膵臓がんの原因となる生活習慣とは!治療が難しいのはなぜ?

特有の症状がないため、早期発見・確定診断が難しく、診断がついた時には既に手遅れになってしまうことが多いのが「膵臓がん」の恐ろしさです。

近年、日本でも「膵臓がん」の発症件数は年々増加し続けていて、がんの部位別統計でも死因第4位となっています。胃がんなどに比べて発症数は少ないですが、この20年でその死亡者数は5倍以上になり、毎年30,000人以上の方が亡くなっています。

この「膵臓がん」ですが、現在最も研究されている「がん」のひとつです。基本的な情報から、治療が難しい理由、発症のリスク要因などをひも解いていきましょう。

膵臓とは

膵臓 位置

膵臓は、身体の前面から見て鳩尾とへその中間から左上方あたり、背中側に近い後腹膜にある長さ15~20cmほどの細長い臓器です。

3つの部分に分けることができ、膨らんだ部分を「頭部」・中央を「体部」・十二指腸に近い細くなった部分を「尾部」と呼びます。膵臓には2つの重要な機能があります。アミラーゼ、リパーゼ、トリプシノーゲンなどの消化酵素を含む膵液の分泌(外分泌:その場で直接作用する)と血糖の調節に必要なインスリン・グルカゴンなどのホルモンの分泌(内分泌:血流に乗って標的となる臓器で作用する)です。

膵液は膵管を通って十二指腸へと分泌され消化を助けます。ホルモンは、膵臓内に点在するランゲルハンス島が生産し、血中へと分泌され様々な臓器に作用して血糖を調節します。

膵臓がんとは

膵臓がんの90%以上は、膵管に発生します。この「膵管がん」のことを「通常型膵がん」と呼びます。一般的に「膵臓がん」「膵がん」と言われる場合には、この「通常型膵がん」のことを指します。さらに、腫瘤を形成する場所によって「膵頭部がん」「膵体部がん」「膵尾部がん」と区別され、膵頭部にできるのが最も多くて全体の60%です。次いで膵尾部、最も少ないのが膵体部となります。

膵管がんは悪性度が高いことが多く、その90%が悪性腫瘍です。すぐに浸潤(周辺の臓器へがん細胞が侵入して増殖)したり、遠隔転移(がん細胞が血流に乗って他の臓器へと侵入してそこで増殖)することが多く、難治がんの代表格とされています。また、がんと診断されてからの5年生存率が、他のがんと比較しても圧倒的に低いことからもその悪性度がわかります。

  • 1位:膵がん 7%
  • 2位:胆嚢・胆管がん 21%

となっており、約3倍もの差があります。

膵管がん以外にも、膵嚢胞性がんやランゲルハンス島由来の内分泌型腫瘍なども数%程度存在します。しかし、膵がんとは症状、経過、悪性度も全く異なるため、膵臓がんとは別のがんとして区別されます。

膵臓がんの治療が難しい理由

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膵臓がんは、難治性がん(胆道がん・肺がん・再発/転移性がんなど)と呼ばれるがんの中でも、患者数も死亡者数も群を抜いています。なぜそんなに治療が難しいのでしょう?

自覚症状に乏しい

早期では自覚症状がなく、少し進行し自覚症状が出てきても、黄疸、背部痛(腰痛)、吐き気、嘔吐、食欲不振(体重減少)、下痢、便秘など、膵臓がんに特有の自覚症状がないために、確定診断までに多くの時間を要してしまいます。

黄疸、背部痛、体重減少で来院されるようなケースで膵がんと判明した場合、既に進行してしまっており、およそ70%程度の患者は手術適用にならない状態のことがほとんどです。そうなると、抗がん剤、放射線治療などによる治療となりますが、外科手術以外で根治することは難しいと言われています。

画像診断が難しい

膵臓は後腹膜に位置しており、まわりには胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・脾臓など多くの臓器に取り囲まれているため、初期の小さな腫瘤を発見することは非常に難しいとされています。

単純X線撮影では深度を合せるのが難しいので、立体的に臓器を見ることができるCTやMRIでの診断が適しています。さらに、膵臓の疾患を疑った画像診断でない場合には、特に見逃されやすいとされます。

手術が難しい

そもそも手術適用になる患者自体が少ないこともありますが、手術自体も困難を極めます。病変部を全て切除しないと浸潤・再発は必至なのが膵がんです。

しかし、膵臓の周囲には重要な臓器や血管が多数存在するため、切除できる範囲が限定されてしまうのです。よって、術後の化学療法を併用するケースが多くあります。

しかも、手術後に縫合不全などが見つかることもあるので、年間20症例以上の経験が豊富な専門病院で手術を受ける事が推奨されています。

浸潤・転移・再発しやすい

手術を行うことのできた患者でも、3年以内に再発や転移が判明する割合は90%にものぼるとされています。遠隔転移が見つかった時点で「ステージⅣ」となり手術の適用外となります。そうすると、抗がん剤や放射線などによる治療しかできないため、治療はさらに困難になります。

