壊血病という病気は名称からも推測できるように、出血性の障害が各器官で生じる病気です。この病気は特に、16世紀から18世紀の大航海時代に海賊の間で多く発症し、多くの死亡者を出した歴史がありますが、今ではあまり聞きなれない病気かもしれません。
原因はビタミンCの欠乏により生じる病気の為、現在の日本や発展途上国ではこの病気を見かけることは少なくなりましたが、生活習慣の乱れやヘビースモーカーなどの方はビタミンが不足しやすい為、気をつけないとこの症状が現れる場合があります。ここでは、壊血病の症状、原因、予防方法や治療方法についてご紹介します。
壊血病について
ここでは、壊血病の概要や原因について詳しくご紹介します。
壊血病とは
壊血病とは、体内のビタミンCの欠乏により、出血性の障害が各器官で生じる病気です。ビタミンCを摂取することで症状が改善されますが、この症状が現れても、治療を受けなかったり、生活を改善しないと最悪死に至る危険性がある病気です。
ビタミンCは体の中のコラーゲンの生成に必要不可欠な栄養素です。このコラーゲンは、皮膚、血管、じん帯、骨、軟骨作り働きをしている為、ビタミンCが不足することで、これらの箇所に異常が現れます。壊血病は、主に各臓器の血管が破裂し症状を生じること病気ですが、ビタミンCが不足することで、体の様々な箇所に異常が現れだします。その為、出血が起きるほどの重篤になる前に早めに異変に気づける病気です。
現在の日本や先進国では、生活水準が豊かになり、ビタミンC不足や栄養失調が起こるようなことは少ない為、比較的に不足になりづらいと言われています。現在では、妊娠中や授乳期の女性はビタミンの必要摂取量が増加する為、注意して摂取しないとビタミンC不足になる可能性があります。その他に、規則正しい食生活をされていない方やストレスが溜まりやすい方は、喫煙している方は、ビタミンCが不足するリスクが高いので注意が必要です。
壊血病はビタミンCが欠乏することで起こることから、総称してビタミンC欠乏症とも呼ばれていたり、生後6~12ヶ月の間に生じた場合は、発見した医師の2人の名前をとって、別名メラー‐バーロー病とも呼ばれています。
壊血病の原因
原因はビタミンCの欠乏です。一般的には、野菜や果物の摂取不足が原因といわれていますが、ストレスが溜まりやすい方や喫煙している事も原因になる可能性があります。
体の中は、多くのタンパク質という成分から作られています。このタンパク質の中で約30%ほどがコラーゲンという成分です。このコラーゲンという成分を作るのに、ビタミンCは欠かすことができない栄養素です。
コラーゲンは、皮膚、血管、じん帯、骨、軟骨作りに大きく貢献し、これらの臓器を健康に作り上げてくれます。その為、ビタミンCが不足するとコラーゲンの働きが悪くなり、血管が簡単に破れて出血したり、肌トラブルが生じたり、関節が痛むなどの様々な影響が出てきます。
この症状は、体内中のビタミンCの量が約300mg以下になると、発症すると考えられています。この数値は、ビタミンCを全く含まない食事内容を60日~90日間続けた場合に、起こります。通常、健康な状態の体内には約1500 mgのビタミンCを蓄えており、大人の方で1日約100mgが適切な摂取量だといわれています。
その為、栄養バランスの取れた食事を摂取されている方は、問題ありませんが、野菜や果物の摂取が不足すると、ビタミンCが不足する危険性が高まります。
その他に、血液中のビタミンの濃度は通常、5~15 mg/Lですが、2 mg/L以下になる壊血病にかかる可能性が非常に高くなると言われています。血液検査を行い、血液濃度が2~5 mg/Lの場合はビタミンC不足、2 mg/L 以下をビタミンC欠乏と診断します。通常は食事内容が大きくこの数値に影響する為、1度の血液採取での診断は難しく、何度か血液検査を繰り返し行い慎重に診断を行います。
壊血病の症状について
ビタミンCが欠乏することで、出血性の障害にも様々な症状がおこります。どのような症状が起きるのか、ご紹介します。ご紹介する中でも、出血性の障害や壊疽などは重篤な症状の為、治療せずにそのまま放置すると、最悪の場合死に至る危険性があります。
出血性の障害
皮膚や歯茎の出血や歯が抜ける症状が現れはじめ、消化器官や粘膜からも出血が見られます。その他に、傷口ができた際の治癒が遅くなったり、古傷が開いたり、貧血などが見られます。
また、内部出血を繰り返すため、太ももの部分に紫色をした大きなあざのようなものが広がるのが特徴的です。毛穴の周辺をよく見てみると、点状の出血が確認できます。
肌の老化
ビタミンC不足によるコラーゲンの減少により、肌のトラブルが目立つようになります。肌が乾燥しかゆみが出たり、にきびがでたり、ハリがなくなり、しわができたり、肌の老化が始まります。また、ビタミンCには肌のしみをつくる原因であるメラニンを抑制する働きがある為、不足することで肌にしみが現れます。
むくみや疲労
ストレスや疲労などが原因となって、肌のむくみが起きる場合があります。ビタミンCはストレスと戦う成分でもあり、疲労回復に役立ちます。しかし、不足することで、疲労回復が間に合わずにむくみやすい体質になるだけでなく、脱力感や疲れやすいといったうつ状態になる可能性があります。
免疫力低下
体の免疫力が弱まり、外部からのウイルスに対抗する力がなくなり、風邪をひきやすくなったり、インフルエンザにかかるなどウイルス性の病気にかかりやすくなります。
