ガス壊疽という言葉を知っていますか?聞きなれない言葉なので知らない人の方が多いのではないかと思います。ガス壊疽は誰にでも起こる可能性のある、とても怖い病気です。
どんな症状が起こるのか、何が原因なのかを知ることで自分の大切なカラダを守ることができるかもしれません。自分の身を守るためにもガス壊疽について知識をつけていきましょう。
ガス壊疽とは
ガス壊疽(がすえそ)とは別名「クロストリジウム性筋壊死」とも呼ばれ、傷口から細菌が侵入することで筋肉内、皮膚内の組織や細胞を破壊する致死性の病気です。
「ガス壊疽」は、感染し破壊された組織や細胞が腐敗し細菌が増えたところを中心に毒素が作られガス(メタンや二酸化炭素など)を発生させながら、全身に感染が広がる事が特徴です。急速に全身に感染が広がるため、治療しないとすぐ死に至る場合もあるとても恐ろしい病気です。
原因
大きな外傷(交通事故や災害など)、やけど、手術などの理由により傷口から体内に細菌が侵入する事によるもの。体内に侵入した細菌が組織を破壊し、壊死させその組織内で繁殖し毒素となるガスを発生させながら全身に感染していきます。
米国での発生件数は年間数千例あり、怪我や手術後に発生している場合が多くみられます。
症状・診断
「症状」
感染した傷口部分に激しい痛みと腫れがみられます。早ければ数時間でさらに激しい痛みに襲われ腫れた部分の色は白から次第に赤くなっていき最終的に黒になります。大きな水ぶくれができ、進行していくにつれて水泡の中にガスの泡や、皮下にガスが溜まっている感触がみられたり感じることがあります。
傷口からは細胞が破壊され腐敗したことにより悪臭、腐敗臭を発します。更に進行していくと毒素となるガスや、壊死物質が血液中に入る事により、発汗が起こり、嘔吐、貧血、血尿、黄疸(おうだん)などの症状がではじめます。
治療が遅れると、血圧が下がったことによるショック状態や昏睡状態、敗血症や多臓器不全症になり、発症してから治療をせず放置した場合、48時間以内に死亡することもあります。治療を行ったとしても感染した箇所で致死率が異なります。腕や脚に感染した場合は約8人に1人、胴体への感染の場合約3人に2人の割合で死に至ります。
「診断」
病状を医師が診断するため様々な身体検査が行われます。傷口の周囲に腫れや壊死しているところがみられた場合、「ガス壊疽」の疑いを含め血液、体液を採取し、その他の細菌がいないかを検査します。また、組織内にガスがあるかないかを調べるため画像検査としてMRI、CTスキャン、X線なども行います。検査結果で病原菌を特定し治療方針を決定します。
治療法
「ガス壊疽」と診断、疑いのある場合、早急に治療を開始しなければなりません。傷口を十分に洗浄し抗菌薬を塗布。更に大量の抗生物質(通常はペニシリンやクリンダマイシン)を投与しこれ以上の感染、壊死を阻止します。傷口から膿を出すために切開し、感染、壊死してしまった組織はすべて取り除きます。高圧酸素療法も効果的と言われています。
クロストリジウム
クロストリジウムとは細菌類、真正菌目バチスル科に属する偏性嫌気性の細菌です。自然界、生物の腸内など酸素が少ない環境に広く存在しています。酸素が多くある環境では増殖することができませんが、耐久性の高い芽胞を作り休眠することができ、そのため死滅せずに生存することができるのです。
他の偏性嫌気性菌が生存することができない環境下でも生き残ることができるため、偏性嫌気性菌の中では昔から存在が確認されており研究が進められてきたそうです。
ガス壊疽が引き起こす病気
ガス壊疽の治療が遅れることで他の病気を引き起こす場合があります。その病気について書いていきたいと思います。
敗血症
敗血症とは病原体が血液の中に広がることによって起こります。主な原因として挙げられているのがグラム陰性菌、ブドウ球菌、髄膜炎菌です。これらの病原体は体外からの感染、体内で感染を起こした場所などから広がってしまいます。ガンや糖尿病など免疫が低下している人に起こりやすいそうです。
敗血症は死亡率が高く3人に1人が亡くなってしまうといわれています。感染症をきっかけに体中の臓器が急激に傷を受けてしまうことが原因です。心筋梗塞や脳卒中よりも死亡率が高く、重症敗血症の場合死亡率が25~40%とされています。
症状としては悪寒や発熱、倦怠感、心拍や呼吸の増加といった症状がみられます。ただし症状が重い場合には体温が低下することもあります。また意識障害やショック症状がみられる場合もあり、重症化が進んでしまうと命に関わることもあるので注意が必要です。
敗血症になると今までのように食事を摂ることが困難になるため栄養管理がとても大切です。また看護ケアが必要とされるため入院をすることがほとんどです。敗血症にならないためには日頃からの対策がとても大切です。感染を防ぐためにも手洗いうがいを徹底し、免疫力を低下させないよう適度な運動をすることも必要です。
