 不安感
  • ストレス
  • 緊張状態

この病状を持つ50%以上の人が上記のような症状が、発作的に現れてくるのが特徴で挙げられます。中でも、高血圧と顔面蒼白が多く挙げられています。その他に、腫瘍の部分を圧迫するような姿勢をしたり、食事や排便などの腫瘍に圧力をかける状況で誘発されやすいと言われています。

急に発作で高血圧になったり、不整脈を起こすと、心配停止に至ることもあります。

どのように発見されるか?

基本的には、健康診断などの腹部の超音波やCT、MRIなどを通して腫瘍が確認されてから、この腫瘍が何かを特定する方法が一般的な流れになっています。

その理由として、特徴として挙げられている症状が他の病気の原因も考えられやすい症状ばかりの為、症状だけで短期間で病状を疑うのは困難です。実際に、腫瘍が発見されて半年後に褐色細胞腫と診断結果を受けた方もいます。

また、血液検査や尿検査により、どのくらいホルモンが分泌されているかを測定し判断できますが、症状が現れている発作中でない時に検査しても正常な値を示すことが多い為、発作時以外に受診した場合、発見が遅れる可能性が高いです。

発作のような症状が何度も起こると、命の危険を招きます。上記で挙げたような発作症状が続いたり、症状がよくならない場合は、精密検査を受け原因を突き止めることが重要です。

褐色細胞腫の治療方法

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見た目で腫瘍が良性か悪性化を判断するのは、難しいといわれており、転移がみられてから初めて悪性腫瘍と判断されることも多くあります。腫瘍が発見された場合は、まずは内服薬投与で血圧を抑え、病状の根本を解決する為に、手術で摘出するのが一般的です。

摘出後にたとえ良性と判断されたとしても、再発や悪性腫瘍の場合も念頭にいれて、長い期間、経過観察されることをおススメします。

内服薬

原因となるカテコールアミンの作用を阻害するα遮断薬の投与や血圧を下げる薬を投与し、上昇している血圧を正常にコントロールします。摘出手術をする前に投与を行い、日常のホルモンバランスの調整します。

手術

根本的な治療方法は、腫瘍を摘出することです。腹腔鏡下手術と呼ばれる、お腹から内視鏡器具を入れて手術を行う方法が一般的にとられます。6cm以上の大きな腫瘍に対してもこのような方法を取りますが、悪性腫瘍の場合で、進行がみられ周囲に広がっている場合は、この方法は適用しません。

手術後24時間以内は、低血圧や低血糖に関する注意が必要があり、必要であればカテコールアミンを投与して、血圧や血糖値の調整を行います。

化学療法(CVD療法)

この病状の10%の確立で発症するといわれている、悪性褐色細胞腫だった場合は、別の治療方法が取り入れられます。現在は、有効的な治療法は見つかっていないといわれていますが、摘出手術やCVD療法MIBG照射を取り入れて長期的な治療を行います。

CVD療法による化学療法の1つで、簡単に言うと抗がん剤治療です。この治療の効果は腫瘍範囲の50%~80%程度が小さくなり、その効果は1年から2年程度は持続すると言われています。

この抗がん剤投与による副作用は、発熱,血管痛,消化器異常,骨髄抑制,肝機能障害などの副作用が起こります。この方法は、根本的な治療の解決にはならないですが、延命治療の1つとして取り入れられています。

放射線治療(MIBG照射)

手術での摘出が不可能な悪性腫瘍や腫瘍が転移した場合、化学療法に効果が見られない場合などに、この放射線治療を用います。この治療方法は、日本国内ではこの薬自体の承認が行われていないために認知度のとても低い治療方法です。

日本国内では患者さん本人が個人でこの薬を海外から輸入して治療に使っているのが一般的なようです。入院費用の他にMIBGの薬代と運送費、入関手続などの金額がかかるため、治療費用も高額になります。

妊婦の方や腎臓の機能障害のある方、造血機能障害の患者さんには対応できない方法です。悪性褐色細胞腫に放射線治療の感受性見込めない為、腫瘍範囲の30%~40%程度が小さくなると言われていますが、劇的な治癒効果はなく、放射線治療同様、根本的な治療の解決にはならない為、延命治療の1つとして取り入れられています。

また、上記の他に、肝臓や骨など別の機能に転移がみられた場合は、転移した場所によって対処方法が異なります。

まとめ

この病気の一番やっかいなところは、症状が出来にくいところや症状に特徴的なものが少ない為、他の病気も疑われて発見が遅くなることです。早期発見・早期治療を行うためには、定期的に健康診断を受け、特に年齢が40代以降の方はMRIの検査など、腫瘍が発見されるような検査内容を取り入れることをおススメします。

この病気は悪性でない可能性が高く、悪性でない場合は手術で摘出したり、内服薬投与で完治できる病状です。その為、発作的な症状が出て命の危険に関る前に、健康診断を定期的に受けて予防対策することが重要です。

  
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