小麦アレルギーは小麦に含まれるタンパク質がアレルゲンとなるアレルギー疾患です。
幼児期から発症することが多いですが、大人になって突然発症するケースもあります。近年の食生活の変化で、食事内容の欧米化により小麦を食べる機会が増えていることが原因で増加の傾向があるアレルギーになります。
小麦アレルギーは食べる事で発生するだけでなく、小麦に触れたり、吸い込んでしまうことでも発症する場合もあります。また小麦のアレルギーはアナフィラキシーショックを発生させることもある、非常に危険なアレルギーになります。
どうしてこの様なアレルギー症状が発生してしまうのか、小麦アレルギーの原因と対策、普段の生活に取り入れたい予防方法をご紹介していきます。
アレルギーとは
アレルギーとは何なのかご存知でしょうか?自己免疫疾患であるのですが、どうしてアレルギーが発生してしまうのかについて紹介していきます。
免疫作用の異常反応
身体に異物が侵入してきた場合、細胞はそれを認識すると脳に異物が侵入してきたことを知らせる信号を発します。
それを受け取った脳はその異物を体外に排出するために、以前から準備しておいた抗体を使って異物を排除します。
しかし、実際には害の無い物質に対してこの反応を行ってしまって、過剰に防御反応が続いた結果免疫細胞が自分自身の細胞を攻撃してしまい、皮膚や粘膜などに健康被害が発生してしまっている状態がアレルギー反応になります。
小麦アレルギーの原因
小麦のタンパク質を異物(アレルゲン、抗原)と認識してしまうのが小麦アレルギーです。身体は免疫の機能によって、アレルゲンに対抗するための抗体「IgE(免疫グロブリンE)」を作りだします。
IgEは小麦のタンパク質を排除しようと活動を始め、それが原因でヒスタミンなどの痒みを発生させる物質を排出させてしまい炎症を引き起こします。
IgEは、即時型アレルギーの反応を示します。小麦を少量でも摂取すると、1~2時間ほどで症状が出て来る事が特徴です。
そのアレルギー反応、実は農薬が原因かも?
パン屋さんには毎日小麦をに触れて仕事をしているなかで小麦アレルギーを発症する人が多く、それが原因でお店を畳んでしまったり、仕事を辞めて転職する人も居ます。
仕事中に急に咳やくしゃみが止まらなくなって、鼻水や涙も多く出るといいます。
しかし、この症状もしかしたら小麦ではなくて農薬が原因かもしれません。海外輸入の小麦には船での輸入の際に大量の農薬を散布します。国内の商品であれば、農薬濃度の規制がかかりこの様な事は無いのですが、輸入品に関してはこの基準がありません。
その結果、農薬の成分の影響で長時間この成分に触れていることで成分が皮膚などに蓄積し、アレルギーに似た症状が発生する事があります。
経験者は国内産小麦のみで製造を行うパン屋さんに転職した結果、症状が治まったと言います。
一度詳しく検査してみたほうが良いでしょう。
アレルギーは子供が発症することが多い?
アレルギーは6歳以下までの内に発生させることが多く、現在アレルギー発症者の8割は6歳以下の子供となっています。
子供の10人に一人は何かしらのアレルギーを持ってると言う時代になってきています。
現在これらのアレルギーは先進国に増加している傾向があることがわかっています。これは、生活が夜型になった事や、アレルギーとなる食材を多く摂取するようになったこと、抗生物質などの薬品によって免疫機能などの正常な菌まで殺してしまっていることが原因など多くの要因が絡んでいると考えられています。
また、アレルギーという症状について広く知られるようになった結果、いままで原因不明や鼻を垂らしているのが当たり前とされていた症状がアレルギーとして認識されるようになったことで増加している様に感じるだけなどの見方もあります。
食物アレルギーの3大アレルゲン
現在発症者が最も多く存在しているアレルゲンの上位3つを3大アレルゲンと呼んでいます。
「鶏卵」「乳製品」「大豆」
以前は3大アレルゲンはこの3つと言われていませいた。しかし近年の食事内容の変化に伴い、変化し、大豆を小麦が上回る結果となり新しく「小麦」が3大アレルゲンの中に含まれるよになりました。
子育て中の両親が心配している食材でもあります。アレルギーはいつ発症するかわかりません。小麦がアレルギーを発生させやすいことを認識しておいて、子供にアレルギー症状が発生した場合はまずこれら3大アレルゲンの可能性を疑って検査までは控えるようにしましょう。
アレルギーは単体ではなく複数持っている可能性がありますので、それも念頭に入れておいてください。
小麦アレルギーの症状
小麦アレルギーは、小麦に含まれるタンパク質がアレルギーの原因となって、蕁麻疹やかゆみ、くしゃみ、鼻水、腹痛などのアレルギー症状があらわれる疾患です。
食事から摂取したり、小麦(イネ科)の花粉によって、症状を引き起こします。