骨粗しょう症
骨の細胞の90%はコラーゲンで出来ているといわれています。その為、ビタミンCが不足すると、骨がスカスカの状態になり、骨の強度が弱まることで骨折が起こりやすくなります。
関節の痛み
体の組織と組織をつなぎ合わせる部分にはコラーゲンがあり、接着剤のような役割をしています。このコラーゲンがなくなると、骨と骨がぶつかりあったり、削りあったりしてしまい、痛みが発生します。特にひざや足は、体を支える基盤の部分であり、体全身分の体重がかかり負担が大きい為、痛みやすい関節部分でもあります。
壊疽(えそ)
細胞は日々新しく壊死や再生を繰り返して健康状態を保っていますが、血液が正常に行き届かなくなることで、壊疽と呼ばれる症状が現れます。この症状は、体の細胞が腐敗していき、皮膚が黒や緑色に変化し、悪臭を放ちだします。
壊血病の予防・治療方法
上記で挙げた症状の予防や治療を行うには、ビタミンCの摂取を積極的にすることです。ここでは、自分で出来る予防方法と病院で行われる治療方法についてご紹介します。
ビタミンCが多く含まれている食材を摂取
ビタミンCは体で作り出すことが出来ない為、外部から摂取しなければいけません。ビタミンCは水に流れやすく、加熱することで、ビタミンCが減少してしまうので、生で摂取するか、ジュースなどにして工夫して摂取することが重要です。
■緑黄色野菜
野菜はビタミンCを多く含む食材です。中でも特に多いのが、赤ピーマン、黄ピーマン、青ピーマン、パセリ、ゴーヤ、レッドキャベツ、青汁、ブロッコリー、カリフラワーなどの緑黄色野菜だといわれています。
特にピーマン・パプリカはビタミンCの含有量が多く、赤パプリカの場合は100gあたり170mgのビタミンCが含まれています。その為、1/3個分摂取するだで1日のビタミンCの推奨量を摂取できます。
また、野菜を切って、25℃の場所に2日間ほど置いておくと、切られた部分の損傷部分を守ろうとビタミンCを作りだす働きがあり、ビタミンCの含有量が増えると言われています。手間をかけられる方は是非取り入れてみて下さい。
■果物
果物はビタミンCを多く含む代表的な食材です。レモン、はっさく、みかん、オレンジ、カボス、柚子、などの柑橘類やアセロラ、キウイ、柿、あけび、いちごや、に多く含まれています。中でもアセロラは果物や野菜の中でも一番ビタミンCを含んでいると言われています。
日常生活の中で、果物や野菜を多く摂取することは難しい方は、野菜ジュースや果物をジュース、サプリメントとして摂取することを心がけてみて下さい。手軽に出来てたくさんのビタミンCが摂取できるので、おススメです。
禁煙・減煙を心がける
タバコを吸う方は聞いたことがあるかもしれませんが、タバコを吸うことで、ビタミンCが失われます。タバコを吸うとタバコに含まれているニコチンなどの有害物質が体内に入り、大量の活性酸素が体の中で作られます。この活性酸素を無害化するのがビタミンCの働きの1つでもあります。
体内に溜めてあるビタミンCの代謝する量を非喫煙者と喫煙者の比較してみたところ、非喫煙者45~60mg、喫煙者67~90mgと喫煙者の消費量が多いことが分かります。また、血中のビタミンCの濃度を比較すると、喫煙者は非喫煙者に対して40%も低いと報告があります。
このような事から、喫煙者は非喫煙者と比べて2倍ものビタミンCを補給する必要があると言われています。喫煙しているからといって、ビタミンCをたくさん取ることを心がけるよりも、タバコを禁煙したり減煙することを心がけることが、ビタミンCの問題だけでなく健康維持に繋がります。
ストレス発散する
ストレスとは、人間関係のもつれやテストやプレゼン発表前の不安や緊張だけでなく、季節の温度変化や睡眠不足、喫煙などもストレスの原因になると言われています。人の体はストレスを感じると、アドレナリンという物質を作ります。このアドレナリンを作るのに、ビタミンCが使われます。
その為、睡眠を十分にとったり、体を休めたりして、ストレスを解消することもビタミンC不足の予防に繋がります。
病院での治療方法
出血性の障害がみられるなど重篤な場合は、病院での治療を必要とします。病院での治療としては、ビタミンCの栄養素の働きとしての構造をもつ有機化合物の1種、アスコルビン酸を投与します。病気の症状によりますが、アスコルビ ン酸500mgを症状が改善されるまで、毎日1回~4回服用します。
この内服薬を摂取することで、症状が徐々に緩和され、改善されるまで1~2週間程度だ と言われています。内服薬の投与で改善されない場合は、薬の量を調整したり、治療的用量のアスコルビン酸投与します。この方法を用いることで、すぐにビタミンCの働きが回復し、1~2週間程度で症状が改善されます。
まとめ
壊血病は、ビタミンCが欠乏する為に、出血性の障害が器官で起きる病気です。
この出血性の症状がおきる前には、風邪をひきやすくなったり、皮膚が乾燥したりと様々な症状が現れるので比較的に早めにビタミンCの不足に気づけると思います。しかし、度々体調を崩しているにも関わらず、体を酷使し続けたり、ビタミンCを十分に補っていない場合は、症状が悪化して出血性の障害が起きる可能性があります。
栄養バランスの取れた食事や十分な睡眠、適度な運動をするといった生活習慣を気をつけることで、この病気を含め防げる病気が多くあります。その為、日ごろから生活習慣に気をつけることが病気にならない一番の予防や治療だと思います。