失禁を女性が発生しやすい理由は?種類別の原因や症状を知ろう!検査方法と治療方法は?

くしゃみをした拍子や大声を出したとき、立ち上がった瞬間や重い荷物などを持った際に、自分の意志に反して尿漏れしてしまった……という経験がある方もいるのではないでしょうか?

もしかしたらその症状、尿失禁かもしれません。恥ずかしくてなかなか他言できないと悩む人も多いですが、放置すると生活に支障が出てしまう可能性も少なくありません。

そこで今回は、尿失禁の詳しい症状や原因、予防法や治療法まで、詳細をまとめてみました。決して恥ずかしい病気ではありません。悩んでいる人は、今すぐ医師の診察を受けることをおすすめします!

尿失禁とは?

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人間の正常な排尿機能は、特に意識をせずとも尿を膀胱に溜めて、尿意を感じたら意識的に排尿をするという機能がもともと備わっています。

しかし、尿失禁になると、この自然な排尿機能が損なわれ、日々の生活に支障が生じる状態になります。排尿機能が損なわれるとは、例えばくしゃみをしたときや重い荷物を持ったとき、尿意を感じてすぐにトイレに行ったにも関わらず、間に合わずに漏れてしまった……というケースです。自分の意志に反して尿を漏らしてしまった場合、排尿機能が損なわれている可能性が高いのです。

このような経験が一度や二度ではなく、日常的に起こり、日々の暮らしに支障が出ている人は尿失禁の可能性を考えたほうがいいでしょう。なかなか他言しにくい症状であることから、恥ずかしくて言えず、人知れず悩んでいる人は多いと言われています。しかし実状は、女性に多い疾患であり、尿失禁に悩んでいる女性は20代の若い女性から50代以上の中高年まで、年齢の幅は実に広く、40歳以上の女性の3人に1人は尿失禁を経験しているという統計もあるほど、決して珍しい病気ではありません。

下着の汚れと日々戦い、外出を避けるために趣味の旅行やスポーツ、仕事も辞めた……。このように、自分らしい生活を送ることもできず、過去に尿失禁により恥ずかしい経験を起こしたことで、精神的に傷を負ってしまった人も少なからずいるでしょう。しかし、尿失禁は体の構造や仕組みによって引き起こされる病気であり、必ず原因や治療法はあるのです。症状の程度や患者の年齢、体力にもよりますが、ほとんどの尿失禁は治療で完治することができるようになったとも言われています。

そもそも、なぜ女性に多い疾患と言われているのでしょうか?次の項目で見ていきましょう。

患者の大半は女性。その理由は?

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『尿失禁診療ガイドライン』の健康体の女性を対象にした調査では、約4割以上の女性が尿失禁に悩まされているというデータがあります。この数字から見ても、失禁は女性特有の疾患と言っても過言ではありません。ではなぜ、女性に多いのでしょうか?それは、女性の体の構造に原因があるのです。まず、排尿の仕組みから見ていきましょう。

腎臓でできた尿は、尿管を通過して膀胱に貯蔵されます。膀胱におよそ300mlの尿が溜まると膀胱への圧迫感を覚え、その刺激が脳に伝わることによって尿意を感じ、尿道を通って体外へ排泄されるという仕組みになっています。自宅にいて忙しくもなく、尿意を感じたらすぐに排泄できる環境に24時間365日いるような生活であれば問題ありませんが、そのような暮らしはまず無いでしょう。仕事中や外出先、旅先などで我慢しなくてはいけないシーンが、人間誰しもあると思います。

そこで、尿道の周りにある「外尿道括約筋」と「内尿道括約筋」の2種類の筋肉が活躍するのです。この2つの筋肉は主に、尿の出口を閉じる役割を担いますが、内尿道括約筋は尿意を感じた際に無意識に閉じるのに対して、外尿道括約筋は自分が意識をして閉じられる仕組みになっています。

このように、トイレに行けない環境に置かれた場合は、この2つの筋肉が働くことで尿意を抑えることができ、トイレに着いて脳から排尿しても良しのサインが出たら、筋肉を緩めて排尿することが出来るのです。女性は加齢に関わらず、この排泄に大切な2つの筋肉が男性に比べてもともと弱いため、尿失禁になりやすいと言われています。

