成人スティル病って何?症状・原因・治療法・病状経過を知ろう!

成人スティル病という病気を聞いたことありますか?日本国内でも患者数が少ないことから、あまりなじみのない病名かと思いますが、成人スティル病は、関節炎(関節リウマチ)の症状と併せて原因不明の発熱や発疹を伴う病気のことです。

この病気は一度発症すると治療で完治することもあれば、再発することもあったり、関節炎のみ残ったりするなど、病状の経過がよみにくいやっかいな病気です。

この病気の症状や原因、治療方法について詳しくご紹介します。

成人スティル病について

knee

ここでは、成人スティル病の概要、症状と原因についてご紹介します。

成人スティル病とは?

幼い頃に発症した関節リウマチのうち、関節の炎症以外に発熱や発疹を伴う病気のことを「ステイル」病と呼びます。

一昔前まで長い期間、この病気は子供にしかかからないものと信じられてきましたが、1971年にイギリスのバイウォータースさんが、16歳以上になっても発症することを確認し、成人発症スティル病と名づけました。これ以降、大人でも子供でもこの病状を発症した場合、成人スティル病という呼び名で呼ばれています。

2011年には厚生労働省の調査では、日本では人口10万人に対して3.9人の割合、4760名ほど成人スティル病の患者さんがいると考えられています。関節リウマチのみの発症は、患者数は日本全国で70~100万人とも言われているので、比較的に発症率は低い病気です。

この成人スティル病にかかる男女比は1:1.3で若干女性の方が多く、平均発症年齢は平均発症年齢は46.5歳と報告されています。昔は若い人がなる病気といわれていたので、今でも若い年齢層に多いのかと思われがちですが、実際は多くの方が大人になってから発症しており、16歳未満の発症率は患者数の5%程度だと言われています。

成人スティル病の症状とは?

主な症状は関節の炎症、発疹、高熱が挙げられますが、これらの他に喉の痛み、リンパ節の腫れ、肝臓や脾臓が大きくなったり、薬にアレルギー反応を起こしやすくなるなどの症状が見られる場合があります。

成人スティル病の主な症状は、

■発熱

原因不明の発熱は特徴的な症状の1つです。発症してから数時間経つとすぐに39度以上の熱が数週間続きます。発熱は朝方4時間ほど続き、日中は平熱であることが多いといわれています。

■皮膚の発疹

前胸部や腕の部分に、うすいピンク色で腫れているように盛り上がるような発疹が現れます。熱が高い時にはこの発疹が増加しやすく、熱が下がっている時は発疹の改善傾向が見られます。

■関節炎(関節リウマチ)

関節にある滑膜という部分が炎症を起こすことで、関節の痛みや変形を引き起こします。手や指などにある小さな関節が炎症を起こすよりも、手首、肘、肩、膝、足などの大きな関節に症状が見られる傾向にあります。

この関節痛は2週間以上続くといわれています。関節炎が長期に渡り症状が現れることで、骨の損傷がみられることもありますが、通常の関節リウマチの特徴に比べて骨の変形や骨の損傷は少ないと言われております。

■喉の痛み

幼い頃に発症した場合は、のどの痛みがないといわれており、大人になって発症した場合比較的に喉の痛みを訴える方が多いと言われています。

■リンパ節腫脹

リンパ節は全身のいたるところにあり、通常は細菌などから体を守る役割をしています。この部分が細菌に感染して炎症を起こす、リンパ節腫脹が体全体に見られるようになります。この症状は高い確率で報告されています。

■肝臓障害

肝酵素の上昇が見られるようになり、病状にあわせてこの酵素が増加や減少をみせ肝機能に障害を引き起こします。

■脾臓の腫大

脾臓の腫大が見られることで、腹部の左上周辺や背中辺りに張った感じや痛みを伴うことがあります。

■アレルギー反応

この病状にかかってから、薬などにアレルギー反応を起こしやすくなるという報告があります。アレルギー反応が起きた場合は、治療のために使用する薬の投与が出来なくなる場合もあります。

また、成人スティル病は合併症状を引き起こす率が、10%~15%と言われており、比較的に合併症状を起こしやすい病気と言われています。合併症の内容としては、肺や心臓の周りに水が溜まる胸膜炎や心膜炎、また肺が固くなり呼吸困難になる間質性肺炎などを引き起こす可能性があります。

これら以外にも、発症する確率は低いものの生命の危険に関わる播種性血管内凝固(DIC)、マクロファージ活性化症候群(MAS)/血球貪食症候群(HPS)などの合併症を引き起こす場合があります。

原因とは?

