「先天性ミオパチー」という言葉は初めて聞く方も多いでしょう。何せ情報が少ない上に、発症例も少ないという病気です。ごく稀な病気であると言っても過言ではありません。
そんな「先天性ミオパチー」という病気について今回は触れていこうと思います。
この記事の目次
先天性ミオパチーって何?
ではまずは先天性ミオパチーが何かということについてご説明してきましょう。
「フロッピーインファイト」先天性の筋力低下症状
先天性ミオパチーという病気は現在、難病に指定されている病気の一つでもあります。病気の原因は未だに特定はされておらず、有効的な治療法というものも見つかってはいません。発症人数に関してもかなり少ないもので10万人に3人ほどであることがわかっています。
そしてこの先天性ミオパチーという病気に共通して発症するという症状の一つで言えるのが、「フロッピーインファイト」というものであります。このフロッピーインファイトというものは直訳すると「だらりとした幼児」というものであり、つまり簡単にいうと、筋肉が先天的につきにくいということが言い表せます。頭や首などをちゃんと固定することができずにだらんとしてしまいだらしなく見えてしまうことがいえるでしょう。
顔面筋低下や高口蓋
先天性ミオパチーの症状の一つとしてフロッピーインファイトを挙げましたが、それは何も首や頭の筋肉だけを指すものではありません。言ってしまえば全身の筋肉にその症状は見られ、多岐にわたって現れると言ってもいいでしょう。
先天性ミオパチーの代表的なもののひとつに挙げられるものとして顔面筋の低下が挙げられます。これは文字通りの意味で、顔の筋肉の発達が非常に弱いものを指しており、表情などにも影響してきます。そして顔貌などにも関係してくることであり、つまり笑ったり、怒ったりなどの表情を作ることが困難になるということですね。
これは顔全体に及ぶものであり、一部の筋肉ということではありません。不自然な顔のゆがみなどの症状も現れるとされています。
また、先天性ミオパチーの症状で「高口蓋」というものがあります。まずこの高口蓋という言葉は聞いたことがないと思われますが、簡単にご説明しますと、口蓋という場所が顔にはあります。この口蓋という部分は上顎という部分でいうところの鼻と口を分ける境目のあたりを指している部分であり、つまり鼻と口の間の部分を口蓋と呼ぶということですね。
そしてこの高口蓋というものは、これも文字通りの意味であり、「高い」「口蓋」という言葉から口蓋部分が通常よりも高い位置になってしまうということを指します。これは顔の歪みを表すものでありますので、一部、顔の口蓋がおかしい状況になったり、また歯並びなどにも影響が及んでくるというわけです。それ以外にも様々な影響を及ぼすことも考えられています。
呼吸系や心臓の病気を併発
上記で述べたフロッピーインファイトというものは筋肉に関する低下を指すというものでしたが、これは筋肉、つまり全身の筋肉運動に関することであり、それは心臓を動かす筋肉に置いても同じことがいえるということがあります。
先天性ミオパチーの場合、筋力の低下が見られるということで、全身の筋力、つまり心臓の筋力の低下により「呼吸」などや「心臓」の働きを著しく低下させるということも症状の一つとして挙げられます。併発と呼んだほうがいいかもしれません。
これは症状の度合いによって変わってきますので、軽度の場合は息切れなどが起こる程度ですが重度になってくると生まれたその時点から呼吸困難などに見舞われる場合が多いそうです。
この場合、人工呼吸器などで酸素吸入などを補う必要があります。先天性で酢ので生まれたそばからこの症状が現れるということですね。
先天性ミオパチーの代表的な3つの型について
この先天性ミオパチーという病気の発症は主に3つの型があるとされています。順序立てて見ていこうと思います。
乳児重症型
まずは「乳児重症型」というものです。これは乳児、つまり生まれた時からすでに先天性ミオパチーというものを発症していて、さらに生まれた時から先天性ミオパチーの症状が重く出てくるというところから最も危険度が高いとされているものです。重症化というよりはすでに重症であるというところから、放置すると死に至るケースが多く、早急な処置が必要となるものであり、「人工呼吸」などや「人工栄養摂取」などの処置が必要とされています。
このケースはそこまで多くはないのですが、一番危険であるといえるものであり、最も死に近い先天性ミオパチーであることがいえるでしょう。
良性先天型
そして二つ目に挙げられるものが「良性先天型」というものです。これは「良性」であることから症状が軽いものであるということであり、先天性ミオパチーの中でも最も発症率が高いとされているものです。割合で言えばほとんどの先天性ミオパチーを発症している方の中でもこの「良性先天型」多いとされています。症状は軽いもので死に至るケースというのは極めて低いといえるものでしょう。さらに筋力の低下、つまり先天性ミオパチーに見られる主症状のものでも、比較的緩やかにであり、またゆっくりと症状が進行していくことから「非進行性」とも呼ばれています。