膵臓がんの原因となるリスク要因

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最新の研究で、喫煙とアルコールが膵がんの発生率を上げることはわかってきています。

しかし、それ以外にもコーヒーや肉の食べ過ぎ、糖分・脂肪分の摂り過ぎが間接的に原因となるケースもあるようですが、化学的に証明されていません。

糖尿病

膵臓がんの患者のうち、およそ4人に1人が(重症度を問わず)糖尿病の病歴があるという報告があります。また、糖尿病に罹っている人とそれ以外の人が膵臓がんを発症する確率を比較したところ、糖尿病患者が健常者の1.8倍という高い確率が報告されています。

糖尿病による膵臓への負担も当然ありますが、生活習慣との関係性がより高いという考察がされています。

肥満

腹部に過剰な脂肪があると、膵がん発症のリスクが1.2倍になると言われています。さらに若若年性の肥満はリスクが更に高くなります。食事の欧米化に伴い、日本人の肥満率も上昇を続けていますので注意が必要です。

肥満も膵がんと直接関係している訳ではなく、肥満によってインスリン抵抗性が高くなり、糖尿病へと移行していくことが原因ではないかと考察されています。

喫煙

喫煙によって、膵がんの発症リスクが約2倍になることが判明しています。また、喫煙は全ての種類のがんに対して確実な危険因子とされています。明確に関係性が証明されている他のがんは、肺がん、肝臓がん、胃がん、食道がん、子宮頚がん、膀胱がんなどです。

喫煙に伴って、ニコチン、タール、一酸化炭素を始めとする数千種類以上の化学物質の継続的な摂取が原因と考えられています。最近の研究では、タールに含まれる有害物質(発がん性物質)の複合作用によって発がん作用が高まることが分かってきています。

飲酒

肝臓がん、大腸がん、食道がんの危険因子として、データで証明されています。膵がんについてはデータ不十分という結果になっています。

各種報告でも、飲酒との直接の因果関係は証明されていませんが、肝臓や大腸に負担がかかることにより、膵臓にも影響がでるのではと考えられています。詳細は以下に記しますが、慢性膵炎のほとんどは飲酒が原因です。

慢性膵炎

慢性膵炎は、膵臓が繰り返し炎症を起こすことにより、膵細胞が破壊され最終的に機能不全を起こす病気です。

原因としてはアルコールによるものが約70%、原因不明が約20%です。本来は飲酒と同じカテゴリーなのですが、飲酒と慢性膵炎の関係性は証明されていますが、飲酒と膵がんの関係性は証明できていません。よって、飲酒と慢性膵炎は別の区分としています。それ以外の10%の原因には、高脂肪食、ストレス、胆石などがあげられます。

過去資料(平成19年度、難治性膵疾患における調査研究)によると、慢性膵炎患者の死因の約40%はがんによるもので、さらにその約20%が膵がんによるものでした。発症には男女差があり、女性に比べて男性が2倍程度高リスクでした。喫煙と飲酒習慣が関係していると考えられています。

遺伝

一親等、二親等の家族に膵がんの患者がいる場合、本人が膵がんになる確率は2~3倍になると言われています。

また、膵がん患者の約10%に遺伝的な要素が確認されており、遺伝性膵炎、結腸がんなどの遺伝性のがんが確認された場合には、膵がんの発症リスクはさらに高くなります。遺伝的な要素があるものの、ごく1部であるというのが現在の状況です。

年齢

膵臓がんと診断されるほとんどの方は60歳以上です。男女とも50歳を超えるくらいから発症率が増加していきます。

性別

男女比にして、3:2で男性の発症が多いことが分かっています。膵がんに限ったことではなく、60歳以上になると圧倒的に男性の発症率が高くなります。飲酒や喫煙習慣に原因があると考えられています。

最新の研究成果

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今月のはじめ、東京大学医学部付属病院を中心としたチームが特定のRNA(リボ核酸)を定量することによって、膵臓がんを早期発見できる可能性がある事を発表しました。

このRNAは通常の状態ではほとんど転写されないため増えることはありませんが、がんなどの異常に伴って転写が活発になり、健常人と比較して5倍以上の数値となります。今回の試験では血清を測定し、膵がん患者30名、健常人30名を一定の基準値で比較しました。結果は、陽性22名、陰性27名でした。

膵臓がんが血液検査可能になれば、早期発見が可能となり、治療成績の向上につながります。早期の実用化に向けた研究が待たれます。

まとめ

直接・間接を問わず、飲酒と喫煙が一番のリスク要因であることがわかります。次いで、肥満や脂肪分の多い食事です。

ここからわかることは、生活習慣が最も重要であるということです。であれば、最も基本的な健康維持方法で膵がんを予防することができます。

  • 栄養バランスの取れた食事
  • 適度な運動
  • 禁煙
  • 飲酒を控える
  • ストレスを溜めない

もう何度同じことを書いているのかわからなくなるくらいですが、結局は基本にかえるということですね。

  
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