カプグラ症候群ってどんな病気?症状や症例、原因を紹介!治療法はある?

夫や自分の子供など、自分の大切な人が、いつの間にか本物そっくりの偽物と入れ替わってしまったら・・・。まるでホラー小説のように怖い世界ですね。カプグラ症候群になってしまった人たちは、このような世界を生きています。その孤独と恐怖は計り知れないものがあります。

カプグラ症候群は、自分の身近な人が他人にすり替えられてしまったと思い込んでしまう精神疾患の一つです。その思い込みは、周りの人が心を尽くして説明しても、証拠を見せても取り去ることができません。カプグラ症候群の人の妄想は本人にとっては真実であるため、本人を取り巻く全てを巻き込んで、しばしば悲劇に至ります。

ここではカプグラ症候群になったらどうなるのか、治療法はあるのか、身近な人がカプグラ症候群になった場合どのように接すればよいのかについて、詳しくご紹介します。

カプグラ症候群の症状

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カプグラ症候群の症状について紹介します。

「瓜ふたつの偽物」妄想

カプグラ症候群になると、自分の親しい人が、瓜ふたつの偽物だと信じてしまいます。夫や自分の子供など、身近な人が偽物に置き換わってしまったと思い込んでしまうのです。

「全てが偽物」妄想

カプグラ症候群の人にとって、偽物に置き換わってしまうのは、人物だけではありません。自宅や街、国家、時間や空間など、ありとあらゆる物が偽物と置き換わってしまったと思い込むケースも多く、こうしたケースでは、まるでパラレルワールドに迷い込んだかのようになってしまいます。

「秘密結社」妄想

偽物と置き換わってしまった背景に、秘密結社や悪の組織の存在があると信じ込むことも多いです。

家族や恋人が真剣に間違いを訂正しようとしても聴く耳を持ってくれません。なぜなら、家族や恋人も秘密結社から派遣された替え玉であり、親しい人を装った偽物が寄ってたかって本人を騙そうとしていると思い込んでしまうからです。

孤独で恐ろしい世界から抜け出そうとする

周りの人どころか、周りの世界までが瓜ふたつの偽物で、偽物の世界を自分に信じ込ませようとしている・・・、病気による妄想と言ってしまえばそれまでですが、その渦中にいる本人にとっては孤独で恐ろしい世界です。

孤独で恐ろしい世界から抜け出すため、この症候群の人は真剣に深刻に自分を取り巻く偽物の世界を壊そうと試みます。偽物を倒そうとしたり、警察や学校などに姿を変えている悪の組織に戦いを挑んだりと、攻撃的で破壊的な行動に出る人もいれば、引きこもってしまう人もいます。また、本人もまた偽物の世界に取り込まれ、本人が偽物であるかのような行動をとることもあります。

報告されたカプグラ症候群の症例

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カプグラ症候群は、1923年にフランスの精神科医ジョセフ・カプグラ(Joseph Capgras)とジーン・ルブールラショ(Jean Reboul-Lachaux)によって初めての症例が報告されました。それ以前にも似たような症状の病気は認識されていましたが、「瓜ふたつの偽物」「替え玉」という言葉を使ってこの症状を説明したのがカプグラ氏です。

ここでは、カプグラ氏本人が報告した症例と、 近年報告されたカプグラ症候群の中から典型的な症状を示すものをご紹介します。

カプグラ氏が報告した症例(1923年)

カプグラ氏が報告した症例は53歳のフランス人女性で、その女性の症状は最初、「乳児期に死んだ子どもたちは、替え玉で、本物の子供達は悪の秘密結社によって地下に幽閉されている。夫は瓜ふたつの偽物だ。」というものでした。

「悪の結社の存在を警察庁長官に告発しなくてはならない。」と、実際に警察庁に告発しています。もちろん警察庁がこの女性を相手にすることはなく、最終的には、「警察庁長官も替え玉、入院した病院の医師や看護婦も患者も替え玉である。」と信じるに至りました。

パーキンソン病の視床下部深部脳刺激術後に発症したカプグラ症候群(2015年)

パーキンソン病の特殊な治療後にカプグラ症候群が発症した71歳男性のケースです。男性はパーキンソン病がありましたが、それまでは、身の回りのことは自分ででき、自宅周囲で車を運転することもできていました。

カプグラ症候群が起こったのは最初の視床下部深部脳刺激術を受けた後からで、その症状は「妻と瓜二つの妻と同じ名前のドッペルゲンガーが5〜6人ほど家に住んでいる」というものでした。その後短期間だけ深部脳刺激術を中断したものの、2年にわたってこの治療は他の投薬治療と組み合わせて続けられ、その間に彼は「偽物の妻達の一人が、本物の妻に会わせてくれないので、ナイフで脅す」までの暴力的な行動をとるようになりました。

最終的に、視床下部深部脳刺激術は彼の妻によって打ち切られ、治療中止後30分後には彼の妄想も暴力的な行動も治まったということです。深部脳治療術中止後の4週間は、彼は妄想から解放されましたが、その後不整脈によって突然亡くなりました。