そしてこれにいえることは筋力低下がゆっくりであることと、そして稀に筋力の低下がほとんど確認されない場合があります。ただほとんどの場合はゆっくりと進行していくものであるのが一般的であるとされています。
成人型
そして三つ目に挙げられるものは「成人型」というものです。これは先天性ミオパチーの型の中でも最も発症率が低いとされているもので、本当にごくわずかな確率であることがわかっています。成人型は呼んで字のごとく成人になってから発症するものであって、突発的発症という呼び方もされています。この突発的発症というものは成人になってから筋力の低下など重度のものを引き起こすというものから、非常に軽度である「良性先天型」を成人になって発症するという2パターンが存在するということもわかっています。ただこれはほぼない症例であり、ほとんどが生まれてから発症する「良性先天型」であることがいえるでしょう。
また「良性先天型」が成人になってから悪化し、重症化するというのも成人型の一つの症例であるというのもわかっていますが、これもごく一部、稀な症状であり、まず可能性は極めて低いものであると言えます。
先天性ミオパチーは根本的な治療法がない
重要視される治療法についてのことです。
完全に直すことは現段階では不可能
2016年現在の段階では根本的に先天性ミオパチーを「回復」させる治療法というものは確立されていないというのが現状であります。完全に病気を完治させるという意味での治療法が未だ見つかっていません。したがって難病指定にされている節があります。
しかしながら、完全に治療することはできなくても、症状を緩和するとうことは可能であり、希望を捨ててはいけません。今後の医学の発展により症状を完全に回復させる医療法というものが発見されるという希望はあります。現段階ではありませんが、現段階で症状を和らげることは可能です。
症状を和らげることについてへは後述しますが、決して治療法というものが全くないというわけでないということを念頭に置いておいてください。
先天性ミオパチーの病気のタイプについて
先天性ミオパチーと言っても一括りにできるものではありません。上記では主な症状などについて述べてきましたが、その中でも5つのタイプに分類できることがわかっています。これからその5つの主な原因因子について説明していこうと思います。
ネマリンミオパチー
「ネマリンミオパチー」というものは先天性ミオパチーという病気の中でも最も発症例が多いものとなっています。ネマリンとはギリシャ語で「糸くず」という意味があります。これは染色体というものが深く関わってきているものであり、染色体を染めるという行為を行なった際に糸くずのようなものができるということからこの名が命名されたと言われています。
ネマリンミオパチーというものを一言で言うと常染色体というものの劣性などや優性遺伝によって引き起こされるものが比較的に多いということが確認されています。
主な症状を挙げますと、「発育や発達」の遅れなど、成長過程において重要しされるものが遅れてくるということや「顔面筋の発達不良」、これは上記でも述べましたが筋力に関するものであり、顔面に関しての筋力の発達の不良を指しています。そして「咽頭や舌、そして首の筋肉」の発達が遅れるということ、が挙げられます。筋肉の発達不良というものは先天性ミオパチーにおいて最も主症状であることからこの原因が最も多いとされています。そしてそのほかにも稀に「筋繊維の形成異常」というものがあります。筋繊維を形取る上でそこに異常が発生するものですが、これは稀な症状であることがいえるでしょう。
この症状はふた通りのものがあり生まれた時から重症であるということと、比較的軽度であるという両極端な症状があるということです。生まれた時から重度である場合はかなり酷い症状がみられますが軽度の場合は「非進行性」というものであり比較的症状は軽いものであるというものです。
セントラルコア病
セントラルコア病というものは常染色体というものが優性遺伝によって起きるというふうに考えられています。簡単に言いますと、筋繊維というものの中心部にミトコンドリアと呼ばれる物質が消失してしまうということが挙げられます。これによって中心部がすっぽりとなくなってしまうことからこの名前がつけられたとされています。
よく挙げられる症状は上記のものと同じで、「発達や発育の遅れ」、「顔面筋の発達不良」などです。この症状でいえることは生まれた時に重症化するということはほぼないということで、比較的軽度であるということが言えます。
ミオチュブラーミオパチー
三つめに挙げられるタイプはこのミオチュブラーミオパチーというものです。これはされに2種類に分類することができます。一つ目は常染色体というものの優性遺伝によって起こるとされているものと、もう一つの分はX連鎖劣性遺伝というものによって起こるとされているものの2種類があります。
