乳幼児期に高熱が出ると、全身が硬直してけいれんを起こす子供がいるらしい。小さい子供を持つ親なら誰でも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
このような熱性けいれんは経験してないと突然の症状に周りの親や大人はパニックになってしまうこともしばしばあります。そんな熱性けいれんについてまとめてみました。
この記事の目次
けいれんとは?
けいれんとは、突然身体を硬くして、その後手足がガタガタと震えだし、眼球が上を向いて白目のような状態となり、時に意識がなくなります。
その際に呼吸が荒くなったり、不規則になったりします。時に嘔吐したり、苦しがったりすることもあります。
しかし、このような症状は、ほとんどが5分以内に治まることが多く、あとはまったく静かになります。
熱性けいれんとは?
熱性けいれんとはどんなものなのでしょうか?
主に6歳未満の乳幼児期に、38度以上の高熱を出したときに起こるけいれんや一時的な意識の障害を熱性けいれんといいます。熱性けいれんの原因となる感染症は、インフルエンザA型やコクサッキーウィルス、エンテロウィルスなどがあります。また乳児期では、突発性発疹が多いといわれています。このときに脳炎や脳出血などの脳に原因があるものは入りません。
けいれんは、状態によって分類され、主に熱性けいれんで起こるのは、強直性と間代性という2種類のけいれんといわれています。どちらか一方の状態のけいれんが起こる場合と、両方のけいれんが交互に見られる場合があります。
強直性けいれん
①急に身体が硬くなり、手足がピンとつるような状態になる
②白目をむいて泡を吹く
間代性けいれん
①手足をばたばたさせる
②あごがガタガタ震える
熱性けいれんの原因は?
熱性けいれんの起こる原因については、発症年齢が、生後6ヶ月から6歳未満ということもあり、脳自体が未発達で、高熱に対して脳内で何かしらの異常が起こるため、などといわれていますが、現在まだ、きちんとしたけいれんの起こる脳内メカニズムなどは解明されていない状況です。
日本では、両親や兄弟など、身内などに熱性けいれんの経験がある場合の発症率が高く、遺伝的なものも原因のうちのひとつであるといわれています。
熱性けいれんの症状は?
熱性けいれんの主な症状としては、多くが
- ①38度以上の高熱
- ②左右対称のけいれん
- ③けいれんの継続時間は20分以内
- ④けいれんがおさまると意識がもどる
このような症状があります。
またこのような熱性けいれんの症状は、ほとんどの人が1回で終わります。しかし、熱性けいれん経験者の約30%程度の人は、2回以上繰り返すこともあるといわれています。
そして熱性けいれんの症状には、典型的な症状と、非典型的な症状があります。
典型的症状(単純型・定型的ともいわれる)
- ①全身が硬くなり、ガタガタと震えるのは15分以内
- ②意識が無くなり、呼びかけても反応がない
- ③顔色が悪くなる(チアノーゼ:皮膚や粘膜が青紫色になる状態)
- ④けいれんの継続時間は、5分以内
- ⑤けいれんは左右対称に起こる
- ⑥発症年齢は生後6ヶ月から6歳未満
- ⑦けいれん後、意識障害や麻痺などは残らない
- ⑧24時間以内に2回以上のけいれんは起きない
- ⑨親、兄弟などにてんかんの既往症がない
- ⑩熱性けいれんを起こすまで知的障害や神経障害は無かった
非典型的(複合型・非定型的ともいわれる)
- ①体の一部分が硬くなり、けいれんを起こす
- ②けいれんは起こらないが、意識の低下がみられる
- ③けいれんの継続時間は15分以上
- ④24時間以内に再発(繰り返す)
- ⑤けいれんが左右非対称
- ⑥けいれんが治まっても意識障害などが残る
- ⑦けいれんの前後に嘔吐や頭痛など、他の症状が出ている
そしてまれに起こる症状として、けいれんが左右ばらばらだったり、継続時間が20分以上続いたり、発熱のたびにけいれんが起こる、目の動きの異常、けいれんが治まっても意識がもうろうとする、などの症状が現れたら、それはてんかんや脳炎、脳症、髄膜炎などの別の疾患の可能性があります。単なる熱性けいれんと考えず、すぐに医療機関に受診するようにしましょう。
医療機関では、血液検査や髄液検査、頭部のCTやMRI、脳波検査などで原因がわかります。
熱性けいれんが発症しやすい年齢
熱性けいれんは、発症しやすい年齢があります。それは、生後6ヶ月から6歳未満といわれています。発症するとしたら、多くが1、2歳です。
日本では、7~10%程度の発症率で、これは欧米の3~4%に比べ高い割合です。また家族に熱性けいれんの既往症が多いことも特徴です。
熱性けいれんの対処法は?
それでは、実際に熱性けいれんが起こったときには、どのような対処法をすればよいのでしょうか?