多発性硬化症の患者に見られたカプグラ症候群(2009年)

もともと双極性障害があり、多発性硬化症もある45歳の女性が急にカプグラ症候群を発症したケースです。この女性は夫に暴力をふるった後、夫に連れられて救急室やってきました。

彼女は「夫は本物ではない」「近所の人が鍵を持って侵入して彼女に性的暴行を働き、さらに彼女に対し殺意を持っている」と訴え、「ティーンエイジャーの息子達は殺されてしまい、今家に住んでいるのは知らない人だ」と信じ込んでいました。

このケースでは適切な治療により、カプグラ症候群に特有な妄想はなくなりました。

カプグラ症候群の原因

高次脳機能障害

カプグラ氏が行った最初の報告の中でカプグラ症候群は「知覚の錯覚ではなく感情判断の結果である」と述べたため、カプグラ症候群は対象の感情的判断の問題とされてきました。つまり、人の顔の形の認知は正常に行われており、「瓜二つの偽物」という考えが感情的判断によってなされると考えられたのです。

しかし、1970年代に脳外傷後にカプグラ症候群が発症したとの報告があって以来、カプグラ症候群では脳に何らかの器質的障害があるはずだとの考えが広まり、1980年以降は脳の器質障害が原因であるという考え方が主流です。

脳の情動的認知経路(扁桃体、帯状回、前頭葉腹内側部など)の障害によって、知っている顔を見た時に本来もたらされるはずの情動(感情や気持ち)が湧き上がらず、「何かがおかしい」と感じるが、相手が偽物であるせいになってしまうのが、カプグラ症候群なのです。

カプグラ症候群がみられる病気と病変部位

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カプグラ症候群は、統合失調症に最も頻度の高い疾病ですが、その他に、アルツハイマー型認知症、レヴィー小体型認知症、脳血管性認知症、頭部外傷、多発性脳梗塞、脳腫瘍、多発性硬化症、脳炎、ウィルソン病、糖尿病、偏頭痛発作、ケタミンの使用、レボドーパの使用、深部脳刺激術など、様々な病気や障害/損傷でも見られます。

脳の部位ですが、今の所、脳の右半球損傷を指摘する研究が優勢です。特にアルツハイマー型認知症では右半球や右前頭葉の障害が目立つ症例が多いようです。両側に病変があるものの報告もあります。脳半球内では、扁桃体、帯状回、前頭葉腹内側部、側頭葉が関係するという報告が多いようです。

しかし、変性疾患、頭部外傷、多発性脳梗塞、多発性硬化症などの症例では、いろいろな部分の脳病変が起こるため、カプグラ症候群がその場所の損傷のために起こっていると明言することはできません。逆に、右半球の扁桃体や前頭葉などに損傷があっても、必ずカプグラ症候群になるわけではありません。

カプグラ症候群に治療法はあるの?

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統合失調症やアルツハイマー型認知症などによってもたらされたカプグラ症候群は、原疾患(統合失調症やアルツハイマー型認知症)の治療を行うことがカプグラ症候群の治療にもつながります。

しかし、統合失調症やアルツハイマー型認知症自体に画期的な治療法はなく、これらによって引き起こされたカプグラ症候群の治療も簡単ではありません。さらに、カプグラ症候群は、その「偽物」妄想により家族だけでなく治療者を敵だと認識しまうことが多いため、そもそも治療を行うこと自体が難しいのです。

ただし、統合失調症やアルツハイマー型認知症でおこる幻覚や妄想に対しては、認知療法・認知行動療法という、認知に働きかける精神療法が治療法として有効であることがわかっています。実際に幻覚や妄想を体験すると、それは本人にとって「絶対的な真実」として感じられるますが、認知療法や認知行動療法をとることで、カプグラ症候群の妄想に限らずいろいろなタイプの幻覚や妄想と上手に付き合うことができるようになるのです。例えば、「瓜二つの偽物」妄想があっても、「これは妄想かもしれない」と気付き「とりあえず、本物として接しよう」「偽物のような気もするが、気にしないようにしよう」と対処できる可能性が高くなります。

一方、「報告された症例」の2番目に挙げたパーキンソン病への視床下部深部脳刺激術によるとみられるカプグラ症候群では、深部脳刺激術を中止することでカプグラ症候群特有の妄想は著しく改善しています。

また、3番目に挙げた多発性硬化症に見られたカプグラ症候群では多発性硬化症への治療として免疫抑制剤と副腎皮質ホルモンを使用することで、妄想自体は残ったものの、カプグラ症候群特有の妄想は消失し、家族を家族として認識することができるようになりました。

一言でまとめますと、カプグラ症候群だけに特別良く効く治療法はないものの、原疾患の治療や認知療法/認知行動療法、原因薬物などの除去などで、カプグラ症候群を治療できる可能性があります。

