凍傷ってどういう状態?症状や治療法、程度について知ろう!防ぐにはどうすればいい?

凍傷というと、雪山に長時間いたり、酷寒の地で遭難したりと、日常生活とはかけ離れた世界の話だと思ってしまいがちですよね。実際、雪山で遭難したり、登山家の人が凍傷になったりする話は聞きますが、あまり身近には感じられないかも知れません。

しかし、凍傷は誰でもなりうる病気だというこの記事で知ってもらえればと思います。そのためにも、まずは凍傷になってしまう原因とその症状について、詳しくご紹介します。

凍傷とは

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凍傷とは、低温障害の一種で、寒い場所や冷たい水の中に長時間いるなどして体温が下がったり、皮膚に障害が起きたりする症状です。また、低温障害は、以下のような種類分けができます。

  • 凍瘡(とうそう):皮膚の血行が悪くなることにより赤く腫れるなどする状態で、いわゆる「しもやけ」がこれに当たります。
  • 凍傷:皮膚や組織が凍り付く状態を指します。
  • 全身性低体温症:体温が35度以下にまで下がった状態を言います。

では、凍傷の段階ごとに詳しく説明しましょう。

凍瘡(しもやけ)

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凍傷の中で最も身近なものは凍瘡(しもやけ)でしょう。冬になると手や足の指が痛痒くなり、不快な思いをしている人も多いかと思います。ではそもそも、しもやけはどうして起こるのでしょうか?

血行不良が原因

冬になると外気が冷たくなり、否応なしに体温は下がりますよね。身体が冷えると、血管は体内の熱が逃げないようにするため、収縮します。血管が縮めば、血液の通り道は狭くなるため、量が減り、血の巡りが悪くなるというわけですね。

また、動脈は身体の深いところを通っているため気温の影響は受けにくいのですが、静脈は身体の表面付近にあるため、ダイレクトに気温の影響を受けます。

そのため、身体の深部の動脈では血流がよくても、表面付近の静脈では流れが滞り、細胞や組織に十分な栄養が届きにくくなるのです。それによって鬱血や炎症が起こり、しもやけになってしまう、というわけですね。

手足や鼻、耳に症状が出やすい理由

手足は身体の末端ですから、どうしても冷えやすいです。また、鼻や耳も多いにくく、どうしても外気に触れやすい場所ですから、しもやけになりやすいのです。

しもやけの症状

しもやけと言っても、その症状は以下の2つに分けられます。

樽柿型

樽柿型は、手足が全体的に赤くなり、皮膚が硬くなって腫れ上がるのが特徴です。比較的よく見かけるしもやけは、こちらの方が多いかも知れません。

多型滲出性紅斑型

一方、多型滲出性紅斑型は、手や足の指やかかと、または鼻、耳などに赤い発疹ができるのが特徴です。

しもやけというと手足がなりやすいですが、耳が痛痒くなることもありますよね。この2つのタイプの共通点は、どちらもジンジンとした痛痒さがあり、ひどくなると水疱ができるほか、糜爛(びらん)という皮膚のただれが生じる点です。

また、しもやけになった部分の皮膚は乾燥すると角質に亀裂が入りやすくなるため、ヒビやあかぎれの原因にもなります。

しもやけの治療法

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しもやけを予防するには、血行をよくすることが何より重要です。

防寒対策をきちんとする

手足などの末端神経は血行不良になりやすいですから、暖房の効いている部屋でも冷えやすいです。厚手の靴下やルームシューズなどを履いて足元を温めたり、手袋をしたりしてきちんと保温しましょう。

また、冬場に活躍するブーツや締め付けの強い靴などは血行不良を起こしやすく、しもやけのリスクが高くなります。通勤時はブーツなどを履くとしても、職場に着いたら温かくて楽な靴に履き替えるなどして、血行促進に努めましょう。

汗に注意

日頃からジョギングやウォーキングなどの運動をしている人は、汗に注意しましょう。運動してかいた汗をそのままにしておくと皮膚の表面温度が下がり、やはりしもやけになりやすくなります。風邪予防だけでなくしもやけ対策としても、汗をしっかりと拭き取り、乾いた服に着替えることが重要です。

食事で血行促進

ビタミンEには血行を促進させる作用があるため、食事に摂り込んで上手に摂取しましょう。

ビタミンEを豊富に含む食品

  • アーモンドや落花生などのナッツ類
  • 大豆などの豆類

また、ビタミンEはビタミンCやβカロテンと一緒に摂取することで、吸収効率がよくなります。メニューに上手に組み込んで、効率よく身体に摂り込みたいものですね。また、ビタミンEは飲み薬として摂取することもできるので、生活スタイルに合わせて活用しましょう。

