子供の頭痛に要注意!吐き気や熱を伴うのは危険な病気かも!

幼い子供がケガをしたわけでもないのに頭をかかえて「イタイ イタイ」と泣き出したら、皆さんはどうされますか?ただの風邪なら心配ないのですが、子供は表現が未熟なので容態を正確に把握するのが困難です。

年齢にもよりますが、日常的な体調不良から生命に関わったり、重篤な後遺症を残したりするような頭痛もあります。その初期症状は風邪に似ていて、小児科医でさえ問診や体温、主訴だけでは鑑別できません。

様々な検査を必要とする場合が多く、何より急がなくてはなりません。子供の頭痛、何が危ないのかご説明しましょう。

小児偏頭痛

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偏頭痛を子供が発症した場合、一度きりではありません。

他の諸症状を伴いながら再発する場合が多いのですが、うまく伝えられなくて「わがまま」「落ち着きのない子」というレッテルを貼られがちなのが二次的な問題です。

小児偏頭痛の症状の特徴

突然、偏頭痛がやってきて大騒ぎになったかと思えば、そのうちケロッと治ってしまうのが小児偏頭痛です。病院に行ったときには症状が消失していて、またサボりたいから仮病を使っただの虚弱体質だのと誤解されるケースは多々あります。

頭痛そのものは2時間で終わってしまうパターンで最長でも72時間です。腹部の異常を伴うことが多いので自家中毒と勘違いされることもあります。

痛みの出る部位は前頭部になります。後頭部ではありませんので、後頭部に痛みを訴えたら重篤な疾病につながる可能性を考えて、すぐに受診しましょう。

光や音に対して過敏になります。この異変は、子供はうまく表現できません。日常をよく知る大人が観察して、察してあげてほしいところです。テレビの音を小さくしたり、布団をかぶってじっとしていたり、電気を消したり、イライラ動き回ったり、ゲームの大好きな子供が途中でやめたり、いつもと違う行動が見られるはずです。

発熱はありません。このために学校生活では理解が難しく、学業の妨げになります。偏頭痛発作時、体育など血行を良くする活動をすれば、血管が拡張して痛みが更にきつくなります。それで保健室に行っても、熱がないので受け入れてもらえないことも実際にあります。

担任の先生や養護教諭の理解を得ておくことは保護者の務めです。あらかじめ連絡帳に「頭痛の訴えあるときは安静にさせてください」「家に連絡してください」と書いておくことは重要です。また、懇談時に保護者から症状について、詳しく説明しておく方がいいでしょう。

学校だから、こどもの病気に詳しいとは限りません。無理解な対応から、通学を怖がるようになって登校拒否になるケースも少なくありません。医師から症状についての証明書を書いていただいて提出するなど、子供が安心して学校生活を送れるように取り計らいましょう。

関連する諸症状

子供が偏頭痛の発作を起こした時、関連して伴う他の症状があります。周期性嘔吐症候群というのは、周期的な嘔吐がずっと続くものです。頭痛と嘔吐とが結び付かなくて、食中毒かと思ってしまうのですが、熱がないのでストレスかと心配される症状です。これも発作が過ぎるとケロッと治って、何でも食べられます。

腹部偏頭痛は、強い腹痛と片頭痛がセットでやってきます。あまりの疼痛に顔色が変わるくらいで日常生活はできません。これも発作が終わると、何事もなかったように治ります。

良性発作性めまいは、いきなり何の前兆もなく起こります。回転性のめまいで、くるくる回る感じです。これは数分から数時間で自然に治ります。年少児は、この異変を伝える術がなくて混乱するだけですが、発作的にソワソワしたり異常な行動を示すので大人の観察が必要です。

原因と対策

遺伝が大きな原因といわれています。だいたい、親や兄弟に経験者がいて身内の誰かは理解者です。ただ、遺伝だけでなく発作要因が生活の中にもたくさんあります。

遺伝要素は減らせませんが、生活は改善できます。生活が夜型で子供の成長を促す時間に起きていたり、栄養のバランスが悪かったり、運動不足だったりすると発作回数が増えます。

テレビやゲーム、パソコンなどの液晶画面も発作を誘発するリスクになります。たとえば夜中に子供がジャンクフードを食べながらゲームに夢中だったりするのが、最も発作を誘発すると考えてください。

遺伝があると予想されるなら尚の事、早寝早起きを慣行して野菜中心のメニューでの生活を心がけましょう。

脳炎

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あらゆる頭痛の中で小児科医が最も警戒するのが、この頭痛です。重い後遺症はもちろんのこと、時に生命に危険が及びます。

脳炎の症状

頭痛、嘔吐、けいれん、意識障害などが重なると脳の炎症が疑われます。ウイルスが原因で発症しますが、原因となるウイルスは多岐にわたります。

かつて猛威をふるった日本脳炎は予防接種の普及で、あまり見られなくなりました。法定伝染病の後遺症によるものは現在、さほど警戒する必要はありません。

気をつけていただきたいのは、無菌性髄膜炎が脳にまで至った場合、髄膜脳炎になります。誰でもかかるとされる突発性発疹の原因になるヘルペスウイルスも、脳炎をきたす可能性があります。水疱瘡もヘルペスウイルスなので、水疱瘡の子供が頭痛を訴えたら受診させてください。

