急性脳症の原因とは?症状や治療法、予防方法を詳しく紹介!

急性脳症は時として命の危険のある病気です。また、治療の遅速によっては命が助かったとしても後遺症が残る可能性があります。

では、急性脳症とはどんな病気なのか。症状や原因、治療法。そして、実際に発症してしまったとき、どういった対応をすればいいのかについてみていくことにしましょう。

急性脳症とはどんな病気?

幼児

急性脳症とは何かしらの原因によって脳の機能に障害が起こり、痙攣や意識障害を主とした症状を発症する病気です。また、後遺症が残る可能性もあり、その対応には非常に注意が必要です。

急性脳炎とは区別され、炎症が認められる場合は急性脳炎と診断されます。炎症がなく、脳を原因とした痙攣、意識障害が見られる場合は急性脳症と診断します。

急性脳症では具体的に以下の症状がみられます。

意識障害

急性脳症の主症状です。元気が消失したと思ったら、ぱたんと意識がなくなります。呼び掛けに応じることがなくなり、目を閉じたまま、もしくは黒目が上を向いたままになります。

四肢の痙攣

痙攣もまた急性脳症の主症状です。意識障害と合わせて四肢の痙攣がみられるようであれば、病気を疑うことができます。通常の場合、痙攣は数分程度継続します。

発熱

急性脳症の原因の一つにウィルス感染があります。このため、症状として発熱がみられることがあります。

嘔吐・下痢

脳機能の低下により嘔吐や下痢を呈することがあります。これら症状は痙攣といった重篤な症状を発症する前にみられます。

急性脳症の原因とは?

医療

急性脳症の原因は様々ですが、脳に著しい障害を与えるあらゆる要因が病気の発症を招きます。具体的には以下の原因が考えられます。

エネルギーの不足

脳の活動は当然ですが供給される血液によって支えられています。しかし、何らかの原因で低酸素や低血糖を招く血流障害が起こると急性脳症を招くことがあります。

低酸素とは

低酸素とは血流が減少し、脳に酸素が届かなくなる状態です。活動の源となる酸素が少なくなれば、脳の活動は低下してしまうでしょう。

低酸素状態の原因は呼吸器不全や循環器不全などが考えられます。心筋梗塞などの心停止状態。窒息などの酸素供給の停止などが具体的にあげられるでしょう。

低血糖とは

低血糖とは血液中の糖の濃度が低下する状態です。脳のエネルギー源はブドウ糖ですが、この供給が少なくなれば、脳の活動も低下してしまいます。

この原因としてインスリンの分泌異常があります。インスリンは血糖値を下げる効果がありますが、正常に分泌されなければ血糖値をコントロールすることができず、症状を招くことがあります。

ウィルス感染

外部から感染したウィルスによって急性脳症を発症するケースです。これは以下のステップで発症することがわかっています。

1:ウィルスが感染し、増殖を始める

例えばインフルエンザウィルスに感染した時、鼻の粘膜等で増殖を始めます。この時、感染しただけなので症状を感じることはありません。

2:免疫システムに障害が起こり始める

外敵から体を守る免疫システムが増殖したウィルスによって破壊され始めます。体はウィルスに対抗するために「サイトカイン」という物質を大量に生成します。

3:高サイトカイン状態になる

ウィルスに過剰に反応するあまり、大量生産されたサイトカインが脳内の免疫システムを侵し始めます。この状態を「高サイトカイン脳症」といいます。

4:脳症の症状を発症

脳が正常な働きをすることが難しくなり、意識混濁、けいれん、といった急性脳症の症状を発症します。また、症状が進行すると体の臓器にも悪影響を与えます。

肝不全

肝臓は体内に取り込んだ有害な物質を分解したり、体から産生された老廃物を分解する役割があります。肝臓の機能が低下することで急性脳症を招くことがあります。

急性脳症は子供や乳児に多いですが、肝不全を起こす原因として、先天性代謝異常、糖尿病といったことが考えられます。その他、薬物やアルコールの摂取も原因になります。

腎不全

腎臓は血液をろ過し、老廃物を尿として排出する役割があります。この機能が低下すると、尿毒症という病気になります。この代謝物が脳の神経に障害を起こすと考えられています。

腎不全については、腎不全とは?原因や症状、治療方法を知っておこう!を参考にしてください。

急性脳症はどうやって検査される?