「グラム陰性菌」
グラム陰性菌とはグラム染色で赤や桃色に染まる細菌のことをいいます。グラム陰性菌の病原性は細胞壁のある種の成分が関係しているといわれています。グラム陰性菌は薄いペプチドグリカン層というものに覆われていて、外側は外膜というものに覆われています。外部から来る化学物質から守ってくれるのが外膜です。
「ブドウ球菌」
ブドウ球菌とは人の皮膚、鼻腔、腸管、外尿道や粘膜面などに常に存在しています。化膿している傷口には特にあるそうです。黄色ブドウ球菌と呼ばれるものがあり、これは食中毒の可能性がある菌です。この菌の食中毒は食品中で作られた毒素が原因です。この毒素は熱に強く100℃で調理しても菌はなくなっても毒素が壊れることはありません。火を通したから安全であるということはありません。
「髄膜炎菌」
髄膜炎菌(ずいまくえんきん)とは髄膜炎を起こす細菌のことです。髄膜炎は頭痛が持続し発熱やうなじが硬直するなどの髄膜刺激症状や随液細胞増加といった症状が出ます。他の臓器で感染したウイルス血症などが髄膜腔や脳へ入り込みます。ウイルス性、細菌性、結核性、真菌性が主な病因ですが寄生虫や髄膜がん腫症などによる髄膜炎もあるそうです。
敗血症については、敗血症は死亡率が高いので注意!症状や治療法について!を参考にしてください。
多臓器不全
多臓器不全とは複数の臓器に何らかの原因で障害が起こり、その機能が正常に働かなくなってしまうことをいいます。複数の臓器というのは肝臓、腎臓、心臓、肺、血管系、消化器、神経系の7つでありこれらは生命を維持するために必要な臓器です。7つの臓器のうち2つ以上が機能しなくなった場合に多臓器不全と診断されるようです。
多臓器不全を起こす原因として主に、重い感染症、低血圧、大手術、大量出血、外傷などが挙げられます。特に多いとされているのが、感染症、低血圧、外傷です。多臓器不全は死亡率が高く治療後の生存率も0~15%と低いのが現状です。そして多臓器不全を引き起こした段階で、3つ以上の臓器に問題があった場合の生存確率は0%に等しいといわれているようです。
治療法としてはまず、多臓器不全を引き起こす原因となった病気を見つけ治療します。また異常が起きている臓器によって治療法は異なりますが、食事療法や薬物療法などの治療が行われる場合もあります。予防法としては生活習慣を整え低血圧にならないようにし、感染症を防ぐことが大切です。
詳しくは、多臓器不全とは?原因や症状、治療方法について紹介!を参考にしてください。
ガス壊疽の予防
ガス壊疽は死に至る可能性のある怖い病気です。ガス壊疽にならない為にもしっかりと予防し未然に防ぐことが大切です。日頃からできる予防法は傷口をきちんと洗うということです。怪我などで傷が出来た場合には、傷口を十分に洗うことが必要です。
ガス壊疽は傷口から菌が入り込み症状を引き起こすため、洗い流すことで感染のリスクを減らすことができます。傷口を消毒する事も予防になります。傷口を洗ったり消毒するのは面倒だとそのままにせず、洗うだけでも予防になるので傷ができた時には洗うようにしてください。
ガス壊疽になってしまったら
ガス壊疽かもしれない、ガス壊疽になってしまったという場合には早急の治療が必要のためすぐに救急車を呼びましょう。治療が遅れるとカラダの一部を失ったり命の危険もあります。ガス壊疽は早期治療がとても大切になるのでためらわずにすぐに救急車を呼んで治療しましょう。
まとめ
ガス壊疽とは
・別名でクロストリジウム性筋壊死
・筋肉内、皮膚内の組織や細胞を破壊する致死性の病気
・急速に全身へ感染が広がることが特徴
原因
・大きな外傷、やけど、手術などの傷口から細菌が侵入することで起こる
・怪我や手術後に多く発生している
症状
・感染した部分に激しい痛みと腫れがみられる
・腫れた部分は色が変色していき白から赤、最終的に黒くなる
・細胞が破壊され腐敗すると悪臭、腐敗臭を放つ
・進行していくと嘔吐、貧血、発汗、血尿、黄疸などが出る
診断
・様々な身体検査が行われる
・傷口周囲が壊死している場合いガス壊疽を疑い血液、体液を採取し細菌がいないか調べる
・画像検査としてMRI、CTスキャン、X線を行う
治療法
・傷口を十分に洗浄し抗菌薬を塗布
・大量の抗生物質を投与し感染、壊死を阻止する
・傷口の膿を出すため切開し感染や壊死している部分は取り除く
ガス壊疽が引き起こす病気
・敗血症
・多臓器不全
ガス壊疽の予防
・傷口をきちんと洗う
ガス壊疽になったら
・すぐに救急車を呼ぶ
ガス壊疽は発症すると一刻を争うとても怖い病気です。自分のカラダを守るためにもできるだけ怪我をしない、発症してしまったら自己判断はせず、すぐに病院を受診し適切な治療を受けてください。