小麦アレルギーは主に次のような症状がみられます。詳しい内容を紹介します。
消化器系の症状
吐き気、嘔吐、腹痛や下痢・便秘など胃腸の不快な症状が現れます。胃腸、腹痛などの症状に関しては12時間〜24時間後に症状が現れる場合もあります。
内容物がすべて排出された場合に症状は治まります。
皮膚や粘膜の症状
蕁麻疹、かゆみなど皮膚に炎症が発生します。
口の中がかゆくなったり、ジンジン、チクチクとした不快感、目のまわりが赤くなったり、充血などの症状があります。
蕁麻疹などの皮膚症状は12時間以内には消失する症状がほとんどです。
呼吸器系の症状
くしゃみ、鼻みず、鼻づまりや、咳などの症状があらわれます。
気管に吸い込んだ小麦などが影響している場合、気管が大きく腫れたり痰が絡むなどして呼吸困難になることがあります。
短時間でも危険な症状となりますので、呼吸器官の異常が発生している場合には注意が必要です。
アナフィラキシー症状
意識を失ったり、呼吸困難、血圧が下がるなど、全身に出るショック症状をアナフィラキシーといいます。
命に関わる危険があるので、呼びかけに応えないなど少しでも症状があれば、速やかに病院へ行きましょう。1度でもこの症状を発症したことのある場合は、必ず病院での処置が必要になります。
アドレナリン自己注射薬(アナフィラキシー補助治療剤)などを処方してもらい、病院に行けないタイミングでアレルゲンを吸い込んで症状が発生した場合には自己投与で症状を抑えられるようにしておく必要がありますので覚えておきましょう。
以下の症状が発生したらアナフィラキシーショックと診断されます。
- 全身に発生する蕁麻疹などの皮膚症状
- 喉の大幅な腫れ、赤らみ
- 呼吸時の異常音
- ショック症状、身体が痙攣して意識を失うこともあります
- 激しい腹痛、下痢
これらの症状は回を重ねるにつれてひどくなる傾向があります。
小麦が原因になるその他の症状
食物の不耐症という言葉を聞いたことはあるでしょうか。小麦(グルテン)不耐症は小麦が消化不良や免疫疾患を起こし、疲労感やアレルギーなどの原因になります。
大きなくくりでいうと、小麦アレルギーは、小麦不耐症のうちの1つでもあります。
グルテン不耐症(グルテン過敏症)
不耐症がある人は、先天的にしろ後天的にしろ、酵素が不足または欠如していて、小麦のタンパク質に含まれるグルテンの消化がうまくいかないことがあります。先天的に酵素が少ない人と、成長や加齢にともなって後天的に減少していく人がいます。
消化不良による胃痛、胃けいれん、腹痛や便秘・下痢などの症状が現れます。小麦を摂取してから数時間~数日後に発症します。IgGという遅延型の抗体が原因です。
小麦が少量だと発症しないこともあります。命に関わるようなこともあまりありません。
セリアック病
IgAという種類の抗体が小腸を攻撃してしまう自己免疫疾患です。慢性的な下痢や便秘を引き起こします。
消化不良によって栄養の吸収が悪くなり、体重が減少することがあります。過敏性腸症候群の原因にもなります。
小麦アレルギーの検査方法について
小麦アレルギーの判定には次の方法があります。病院で行われる小麦アレルギーの検査方法について紹介します。
また自分でも自宅で行うことが出来るネットの検査キットがあります。以下の方法から選んで検査を受けて自分が小麦アレルギーかどうか、他のアレルゲンとなる抗体を持っていないか抗体検査を行いましょう。
IgE抗体検査(血液検査)
特定の食物に対してIgE抗体がどれくらいあるのか(特異的IgE抗体価)を調べることで、原因を予測できます。
IgE抗体価の値によって0~6までのスコアに分かれています。値が高いほど、陽性度が高いと判断されます。
食物でテスト
原因と思われる食品を2週間ほど口にしないようにして、体調や症状がどう変化するかを確認します。これで症状が良くなったら、改めて小麦を食べてみて、体調の変化や症状が現れるかどうかを検査します。
食物経口負荷試験と呼ばれる検査方法で、特定のアレルゲン反応を特定するためや、アレルギーが回復したかどうかを確認する際に使用される試験です。危険が伴いますので、必ず医師のもとで行うようにしてください。
皮膚でテスト
パンや小麦粉などを皮膚に直接つけて、専用の針で刺激をして反応をみます。赤みなどがでれば、反応していると判断します。ただし、これだけで確定することはできません。
非常に簡易的で、自宅でも行えるパッチテストと呼ばれる検査方法になります。皮膚で異常がなかった場合、口などの粘膜で飲み込まないようにして反応を見ることもあります。
筋肉でテスト
パンなどを口に入れて、筋肉の変化をみます。押されても力が入らなかったり、筋力の低下がみられたら陽性と判断します。
主に遅延性の食物アレルギーなどの場合に行われる試験で、検査後は軽度の筋肉痛などが発生する可能性があります。
小麦アレルギーの対策