大切な人がカプグラ症候群になった時にできること

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カプグラ症候群の人の恐怖と苦しみは計り知れないものがありますが、カプグラ症候群の人の家族もまた、辛く苦しい時間を過ごすことになります。カプグラ症候群の妄想は自分にとって一番大切な人を対象に起こることが多く、一番大切な人とは、自分の親や、配偶者や、子ども達だからです。自分の大切な人が本物そっくりの偽物にすり替わってしまうの同じくらいかそれ以上に、自分の大切な人から「偽物」呼ばわりされるのは辛いことです。

ここでは、大切な人がカプグラ症候群になった時に、あなたにできることをご紹介します。

まずは話を聞く

自分に向かって「偽物だ」と、断定されてしまうと「何を言っているの!? 本物に決まっているでしょう? 」と訂正したくなってしまいますが、可能であれば、本人に共感する態度で話を聞いてください。

例えば、「お前は本物とはどこかが違う、さては偽物だな。」と言われたら、「本物とはどこか違うのね? 自分では気づかなかったけれど、私は偽物なのかしら?」と、本人の言葉をそっくりそのまま、質問の形で返してください。

カプグラ症候群の人に限らず、妄想状態に陥っている人は、話を聞いてもらえたと感じられることで、落ち着くことも多いです。難しいことですが、「偽物の中で一番本物に近い」立場がとれれれば理想的です。

理由を言って、一旦離れる

話を聞いても落ち着かせることができず、自分に向かって攻撃的な言葉が出てきたり興奮してきた場合には、「ちょっとトイレに行って来ます。すぐに戻ります。」など、きちんと理由を言って、本人から一旦離れてみてください。

本人から一旦離れることで、興奮がおさまる場合もあります。その際、本人から逃げるような振る舞いをすると、それが刺激となりよけいに興奮してしまうので、必ず、席を立つ理由を説明してください。一対一ではなく、何人かの人がいて、その中に「本物」と思われている人がいれば、「本物」に話題を変えてもらうのもいい方法です。

カプグラ症候群があることを治療者に伝える

統合失調症やアルツハイマー型認知症など、もともと妄想を伴う疾病だと、他の妄想に紛れてカプグラ症候群にみられる妄想が分かりにくい場合があります。

特に、治療者は本人といつも接しているわけではないので、カプグラ症候群が起こっていることに気づかないことも多いので、もし、「瓜二つの偽物」妄想が起こっていることに気づいたら、治療者に必ず伝えてください。

これは瓜二つの偽物の世界から本人が逃れるために、暴力的な行動を起こした場合に本人や自分を守るための準備にもなります。

自傷他害の恐れがある場合は、警察への通報をためらわないで

妄想により、自傷他害の危険があるような緊急の場合には、警察への通報をためらわないでください。措置入院の手続きがとりやすくなります。措置入院は、一般人や家族による申告でも受理されることがありますが、警察官による通報の方がスムーズです。

人目がある場合には妄想があることを隠すことがあるので、警察が到着した途端に、暴力がおさまることもありますので、事前に治療者にカプグラ症候群がみられていたことを相談しておくと、状態を理解してもらいやすいです。

措置入院させることによって、本人の妄想が更に強まりますし、誰も信じない状態になって危険性はあります。しかし、本人や本人が一番大切にしているはずのあなたが傷ついては取り返しがつきません。

まとめ

カプグラ症候群の症状

・「瓜ふたつの偽物」妄想

・「全てが偽物」妄想

・「秘密結社」妄想

・孤独で恐ろしい世界から抜け出そうとするため、暴力をふるったりする

カプグラ症候群の原因

・統合失調症、アルツハイマー、脳外傷など、いろいろな疾病でおこる

・脳の情動的認知経路の異常によって、知っている顔を見た時に本来もたらされるはずの情動が湧き上がらず、「何かがおかしい」と感じるためらしい

カプグラ症候群の治療

・統合失調症や認知症では原疾患の治療を行いつつ認知療法や認知行動療法を行う

・カプグラ症候群の原因となる薬物や治療があるのならそれを中止する

・多発性硬化症などの比較的治療法の確立したものがカプグラ症候群の原因ならその原疾患の治療を最優先に行う

大切な人がカプグラ症候群になった時にできること

・まずは話を聞く

・興奮していたら、理由を言って、一旦離れる

・カプグラ症候群があることを治療者に伝える

・自傷他害の恐れがある場合は、警察への通報をためらわない

以上が今回の記事のまとめです。カプグラ症候群は以前はとても珍しい症候群だと思われていましたが、最近では、普通の妄想として片付けられていたものの中に、意外に多くのカプグラ症候群が潜んでいたことが分かっています。

カプグラ症候群の人が愛する人を偽物呼ばわりするのは、愛すればこそでもあります。カプグラ症候群の人にとって「どうでもいい人」は「偽物」にはなりません。

この記事が、カプグラ症候群の人の孤独と恐怖を理解し、カプグラ症候群本人と「愛する偽物」が安全で安心な世界を取り戻すための一助になれば幸いです。

  
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