軟膏を塗って治療する

しもやけには、ステロイド系の軟膏のほか、血行促進効果のある軟膏など、いくつか種類があります。病院で処方されるものとしては、ユベラ軟膏やヒルドイドなど、市販品としてはオロナインやユースキン、ヒビケア軟膏などがあります。

しもやけがひどい場合には1度皮膚科で診てもらうとよいでしょう。

凍傷

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凍傷は、凍瘡よりも症状の重いものを言います。主に長時間身体が冷やされることで皮膚に障害が現われ、重度になると細胞が破壊されて壊死することもある、非常に危険な状態です。

身体が冷たい外気にさらされると、まず、血管が収縮します。そして、皮膚の表面温度が下がるにつれて症状が変化していきます。

表面温度が25度以下

皮膚の表面温度が25度以下になると、組織が活動するのに必要な酸素が不足し、チアノーゼが起こります。この時、皮膚の色は暗い紫色になります。

表面温度が15度以下

さらに表面温度が下がり、15度以下になると、今度は皮膚がピンク色に変わります。このくらいの段階になると、徐々に組織の傷害が始まります。

表面温度がマイナス4度以下

ここまで皮膚の表面温度が下がってくると、凍傷が起こります。組織に含まれる水分が凍り付き、シャーベット状になると言います。

凍傷の症状

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自覚症状としては、まず針などで皮膚を突かれているような感覚に始まり、症状が進むと痺れを感じるようになります。さらに進行すると、肌が白くなり、触った感じは硬く、冷たくなります。この時点で、感覚はなくなります。

また、この段階で患部を温めると、水疱や腫れが起こり、肌の色が赤色から青色、やがて黒色に変化し、焼けるような痛みを伴います。

回復の可能性

傷害を受けた箇所が元に戻るかどうかは、ダメージの程度によると言います。

ダメージが皮膚・皮下組織までの場合

このレベルであれば、完全に元の状態まで回復することが可能です。

ダメージが血管に及んでいる場合

ここまでダメージを受けてしまうと、元に戻ることはまずないそうです。場合によっては壊疽を起こし、傷害を受けた部分を切除しなければならない事態にまでなりますから、ダメージはかなり甚大と言えるでしょう。

凍傷の応急処置

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凍傷の場合、凍瘡よりもさらに重度のダメージを負っている状態です。ここで注意すべきなのは、凍傷と違って温めてはいけない、ということです。

凍傷になった部分を温めると、焼けるような痛みと共に、腫れが起こり、肌の色が黒色に変色します。もちろん表面温度が冷えて障害が起こっているので、患部を温めることは必要ですが、あくまで急激に温めることはしないようにしましょう。

まずはぬるま湯でゆっくりと温める

凍傷を起こしたら、血液を循環させるために温めますが、いきなり熱いお湯で温めてしまうと、かえって障害が重くなる危険があります。そのため、まずはぬるま湯で15~30分ほどかけて温めていきます。お湯の温度を保つ為ためにお湯を注ぎ足す際も、熱くならないように注意しましょう。徐々にお湯の温度を上げて問題ありませんが、それでも40度を超えないように意識してください。

患部を温めると、焼けるような痛みと共に腫れが起こり、次第に皮膚が柔らかくなります。血色が戻ったら、患部の温めは終了です。

患部を揉んだり擦ったりしない

凍傷になる前段階であれば問題ありませんが、すでに傷害を受けている場合は、擦ってしまうと凍傷を起こしている組織を傷付ける可能性があるため危険です。絶対に揉んだり擦ったりしないようにしましょう。

鼻や耳、指先などは壊疽の危険も

凍傷は、その傷害の程度によっては完治することもありますが、鼻先や耳、指先などが凍傷になった場合、組織が死んでしまう壊疽が起こり、患部を切除しなければならない可能性が高くなります。そのため、鼻や耳、指先はきちんと保温し、冷えないようにすることが重要となります。

凍傷の程度

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凍傷はその程度によって、自分で応急処置できるものとできないものがあります。では、その程度を段階別にご紹介しましょう。

1度凍傷

1度凍傷は傷害が表皮までに留まっており、患部を温めると皮膚が赤くなりヒリヒリします。応急処置をしたら、そのあとは特別な処置を要しません。

2度凍傷

2度凍傷は、傷害が真皮まで及んだ状態で、患部を温めると水ぶくれができます。処置に慣れている場合を除いては、皮膚科や外科で凍傷である旨を伝え、処置を受けましょう。できてしまった水ぶくれは破らないようにした方が直りはよいですが、もしも破れてしまったら、シャワーや石鹸で清潔に保ちます。特に、凍傷の範囲が広い場合(手の平全体・顔などに及ぶ)は、どちらにしても病院を受診することをオススメします。

