心不全とは?症状や治療方法、予防方法を知っておこう!

生命活動に欠かせない働きをしている心臓ですが、日々負担がかかりつづけることで機能が低下してしまう場合があり、これを心不全と呼びます。

心不全の原因は必ずしも心臓の病気ではなく、生活習慣なども大きく関わっています。心不全の治療と原因となる病気についてまとめました。

心不全とは

心臓病

心不全は病名ではなく、心臓の状態の事を指しています。

心臓の働き

心臓の役目は大きくわけて2点にわけられます。一つは体中に血液を送りだし血液中の酸素や栄養を全身に届ける事で、もう一つが肺とのガス交換により血液の中に酸素を取り込む事です。

人間の心臓は左右に分かれており、それぞれが一つずつの役割を持ちます。

まず、心臓の左側で行われる働きが「左心系」と呼ばれる循環のシステムです。左心房、左心室を通った血液は大動脈を通って全身の臓器に運ばれて行き、全身に酸素や栄養を供給します。

全身を経て帰って来るルートが「右心系」です。静脈に戻って来た血液は右心房、右心室を通って肺におくられ、ここでガス交換を行う事で再び酸素を持った血液となり、全身に運ばれます。

心不全とは

これらの循環システムがうまく働かなくなってしまった状態を「心不全」と呼びます。特定の病気の名前ではなく、何らの原因で心臓機能が低下して体に十分な血液を送り出せない状態全般を指しています。ほとんどの場合、心臓の収縮する力が弱まっている事が原因であると考えられます。

人間の身体はそれぞれが働きを補い合おうとする「代償機転」という働きをします。心臓のポンプ機能が弱まると、身体全体の血流量を保つために心拍数を上げて対応しようとする傾向があり、これがまた負担となり悪循環に陥る場合があるのです。

心不全の分類と起こる症状

心臓

心不全には様々な種類があります。

どちら側で起こったかによる分類

左心不全

心不全の原因が左心系にある場合の心不全です。左心系は「心臓から全身へ血液を送る」働きを持っているため、こちらの機能が低下する事により全身に届く血液の量が不足し、臓器障害が起こります。

左心不全で起こる症状の代表的なものは手足やくちびるが蒼白になるチアノーゼや血圧の低下で、それ以外にも血流量の低下が脳で起これば意識障害が、肺で起これば呼吸困難などが起こりえます。血液が滞る事でたまってしまい、肺にしみ出て来て肺水腫が起こる場合もあり、この場合血痰が現れます。

右心不全

心不全の原因が右心系にある場合、全身の静脈血が心臓に戻って行く流れが滞る事になります。全身に血液や水分がたまりやすくなるため肝臓のむくみや脚のむくみ、浮腫などが症状として現れます。

両心不全

左右共に心不全を起こしている状態です。一般的に心臓は左側から弱って来る傾向があり、左心不全から右心不全への移行が起こり両心不全になるケースが多く見られます。

両心不全になると、体全体の血流の流れが悪くなるため、脚を中心に下半身のむくみや体重増加が起こります。両心不全の場合のむくみは大変重症で、夕方にくつに足が入らないほどむくんでしまうような状態になる場合もあります。

また、重度になると横になっていると呼吸が苦しく、起き上がると症状が楽になるという症状が現れます。

急性か慢性かによる分類

急性心不全

心臓の働きが急激に低下しておこる心不全を指します。全身への血流が滞り酸素が不足するようになってしまう状態で、多くの場合両心不全が起こります。状態が安定していない事が特徴です。

心疾患が主な原因ですが、生活習慣や風邪、過労などにより引き起こされる事もあります。

慢性心不全

急激な悪化はなく、症状は安定しているが心臓の機能が低下しているものを慢性心不全と言います。急性心不全のように明らかな息苦しさなどが強くなく、自覚症状がない場合も見られます。

慢性心不全の急性増悪

慢性心不全が急激に悪化し、急性心不全の症状が起こるものを慢性心不全の急性増悪と呼びます。

慢性心不全では心臓の機能低下はあるものの、様々な代償機構により心不全がコントロールされている状態にあります。しかし、様々な要因によりこの働きが低下し、急激に心不全が悪化してしまう場合があるのです。

重症度による分類

心不全の重症度の分類には様々な方法があります。

大きなものとしては、

  • 肺うっけつによる肺水腫(肺に水がたまってしまい呼吸が障害されている症状)の有無
  • 安静時の呼吸困難有無
  • 末梢循環不全の有無

が重症度を測る目安となります。

また、小さい症状としては浮腫があるかどうかや肺活量の低下、頻脈などが判断基準となります。

心不全を起こす病気

心電図

心不全の原因の多くは心疾患です。

急性心筋梗塞(虚血性心疾患)

心筋梗塞は、心臓に栄養を送る血管が詰まる病気です。血管が詰まると細胞が段々と壊れて行き、心臓が機能しなくなってしまうのです。日本人の死因の多くを占める大変重篤な病気です。心臓に血液が送られなくなる事により、呼吸困難や血圧低下など心不全の症状が引き起こされます。

