これからの季節、湿度と気温共に上がり、熱中症にかかる人も多くなってきます。
熱中症は一時的なものではなく、実は後遺症が残ることもあります。それは、熱中症によって体内の様々なバランス機能が崩れてしまうため、回復させるために、一見治ったと思っても、完治するにはしばらくかかることがあるためです。
それでは、熱中症の後遺症とはどんなものかと後遺症予防対策についてお伝えします。
そもそも熱中症とは?
熱中症について紹介します。
熱中症の定義
熱中症は、日本医師会雑誌によれば「暑熱環境下において、体の適応障害によっておこる状態の総称」と定義づけられています。室内、室外にかかわらず、暑いところにいるところにより、何かしらの不調がでることを言います。
暑い屋外に長時間いたり、運動など体を動かすことによって起こるというイメージがありますが、実際は室内で熱中症にかかってしまう人も多くいます。ニュースでも見聞きしますが、部屋の中で熱中症にかかって亡くなってしまうケースもあります。それほど、命にかかわる病気のひとつなのです。
熱中症になりやすい人はこんな人
どんなに暑い日でも熱中症にかかる人とかからない人がいます。そこで、どんな人がなりやすいかを紹介します。
- 乳児・幼児・子ども
- 高齢者
- 運動をする人
- 外で働く人
- 肥満や薬を服用している人
まず、赤ちゃんや乳幼児など小さな子どもは体温調節ができないため外気が暑いことで体温が高いままとなり、熱中症になる確立が高くなります。同様に、子どもも体温調節が発達途中のため、汗の量や喉の乾きを自覚しにくく、気づいたら熱中症になっているというパターンもあります。
65歳以上の高齢者も、体温調節と発汗機能が低下していきます。暑さを感じ汗をかいているにもかからわらず気づいてない人も多くいます。体調がおかしいと思った時にはすでに遅いというケースも多いため、救急車で搬送されたり、最悪の場合は死にいたるケースもあります。
また、運動する人や外で働く人も要注意です。部活動やウォーキング、ランニングなどのスポーツを夏の暑い日にすると、いつも以上に汗をかき、脱水症状になりやすくなります。気持ち悪く、ムカムカとする症状も表れます。運動中は無理をせず、水分を定期的に摂るようにしましょう。
さらに、外で働く人は、高温多湿の場所に長時間いることになるため、汗をかきやすく、運動している人と同様に脱水症状になりがちです。最後に、肥満や薬の服用も熱中症になりやすいと言われています。特に、風邪や下痢気味の人は注意をしましょう。
子どもや高齢者は、室内でエアコンや扇風機などで温度調節を行なうことはもちろん、外に出る時の対策もしっかり行ないましょう。日傘や帽子を使い、できるだけ直射日光を避け、風通しのよい、ゆったりとした服を着て出かけるようにしましょう。ただし、黒い服は熱を吸収し、体温を上げてしまうので避けたほうが無難です。
屋外で運動や仕事をしている人は、こまめな水分補給や濡れタオルや冷却剤で体を冷やすなどの対策がおすすめです。
熱中症になりやすい条件
熱中症になりやすいのは、まず、6月から7月の梅雨明けの時期です。蒸し暑くなり始めますが、体がまだ暑さに対応できず体温調節がうまくいかないことによってなる人が多くいます。
そして、7月と8月の時期は、気温が25度を超えると熱中症を訴える人が多くなる傾向があります。これは、日中だけでなく夜間も熱帯夜が続くことで、体温が高い状態が1日中続くのが原因です。以下のような条件が重なる日は特に気をつけましょう。
- 日差しが強い
- 風邪が弱い
- 地面や建物からの照り返しが強い
- 気温が上昇した熱帯夜
- 急に気温が上がった日
- 気温が高い(30度以上)
- 湿度が高い(60〜70%)
熱中症の症状について
熱中症の症状を紹介します。
熱中症の症状は軽症・中等症・重症の3つに分けられます。中等症以上の症状の場合は病院での治療を受ける必要があります。
軽度の症状
代表的なのが、めまい、立ちくらみ、失神です。これは、脳への血流が瞬発的に十分でなくなることにより起こります。かつて、「熱失神」と呼ばれていたそうです。体温は平熱であることが多いですが、発汗や脈が遅くなる徐脈の症状が見られます。めまいや一時的にでも失神があった場合や、少しでも意識がおかしいと思った場合は、病院へ搬送してあげるようにしましょう。
他にも、発汗により体内の塩分が失われることで、筋肉の硬直(こむら返り)や筋肉痛も起こります。発汗後に水分だけを補給すると、体の塩分やミネラルの濃度が薄くなってしまうのが原因です。熱中症時の水分補給はただの水ではなく、ナトリウムやカリウムが含まれるスポースドリンクで補給する方がよいとされています。
中等症の症状
中等症の最もわかりやすい症状は、軽い意識障害です。この場合は、病院への搬送が必要になります。タクシーや自家用車などで搬送が難しければ、悪化する前に救急車を呼びましょう。他に、頭痛や吐き気、嘔吐、体の疲労感も表れます。
この症状と軽度の症状が合わせて起こることもあります。体がぐったりする、力が入らないなどの状態にもなります。また、異常な発汗量や体温の上昇により顔や体が赤く火照っている場合もあります。