脳に炎症があっても、炎症部が悪化するわけではありません。炎症で腫れて脳圧が上がり、それが頭蓋骨に当たって脳細胞が損傷されるのです。一度、損傷を受けた脳細胞は再生できません。しかも炎症部にとどまらず内圧のかかる部位なので、表面積は広がります。

治療としては脳の炎症を止める治療をした後、自然に脳の腫れが引くのを待つのみです。炎症部の大きさや年齢差、個人差があって何日後に治るとは治るまで決められません。

後遺症は脳圧部がどの場所にそれくらいかかっていたかによりますが、認識能力がかなり低下すると親さえ分からなくなります。普通に話せていた子供が、意識障害から回復したら言葉を全く解せなくなっていたり、衝動的な言動ばかりになってしまう可能性があるということです。

医療の手を離れた、後遺症を持った子供と親の日常生活は非常に困難なものになります。その状況を未然に防ぐためには、頭痛その他のサインをしっかり見逃さないことが重要です。

難しい発見

後遺症なく完治できるかどうかさえ、治ったあとで詳しく調べないと分からないのです。そんなにリスクが高いのに、初期症状は風邪と見分けがつきません。さすがに意識障害までいくと医師は脳炎を疑いますが、親となると全く見分けがつかないといいます。

ただ、「けいれん」や「ひきつけ」の段階で受診するくらいでしょうか。少し顔色が悪かったり、生あくびが多い、不可解な言動で脳炎を疑うべきとする指導書もありますが、それではほぼ毎日、脳炎を疑うことになります。大人からみて、不可解な言動をするのが子供ですから。

初めてけいれんを起こした時は、とりあえず安静にして落ち着いたら念のために受診しましょう。けいれんを何度も繰り返したり、意識の回復が悪いようなら必ず医師に相談して経過を慎重に観察してください。

ただ、いつもと違う、なんか変、という親独特の直観は信頼に値します。その感想に、子供が頭痛を訴えれば迷わず病院へ行きましょう。

小児髄膜炎

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これも注意したい病気です。脳や脊髄を覆う髄膜が炎症を起こして頭痛を訴えます。大きく分けて2種類ありますので、ご参考ください。

無菌性髄膜炎(ウイルス性髄膜炎)

頭痛、発熱、嘔吐、20分くらいのけいれんを急に発症します。

項部(うなじ)硬直、髄液でのリンパ球を主体とした細胞増加を認めます。風邪やおたふく風邪の後、体力が落ちて免疫力が低下して発症する場合もあります。予後は良いものが多く、早期発見、早期治療の場合は後遺症もなく完治する場合がほとんどです。様々なウイルス感染から髄膜炎に移行するので、代表的なものをご説明します。

エンテロウイルスによる髄膜炎が約8割を占めます。手足口病やヘルパンギーナもエンテロウイルスなので、同じ原因と考えます。5月~7月が流行のピークで、潜伏期間は4~6日になっています。感染経路は糞口感染と飛沫感染です。

ムンプスウイルスが原因で髄膜炎を発症することもあります。ムンプスウイルスとはおたふく風邪のウイルスで、おたふく風邪の合併症として引き起こされます。冬から春にかけて流行し、潜伏期間は2~3週間です。感染経路は飛沫感染や接触感染です。おたふく風邪の2~10%が髄膜炎の合併症になるといわれ、2週間くらいで完治します。

ウイルスが多様で原因として特定できないために、予防薬は開発されていません。予防としてできることは、手洗い、うがい、規則正しい生活とバランスの取れた食事、という免疫力を高める工夫しかありません。

細菌性髄膜炎

激しい頭痛と高熱が出て、一気に重篤に至る恐ろしい病気です。発症して24時間後に病態はピークを迎えます。

乳幼児に多いのですが、月齢によって原因となる菌が違います。3ヵ月未満は大腸菌、β群連鎖球菌が原因となり、3ヵ月以降は主にインフルエンザの菌が原因となります。

インフルエンザのあと、高熱が下がらず頭痛、嘔吐を発症して髄膜炎の合併症を疑います。インフルエンザをこじらすと脳症も合併する可能性があります。この場合は極めて危険で、後遺症の可能性も高くなります。

入院して鎮痛、解熱剤、適切な抗菌剤を投与します。後遺症としては知能障害、運動障害、聴力障害の可能性があるため、迅速かつ慎重な治療が求められます。

まとめ

未来ある子供たちが、風邪によく似た症状の一つである頭痛でこんなに危険な病気になるとは、胸の痛む話です。しかも幼いがゆえに主張がままならず、分かってあげられなかった大人の苦悩もいかばかりでしょう。子供の頭痛のサインを事前に知っていれば、間に合った治療もあるはずです。

頭痛と、それに伴う諸症状から想定される病気を予想して早く受診する。それが親としてできる最大かもしれません。早ければ助かる命、ならなくて済む後遺症もあります。それは、まず知ることから始まるのです。子供たちが頭痛で知らせる大切な情報を見逃さないようにしましょう。

  
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