急性、慢性どちらの心不全の原因にもなりうる病気です。

心筋梗塞については、心筋梗塞の前兆は?症状を知って適切な処置を!を読んでおきましょう。

拡張型心筋症

左心室の筋肉収縮能力が低下し、左心室が拡張してしまう病気です。正常なポンプ機能が失われるため、左心不全の症状が起こります。

難病指定されている病気ですが、薬での治療を行う事が可能です。ただし、症状が重い場合は心臓移植を行う場合があります。

高血圧性心疾患

高血圧状態が長く続くことによって起こる心疾患の総称です。具体的には冠動脈が狭まる冠動脈性心疾患や、血圧が高くなる事で血液を送り出す左心室に負担がかかっておこる左心室肥大が上げられます。

圧力の高い状態で心臓が働いている事になるため、心臓に大きな負担をかけることになるのです。

治療は主に血圧の管理で、症状が重い場合には手術やペースメーカーを用います。

甲状腺機能亢進症

甲状腺の活動が異常に活発になる病気で、甲状腺ホルモンの分泌量が過剰になる事により様々な症状が起こります。甲状腺ホルモンは身体にエネルギーの利用を促す働きがあるため、これが過剰に分泌される事により全身の代謝が過剰になってしまいます。

このホルモンの過剰は心臓に負担を掛ける事になります。不整脈やうっ血性の心不全を起こす可能性があり、むくみやだるさが起こります。

薬やアイソトープ治療、手術での治療が行われます。

詳しくは、甲状腺機能亢進症の症状をチェック!原因や治療方法も紹介!を参考にして下さい!

心臓弁膜症

心臓にある弁に障害が起きて本来の役割を果たせなくなる病気です。弁の開きが悪くなると血液の流れが妨げられ、逆に開きすぎると逆流を防ぐ能力が低下してしまいます。

弁の炎症や外傷、先天性などの原因で起こりうるもので、弁が完全に閉じない事で流れ出た血液の一部が心臓に逆流し、心臓に負担がかかることで心不全につながります。

心筋の収縮力を高める薬での治療や、弁を人工弁に取り替える手術などの治療方があります。

慢性腎臓病

腎臓の機能が低下する病気です。腎臓には身体の水分量を調節し、老廃物を排泄する機能がありますが、この機能が低下する事で体内に水分や老廃物が溜まった状態が起こります。

この状態により身体がむくんでいる状態になり、また高血圧をもたらす可能性があります。体内の水分量が過剰になる事で心臓に負担がかかり、うっ血性の心不全につながる事があります。

腎臓病の治療は血圧を調節する薬や老廃物を排出する薬による治療と生活習慣の改善が主なものとなります。

糖尿病

糖尿病は、インスリンというホルモンの働きが十分でないため血糖値が高くなる病気です。インスリンは、血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓へ取り込む働きをもっているホルモンで、これが十部でなくなると糖分が血液中に残る事になってしまうのです。

血糖値が高い状態であると動脈硬化を招きます。これによって心臓に大きな負担がかかり、心臓の働きが低下して心不全につながる場合があります。また、動脈硬化によって血流が悪化し、体内の水分量が過剰になる事も心不全のリスクの一つです。

食事療法やインスリン注射など薬による治療が行われます。

心不全の治療と予防

心臓の健康

心不全の治療は、元となる病気を治療する事が第一となります。特に高血圧や糖尿病、高脂血症は心臓に大きな負担となるため早めに治療する事が重要です。

心不全の治療

急性心不全の場合、原因が心臓疾患の場合がほとんどなので、心臓疾患の治療を迅速に行う事が必要です。症状も重いため、手術が行われる事も多くあります。

慢性心不全の場合は薬物療法が多く用いられます。体内の水分が過剰になっている事が多いため、利尿薬により水分を取り除き、心臓の働きを助けるジギタリス製剤を使います。また、段々と心臓が弱って来るのを食い止めるため、心臓の負担を軽くする薬や予防薬を使って治療を行います。

また、急性憎悪因子として、塩分制限、水分制限、服薬の不徹底や、感染症などが上げられており、これらの因子を取り除く事も大切です。

心臓の機能が大きく低下してしまっている場合、手術が行われます。また、内科、外科治療を行っても改善が見られない場合は心臓移植が検討されます。現在は様々な人工心臓があり、症状に合わせていろいろな選択肢があるようです。

心不全の予防

心不全を予防するためには、心臓に負担をかけない生活習慣を保つ事が重要といえるでしょう。

たとえば、肥満は心臓に大きな負担を掛けます。既に心臓疾患がある場合は激しい運動は良くありませんが、適量の運動と適量の食事は非常に重要です。食事の際には塩分、糖分の採り過ぎに気をつけましょう。

また、コーヒー、喫煙など血管を収縮させる作用があるものは採り過ぎに注意が必要です。

まとめ

休みなく働いている心臓は、いざ機能が低下してしまうと本当につらい症状につながってしまいます。また、心不全の治療は医師の指導にきちんと従う事が最も重要です。水分や塩分の摂取制限などなかなかきちんと取り組むのは難しいかもしれませんが、もし診断を受けた場合はしっかり徹底するようにして下さい。

また、心不全にならないため、生活習慣から注意出来る事も多くあるので、予防のため取り組みたいところです。

  
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