ウイルス、細菌の感染など環境因子が原因で発症するとの考えが有力説ではありますが、残念ながら原因は明らかにはされていません。

しかし、白血球の一部であるマクロファージが、制御がきかずに過剰に働き出し、サイトカインと呼ばれる炎症を引き起こす物質を体の中に作り出すことで高熱や関節炎などが起きていると言われています。

患者さんの家族歴を確認した結果、親御さんがこの病気にかかって子供にも発症するという遺伝形式はほとんど見られなかったことから、遺伝による影響は無いと考えられています。

成人スティル病の病気の経過について

thermometer

成人スティル病は、再発しやすい病気とも言われておりますが、1度症状が起こった後に再発が見られない方もいます。

治療を行った場合、この病気はどのような経過をたどるのか、3つのタイプをご紹介します。

■単周期性全身型

病気の症状が一時的にみられただけであり、自然治癒したり、もしくは治療によく反応を示して病気の症状が緩和されるタイプです。患者さんの30%~40%の方がこちらのタイプに当てはまります。

■多周期性全身型

治療を行うと症状が一時的に緩和されますが、また症状が現れる再発タイプです。特に治療薬を減量した際に症状が悪化する傾向が見られます。患者さんの30%~40%の方がこちらのタイプに当てはまります。

■慢性関節型

高熱や炎症の症状が治療による緩和されても、関節炎の症状のみ持続するタイプです。患者さんの20%~30%の方がこちらのタイプに当てはまります。

治療方法について

doctor

一般的な治療は、薬物療法による炎症を緩和させる抗炎症療法です。

また、関節炎(関節リウマチ)のみ症状として残っている場合は、リハビリテーション(運動療法、物理療法、作業療法、装具療法)などを取り入れて日常生活の質を向上させます。

薬物療法

まずはプレドニンの内服薬を投与して病状の経過を見ます。初めの内服薬の量としては、炎症の度合いや患者さんの体重によって調整を行います。

この薬が効果を示さない場合は、副腎皮質ステロイドの点滴治療を行います。これらの薬が効果を示して炎症が良くなってきた場合は、薬の減量を検討します。早めに減量してしまうと、再び病気が活発に活動し始める恐れがあるので、状況をみて慎重に行います。

また、副腎皮質ステロイドの効果が見られない患者さんに対しては、抗リウマチ生物学的製剤や免疫抑制薬であるメトトレキサート(リウマトレックス)やタクロリムス(プログラフ)を使用する場合があります。

これらの薬で炎症の緩和を行いますが、成人スティル病は肝障害があることや薬に対してアレルギー反応が起こる場合があるので、長期間の薬の投与は困難です。

ステロイド薬の治療が開始された場合は、自己判断で治療を中断することなく、根気強く治療を続けることが重要になります。また、ステロイドの副作用にある感染症や骨粗鬆症にかかる危険性を理解する必要があります。治療をしている間に別の病気にかからないためにも、うがいや手洗い、マスクをして細菌から極力体を守り、骨の形成をするビタミンやカルシウムを積極的に摂取して予防をすることが重要です。

運動療法

関節炎は変形、拘縮、筋力低下、筋肉萎縮などの症状が現れ、この状態を放置するとどんどんと機能が低下し、手足の動きが悪くなる場合があります。その為、関節や筋肉の機能低下を防ぎ、日常生活の質を向上させることを目的として、運動療法が用いられます。

等尺運動やリウマチ体操、またお風呂の中で体を温めながら体操を行ったり、温水プールを利用して関節の負担を軽減しながらできる運動方法などもあります。運動療法を取り入れる場合は、自己判断せずに専門家と相談して自分に合った運動方法を正しく行う必要があります。

物理療法

水や温熱、光線、超音波などを用いて、体に物理的な刺激を与えることで、血流をよくし痛みを和らげる方法です。物理療法では下記のような4つの方法を取り入れ体に刺激を与えます。

  • 温熱療法・・・ホットパック、温湿布、お風呂など
  • 冷却療法・・・氷、アイスパック、冷湿布など
  • 電気療法・・・赤外線、超音波、レーザーなど
  • 水治療法・・・プールなど

作業療法

作業療法は、主に手や指先などのリハビリ内容です。こちらの方法は、作業療法士の指示に従い、一緒に編み物、手芸、木工、粘土、絵画、書道、パソコンなどの作業を行っていきます。

これらのリハビリを通して患者さんに新しい趣味ができたり、趣味を通じて交友関係が広がったり、外にでる機会が増えたりと別の効果を生み出してくれる場合もあります。

装具療法

装具療法とは装具を用いて関節の負担を和らげ炎症部分を安静に保ち、変形の予防と矯正を目的に行われます。リハビリに使用される装具は、着脱が容易、通気性、伸縮性などに優れており、軽量化や小型化されているので、装着しても衣服などで隠しやすくなっています。

医師の勧めがあり使用される方は、装具は全て自分のサイズに合うように調節してもらい、正しく利用しましょう。

まとめ

成人スティル病は、日本人口の10万人に3.9人の割合で発症するといわれており、それほど高い数値ではないものの、発症すると再発を繰り返したり、関節炎のみ継続して残ったりと病状の経過が読めずにやっかいな病気です。

治療方法は、一般的には薬物医療ですが、関節炎のみ残っている場合はリハビリなどをして日常生活の質を向上させることができます。薬物医療もリハビリもすぐに効果が現れるわけではなく、日々続けることがとても重要です。

自己判断で途中で止めてしまったり諦めることなく根気よく治療を続けることが大事です。

  
/* */
  
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする