低髄液圧症候群ってどんな症状?原因や治療法も紹介!完治時期は個人差があるので要注意!

低髄液圧症候群という症状の名前を聞いたことがありますか?普通に生活をしていると、なかなか聞きなれない症状名ですよね。

しかし、普通に生活を送っているあなたにも、低髄液圧症候群に突然陥るリスクがあるのです。この症状は、交通事故の被害者にも多く生じているからです。

高度な自動車社会に成長した日本では、誰にでも交通事故に巻き込まれる危険があります。ということは、誰にでも低髄液圧症候群に陥る可能性があるとも言えますね。

そこで、いざという時のために、低髄液圧症候群についてまとめましたので、参考にして下さい。

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脳や脊髄と髄液の関係性

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低髄液圧症候群がどんな症状であるのか、またその原因を探るためには、脳や脊髄と髄液の関係性についての知識が必要不可欠です。

そこで、低髄液圧症候群の説明に入る前に、脳や脊髄と髄液の関係性について簡単に説明します。

脳と脊髄

脳は、生命維持や感情や思考といった神経活動の中枢で司令塔です。そして、脊髄は脊椎の中を通っている神経で、脳と全身の間をつなぐ役割を担っています。

ですから、脳と脊髄を合わせて中枢神経系と呼びます。

中枢神経系の構造

中枢神経系は、人が人として生きていく為にとても重要ですから、髄膜という膜によって覆われて厳重に保護されています。

しかも、その髄膜は3層構造になっていて、髄膜はその3層の膜の総称です。

  • 硬膜:髄膜の一番外側にある層です。
  • くも膜:髄膜の外側から2番目にある層です。
  • 軟膜:髄膜の最も内側にある層です。

髄液とその役割

髄液とは?

髄膜の外側から2盤目の層であるくも膜と、最も内側の層である軟膜との間は空間になっています。この空間をくも膜下腔(くもまくかくう)と呼びます。

このくも膜下腔は、脳脊髄液で満たされています。

ちなみに、脳における髄液を脳髄液、脊髄における髄液を脊髄液と呼びますが、脳と脊髄の中枢神経系はつながっていて、それを覆う髄膜もつながっていますので、脳髄液と脊髄液は合わせて脳脊髄液と呼ばれます。この脳脊髄液を、略して髄液と呼ぶのです。

髄液の役割

くも膜下腔は、脳脊髄液で満たされていると説明しました。いわば、脳や脊髄は脳脊髄液の中に浮遊しているようなイメージです。この脳脊髄液のおかげで、脳や脊髄は衝撃から守られているのです。

また、脳や脊髄は脳脊髄液を通じて栄養補給をし、脳や脊髄で生じた不要物質は脳脊髄液を通じて除去されます。

そして、低髄液圧症候群を理解するにあたって最も重要なことが、くも膜下腔を流れる脳脊髄液の量と圧力(脳脊髄圧)は常に一定に保たれているのが通常であるということです。

量や圧力が一定でないと、脳や脊髄を保護できないからですね。

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低髄液圧症候群の症状とは?

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脳や脊髄と髄液の関係性を、ご理解いただけましたか?では、低髄液圧症候群は、どのような症状なのでしょうか?

低髄液圧症候群とは?

低髄液圧症候群は、その名の通り、脳脊髄圧が何らかの原因によって低下してしまったことによって引き起こされる様々な症状の総称です。

くも膜下腔を流れる脳脊髄液の量と脳脊髄圧は、常に一定に保たれているのが普通です。しかし、何らかの理由で、脳脊髄液の量が減ってしまい、その補充が追い付かなければ、脳脊髄圧が下がってしまうのも当然のことです。

