みなさんは、耳下腺炎という病気を聞いたことがあるでしょうか。実は、おたふく風邪にかかった際に生じるのが、この耳下腺炎なのです。
おたふく風邪と聞くと、子供のころにかかったから、大人の方たちには無関係だと思っていませんか?
しかし、耳下腺炎は、おたふく風邪以外の原因によっても発症してしまう恐れがあり、大人の方たちにとって無関係ではありません。
本日は、耳下腺炎の原因、そして対策を紹介しようと思います。なかなか聞き慣れない症状だと思うので、ぜひとも参考にしてみてください。
耳下腺炎とは
では、最初に、そもそも耳下腺炎がどのような症状を指すのかを紹介します。
耳下腺炎とは、耳下腺や顎下腺が炎症を起こしてしまい、はれ上がってしまう症状を指します。耳下腺とは唾液をつくる複数の唾液腺のうちのひとつで、耳のすぐ下のあたりに存在します。顎下腺も、唾液腺のひとつで、耳下腺の次に大きな唾液腺です。
耳たぶ付近にある耳下腺に炎症が生じて腫れ上がると、耳たぶを挟む形になるのが大きな特徴です。顎下腺の場合は、顎のすぐ下が腫れあがってしまいます。
大人が耳下腺炎になった場合
大人の方が耳下腺炎を発症すると、耳の下にある耳下腺が腫れ、発熱や身体の疲労感、頭痛、咳や鼻水といった風邪によく似た症状が出ます。
しかし、耳下腺炎は様々な原因によって発症しますので、ただの風邪だといいきれないのが耳下腺炎の恐ろしいところです。
耳下腺炎の原因
では、具体的に、どのような原因で耳下腺炎が生じるのかを紹介します。
流行性耳下腺炎
これは、いわゆるおたふく風邪といわれる症状の正式名称です。
この病気の原因は、ムンプスウイルスによるウイルス感染によって生じます。冬から春にかけた寒い時期に、とくに保育園児や小学生といった幼い年代の方たちに流行するものです。ムンプスウイルスは、約2から3週間の潜伏期を経て発症するとされます。
そして、ムンプスウイルスに感染すると、耳下腺の片方、もしくは両方に炎症を生じさせて腫れあがらせます。流行性耳下腺炎の症状として挙げられるのは、耳下腺の腫れだけでなく、耳下腺の痛み、食事や水分を飲み込む際に生じる嚥下痛、発熱などが挙げられます。
ムンプスウイルスの感染は、長期にわたる場合であっても2週間程度とされていますが、合併症に注意を払う必要があります。合併症として発症する恐れが高いのは髄膜炎で、その他にも髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎といった症状を併発する恐れがあるので、単なるおたふく風邪だと甘く見ないことをお勧めします。
ムンプスウイルスは一度でも感染すると体内で免疫ができるので、再発する恐れは少ないですが、稀に再発することがあります。また、乳児に感染した場合、あまり重篤な症状とはならないので、腫れも少なく、感染したことに気づかないまま完治することがあります。
ムンプスウイルスは、特に幼い年齢の方に感染するのですが、感染することなく大人となった方については、免疫が備わっていないため感染する恐れがあります。そして、合併症を伴って重篤となる可能性があるので注意が必要です。
反復性耳下腺炎
反復性耳下腺炎とは、細菌、ウイルスの感染によって生じたり、アレルギーや免疫に何らかの障害があって生じる炎症のことで、流行性耳下腺炎とは異なる者です。
反復性耳下腺炎は、流行性耳下腺炎に比べて、耳下腺の腫れが小さく、発熱等を伴わないません。また、耳下腺の腫れ上がったり引いたりを繰り返すのが特徴です。
反復性耳下腺炎の場合、流行性耳下腺炎とは違い、他人に感染する恐れはないのですが、様々な原因によるものであるので、実は体の重大な病気を知らせるサインでもあります。耳下腺が腫れることが繰り返してある方は、注意が必要です。
口の中の乾燥
唾液腺の腫れの原因としては、体調の異常だけではなく口の中が強い乾燥しすぎてしまい生じることがあります。唾液腺が腫れるほどの乾燥としては、シェ―グレン症候群という病気の可能性があります。
シェーグレン症候群は、口腔乾燥や乾燥性角結膜炎を主な症状とするもので、リウマチ性関節炎や全身性エリテマトーデス、さらには進行性全身性硬化症や多発性筋炎などを併発する免疫疾患を指します。体内の免疫に異常をきたす病気ですから、早期の発見、治療が必要です。
また、加齢による身体機能の低下で、唾液の分泌量が低下することがあります。すると、口の中が強く乾燥してしまうので、結果として耳下腺の炎症を発生させ、腫れ上がってしまうのです。
唾石症
唾石症とは、唾液腺の中や導管の中に唾石と呼ばれる石ができてしまい、それが詰まっている状態を指します。大部分は顎下腺に生じますが、稀に耳下腺にも生じます。
唾石ができてしまう原因は、導管に炎症が生じること、唾液が長くとどまってしまうこと、唾液の性質が変化してしまうことが挙げられます。
食事をしようとしたり、又は食事中に、耳下腺に激しい痛みが伴うのが主な特徴ですので、唾石によって耳下腺に炎症を生じさせ、結果として腫れあがってしまうのです。