家庭でできる小麦アレルギーの対策をご紹介します。食事に関しては、医師とよく相談して栄養が偏らないようにしましょう。
小麦を摂取しない様にする
アレルギーの原因となる小麦を食べないことが一番です。しかし、完全に小麦粉やグルテンを断つ食事を用意するには工夫が必要です。こだわりすぎてストレスになっては元も子もありません。経済的な負担もあります。ライフスタイルに合わせて、無理なく減らしていくようにしましょう。
特に気をつけたいのは、「米粉100%」と記載されているパンです。小麦粉を使っていないとしても、グルテンが入っていることがあります。お麩もグルテンを使っています。
下記に小麦を含む食品をリストアップしました。買い物や外食の際に、参考にしてみてください。
医師と相談する
どのような食品が食べられるのか、食べないほうがいいのか、発作がおきてしまったらどう対応するのかといったことは、事前に医師とよく相談をしておきましょう。
また、経口減感作療法という食物アレルギーの治療法などを行っている病院やクリニックもあります。近年アレルギー患者が増加している背景からも、アレルギーの治療法は進化していくことが期待されますので、専門科であるお医者さんに有効な治療法は無いか聞いてみましょう。
消化を促す
消化不良が原因で腹痛が起きている場合は、揚げ物などの油っぽいものを控え、消化を助ける食品やサプリメントを摂るようにしましょう。
大根に含まれるジアスターゼという消化酵素は、タンパク質の分解を促進します。ジアスターゼは熱に弱いので、生の大根おろしを用意して食事と一緒に摂るようにすると、消化の負担を和らげます。
花粉症対策
小麦アレルギーがある人はイネ科の花粉にもアレルギーを起こしやすいことがわかっています。花粉が飛ぶ夏から秋にかけては、花粉症の対策をするようにしましょう。
免疫力を向上させる
免疫力を向上させることでアレルギー症状が改善されることが明らかになっています。
腸内環境の善玉菌の数を増やして、腸内環境を整えることや体温を高く保つなどの対策が有効になります。
更に皮膚症状が発生しやすい人は敏感肌で乾燥肌などになってる人が多く、皮膚の潤いや健康を保つために保湿などをしっかりして肌のバリア効果を高めることも有効になります。
痒くなる皮膚症状が発生した時に掻きむしって傷つけないために爪を切りそろえておくなどの対策も有効になります。
小麦を含む食品やメニュー
市販されている食品や外食のメニューで、小麦が使われているものをリストにしました。アレルギー症状の予防の参考にしてみてください。
麺類
麺類は、よく噛まずに飲み込んでしまうことも消化不良の原因になります。十割そば以外のそばには小麦粉が入っています。
・ラーメン、パスタ、うどん、そば、そうめん
粉もの
生地の他に、ソースにも小麦粉が使われています。
・お好み焼き、たこ焼き
パン類
パンは、小麦粉の他に、卵や牛乳、イースト菌などアレルゲンとなる材料が含まれているので、全粒粉や米粉などを使っていても気をつけましょう。
・パン、ピザ
揚げ物
衣の原料に小麦粉が使われています。
・てんぷら、から揚げ、フライ
お菓子全般
焼き菓子や洋菓子だけでなく、おまんじゅうやどら焼きなど和菓子にもよく使われています。
調味料
調味料にも小麦粉が使われています。
・カレー、シチュー
味噌、醤油、穀物酢、ソース、食用油
ビール
ビールの原料は麦(麦芽)です。
いろいろな種類の麦
大麦、ライ麦、オーツ麦(オートミール)、はと麦、麦茶
シリアル、ミューズリー、グラノーラ
これらは除去する必要がないとする説もありますが、症状が出る場合は注意が必要です。
加工品
ハムやソーセージなどの加工肉や調理加工品を買うときは、小麦が含まれていないか食品表示をしっかり確認するようにしましょう。
まとめ
小麦アレルギーについて、参考になりましたでしょうか?
最後におさらいしておきます。
- 小麦アレルギーは小麦のタンパク質が原因の食物アレルギー症状
- アレルギーは子供に発生しやすく、発症者の8割は子供である
- 小麦アレルギーは食べてからすぐに症状があらわれる即時型アレルギー
- IgEという抗体が過剰に反応し、くしゃみや鼻みず、じんましんなどの炎症をおこす
- 小麦の摂取が少量でもアナフィラキシーショックをおこし、命に関わることがある
- 小麦アレルギーは3大アレルギーに数えられるアレルゲンである
小麦やグルテンを完全に除去するのは難しいです。
まずは、麺類やパンなど一度に大量に摂取してしまうものを控えることから始めてみましょう。体調や体質によって症状の個人差が大きいのもアレルギー症状の特徴です。給食を食べる場合は、園や学校の栄養士さんとの連携も欠かせません。発作的な症状が出てもあわてないように、日頃から準備をしておくと安心ですね。
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