みなさんは、血球貪食症候群という病名を聞いたことがあるでしょうか。あまり聞きなれたことのない病名だと思いますが、実は誰もがかかり得る病気なのです。
そこで、血球貪食症候群がどういった病気なのか、そしてその原因と具体的な対策について紹介させていただこうと思います。
血球貪食症候群の諸症状は、一般的なもので、なかなか気づきにくいものでありますから、個の投稿を通じて、血球貪食症候群の早期発見、そして早期の対策に繋がればと思います。
この記事の目次
血球貧食症候群とは
血球貧食症候群は、感染症が原因となって生じる免疫異常によって生ずる、血液中の赤血球等が破壊されてしまう症状を指します。
ある感染症を発症すると、血液の中に炎症を起こす原因となるサイトカインが増加します。そして、サイトカインが増加に伴い、血液の炎症によって生じた刺激によって、免疫細胞の代表とされるマクロファージが過剰に増殖してしまいます。そして、そのマクロファージが、血液中の赤血球等を浸食してしまう症状を指します。
血球貪食症状群には、一次性と呼ばれる原発性によるものと、二次性と呼ばれる反応性によるものとに分類されます。原発性のものは、もともとの体の体質に起因するもので、反応性によるものは、他の病気に誘発された形で生じます。
血球貧食症候群の具体的な症状
では、血球貧食症候群の症状についてご説明します
1週間以上の発熱
血球貧食症候群を発症した方は、熱が下がらない状態が続きます。軽い風邪のような症状なので見落としがちですが、1週間以上発熱が続く場合は、血球貧食症候群の可能性がありますので、病院での診察が必要となります。
高フェリチン血症
フェリチンとは、人間の細胞に存在しているたんぱくのことを指します。フェリチンは、体内に運ばれた鉄の毒素を分解したうえで細胞内に蓄え、鉄が必要となった場合に、円滑に供給する機能を有します。
血球貪食症候群を発症している方は、フェリチンの量が著しく増大します。その理由は、体内のマクロファージや、肝細胞からのフェリチンが過剰に分泌されることが考えられます。
2系統以上の血球減少と肝脾腫
血球貪食症候群が発症されると、体内の貪食細胞が増大します。そのため、体内中の赤血球や血小板が減少し、肝臓と脾臓が腫れあがってしまいます。
血球貪食症候群の原因
それでは、血球貪食症候群の原因について説明します。
EBウイルスの感染
血球貪食症候群を起こす最も代表的な原因は、ウイルス等に感染した後で生じる反応性の病態が挙げられます。特にEBウイルスに感染したことから生じる血球貪食症候群が一番多いとされます。
EBウイルスは、ヘルペスウイルスの一種で、人間のリンパ球に感染することによって発症します。このウイルスは健康な人間の咽頭に生息しており、唾液を介して人間同士で感染を広げます。EBウイルスに感染した場合の症状は風邪と似ており、通常であれば危険度の低いウイルスです。
しかし、このウイルスが慢性的に体内で増殖する場合が稀にあり、その場合に血球貪食症候群を発症してしまうことがあります。
がんや自己免疫疾患等の基礎疾患がある場合
血球貪食症候群の原因として挙げられるのは、ガンによる悪性リンパによるものと、自己免疫疾患によるものもあります。
ガン細胞は、サイトカインを分泌するので、何らかのガンを患っている方は、健常者の方と比べてサイトカインの量が多くなってしまいます。それがきっかけとなって血球貪食症候群が発症される恐れがあります。また、自己免疫疾患の方は、免疫の異常な活動により、サイトカインが過剰分泌することに繋がります。
遺伝によるもの
原発性の血球貪食症候群の原因は、生まれ持った体質、つまり遺伝によるものです。もともと血液中の赤血球等の生成が上手くできなかったり、サイトカインが多く分泌されるような場合は、血球貪食症候群を引き起こしいてしまう恐れがあります。
遺伝によるものである場合は、根本的な治療が難しいため、骨髄を移植するといった方法によらなければ、対処できないのが現状です。
血球貪食症候群の治療、及び対策
血球貧食症候群の治療方法を知っておきましょう。
原発性血球貪食症候群の治療は、免疫化学療法と骨髄移植
原発性血球貪食症候群の治療方法は、高サインカイン血症を減少させるために、ステロイドやシクロスポリンに代表される免疫抑制を図る物質を投与したり、抗がん剤による治療をして治療します。この治療の総称を免疫化学療法と呼びます。
そして、免疫化学療法による治療が行われた後は、骨髄移植がなされ、サイトカインの増加を防ぐ治療がなされます。
薬物治療
二次性血球貪食症候群についての治療方法は、もっぱら免疫化学療法が用いられます。
また、免疫化学療法をすると、高サイトカイン血症を調整できない恐れが生じるので、それを防ぐために血漿交換などを施すことがあります。
原疾患や合併症に対する治療
二次性血球貪食症候群の場合には、その原因となった病気についても治療をすることとなります。血球貪食症候群に対しての治療だけをしても、その原因となった病気が完治しなければ、結局血球貪食症候群を再発させてしまうためです。
ガン治療の場合は、抗がん剤物質の投与や、ガンに侵された部分に対しての放射線治療、及び摘出手術が挙げられます。