まず第一に、近くにいる親や大人が落ち着いて、冷静な対応をしましょう。
熱性けいれんは、突然起こるものなので、その状況をはじめて見る場合は大人でもびっくりしてしまうことが多いといわれています。
しかし冷静な初期対応で症状を早く治めることができたり、また医療機関への受診で症状を申告する際にも、冷静に状況を記憶しておくことは必要です。そのためにも周りの大人は冷静な判断と対応を心がけましょう。
家庭での応急処置方法
- 熱性けいれんが起こっていることを確認したら、まず落ち着きましょう。
- 本人にとって、楽な姿勢をとらせ、着衣は緩め、特に首周りのボタンなどははずして呼吸が楽になるようにしてあげましょう。
- 嘔吐の症状がある場合は、嘔吐物が喉につまらないように、横向きに寝かせる、又は顔を横に向かせましょう。
- 状況を観察し、体温を測り、けいれんの継続時間などを計れるようにしましょう。また診察の際に医師に説明できるように、けいれんのときの様子をよく見ておきましょう。特にけいれんが続いた時間と、けいれんが治まってから意識が戻るまでの時間が分かると診断の際に有効です。
- 意識の確認をしましょう。意識がはっきりするまで様子をみて、医師の指示のないかぎり意識がはっきりとするまで薬や飲み物、食べ物は与えないようにしましょう。
- 顔色などの変化を記録しましょう。
けいれんが治まって、しばらくしたら、医療機関へ受診しましょう。単純型のけいれんであれば、急ぐ必要はありませんが、初めての熱性けいれんの場合は、念のため医療機関で見てもらったほうがよいでしょう。
もし、以下のような熱性けいれんの場合は、救急を要しますので、救急車の手配、または救急病院へ受診しましょう。
救急を要する場合
- 熱性けいれんの発作が5分以上続いてとまる気配がしないとき
- 短い間隔の発作が何度も起こり、意識がない
- 全身ではなく、一部にけいれんが起きている、または一部分だけ強いけいれんがある
- けいれんが治まった後も意識が戻らない、または麻痺がのこる
- 初めて発作を起こし、本人も周りの大人もパニック状態で処置の仕方が分からないとき
- 1歳未満ではじめての発作のとき
- けいれんの後に頭痛や嘔吐、意識の障害があるとき
- けいれんが左右非対称であるとき
このような場合は、躊躇せずに救急医療機関に受診してください。
熱性けいれん時にやってはいけない対処法は?
では、反対にやってはいけない対処法はあるのでしょうか?
熱性けいれんでは、やってはいけない対処法があります。もし、発症の可能性のある乳幼児がいるなら、一度は目を通しておいてほしいことです。勝手な自己判断が症状を悪化させたり、他の疾患まで招いてしまう恐れがあります。
熱性けいれんが起こったときにやってはいけないこと。
①発症時に周りがパニックになって、大声で呼びかけたり、身体を激しく揺らして起こそうとすること
→このような行動は、かえって症状を悪化させる原因となります。
②けいれんの際にあごなどがガクガクしている状態で、舌をかまないようにと割り箸やタオルなどの物を口にいれること
→このような行動は、子供の口の中を傷つける行為であるだけでなく、間違って噛んでしまったものが喉に詰まる恐れもあります。
ダイアップの予防法
熱性けいれんを起こした人の多くは、医療機関を受診した際に、けいれん防止の坐薬を処方されると思います。その坐薬をダイアップといいます。この坐薬は、一種の鎮静剤で、脳の神経細胞の興奮を抑え、けいれんを起きにくくする効果があります。しかしこの薬には解熱効果はありません。
ダイアップは、けいれんが起こったときに使用することが主ですが、まれに発熱の際にけいれんを予防する目的でも使用されます。多くが
- 前回のけいれんで、15分以上のけいれんが続いたとき
- けいれんを何回も起こしているとき
- 通常のけいれんとは異なるけいれんの仕方をした時です。
その場合は次回から予防としてこのダイアップが使用されることがあります。
そのとき38度以上でけいれんの心配があるなら使用するという方法で、多くが5歳ぐらいまでといわれています。まれに副作用として興奮作用や眠気、ふらつくなどの症状があらわれますが、けいれんの再発は3分の一に減らせるということです。
日常生活での予防法や注意点
日常生活での注意点などはあるのでしょうか?
日本では、ダイアップのような熱性けいれんの予防薬がありますが、このような薬での予防法は日本だけだといわれています。
海外では、熱性けいれんは、数分で治まるもの、また乳幼児期という一時的なもので、熱性けいれんが原因で脳の障害やてんかんなどに移行することはないという観点から、あまり重要視されていない症状です。しかし日本では発症率が海外と比べ比較的高いことや、けいれんという症状をあまり見慣れてなく、特異な症状と受け止め、パニックになってしまう人が多いことから、このような薬による予防法が取られるようになったといわれています。
そもそも熱性けいれんは、基本的には高熱が原因で起こるといわれているので、なるべく高熱のでるような感染症に罹らないようにすることが大切です。そしていたずらに心配することも必要ありません。なぜなら、熱性けいれんを起こした患者の7割は一度だけの発症経験で済んでおり、1回経験した患者に関しても、2回目を発症する確立は3割程度だといわれています。
日常生活では、規則正しい生活を送り、睡眠や栄養をきちんととり、ストレスのない生活を送ることが一番の予防法です。もちろんこれは熱性けいれんを起こす可能性のある乳幼児に気をつけたいことですが、同様に生活を共にする親や周りの大人も気をつけるべきことです。大人から乳幼児に感染しないように、一緒になって生活習慣や食生活をきちんとすることが熱性けいれんの一番の予防法です。
まとめ
いかがでしたか?乳幼児期に発症するといわれている熱性けいれんも周りの親や大人の冷静な対応でスムーズに乗り切ることが可能な症状だということがわかりました。
出来れば発症して欲しくないけれど、発症しても冷静に対応が出来るように、熱性けいれんについてきちんと理解し、対応が出来るように私たち大人は心がけておきたいですね。