たとえば、血液が出血によって大量に失われれば、血管内の血圧は下がってしまいますよね。これと同じことが、くも膜下腔を流れる脳脊髄液にも生じるのです。

低髄液圧症候群は、脳脊髄液減少症や脳脊髄液漏出症とも呼ばれます。

低髄液圧症候群の症状

脳脊髄圧が下がると、どのような症状が引き起こされるのでしょうか。引き起こされる具体的な症状は、次の通りです。

  • 頭痛、起立性頭痛
  • 頸部痛(首の痛み)
  • 全身の倦怠感(全身にだるさ)
  • めまい
  • 視力低下
  • 吐き気
  • 耳鳴り

このように、低髄液圧症候群の症状は、誰にでもよく起こるような症状がほとんどです。

頭痛、起立性頭痛

脳髄液圧が下がると、頭部全体に鈍い頭痛が生じます。

そして、低髄液圧症候群の典型的な症状が、起立性頭痛です。起立性頭痛とは、座位また立位の体勢をとると、頭痛の症状が悪化するものです。つまり、上半身か全身を起こすと頭痛が増強されてしまうことを、起立性頭痛といいます。

なぜ、起き上がると頭痛が悪化してしまうのでしょうか?

脳や脊髄は、脳脊髄液の中に浮遊しているようなイメージでした。そこで、脳脊髄液が減少し脳脊髄圧が低下している場合に、起立すると脳脊髄液は当然身体の下方に移動し、一番上にある脳は浮遊できなくなります。その際に、脳とつながる血管や神経が伸長することで刺激を増すのだと考えられています。

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低髄液圧症候群の原因

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このような症状を引き起こす低髄液圧症候群の原因、すなわち、脳脊髄液を減少させる原因は、何なのでしょうか?

低髄液圧症候群の原因

脳脊髄液を減少させる原因は、大きく2つに分類できます。

①脳脊髄液の産生が少なくなる

②脳脊髄液の漏れ

そして、脳脊髄液の漏れによる場合は、さらに3つに分類できます。

  • 医療行為による脳脊髄液の漏れ
  • 外傷による脳脊髄液の漏れ
  • 原因が不明な脳脊髄液の漏れ

脳脊髄液の産生の減少

脳脊髄液は、主に脳室(側脳室、第三脳室、第四脳室)の中にある脈絡叢(みゃくらくそう)という場所で作られます。脳室とくも膜下腔はつながっているので、作られた脳脊髄液は、脳室からくも膜下腔へと流れて全身に循環していきます。

脳脊髄液の原料は、動脈の血液です。ですから、慢性的な脱水症状や慢性的な低血圧症によって原料となる動脈血液の供給が減ると、脳脊髄液の産生量が減少することがあります。

医療行為による脳脊髄液の漏出

腰椎穿刺(ようついせんし)や硬膜外麻酔などの医療行為によって、脳脊髄液が漏出してしまうことがあります。

腰椎穿刺とは、腰椎部で針を刺して脳脊髄液を採取して行う検査のことです。腰椎穿刺は、髄膜炎やクモ膜下出血などの病気の診断の為に行われます。

硬膜外麻酔とは、外科手術を実施する為に患者の痛みを取る麻酔のことです。硬膜外麻酔は、背骨の中に格納されている脊髄の近くまで針を刺して、髄膜の一番外側の層である硬膜の外側に麻酔薬を注入します。非常に細かな作業になりますので、場合によって髄膜が傷つくことがあります。

外傷による脳脊髄液の漏出

交通事故、スポーツによる怪我、傷害事件などにより脳脊髄液を覆っている髄膜が傷つけられると穴が開いて、脳脊髄液が漏出してしまうことがあります。

交通事故では、明らかな外傷による脳脊髄液の漏出はもちろん、明らかな外傷のないむち打ち症でも脳脊髄液の漏出が認められる症例が報告されています。

原因が不明な脳脊髄液の漏出

明らかな外傷がないにも関わらず、脳脊髄液が漏出して脳脊髄圧が低下する場合を、特発性低髄液圧症候群と呼びます。

軽い外傷があるものの、髄膜を直接損傷するほどの外傷はない場合も、特発性低髄液圧症候群に含まれます。

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低髄液圧症候群の検査と診断

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ここまでで低髄液圧症候群の原因と症状が分かりましたが、低髄液圧症候群の症状は誰にでもよく起こるような症状ばかりでした。では、どのようにして低髄液圧症候群であると診断するのでしょうか?