免疫疾患の治療については、はっきりした原因がいまだに判明していないので、ステロイド・免疫抑制剤・血漿交換療法といわれる、過剰な免疫を抑制する免疫治療が主となっています。
血球貪食症候群の検査方法
それでは、血球貪食症候群であるかどうかを調べる方法を説明します。
採血による検査
血球貪食症候群は、血液内の赤血球、白血球、血小板が減少する病気ですから、1週間以上の風邪に似た症状がある方は、血液検査をして、これらの量を測定してもらうことをお勧めします。
触診による肝脾腫の調査
肝臓や脾臓に腫れが生じた場合は、大きいものだと触診によって調べることができます。しかし、触診によって痛みが生じることがありますし、小さな腫れの場合は発見するのが困難ですので、超音波を用いた調査をすることもあります。超音波検査の場合は、腫れの部分を強く推すようなことはありませんから、痛み等はない、安心して受けられる検査だと思います。
採血検査
血球貪食症候群の症状とされる発熱等は、長期間続く傾向があります。そのため、いつまでも風邪が治らない場合は血球貪食症候群の可能性がありますので、採血検査をしてEBウイルスの様な細菌に感染していないかどうかを調べましょう。血球貪食症候群であった場合は、治療が遅れてしまうと症状が悪化してしまう可能性があるので、注意してください。
もちろん、赤血球等の量を調べるだけでも血球貪食症候群を割り出すことも可能ですが、血球貪食症候群の原因になっている感染症が早期で見つかれば、その分治療の負担を軽減できます。
骨髄検査
また、骨髄検査をすることもお勧めします。骨髄とは、骨の内部にある組織で、ゼリーのような形状をしています。骨髄には、赤血球・白血球等といった血液の中に含まれる物質ののもとである骨髄幹細胞が含まれています。
骨髄内に骨髄幹細胞が少ないと、赤血球等が生成されにくい状態になりますので、血球貪食症候群に感染しやすくなります。そして、骨髄幹細胞の量が、生まれながらにして少ないと、骨髄移植をしないと、赤血球等の不足を行えません。
ですから、骨髄検査をして、骨髄幹細胞の量を知ることで、骨髄移植を必要とするかどうかを判断するのがよいでしょう。
血球貪食症候群の予防法
では、血球貪食症候群を防ぐにはどのようなことをすればよいか説明します。
感染症予防を心がける
血球貪食症候群の発症原因は、遺伝によるもののほかは、感染症によるものが多いです。ですから、感染症にかからないよう、自分の体をメンテナンスすることが重要となります。
仕事に忙しい方の中には、健康は二の次、と考える方がいらっしゃるかもしれません。しかし、体が一番の資本である以上、健康であることは、仕事をするうえでの前提となります。ですから、睡眠時間を一定に保ったり、休みの日に体を動かしたりと、健康を意識した生活を心がけましょう。健康に意識を向けるだけで、暴飲暴食を自発的に抑えることができたり、活発な毎日を過ごすことができるでしょう。
また、ストレスをためると免疫力が低下するので、ストレスをためすぎないよう、自分の心の状態を確認しながら日々の生活を送ることが必要になると思います。
EBウイルス感染を避ける
先に紹介した通り、EBウイルスの感染は、血球貪食症候群の原因の一つとされるので、感染予防を心がけましょう。
EBウイルスの感染経路は、人間の唾液とされています。そのため、缶ジュース等の回し飲みを極力避けたり、キスを避けることも必要となります。
ただ、EBウイルスは、年齢が若いころに感染するのが多く、成人になってから感染するのは稀で、感染するとすれば免疫力の低下や、先天性による免疫疾患によるものです。ですから、過度に気にすることなく、体調の維持を心がけることが重要となるでしょう。
血球貪食症状群の予後について
原発性の血球貪食症候群の場合、骨髄移植や免疫化学療法による治療に頼ることとなりますが、その場合、治療がなされても根治に至る可能性は5割とされています。それだけ、遺伝によるものの治療が難しいことが示されているということでしょう。
EBウイルスに感染した場合の反応性の血球貪食症候群の場合、治療方法の進歩によって、根治に至る確率は9割とされています。もちろん、免疫化学療法においては、投薬の副作用等も懸念されるところですが、治療方法の改善が進んでいる証拠といえるでしょう。
まとめ
血球貧食症候群は、感染症が原因となって生じる免疫異常により、血液の中に炎症を起こす原因となるサイトカインが増加し、マクロファージが体内で生成され、それが血液中の赤血球等を浸食してしまう症状を指します。
血球貪食症候群の症状としては、1週間以上の発熱、高フェリチン血漿等があり、原因としては、遺伝によるもの、ガンや免疫疾患によるものの他、EBウイルスによるものが挙げられます。
対策としては、感染症にならないよう、日々健康に気を付けること、EBウイルスに感染しないよう、唾液感染の経路を立つことが挙げられます。
現在においては、血球貪食症候群に対する治療方法は様々なものが見つかっており、これからの医学の進歩に期待できます。ただ、自分の体の管理は自分でできますから、異変にすぐ気づけるような、健康を意識した生活をしていくことが大切になってきます。