3~4度凍傷

3度~4度の凍傷になると、皮下組織や骨にまで傷害が及んでいる状態です。皮膚がただれる、黒色に変化するなどのほか、潰瘍ができてえぐれることがあります。この状態になると自身での処置は難しいため、直ちに医療機関を受診しましょう。また、このレベルになると後遺症が残る可能性が高いです。

3度以上の凍傷の場合、専門病院の受診が必須となりますが、自身で受診する場合には、総合病院の救急外来を受診しましょう。

凍傷の治療法

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3~4度の凍傷にかかった場合、傷害の程度によっては手術によって患部を切除することがあります。では、具体的にどのような処置を行うのか、方法別にまとめました。

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こちらは、組織が死ぬ壊疽などにより、凍傷が起こっている部分を切除する方法です。この方法をとる基準としては、皮膚の再生が不可能なほどに重度の凍傷を負っていることです。3~4度の凍傷は皮下組織や骨といった、身体の深いところまで侵されているため、回復が見込めないためです。

植皮手術

これは、壊死してしまった皮膚を取り除き、別の皮膚を移植する手術です。ただし、この手術を行っているのは形成外科か皮膚科に限られるので、病院を探す場合には、これらの病院に絞るとよいでしょう。または、総合病院で診察を受け、紹介状を書いてもらうことも可能です。

低体温症

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こちらは名前の通り、体温が35度以下まで下がってしまった状態を言います。

低体温症になると、どのような症状が出るのか、段階別にまとめました。

低体温症の症状

第1段階:震えが起こる

寒さによって震え、歯が鳴るなどの状態になります。

第2段階:動きが緩慢になる

もう少し症状が進むと、今度は震えが止まります。動きが緩慢になり、ややぎこちなくなるほか、思考がぼんやりするため正常な判断ができなくなります。

ただし、これらの症状は非常にゆっくり起こるので、本人も周囲も、なかなか症状に気付くことができません。

目安になる行動としては、フラフラとさ迷ったり、転びやすくなったりして、挙動不審になる点です。

第3段階:意識障害

震えが止まった後は、動作はより一層遅くなり、やがて昏睡状態に陥ります。対応が遅れれば、やがて死に至る危険な状態です。

低体温症は、外部からの熱や代謝によって生み出される熱量よりも、身体から失われる熱の方が上回った結果起こります。急激に冷たい水に浸かった場合、5~15分ほどで低体温症になると言われています。また、体感ではそこまで冷たくない水でも、長時間浸かることで低体温症になりうるようです。

低体温症のリスク

死亡のリスク

低体温症による死亡リスクは、体温の低下に伴って大きくなります。死の危険があるのは31度以下ですが、実際の死亡例の多くは体温が28度以下だと言われています。

まだ様々な機能の発達していない乳児や高齢者の場合、若い人よりも低体温症になるリスクが高いと言われています。それは、若い人に比べて寒さに対する適応力が低いため、対応しきれないからです。たとえば、高齢者が寒い部屋で何時間も動かずにいると、屋内であっても低体温症になると言います。乳児の場合も、急速に身体から熱が失われて低体温症になることがあるので注意が必要です。

高齢者のリスク

暑さもそうですが、高齢になるほど寒さに対する適応能力も下がっていきます。通常、震えは身体を温めるために起こりますが、高齢者の場合、震えによる体温上昇がしにくくなるようです。

また、高齢になって皮下脂肪が減ると、体内の熱が失われやすくなるため、熱を留めておく力も弱まります。

注意点

こちらも熱中症対策と似ていますが、高齢者の場合、節約や寒さに対する感覚が鈍るため、暖房をつけない傾向にあります。これが低体温症を引き起こすことにつながりますから、以下のことに気を付けて生活しましょう。

  • 温かい環境を作る

暖房費節約などのために室温を低くしたり、暖房をつけないなどの行為は危険です。室温は最低でも20度以上に設定しておきましょう。特に、寝る時は体温が下がりますから、寝室は温かく保っておくことが大切です。

  • 重ね着をする

薄着をせず、重ね着をして身体を保温するほか、帽子や手袋などで、末端を温めておきましょう。

  • 温かいものを口にする

高齢になるとどうしても運動量が減りますから、体温も下がりがちです。温かい食べ物や飲み物を口にすることで、身体の中から温めましょう。特に飲み物は身体を温めるだけでなく、脱水症状を防ぐのにも有効です。