さらに、膀胱や尿道を支えている「恥骨尿道靭帯」と「仙骨子宮靭帯」などの骨盤底筋群が、男性と比べて弱いのも女性患者が多い原因です。この骨盤底筋群は、子宮などの臓器を支える筋肉の総称で、排泄の働きに重要な外尿道括約筋も骨盤底筋群の一種。こうした、膀胱付近の靭帯や筋肉が男性と比べてもともと弱いにも関わらず、出産や妊娠を機に負担がかかり、さらに弱くなってしまうのです。このように、女性のもともとの体の構造や、妊娠・出産が原因となり発症するケースが多いため、失禁は男性に比べて女性の方がかかりやすい疾患となっているのです。

尿失禁の分類と症状

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尿失禁は、症状や原因によって大きく分けると4つに分類されます。ここでは、それぞれの症状の特徴を見ていきましょう。

腹圧性尿失禁

尿失禁のなかで一番患者数が多く、7割以上を占めると言われている腹圧性尿失禁。重い荷物を持ったり軽い運動をしたり、大笑いしたときやくしゃみをした際など、急にお腹に力が入ったことで尿が漏れてしまうのがこのタイプの特徴です。腹圧性尿失禁には、症状の度合いが4段階あると言われています。疑いのある方は、自分の症状がどの程度進行しているのか、確認しましょう。

まず、第一段階。尿漏れは毎日起こるわけではなく、漏れた尿の量も気にならない程度で、下着は変えなくても良い段階です。第一段階は、腹圧性尿失禁患者の中でも最も患者数が多い段階で、くしゃみや咳を複数回立て続けにして、腹筋に過度に力が入った時に尿漏れを起こしてしまう症状に悩まされます。ちょっとだけ下着に漏れてしまった……という程度で自然に乾くため下着を変える必要はなく、患者の多くは不安感に襲われる心配はないと言われる段階です。

第二段階は、毎日尿漏れしてしまうわけではないけれど、尿漏れした際には下着を変える必要がある程の量を漏らしてしまう。もしくは、下着を変える程の量は漏れないけれど、毎日尿漏れしてしまう。このいずれかの段階に達した状態です。たった1回のくしゃみをした際や、階段の昇り降り、立ち上がった瞬間、重い荷物を持ち上げた瞬間などに、漏れてしまいます。第一段階の症状とは違い、不快感や強い不安感を覚える患者も多く、第二段階に至った場合は医師の診断の元、対処する必要があります。この段階であれば、体操や薬で完治を目指すことができるでしょう。

第三段階になると、症状は重くなっていきます。尿失禁は毎日で、1日に数回起こります。さらに、下着の交換が必要不可欠な状態まで悪化するでしょう。今までは、腹筋に力が入った拍子に……などの原因があって失禁を起こしていましたが、この段階になると歩行中や日常動作の中で漏れてしまいます。治療法は、体操や薬の服薬以外に、電気刺激療法や手術などを勧められることが多いでしょう。

そして最終段階の第四段階。毎日5回以上、失禁してしまいます。下着の交換では間に合わず、オムツやパッドの使用が必要不可欠になるでしょう。この段階の症状は、横になったり座っている時など安静にしている状態でも失禁を起こし、体操や薬などでは治せないレベルまで達してしまっているケースが多いでしょう。医師の指示のもと、様々な手術療法から効果的な方法を選び、治療をしていく必要があります。

切迫性尿失禁

尿失禁ではない健康体の場合、徐々に排尿したいと思うようになり、膀胱に尿が溜まってきた段階でトイレに行って排尿します。しかし、切迫性尿失禁の場合は、前触れが一切なく、排尿したいと思った時には限界に達してしまう程高まりが急なため、トイレに間に合わず尿失禁を起こしてしまいます。

漏れる尿の量は、腹圧性尿失禁のような少量漏れるという程度ではなく、大量に漏らしてしまうことも少なくありません。患者が一度でも切迫性尿失禁の症状を経験すると、漏らしてしまうという不安感から、膀胱に少しでも尿が溜まるとトイレに行く癖がついてしまいます。そのため排尿の回数が多く、頻尿になってしまうのです。切迫性尿失禁は、性別問わず高齢者に多いでしょう。

溢流性(いつりゅうせい)尿失禁

このタイプは、膀胱にパンパンに溜まった尿が溢れ出るといった症状が特徴です。

溢流性尿失禁は、排尿障害などを患ったことで尿が出にくくなり、失禁を引き起こしてしまったケースです。排尿障害は、膀胱や尿道、前立腺などの病気が原因で起こることが多く、尿失禁は女性に多い病気と言われていますが、溢流性尿失禁だけは男性に多く見られます。

