怪我や捻挫もしていないのに、歩くと足首の外側が痛いなんてことはありませんか?足の小指の付け根あたりを触るとぽっこりと骨が出ている部分があると思いますが、この部分が痛んだ場合もしかしたら短腓骨筋腱付着部炎になっている可能性があります。
この短腓骨筋腱付着部炎とは、足を酷使すること(スポーツや運動、歩きすぎ)によって引き起こるもので、症状としては主に歩く、走るなどの普段の基本的な動作で痛みが生じます。最初は我慢出来る痛みでも時間の経過とともに症状が悪化し激痛で歩くのも困難になるため、とてもやっかいな症状と言えます。
今回の記事では短腓骨筋腱付着部炎の症状と原因、治療法を詳しく紹介します。
短腓骨筋腱付着部炎の症状と原因
短腓骨筋腱付着部炎は普段からウォーキングやランニングなどの運動を習慣にしている方に多く引き起こる症状で、きっかけ(怪我、捻挫)が無い分気付きづらく、対応が遅れることが多いようです。
足のどこの部分に痛みを生じるのか、また詳しい症状と原因について調べてみました。
短腓骨筋腱付着部炎とは?
「腓骨筋腱」とは脛の外側から足の外側を通って足先の方まで付いている筋肉の付き目付近の腱のところが使い過ぎなどによって「炎症」を起こしてしまっている状態のことです。
また、腓骨筋腱には「短腓骨筋腱」と「長腓骨筋腱」とあり、短腓骨筋腱は第5中足骨基底部と呼ばれる足の骨に付いています。長腓骨筋腱は内側楔状骨、第一中足骨基底部と呼ばれる足の骨に付いており、それぞれ筋肉の始まりと途中まで通っている場所も一緒ですが最後の方でこの「短腓骨筋腱」と「長腓骨筋腱」はそれぞれ分かれて付く場所が違います。
ここで繰り返される骨と腱の付着部の引っ張り合いによって腱の炎症が生じ、短腓骨筋腱付着部炎が引き起こるのです。
靴のサイズや足の形に合わない靴を履いている
デザインが好きだからと足の形に合わない靴を無理に履き続けていると短腓骨筋腱付着部炎の原因となってしまいます。また、外反母趾や足の変形、O脚の原因や歩き方まで変わり骨格が歪んでしまうこともあるようです。
サイズは正しく、足の形に合った靴を選びましょう。
外側に体重をかけすぎている
立っている時や歩いたり、走ったりする際に無意識に足の外側に体重をかけていませんか?過剰の体重のかけすぎは足の外側や腓骨に負担がかかり、痛めてしまうケースがあります。
着地する際は外側でも問題はないのですが、出来るだけ拇指球から抜けていくように意識して外側だけに重心がいかないように注意しましょう。
ランニング(ウォーキング)の着地が激しい
ランニングやウォーキングをする際、足の裏を付ける動作で力を入れすぎていたり、着地する時に物音を立てるような走り方、歩き方をしていると衝撃を吸収するアーチ部分が力の入れ過ぎによって裏側の足の甲にまで痛みが波及してしまいます。
特に短腓骨筋腱付着部炎は地面から一番近い所が患部なので、着地の仕方が発症に関して大きく関わってきます。靴のサイズが合っていなかったりすると余計に負担がかかってしまいます。
着地は力を入れ過ぎず、スムーズに着地ができるように意識しましょう。
短腓骨筋腱付着部炎の治療法
長引きやすく慢性化しやすい短腓骨筋腱付着部炎は一度発症するとなかなか治りずらいものです。スポーツが生活習慣の一つになっている方は特にその習慣から抜け出せず、ライフスタイルを変えられないというところから精神的苦痛を伴います。
しかし、最初は軽い症状でも放置していると歩くのも困難なほど悪化する場合があるので早期対処と治療が必要です。
短腓骨筋腱付着部炎を発症した際の詳しい治療法を調べました。
足を酷使せず、安静にする
スポーツなどによるオーバーユース(使い過ぎ)による負担と足の外側に体重を過剰にかける、足に合わない靴を履き続けるなどが、発症の主な原因です。
まずは必要以上に足に負担をかけないよう患部を「安静」にするようにしましょう。最初は大したこと無いと思って負担をかけ続けているとどんどん悪化します。また、良くなったと思い、また無理をするとすぐ再発してしまうこともあるので、4日は様子をみるようにしましょう。
そのために、スポーツは症状の程度に応じて一時休止するようにしましょう。大切なのは、「再発は絶対しない」と確信が持てるまで安静にすることです。
患部を冷やす、鎮痛処置をする
炎症した患部を「冷やす」か「温める」かで悩む方が多いと思いますが、「冷やす」のが一番効果的です。痛みを感じる部位には氷水で冷やしましょう。
ただし、冷やし過ぎは身体にも良くはないので10分~15分を目安に冷やすのがちょうどよいでしょう。「冷えピタ」などではなくきちんと氷水で冷やして下さいね。
また患部を冷やしても痛みが続く場合は鎮痛処置として湿布や消炎鎮痛薬の処方を受け痛みと炎症を抑えましょう。一時的な鎮痛処置なので、痛みが引いても無理は禁物です。