検査

急性脳症かどうかはわかりやすい症状がありますが、きちんとした検査・診断が必要です。そのために行われる検査は以下があります。

髄液検査

髄液検査とは脳や脊髄を覆う髄液を採取することで脳症かどうかを判断する方法です。脳症の場合、蛋白質の値、糖の値、タウ蛋白質の値に変化があります。背中から髄液を採取し、これを検査します。

CT検査

急性脳症の速やかな診断のためにCT検査はとても役に立ちます。CT検査とはX線を用いた検査法で、脳症の場合は頭部断面図を撮影することができます。脳症である場合、脳に浮腫がみられるといった特徴があります。

MRI検査

CT画像検査同様、早期の診断に役に立つのがMRI検査です。MRI検査は磁気を利用して体の中を撮影する検査法です。

脳波測定

脳の微弱な電流を測定する脳波測定も急性脳症の診断にとても有効です。診断が難しいと判断された時、脳波測定を行うことが多いです。

血液検査

血液を採取し、異常がないかを診断する検査法です。脳症の場合、血小板の減少、血糖値が低い、もしくは高いといったことが認められます。

心電図

心電図は薬を投与する際、不整脈の発生に注意し、慎重に治療を行う時に用いられます。

急性脳症の治療法とは?

治療

急性脳症を思われる痙攣や意識混濁を発症したとき、基本的にその場でできることはありません。すぐさま救急車を呼び、速やかな治療をする必要があります。

治療はその原因ごとに異なりますが、以下の治療法が一般的です。

抗痙攣薬の投与

持続的な痙攣は回復後の後遺症が残る確率を高めます。そのため、その痙攣を止める薬を投与します。DZP、MDZといった薬品が代表的です。

ステロイド療法

ステロイド療法は体で作られるホルモンの一種であるステロイドを投与することで治療する方法です。このホルモンには免疫システムを抑える効果があります。先に述べたサイトカイン脳症のような病状に効果を発揮します。

低体温療法

体温が低下すると、体の細胞は活動を緩めます。これは細胞の死滅を防ぎ、症状の進行を抑える効果が期待できます。急性脳症のように脳細胞を守りたい場合は、この低体温療法が用いられることがあります。

低体温療法では体温を32〜34度に保ち治療していきます。頭部や頚部、もしくは全身を冷却材で包み、体を冷却していきます。

急性脳症の予後はどうなのか?

急性脳症の予後はどうなのでしょうか?これは症状の程度によりますが、治療の開始が遅れるほど、後遺症が残るリスクが高まることがわかっています。

後遺症としては高次機能障害(意識な精神機能)、知的障害、運動障害といった今後の私生活に影響を及ぼす症状が残ることがあります。

後遺症が残ってしまった場合、家族のサポートが必要です。また、運動障害であればリハビリをしたり、食事介助といった介護が必要になることもあります。

また、一見して後遺症がないように見えても、重度のてんかんが後遺症として残ることもあります。

リハビリについて

病気により後遺症が残ってしまった時、リハビリをする必要があります。それは運動のリハビリはもちろんですが、精神的な面のリハビリも必要です。

運動のリハビリに関しては根気のいる継続が必要です。例えば歩行が困難になるほどの後遺症が残った場合、回復するまで年単位の時間が必要とも言われています。

精神的な面のケアも必要です。知能低下やコミュニケーション能力の低下といったことも後遺症として現れることがあり、言語指導が必要です。

では、どうやって急性脳症を予防する?

薬

急性脳症の予防は原因から考えることができます。特にウィルスを原因としたケースは日常生活の中できちんと予防することができます。具体的には以下のことに気をつけるようにしましょう。

日々の衛生管理を徹底する

ウィルス感染は生活環境が悪化するほど容易になります。具体的には外から帰ってきてうがい手洗いをしないといったことです。

感染を予防するためにも、きちんとうがい・手洗いをするようにしましょう。特に冬場は注意が必要です。マスクをするというのも感染予防の一つです。

解熱剤を安易に使用しない

インフルエンザ等に感染した時、高熱がでますよね。この時、ついつい解熱剤を使いたくなりますが、慎重な使用が必要です。アスピリン系の解熱剤は急性脳症の発症リスクを高めることがわかっています。

症状を見ていて辛いこともあるかもしれません。しかし、高熱が出た時はなるべく医師に相談し、自分で判断した薬の使用を控えるようにしましょう。

予防接種を受ける

冬場になると予防接種を受けるという人も多いと思います。予防接種には感染予防のほか、感染したとき症状を最小限に抑える効果があります。病気の予防のためにもきちんと受けることをオススメします。

まとめ

考える

脳は私たちの体を司る最も重要な臓器です。脳の損傷はこの後の生活を脅かすだけではなく、周囲の家族にも大きな負担を課すこともあるでしょう。

急性脳症の原因は先天的なものもありますが、外部要因がきっかけとして発症することもあります。この外部要因に関しては、環境に気を配ることで予防することができます。

生活環境を清潔にする。ウィルス感染を予防するためにうがい・手洗いをし、予防接種を受ける。これらのことで十分予防ができるのです。

反対に生活でできる予防策を軽視するあまり、生活の中で実践しないようになると、病気は知らないうちに忍び寄っていることがあるでしょう。

急性脳症は一生を左右する病気の一つです。決して軽視するのではなく、日々の中できちんと予防していくようにしましょう。

  
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