機能性尿失禁

機能性尿失禁に関しては、他の失禁とは違い排尿機能は正常です。しかし、高齢により身体運動機能が低下していることや、認知症が原因で失禁を引き起こしてしまいます。

症状別の詳しい原因

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上記、尿失禁を4つに分類しましたが、それぞれの症状の詳しい原因を見ていきましょう。

腹圧性尿失禁の原因

腹圧性尿失禁を起こす大きな原因は、骨盤底筋が弱くなり、正しい排尿に大切な膀胱と尿道を支えられなくなることが一番の要因です。そもそも骨盤底筋が弱くなってしまう原因を辿ると、閉経による女性ホルモンの低下です。さらに、妊娠や出産、急な体重増加も大きな原因の一つです。

妊娠中の女性が、尿失禁で悩むことがあります。これは、胎児が大きくなるにつれて重みが増し、骨盤底が下に沈むため、腹圧性尿失禁を起こしやすくなるからです。しかし、胎児の重みによる尿失禁は一時的なもので、出産後は自然と治るので安心して良いでしょう。

なかには、出産後に尿漏れが起きてしまうケースもあります。この場合は注意が必要です。産後の尿失禁に悩まされる原因としては、骨盤底筋に大きな負担がかかることによって周りの靭帯や筋肉が傷つき、さらに緩み、膀胱や尿道が背中側(お尻側)にずれてしまうからです。正しい場所に尿道や膀胱があれば、腹圧がかかり尿意を感じても失禁することはないのですが、歪んで場所がずれてしまうと尿道をしめることが出来ず、漏れてしまうのです。この出産後の尿失禁は、一時的なもので治るケースもありますが、中高年になった際に再発する場合も多いので注意しましょう。

さらに、肥満やひどい便秘も、腹圧性尿失禁を引き起こす原因となります。肥満の場合、内臓に厚い脂肪壁が付き、結果的に妊娠した時と同等の負担が骨盤底筋にかかります。腹圧性尿失禁を患った患者の中には、3年未満で10㎏前後太った人が多く、肥満には注意が必要です。便秘の場合は、一生懸命排便しようといきむため、分娩と同程度の負担を骨盤底筋にかけることになります。そのため、便秘にならないよう日頃から気を付ける努力をしましょう。

切迫性尿失禁の原因

健康体の場合、通常は脳が排尿をコントロールしています。しかし、脳卒中や脳の腫瘍、外傷、認知症など脳の病気を患ったことによる脳機能の低下が原因で、排尿をコントロールできなくなる場合もあります。また、脳から脊髄にわたる神経系に障害が起こった場合も、排尿を正常にコントロールできません。このように、切迫性尿失禁の場合は、脳や神経系の病気を発症後、合併症として引き起こすというケースも少なくありません。

しかし、脳や神経系の病気を患っておらず、体への異変がないのにも関わらず膀胱が収縮し、切迫性尿失禁を発症するケースもあるので注意しましょう。

溢流性尿失禁の原因

患者数が女性よりも男性が多い溢流性尿失禁は、排尿障害が原因となるケースが大半と言われています。疾患例として、「前立腺肥大症」「前立腺がん」「尿道狭窄(にょうどうきょうさく)」。これらの疾患は、尿道の抵抗が大きくなるため、失禁を引き起こす原因となります。膀胱の収縮運動の機能が低下する糖尿病にも、注意が必要です。

機能性尿失禁の原因

排尿機能は正常なのに、身体運動機能の低下や認知症が原因で症状を引き起こす機能性尿失禁。排尿したいと頭では思っていつつも、身体運動機能の低下によりトイレまでの歩行に時間を要するため、その間に漏らしてしまったり、認知症患者の場合は排尿して良い場所かどうかの状況判断が困難なため、尿失禁を起こしてしまいます。

機能性尿失禁患者の尿漏れを防ぐ場合は、家族など身近な人の助けが必要になります。

尿失禁の予防方法

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症状や原因が分かったら、続いては予防方法です。ここでは、脳や脊髄、神経系の合併症によって引き起こされる尿失禁以外の予防法を学んでいきたいと思います。

正常な排尿回数は、1日に5回以上10回未満と言われています。また、1回の排尿で出る尿の量は250~300ccが理想です。この量よりも極端に少なかったり多かったりする場合は、頻尿か我慢し過ぎの可能性があり、尿失禁の症状を引き起こす原因にもなり兼ねません。排尿回数、排尿量を、今一度確認しましょう。

