年を取るにつれてトイレの回数が多くなってきた、おしっこが出ずらい、意図せず粗相をしてしまったなど、尿に関するトラブルが増えてくることはよくあります。
尿のトラブルが増えることは高齢期に突入した証拠と言えますが、若い人でもトラブルがないわけではありません。これらの尿に関するトラブルをまとめて排尿障害といいます。体の衰えと共に発症することの多い排尿障害は、もしかすると隠れた病気の前触れかもしれません。
排尿障害には様々な種類と原因がありますし、お悩みを持つ方も少なくはありません。なかなか言えない尿のトラブルについて、最近排泄の調子が悪いな、と感じたら、当てはまるものがないか確認してみてください。
正常な排尿について
尿意を感じてトイレに向かい、排泄する、という行動は、本来ならばスムーズに行われるものです。普通、尿は少しずつ膀胱に溜まっていき、一定の量を超えると尿意を感じます。
しかし、尿意を感じてもその場で漏らしてしまう事はありません。それは畜尿という作用が働いているからです。その後、トイレに向かい、尿をしてもいいと自分で判断した場合、尿道の筋肉が緩み、排尿が始まります。
正常な排尿は、この畜尿と排尿が自分の意思で行えることを指します。しかし、この二つのバランスが何らかの関係で壊れると、上手に排泄できなくなり、排尿障害と呼ばれます。なお、膀胱が尿を溜めておける用量は大体200~300㏄ほどです。
排尿障害の種類
排尿障害には様々な種類があり、おしっこが出すぎる事のほか、出にくいことも含まれます。
排尿困難
尿意はあるのにおしっこが出にくい状態です。尿意を感じてトイレに入ったは良いものの、いざ出そうとすると出てこない…そして慢性的に尿意を感じる事を排尿困難といいます。
出したい時に出せない状態ですので膀胱に尿が長時間溜まることがあり、膀胱炎を併発する可能性もあります。
頻尿
さっきトイレに行ったのにまた尿意が…という、尿意を頻繁に感じる症状を頻尿といいます。通常、一日の排尿の回数は5~6回ほどですが、頻尿の人は一日に7回以上尿意を催すようです。
頻尿には、一度の排泄で多量の尿が出る多尿を頻発する人と、回数は多いものの出る量は少ない人の2パターンあります。頻尿は、高齢者ほど症状が出てきます。高齢になると腎臓の機能が弱くなってくるため、一度に濾し取る尿素の量が減少します。
すると必然的に尿の回数が増える事になるのです。
夜間頻尿
夜間頻尿は、夜、睡眠中に尿意で目が覚めることが3回以上ある場合です。通常高齢になるとよく見られる症状で、日中は普通なのに夜だけ頻尿になる場合もあります。
閉尿
膀胱に尿が溜まり、尿意があるにも関わらず、全く尿が出てこない症状です。この症状は男性に多く、前立腺が肥大して尿道を塞いでしまうことが原因です。
失禁症
いわゆる粗相で、膀胱や尿道の筋肉の衰えが原因です。重いものを持ち上げるなど、力んだりするときや、くしゃみや咳など、腹筋に力が籠った時に漏れてしまう腹圧性失禁や、前触れなく突然激しい尿意を感じてトイレに間に合わない切迫性尿失禁などがあります。
残尿
正しく排泄を終えた後も尿意が消えない症状をいいます。実際に出きっていない場合と、すべて出たにも関わらず尿意が残っている場合の二種類があり、日常的に不快感が続いたり、頻尿に発展したりします。泌尿器に何かしらの疾患がある場合が多いです。
排尿障害の原因
排尿障害には、日常生活が原因のものと、病気が原因のものがあります。
日常生活からくる排尿障害
体の機能の衰え
生き物は年を取るにつれて体のあちこちの機能が衰え始めます。加齢による排尿障害は、腹圧の低下や、尿道括約筋や膀胱など、排尿に関係する筋肉の衰えが原因です。また、肝臓や腎臓の働きが弱る事が原因の場合もあります。加齢による排尿障害は病気ではありません。
妊娠、出産
女性が妊娠や出産をすると、お産のために骨盤が開き気味になります。子宮周りや、膀胱を支える骨盤底筋という筋肉が緩むことで、腹圧が低下したり膀胱が垂れさがったりし、尿が出にくく感じることがあります。
また、尿の流れが滞り残尿感が残ったりします。産後、骨盤周りの運動を行い骨盤底筋を締めることで改善が見られます。
薬によるもの
年を取るとさまざまな病気になりやすく、予防や治療のために日常的に薬を服用する人も多いかもしれません。しかし、その薬の中に含まれている成分によっては、排尿障害を引き起こすことがあります。
風邪薬や胃腸薬、不整脈の薬など、若いうちは副作用が出てこなかった薬も、年を取ることで体の各器官が弱り、思わぬ副作用が出る事があります。
病気による排尿障害
前立腺肥大症
高齢の男性によくみられる病気です。男性には前立腺という器官があり、前立腺が肥大してしまう事によって尿道が圧迫され、排尿が困難になる症状です。尿道の圧迫により、尿が出てくる勢いがなくなったり、排泄後も残尿感が残ったりします。