  • アルコールを控える

アルコールを摂取すると熱く感じることがありますが、あれは血管が広がっているためで、一時的なものです。結果的にアルコールは体温を下げるので、飲み過ぎには注意しましょう。

  • 運動をする

軽い運動でよいので、定期的に行うことで体温の低下を防ぎましょう。健康維持にも効果的です。

低体温症の対処法

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低体温症になったら、

  • 身体を温めます
  • 濡れた衣服などは着替えさせるなどして肌から離す

濡れた衣服は体温をより一層奪うため危険です。低体温症になったら、まずは身体を温め、濡れた衣服は脱がせましょう。

医療機関による対応

体温が下がり過ぎた場合、温めた酸素を吸入させたり、温めた輸液を静脈から入れるなどの方法をとります。こうして内部から身体を温めるのと同時に、外部からも熱を加え、体温の上昇を図ります。

低体温症の診断方法

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低体温症かどうかを診断する方法として、直腸の体温を測るのが一般的です。ただし、従来の体温型では34度以下の体温を測ることができないため、重度の低体温症の場合は、特殊な体温計を使って測るようです。また、血液検査によっても低体温症かどうかを見極めることができると言います。

低体温症の治療法

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初期の低体温症

体温の低下を防ぐため、まずは乾いた温かい衣類に着替えさせます。毛布などで身体を保温しつつ、熱い飲みものを飲ませることで回復すると言われます

重度の低体温症

意識不明の場合は、それ以上体温が低下しないよう、衣類が濡れていれば脱がせます。その後、乾いた温かい毛布などに包み、病院に搬送するまでの間は温かい場所で待機させます。

心肺蘇生(CPR)を行う場合の注意点

一刻争う事態により、病院以外で心肺蘇生を行う場合には、以下の点に注意が必要です。判断を誤ると命に関わるため、十分に理解してから行います。

  • 胸部圧迫によるリスク

心配停止と判断して、蘇生のために胸部を圧迫する時、まだ心臓が動いていると死亡させる危険があります。

脈と鼓動の確認ができない場合でも、心臓は動いている場合があり、そこに胸部圧迫を行うことで心臓のリズムを狂わせてしまうのです。こうなると逆効果で、かえって死に至らしめてしまう危険があります。

  • 揺さぶりによるリスク

意識不明を伴うような重度の低体温症の場合、揺り起こすなどの行為によって不整脈が起こる場合があります。致命的な打撃となって死亡するリスクがあるため、揺さぶることは危険です。

まとめ

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これまで凍傷の3タイプをご紹介してきましたが、凍傷にならないためには、どのようすればよいのでしょうか?最後に凍傷を予防する方法をご紹介しますので、寒い冬の季節を安全に乗り切るための参考にしてみてくださいね。

  • 長時間寒い場所に素肌をさらさない

すでにお話しした通り、凍傷の原因は素肌が寒さにさらされるためです。スキーや登山などの時にはゴーグルで目を守ったり、耳当てや手袋で防寒したりしますよね。それでも、時々は温かい室内に入って身体を温めたり、万が一手袋や耳当てを忘れた場合には、短時間で切り上げるなどして肌を守りましょう。

  • 皮膚は乾燥させておく

濡れた衣服などにより肌が濡れると、そこから凍傷を発症するリスクが高まります。濡れた手袋はもちろん、汗などで湿った靴下も危険です。こまめに替えるようにしましょう。

  • 貴金属類は危険

ネックレスやピアス、指輪などの貴金属類は、冷たい場所では氷のように冷たくなりますよね。ですから、これらを身につけたまま素肌で過ごすのは厳禁です。必ず防寒着で覆うか、初めから外しておくことをオススメします。

  • 血行不良を防ぐ

しもやけもそうですが、凍傷は血行不良によって血液が巡らなくなることで起こります。締め付けの強い衣服着ない、靴紐などをきつく締め過ぎないなどのほか、以下の人は注意が必要です。

  1. 高齢者:動脈が硬くなるため、血行不良になりやすいです
  2. 喫煙者:タバコにより血管が収縮し、血行不良になりやすいため
  3. 糖尿病・動脈硬化症の人:動脈硬化によって血行不良になりやすいため
  4. 女性:男性と比べて筋肉量が少ないため、身体が冷えやすいため
  5. 虚弱体質の人:代謝が悪く、手足が冷えやすいため

このように、凍傷は誰にでもかかるリスクがありますが、きちんと備えておけば、防ぐことができます。ただし、あまりに症状が重ければ手足を失うことにもなりかねない、恐い病気だということを頭に入れておきましょう。正しい知識を持って、安全に日々を送りたいものですね。

  
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