過食による嘔吐
過食による嘔吐は、一度に吸収しきれないほどの大量な食事をとった場合、体が拒否反応を起こしてしまい、食事をしたものを消化しきれず、それを嘔吐してしまう場合を指します。そして、過食による嘔吐は、継続的に繰り返されてしまうので、体に負担が大きいのが特徴です。
過食は、通常のからはあり得ない量の食事をとるので、口の中に食べ物を含む回数が多くなり、咀嚼の回数も多くなります。咀嚼の回数が多くなると多すぎる量の唾液が分泌されることになります。
過食によって耳下腺からの唾液の量が増えると、耳下腺が大きくなってしまいます。そして、嘔吐することにより、嘔吐の際に一緒に排泄された胃酸が口腔内を満たすため、炎症を起こす可能性が高くなります。
そして、口腔内の炎症が耳下腺まで及んでしまうと、過食によって唾液を分泌しなければならないのに、炎症によって耳下腺の出口がせまくなってしまい、結果として耳下腺が腫れあがってしまうのです。
この耳下腺の炎症は、過食が原因となって表れるので、過食症が改善されなければ、耳下腺の炎症を改善することは困難となってしまいます。
腫瘍による腫れ
耳下腺には、他の唾液腺と比べて腫瘍ができてしまう可能性が一番高く、耳下腺に出来た腫瘍によって、耳下腺が腫れあがることがあります。
耳下腺にできる腫瘍は、良性腫瘍と悪性腫瘍があります。良性腫瘍の特徴は、腫瘍が次第に大きくなる性質を有するので、痛みや神経を圧迫することで生じるしびれが生じないのが大きな特徴です。これに対して悪性腫瘍の場合は、腫瘍が成長してしまうと、痛みやしびれが生じてしまうので、注意が必要です。
耳下腺の腫瘍は、主に免疫力の低下したご高齢の方に発症する恐れが多いのですが、稀に若い方でも発症する可能性があるので注意しましょう。
耳下腺炎の対策
では、大人の方が耳下腺炎にならないため、又は耳下腺炎の恐れがある場合に、どのような対策を取ればいいかを紹介します。
過食症を克服する
過食による嘔吐で生じる耳下腺炎を治すためには、過食症を改善するしかありません。
過食症は、精神的なストレスにさらされていると生じてしまうので、ストレスをためない生活を心がける必要があります。また、過食症は自分の体重に対して過度なコンプレックスをもっている方に生じやすく、精神的に打たれ弱い方、りそうな体型でいなければならないとの、ある種の強迫観念から生じる恐れがあるのです。
ですから、自分の体型を気にしないように心がけることが肝要です。また、過食症になってしまう方は、自分一人で悩みを抱え、それを打ち明けられず、症状が重篤化してしまうことがあります。ですから、カウンセリングや精神外来といった、精神についての専門知識を有する方に協力を求めることが効果的です。
過食症で苦しむ方は、必要な量以上の量の食事をとってしまう反面、体重の増加に対して過度なこだわりがあり、太ることの恐怖心を有している方も居ます。そのため、家族の方の説得等、一緒に生活する方の多大な協力が必要となります。
また、過食症の方は、一人で悩みを抱え、それを過度な食事をすることによって忘れようとしている傾向が強いです。そのため、過食症の方のいる家族は、一人で食事をさせるのではなく、ともに食事をする中で、異変があったらそれを制止することも重要です。
口の中の乾燥を防ぐ
口の中の乾燥は、唾液の分泌量が少なくなることによって生じます。そのため、口の中が乾燥する方は、唾液が積極的に分泌されるような食事を積極的に摂取することをお勧めします。
唾液が積極的に分泌される食材の代表は、レモンや梅干などの酸味の強い食べ物です。また、唾液は咀嚼回数が増えると分泌量も多くなりますから、ガムといった咀嚼回数の多い食品も、唾液を増やすためには効果的です。
また、唾液分泌量の少ない方は、日常的な食事の際の咀嚼回数が少なかったり、ジャンクフードといった、あまり噛まなくても食べられる食材を採っているいる傾向があります。ですから、咀嚼回数の多い食材を積極的に取り入れたり、咀嚼の回数を意識的に多くすることが大切です。
病院での診察・治療
ムンプスウイルスの感染や、悪性腫瘍による耳下腺炎の場合は、医療機関での適切な診察・治療がされなければ改善されません。ですから、耳下腺炎による腫れの疑いがあると感じた方は、病院での診察を受けましょう。
まとめ
耳下腺炎とは、耳下腺という唾液腺が何らかの原因で炎症を起こし、腫れ上がった状態を指します。主な原因としては、ムンプスウイルスの感染によるもの、腫瘍によるもの、過食による嘔吐によるもの、口の中の異常な乾燥が挙げられます。
耳下腺炎の対策としては、病院での診察・治療のほかに、過食症を克服するための家族のサポートやカウンセリングの利用、唾液が積極的に分泌されるよう、酸味のついよものを積極的に食べたり、咀嚼回数を多くする食生活にすることが挙げられます。
耳下腺炎は、おたふく風邪だけが原因ではなく、大人の方にとって無関係とは言えません。ぜひ、この記事を参考に日々の生活を改善してください。