また、少しずつしか出てこないため、膀胱内に出し切れなかった尿が残り、頻繁にトイレに行きたくなる頻尿や、尿意はあるのに全く尿が出てこない閉尿になることもあります。
花粉症や風邪の薬に含まれている抗ヒスタミン剤を定期的に服用していると、前立腺肥大になりやすいようです。また、油の多い食生活や、肥満の人は前立腺が肥大しやすい傾向にあるようです。
前立腺はがんになることもあります。それは前立腺肥大症と似たような症状のため、注意が必要です。
詳しくは、前立腺肥大の原因とは?症状や治療法、検査方法を紹介!を参考にしてください。
膀胱結石、尿管結石
結石とは、体内の成分が結晶し、石のようになってしまったものが、体の中の管に詰まってしまう病気です。それが膀胱や尿道に詰まってしまうと、排尿障害を引き起こします。結石が詰まると尿道が塞がれ、尿の出が悪くなったり、全くでなくなってしまう場合もあります。
結石は結晶なので尿道や膀胱周辺の血管を傷つけてしまうことがあります。さらに、日常生活では下腹部や腰、排泄の際は尿道などに、激しい痛みを感じる場合があります。
尿道狭窄症
尿道が狭くなることで尿の通り道が塞がり、排尿がしづらくなったり、量が少なくなったりする症状です。尿管が細くなっているため排泄に時間が掛かったり、残尿感が強く残ったりします。悪化すると閉尿となります。
細菌の感染による炎症が原因の場合と、カテーテルなどの医療器具を通した際に尿道に傷が付くことが原因の場合があります。
急性膀胱炎
子供のころ、おしっこを我慢すると膀胱炎になるよ、と教えられた人は多いと思います。急性膀胱炎は膀胱に炎症が発生する症状で、そのような排泄の我慢のほか、付かれている場合の体の免疫力の低下や、冷え、代謝不良など、寒さからくる体内循環能力の低下によって引き起こされます。
膀胱炎の症状は、排泄時の痛みや血尿、尿のにごりや残尿感などがあげられます。尿道の短い女性に多く発生し、悪化すると尿が溜まる際にも痛みを感じます。
神経因性膀胱
排尿は、自律神経によって制御され、おしっこがしたい、という感覚は膀胱に尿が溜まることで脳に信号が送られ、トイレへ向かうまで我慢するよう自律神経が支持を出します。神経因性膀胱は、それらの自律神経が阻害され、失禁や頻尿、排泄困難を引き起こします。
脳疾患などで神経にダメージを受けた場合や、脊椎の損傷、パーキンソン病のほか、膀胱の近くを手術した際に神経を傷つけてしまったことが原因で起こることもあります。
子宮筋腫
子宮に腫瘍が出来た場合、排尿障害を併発することがあります。子宮筋腫は良性ですが、腫瘍が大きくなると生理痛の痛みが激しくなったり、経血の量が多くなったりします。
それに伴って貧血や眩暈の症状があったり、臓器に影響が出たりします。排泄に関しては、頻尿や、排泄の際の痛みなどがあるようです。30代以上の女性に多く、赴任や流産の原因になる病気です。
詳しくは、子宮筋腫の治療方法は?症状によって変わる対処方法!を読んでおきましょう。
排尿障害にならないための予防
生活に適度な運動を取り入れる
排尿障害は筋肉の衰えが原因の場合が一定数あります。日ごろから意識して歩くことで足腰の健康を維持することで、年を取った時に筋肉の衰えを緩やかにすることが出来ます。
また、適度な運動で体内の老廃物の循環を良くすることが出来るため、排泄のサイクルが正常に機能する助けになります。体の循環を促すことで尿結石が出来るのを防ぐことにもなります。
食生活の改善
脂っこい食事や栄養の偏った食事は前立腺肥大症の原因の一つです。食生活の改善は体の老化を防ぐことにもなります。体に直接取り込むことを考えることで排尿障害だけではなく、その他の病気の予防にもなります。
バランスの良い食事を心がけて健康を維持する努力をしましょう。体の健康が維持されていることで少しの細菌などは体の抗体が除去してくれます。
細菌が膀胱に入るのを防ぐ
膀胱炎の原因は膀胱に細菌が入り込み炎症を起こすことです。膀胱炎は特に女性がなりやすいといわれています。その理由は膀胱につながっている尿道が男性に比べて短いからです。具体的な方法は、おしっこを我慢しすぎないこと、排尿後はしっかりと水気をふき取ることです。
また、生理用のナプキンはこまめに取り換えることも大切です。陰部は湿気が籠りやすい部分ですが、最近はそのような湿度を好みます。
アルカリ性食品を積極的に取る
体は弱酸性ですが、肉などのタンパク質を取りすぎると体が酸性に傾きます。尿が酸性に傾くと結石ができやすくなるので、アルカリ性の食品を多くとるとよいでしょう。
酢や柑橘類は尿中のカルシウム濃度を低下させる働きがあります。カルシウムは結石の元です。
まとめ
排尿障害は老化が進むにつれて誰にでも起こり得る障害です。
しかし、排尿障害は身体的よりも精神的にダメージが大きいものです。日々の健康に気を使いながら老化の速度を遅くする努力をすることが大切です。