低髄液圧症候群の診断・検査方法

低髄液圧症候群の診断には、次のような検査方法が用いられます。

  • 問診
  • 脳MRI検査、脊髄MRI検査
  • MRミエログラフィー検査
  • CTミエログラフィー検査
  • RI脳槽、脊髄液腔シンチグラフィー検査
  • 腰椎穿刺

これらの検査結果から、総合的に診断されます。

問診

問診は、症状や症状発生に至る経過などを聞き取りする検査です。

低髄液圧症候群の典型症状とされる起立性頭痛の有無や、過去に腰椎穿刺や硬膜外麻酔の履歴があるかどうか、直近で外傷があったかどうか等を確認します。

脳MRI検査、脊髄MRI検査

MRIとは、磁気共鳴画像診断装置のことです。MRI検査は、強力な磁石の発する磁気を利用して体内の臓器や血管などを撮影することにより、画像診断をする検査です。

円筒形の装置の間を仰向けになって通るだけですので、痛みもなく負担の少ない検査方法です。

この検査では、主に次のようなことを確認します。

  • 脳脊髄液の減少による脳の位置の低下の有無
  • くも膜下腔外に脳脊髄液の漏れによる髄液貯留がないかどうか
  • 硬膜外に脳脊髄液の漏れによる髄液貯留がないかどうか

MRミエログラフィー検査

MRミエログラフィー検査は、MRI装置を用いて脊髄の撮影を行い、体内の水の成分だけを取り出した画像をもとに、画像診断する検査です。

使用する装置はMRI検査と同じですので、円筒形の装置の間を仰向けになって通るだけです。

硬膜外に脳脊髄液の漏れがあった場合、その漏出部分を明確に画像で描画できる可能性があります。

CTミエログラフィー検査

CTとは、コンピュータ断層撮影法のことで、エックス線を使用して身体の断面を画像表示します。

CTミエログラフィー検査は、腰椎穿刺のように腰部に針を刺して造影剤をくも膜下腔に注入して、CT装置で脊髄を撮影します。その画像で、造影剤がくも膜下腔から漏れていないかどうかを確認します。

造影剤の注入で針を刺すほか、検査前に食事制限があったり、エックス線の使用による微量の被爆といった負担がある検査方法です。

RI脳槽・脊髄液腔シンチグラフィー検査

RI脳槽・脊髄液腔シンチグラフィー検査は、腰椎穿刺のように腰部に針を刺して、放射性医薬品(RI、放射性同位体元素)を脳脊髄液の流れるくも膜下腔に投与します。そして、放射性同位体元素(RI)から放出される放射線(ガンマ線)を検知するガンマカメラで脳脊髄液が流れる場所を撮影して、その分布を画像化する検査方法です。この撮影装置をSPECTといいます。

この撮影画像から、RIの分布によって脳脊髄液が漏れ出していないかどうかを確認します。

放射性医薬品の使用、その医薬品の注入で針を指すことなどの負担がある検査方法です。

腰椎穿刺

この場合の腰椎穿刺は、脳脊髄液の採取が目的ではなく、脳脊髄液圧の測定が目的です。低髄液圧症候群であっても、脳脊髄液圧がそれほど低下しない場合もあるからです。

ただし、脳脊髄液圧測定だけの為には行わず、CTミエログラフィー検査やRI脳槽・脊髄液腔シンチグラフィー検査に付随して行います。

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低髄液圧症候群の治療

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このような検査を経て、低髄液圧症候群と診断された場合、どのような治療がなされるのでしょうか?