また尿失禁を防ぎ、正常な排尿を保つために必要なことは、「1日に適度な量と言われる1.5リットルの水分を飲む」「便秘解消」「肥満解消」「排泄を我慢して膀胱炎にならない」「体を冷やさない」です。尿失禁初期の場合、尿漏れすることが怖くて頻繁にトイレに行くため、頻尿になってしまいます。1回で250~300cc程度の排尿が理想のため、ある程度我慢をしてトイレに行くようにしましょう。しかし、4時間以上の我慢は禁止です。

尿漏れが不安で頻尿を引き起こしてしまう場合は、ナプキンや尿漏れ専用のパッドを使用して、排尿のサイクルを整えるといいでしょう。

尿失禁の検査方法

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尿失禁の症状が出始めて医師の診断を受ける場合、現状の詳しい症状を医師へしっかり伝えられるかどうかが重要と言われています。そのため、尿失禁の不快症状を感じたら、病院に行く数日前から水分の摂取量、排尿回数、排尿量、尿漏れを起こしたきっかけと日時を記録する排尿日記をつけておくといいでしょう。大切なのは、いつ、どんな時に、何がきっかけで、どれくらい尿漏れをしたか……を正確に伝えられるかどうかです。

問診後の検査方法は、症状や医師によって様々です。いくつか例を出すと、泌尿器系に疾患が無いかを調べるため、採尿検査を行います。また、排尿後の膀胱内の残尿量を調べるため超音波画像による測定もあるでしょう。

ここで残尿量が多い場合は、溢流性尿失禁の疑いが強くなります。腹圧性尿失禁の疑いがある場合は、「Q-tipテスト」という検査を行うこともあります。これは、腹圧が掛かったときの膀胱の動きをみる検査で、綿棒を尿道にさしてお腹に力を入れます。尿道にさした綿棒の動きで、膀胱がある場所が腹圧に反応するかどうかが分かるという検査です。

検査方法は実に様々です。担当医の指示に従いましょう。

尿失禁の治療方法

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尿失禁の場合、症状の種類や程度によって治療法は異なります。一つずつ見ていきましょう。

骨盤底筋体操

治療の基本と言われるのが骨盤底筋体操です。腹圧性尿失禁の第1~3段階など軽症患者に効果があり、体操を続けることで8割程度の患者が症状が改善すると言われています。この体操は、膣や肛門など排泄する周辺の筋肉を締めたり緩めたりすることで、尿道や骨盤底筋も一緒に締まり、排泄に必要な筋肉を強化することを目的とした体操です。

方法は、股間を体の中心に吸い上げるイメージで膣と肛門を締めて5秒キープ。その後、ゆっくり緩めていき、これを10分程度続けて行いましょう。家事の合間や仕事中、寝る前など、1日数回行うことをおすすめします。

薬物療法

腹圧性尿失禁の治療の場合、薬物療法を行う場合もあります。しかし、尿道を収縮する作用をもたらす薬の服薬は、尿漏れの症状を一時的に軽くする程度で、完治させるための療法ではありません。

薬物療法はあくまでも、骨盤底体操の補助的役割に過ぎません。薬が不要になることを目標に、しっかり骨盤底体操を継続させましょう。

電気刺激療法

切迫性尿失禁患者、腹圧性尿失禁患者に効果が期待できる療法です。

膀胱近くの皮膚に電極を貼り付け、ある一定のパルス波を送ります。1セット30分程度行うと、骨盤底筋の収縮がうながされ、筋力が鍛えられるという効果が得られます。

外科的療法

初期段階で症状を止められなかった場合、手術を行う必要があります。腹圧性尿失禁の場合、患者の大半が行っている「膀胱頚部つりあげ手術」が一般的です。手術は、開腹して膀胱と尿道を恥骨裏に縫い付け、落ちないように固定する「MMK手術法」と同様ですが、MMK法と比べて膀胱頚部つりあげ術は、開腹の際に大きく切らないのが特徴です。

症状が重い場合、「尿道下スリング法」という新たな手術法を行う場合もあるでしょう。これは、膀胱頚部つりあげ手術などのように尿道や膀胱をつり上げて尿漏れを改善する手術ではなく、尿道の後ろ面に専用のテープを回して、ある動作によって腹圧がかかった際に尿道が定位置からズレるのを防ぐ手術法です。

術後の経過特徴など、手術によってメリットやデメリットは様々なので、不安な場合は医師に相談しましょう。

まとめ

尿失禁は、決して生命を脅かす病気ではありません。しかし、日常生活を送る上での支障は大きく、精神的に追い詰められてしまう患者は少なくありません。決して珍しい病気ではありません。症状に少しでもお悩みの方は、躊躇せず、泌尿器科専門の医師に相談することをおすすめします。

  
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