重度の症状
意識がおかしい、意識がないなどの明らかな意識障害がある場合は、迷わず救急車を呼びましょう。呼びかけに対する反応がおかしい、全身にけいれんが見られる、まっすぐ歩くことができないなどの症状が見られた場合は、熱中症がかなり進み危険な状態にあると言われています。
体を触ると熱く、異常なほどの高体温にもなります。
この時は同時に肝機能や腎機能の障害や血液凝固障害が起きている場合もあります。これは病院で採血することによってわかります。
熱中症の後遺症について
例えば、インフルエンザにかかって熱が下がった後、すぐに本調子に戻らないと同じように熱中症にも後遺症があります。治ったつもりであっても、頭痛や関節痛などの症状が2週間以上続く場合があります。
後遺症—頭痛や耳鳴り
熱中症が治っても、頭痛や耳鳴りがしばらく続くことがあります。これは、体温調節を司る自律神経のバランスが崩れてしまっているためです。
自律神経には交感神経と副交感神経という2つの神経がバランスを取りながら体内を調整しています。体温が上がると、交感神経が緊張し、血管を収縮させて血流を巡らせる機能を減らすことで体温を下げます。
逆に、体温が下がると、副交感神経が血管の収縮を弱めて血流を増やして体温を上げてくれます。この体温調節がままならなくなることで、頭痛や耳鳴りを引き起こします。
後遺症—関節や筋肉のだるさ、痛み
熱中症によって体温が異常に高い状態が続くと、筋肉にも損傷します。筋肉中のミオグロビンという物質が血液中に遊離します。このミオグロビンは、血液から酸素を筋肉に届けるという大切や役割をもっている物質です。
筋肉に酸素が行き渡らず、ミオグロビンが不足してしまうと、関節や筋肉の痛みや体のだるさなどの症状として現れてしまいます。また、食欲不振なども平行して続く場合もあります。
知っておきたい熱中症の応急処置
もし、あなたの周りで一緒に運動している人が突然に熱中症で倒れてしまったらどうしたらよいのでしょうか? 間違った応急処置をすると逆に悪化させてしまう可能性があります。命にかかわる病気だからこそ、正しい処置の方法をしっておきましょう。
まず意識の確認
熱中症の人をみかけたら、または自分がそうだと感じたら、まずは水分補給を先にするのでしょうか? いいえ、その前にやるべきことがあります。まず先に意識があるかどうかを確認しましょう。意識がはっきりとしていれば、その場でのすぐに応急処置をしましょう。逆に、呼びかけても、反応がおかしい、または反応がない場合は、すぐに病院へ搬送しましょう。
お水をたくさん飲むべきか
もし意識がしっかりしていたら、まず熱中症により失われた水分を補給する必要があります。ですが、普通のお水は避けましょう。
なぜなら、熱中症は発汗により体内の水分と塩分・ミネラルが不足している状態です。この状態で水分だけを一気に大量摂取すると、体内の塩分とミネラル濃度が低くなってしまい、体は水分を外に出そうとしてしまいます。こうなると、せっかく水分補給しても、さらに脱水症状を起こしてしまいます。
この時は、ミネラルを含んだスポーツドリンクがベストですが、もし用意ができない場合は、1リットルのお水に食塩を5グラム溶かした薄い食塩水を飲むようにしましょう。熱中症の水分補給は水分ならなんでもいいわけではないことを心に留めておきましょう。
汗のふき方
汗をたくさんかいている時は乾いたタオルでなく濡れタオルでふくようにしましょう。汗は体の体温を下げるためのものです。乾いたタオルでふきとってしまうと体温を下げようとする力を止めてしまいます。
また、タオルがなければ衣服でふいたり、体に直接水をかけるのも効果的です。同時に、うちわや扇風機で風を送って体温を下げるのもおすすめです。保冷剤があればタオルに巻いて首にあてるのもよいです。冷やす場所は、首の他、脇の下や鼠蹊部など大きな静脈が流れる部分を冷やすようにしましょう。
日々の予防のコツ
のどが乾いていなくてもこまめに水分をとることが最も大切です。のどが乾いているのもガマンすることは絶対にやめましょう。また、アルコールは喉の乾きを癒すことには全く役立ちません。逆に喉の乾きを加速させてしまいますので注意しましょう。
暑い時期の衣類は、通気性や吸湿性の高いものを身につけるのも予防のひとつです。暑さを感じる機能が衰えている高齢者の方は、こまめに肌着を替え、水分を多めにとることがポイントです。
そして、もうひとつのポイントは、熱中症は室内でも起こりうるということを心に留めておくことです。屋外の炎天下でのみ起こるものではありません。湿度が高く、蒸し暑い室内は、気温や日光にかかわらず熱中症にかかりやすくなってしまいます。最もかかりやすい条件は、湿度が高く蒸し暑い室内です。窓を閉めっぱなしにしているのもよくありません。
室内は扇風機やエアコンの送風、窓を開けて空気の入れ替えなど、できるだけ空気の流れを良くする室内環境を意識しましょう。
まとめ
熱中症の後遺症は、一生続くものではありません。体内のバランスさえ元に戻れば、後遺症が出ていたとしても自然と良くなっていきます。
とはいえ、後遺症が長く続くのは避けたいものですね。今の時期は特に熱中症になりやすいので十分注意しましょう。