低髄液圧症候群の治療方法

低髄液圧症候群の治療方法は、次の通りです。

  • 保存療法
  • 硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)

保存療法

保存療法は、安静臥床と補液です。つまり、患者は横になり安静な状態を保ち、経口補水か点滴で水分補給を行います。

発症から1ヶ月程度までの場合、十分な水分を取りながら2週間前後の安静を保つことで、髄膜が自然治癒することが良くあります。

したがって、身体に負担も少ないことから、まずは保存療法を選択することが原則とされています。

硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)

保存療法で効果が現れない場合や、症状が長く続いている場合は、硬膜外自家血注入療法を行うことがあります。

硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)とは?

硬膜外自家血注入療法は、血液の凝固作用を利用して髄膜の破れを塞ぎ、脳脊髄液の漏出を止める治療法です。

患者の血液を採血して、その血液を脳脊髄液の漏出部分の硬膜外側に注射で注入します。注入した血液が固まることによって髄膜の破れが塞がれると、脳脊髄液の漏出も止まりますので症状が改善されます。

パッチとは、英語で継当てや当て布を意味し、血液(ブラッド)で継当て(パッチ)するように見えることから、硬膜外自家血注入療法はブラッドパッチとも呼ばれます。

硬膜外自家血注入療法(ブラッドパッチ)の留意点

硬膜外自家血注入療法を選択する上で、注意しなければならないことがあります。

ほとんど症状が改善しない場合もあります

硬膜外自家血注入療法は、非常に効果がある治療法とされています。原因が腰椎穿刺で漏出場所も明確な場合は、1回の血液注入で症状が改善します。また、1回目の血液注入で症状改善が認められなくても、概ね2~3回目の注入で症状が改善する方が大半です。

しかし、ほとんど症状が改善しない方も30%弱存在します。

治療後もしばらくは安静が必要

硬膜外自家血注入療法によって症状が改善し退院しても、退院後3ヶ月程度は激しい運動を避けなければなりません。

副作用の可能性

硬膜外自家血注入療法の実施により、副作用が発生する場合があります。

血液注入部分で炎症や痛みが発生したり、発熱や倦怠感が現れることがあります。

また、稀に注入した血液が神経を圧迫し、しびれ、知覚低下、尿失禁などの症状が現れる場合があります。

さらに、硬膜外に注射することは、低髄液圧症候群の原因となりうる硬膜外麻酔と同様なため、誤って髄膜を傷つける可能性があります。

低髄液圧症候群の完治と再発可能性

保存療法にしても、硬膜外自家血注入療法にしても、脳性髄液の漏出が止まってから6ヶ月程度は再発の可能性が高いとされます。

また、脳脊髄液の漏出が止まっても脳脊髄液の産生量や脳脊髄液圧が正常に戻るには、個人差があるとはいえ、概ね2~3ヶ月はかかるのが一般的です。したがって、低髄液圧症候群の症状改善にも、ある程度の時間の経過が必要になります。

以上のことから、明確に完治といえる時期には個人差があり、完治といえる状況にあるかどうかは、医師によって判断されます。

当然ですが、完治したとしても、強い衝撃を受けたりして再発することもあり得ます。

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まとめ

いかがでしたか?低髄液圧症候群について、ご理解いただけたでしょうか?

実は、低髄液圧症候群の原因や症状、原因と症状の因果関係が詳しくわかってきたのは、つい最近のことなのです。

以前は、交通事故の被害者が訴える頭痛や倦怠感などの症状は、交通事故を受けた精神的ダメージが原因とされていました。しかし、医療技術や医療機器の進歩により、そのような交通事故被害者の方に脳脊髄液の漏出が認められ、その漏出を止めたら症状が改善したという研究報告が2000年になされました。MRI検査やRI脳槽・脊髄液腔シンチグラフィー検査による画像診断の発展と研究者の努力の賜物ですね。

このような歴史的経緯を踏まえ、私たちは交通事故のむち打ち症などのように明らかな外傷がなくても、低髄液圧症候群に陥る可能性があることを知っておく必要があるでしょう。そして、頭痛や倦怠感が長く続くような場合は医師に相談し、検査を受けましょう。

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