・治療法③姿勢やランニングフォームを見直す
上記でも記載しているように、普段から足の外側に重心をかけてしまう方は当然走っても足の外側に負担をかけてしまっていることになります。特にO脚やがに股の方は注意が必要です。
また、足の外側から着地してしまう癖も意識して直すようにしましょう。外側に乗らないように意識しすぎて他の場所を痛めないように注意するのも大事です。地面との接触時間も関係してくるため踏み込む時間が長くならないように気をつけて下さい。
靴の見直しとソルボヒールの活用
足の形に合わない靴を使用し続けてはいませんか?何度も試着して、足の形(足の長さだけではなく、足幅や指の形)に合ったものを選びましょう。
また、「ソルボヒール」というヒールパット(中敷き)は踵だけのインソールみたいなもので、踵を高くしてあげることによって腓骨筋の負担を軽減してくれます。一つでも充分だったりしますが、症状が重い場合はソルボ社製のヒールパットとウェッジヒールパットの二つを活用するのがよいでしょう。
ヒールパットは踵全体にクッション性を与える事によって踵から足への衝撃吸収作用があります。踵の高さも上がるので「腓骨筋」の急カーブを和らげてくれます。
ウェッジヒールパットは踵にクッション性は多少ありますが、主な役割として踵の外側に高さを出すことで体重が外側に乗りすぎないようにカバーしてくれます。この働きが「腓骨筋腱炎」に有効なので優先的にウェッジヒールパットを使用するようにしましょう。
ヒールが高い靴にウェッジヒールパットを使用すると更に底上げしてしまい歩きづらくなるのでヒールパットだけにしたり、シューズの場合は両方重ねて使用するなど、靴によって使い分けるのがよいでしょう。
注射による改善
痛みが激しい時は注射による治療も改善効果が期待できます。痛みを抑える「局所麻酔」や炎症を抑える「ステロイド注射」がありますが、ステロイド注射は使用しずぎると筋肉や腱を弱くしてしまいます。お医者様と相談しながら行うとよいでしょう。
理学療法
理学療法とは病院などで行われるリハビリになります。
・電気治療
痛みがあるところを中心に低周波などを流し、痛みを緩和します。
・温熱治療
上記の治療法の中で患部を冷やすのが効果的とありましたが、医療機器を使用した温熱治療は血流の促進と緊張の緩和を目的とした治療になります。
・マッサージ
「腓骨筋」の緊張を和らげたり、働きやすくすることを目的に患部周辺を中心にマッサージを行います。
・ストレッチ
「腓骨筋」に効くストレッチを行うことで緊張を緩めたり、症状を改善すると同時に普段からの予防にも繋がります。
【ストレッチ方法】
- あぐらをかくようなポーズで床に座る
- 左足を曲げ、右足を伸ばすようにする。左手で膝を持ち右手の方は足首を持つ
- 足首をもった手で足の甲に触れるようにゆっくり伸ばし、時々回しながらストレッチをする。左右の手足を逆にして②、③の動作を繰り返す
短腓骨筋腱付着部炎のテーピング方法
痛みの軽減を目的としたテーピング法もおすすめです。使用するテープは伸縮性のある「キネシオテープ」が使いやすいと思います。
【テーピング方法】
- テープは2本用意し、角は丸くカットしておく
- 1本目は痛みのあるところ(外くるぶし)から腓骨頭(膝下の外側にある骨のでっぱりまで)テープを張る
- 2本目は踵の内側から外くるぶしまで張る
テープでかぶれる場合は張る前に腓骨部分にかぶさるように包帯を3、4回巻いてから張るのがよいでしょう。
以上が短腓骨筋腱付着部炎の治療法になります。まずは自分で出来る治療法(安静にする、患部を冷やす、姿勢を見直す、インソールを付けるなど)で対処し、それでも痛みが引かないようであれば整形外科で診断を受けましょう。
まとめ
短腓骨筋腱付着部炎の原因と症状
・短腓骨筋腱付着部炎とは、足の甲の外側に痛みが発生している状態のこと
・スポーツなどによって足を酷使していたり、普段から重心が足の外側にかかっている、また足の形に合わない靴を履き続けいると短腓骨筋腱付着部炎の原因になる
短腓骨筋腱付着部炎の治療法
①しばらく安静にすること
②氷水で患部を冷やしたり、湿布などで鎮痛処置をする
③姿勢を正したり、ランニングフォームを見直す
④足の形にあった靴を履く、またソルボヒールを活用する
⑤注射によって痛みを緩和する
⑥理学療法を受ける(電気治療、温熱治療、マッサージ、ストレッチなど)
⑦テーピングで足を固定する
以上が短腓骨筋腱付着部炎に関してのまとめになります。運動部系の部活やスポーツをライフスタイルにしている方は自分でも気付かず足を酷使している場合があります。
一度症状が出てから無理をすると悪化するこ可能性があるので少し痛みを感じた時点で無理はせず、安静にしたり、冷やすなどしっかり対処することが短腓骨筋腱付着部炎の一番の予防になります。
是非、今回の記事を参考にして下さい。