一つ目の部分にいえることは生まれた時にすでに重症化しているということはかなり低いということです。つまり比較的軽度のものが多いとされています。しかし二つ目に挙げたものは生まれた時から重症化しているということが高いということが言えます。そして酷なことに、これは二つ目であるX連鎖劣性遺伝の方が比較的発症が多いということです。
これの症状としても上記で挙げたものと同じ症状が挙げられます。症状は大体が似ているものが多いのでここでは記載を割愛させて頂きます。
先天性筋繊維タイプ不均等症
四つ目に挙げられるものとしてこの「先天性筋繊維タイプ不均等症というものが挙げられます。これは上記で述べたような筋繊維の形成がいびつになったり、通常のようなものとは異なるものが含まれているというようなことはほとんどないのですが、大きく分けて「タイプ1」の赤い筋繊維というものが「タイプ2」の白い筋繊維よりも大きくてさらに小さいことで診断がなされると言います。
これによって起こる症状としては上記で挙げたものと同じです。しかしこの症状は生まれた時すでに重症化していることが非常に多く危険性もかなり高いと言えます。
その他のタイプ、分類不可の先天性ミオパチー
上記で述べたとような原因が特定されているものも存在しているのは事実ですが、現在この先天性ミオパチーを発症している半数以上の方は実は原因不明の先天性ミオパチーであることがわかっています。これは難病情報センターというところで原因がわかっていないものが多いということが発表されています。
つまり多くの場合、原因が不明であるということがわかっています。実は原因が特定されている方のほうが少ないという現実があるのです。
先天性ミオパチーの緩和方法
ここでは治療方法というよりは症状を緩和させる緩和方法というものを紹介します。現在、先天性ミオパチーを完全に治療するという方法は確立されていません。なので緩和方法で患者さんの症状を楽にする方法を述べようと思います。
リハビリ
この先天性ミオパチーではリハビリによって進行する筋繊維の低下というものを抑制するのが主な目的であるとされています。特にいえることはこの先天性ミオパチーでは筋力の低下により心臓や呼吸器に影響が及ぶことがわかっているので、身体に合わせたリハビリを行うことによって様々な緩和の方法が編み出されているのです。
さらには呼吸器障害を避けるため、「呼吸リハビリ」というものを行うこともあります。これは呼吸を正確に行う方法を指南することによって、肺や呼吸筋の変形というものを防ぐ役割を果たします。
呼吸療法
この呼吸療法は先天性ミオパチーを緩和するにあたってとても有効な療法であると考えられています。先天性ミオパチーの患者さんにとって健康的な、そして正常な状態を保つということがとても重要しされていますが、それ以上に呼吸というものに関してはとても重要であると考えられています。
それはこの先天性ミオパチーを患っている方は正しい換気というものができためにあります。そのため風邪などを引いてしまうと外に出歩くことが困難になってしまうためこの呼吸療法については重要視されています。
呼吸療法では正確な呼吸の方法というものを指南されます。これは寝ている間の呼吸法というものから始められるそうです。夜寝ている間の呼吸法を改善することによって自然に身体に身につくという考え方からきているそうです。
さらには呼吸リハビリによって最適なコンディションというものを維持できるようにすることにも務めるらしいです。
整形外科的治療法
この整形外科的な療法についてはそこまで実施されることはありませんが、これを行う理由というものがあります。それは脊椎の変形というものが大きく関わってきています。筋力の低下によって正常な姿勢を保てなくなることによって若い間に脊椎が曲がってしまうということが原因で激しい痛みに見舞われることが稀にあります。
この場合は曲がること自体を抑制するということは現段階では不可能なのですが、必要に応じてそれを整形外科的な手術によって緩和されることは可能であると考えられています。
先天性ミオパチーとうまく付き合うこと
先天性ミオパチーというものは遺伝による病気であり、根本的な治療法というものが現段階では解明がされていません。しかし希望は失ってはいけないのです。医療というものは日々進化しておりますので今後回復が可能な治療法というものが解明されてもおかしくはありません。
そして現段階でも緩和することは可能ですのでこの病気とうまく付き合って、受け入れて生きていく必要があります。この病気になってしまったからと行って諦めてはいけません。
まとめ
では総括に入ります。
できるだけ緩和させることが大事
上記でも述べたように完全に治療する方法というものがありませんが、諦めて緩和療法を怠ってしまうと死に至るケースもあります。なので諦めずに緩和療法を行い今後の生活をより良いものにしていく姿勢が大事になってきます。