歯茎に膿・・・なんて聞くと、ものすごく痛そうですよね。ちょっと怖いな、と感じる方もいるのではないでしょうか?しかし、痛みがなくても膿が溜まっていることはあるのです。放っておくとどんどん悪化し、取り返しのつかないことにもなりかねませんから、早めの対処が大切ですよ?
そこで、歯茎に膿が溜まってしまう原因と、その対処法についてご紹介します!口の中の健康は日々の生活に深く関わってきますから、正しい知識を持つことが大切です。
歯茎に膿が溜まるメカニズム
わたしたちの口の中には、300~700種にも及ぶ細菌がいると言われます。その数はよく歯を磨く人でも1,000~2,000億個、あまり磨かない人では4,000~6,000億個、ほとんど磨かない人に至っては1兆億個とも言われますから、驚愕の数字です。
さて、このように口内には多くの細菌が生息しているわけですが、この細菌と戦っているのか免疫細胞である白血球です。しかし、白血球だけでは大量の細菌に追い付かないため、歯磨きなどによるオーラルケアが白血球を手助けする役割を果たしているわけですね。とは言え、歯磨きでも行き届かないような隙間、磨き残した部分には、汚れが残ることになります。そうすると、細菌との戦いに負けた白血球の残骸が膿となり、歯茎から膿が出る原因となるわけですね。
つまり、磨き残しが多ければ多いほど、歯茎の膿に悩まされる可能性は高くなるということです。きちんとしたオーラルケアがいかに重要かが分かりますね。
症状
では、歯茎に膿が溜まると、どのような症状が出るのでしょうか?
①歯茎にオデキのような出っ張りができる
これは、いわゆる膿の出口となるところです。膿が目一杯溜まると、この出っ張りが破れて中から膿が出てきます。膿が出来れば出っ張りは一旦小さくなりますが、再び膿が溜まると腫れてきて、破れて中身が出る、というのを繰り返すことになります。
②歯茎を押すと、中から膿が出る
歯茎に膿が溜まっている状態になると、歯茎に小さな穴が空きます。この穴があるために、歯茎を押すといつでも膿が出てくる状態に陥るわけですね。
③歯茎が腫れる
これは、膿の出口が何らかの原因でふさがれたことにより、膿が歯茎の中に溜まり続けることで生じます。もちろん、膿を出すことができれば歯茎の腫れは引きます。
④口臭がする
膿が出ると口臭の原因にもなります。口臭というのは自分では気が付かないのでなかなか厄介です。膿に気付いたら口臭にも気を配るように意識しましょう。
⑤痛みを伴うことがある
歯茎の中に溜まった膿がいつまでも外に出ず留まっていると、歯茎の内部に圧力がかかり、痛みが出ることがあります。腫れがあまりにもひどい時や痛みが強い場合には、歯茎を切り開いて膿を取り出す必要がある場合もありますので、腫れと痛みには注意しましょう。
歯茎に膿が溜まる原因
歯茎に膿が溜まるメカニズムは分かりましたが、このほかにも、膿が溜まる原因はさまざまあります。では、具体的にどのようなものがあるのか、詳しくご紹介します。
歯が割れている
何らかの原因で歯が割れると、口の中の細菌がその隙間から入り込みます。歯が割れているために、その周辺だけ歯周ポケットが深くなり、膿が溜まりやすい状況になるのです。
親知らずが原因
親知らずは、まっすぐに生えていれば何の問題もありませんが、斜めに生えていたり、部分的に歯茎を覆うように生えていたりすることがあります。こうなると、歯茎を覆っている部分の汚れが落ちにくくなり、細菌が溜まって膿が出やすくなります。
親知らずは何かとトラブルの多い歯ですから、症状が進む前に抜歯してしまうのがオススメです。放っておいて悪化すると、歯茎を押しただけで膿が出たり、口臭がきつくなるなどの弊害もありますからね。
乳歯などの根っこが残っている
きれいに抜歯したつもりでも、根が歯茎の中に残っていることがあります。ほとんどの場合、根が残っていても吸収されてしまうか、歯茎の外に押し出されて、いつまでも残っていることは少ないものですが、まれに歯茎の中に取り残されて化膿する場合があります。
こうなると、残っている根を膿ごと取り除くことが必要になります。ただし、取り除いてしっかりと洗浄すれば、症状は治まりますから安心ですね。
歯茎に膿が溜まる病気とは?
歯茎に膿が溜まる原因は死んだ細菌や白血球によるものだと分かりましたが、これ以外にも病的な原因があります。
根尖病巣(こんせんびょうそう)
根尖病巣とは、簡単に言うと根の先に膿が溜まるための袋ができている状態です。原因は、虫歯が悪化することによって神経が死んだり、根の不十分な治療により神経のあった箇所に空洞ができることです。
この空洞に細菌が感染すると毒素をばらまきますが、この毒素から身を守るために、根の先に膿を溜める袋が形成されます。ここに膿がどんどん溜まっていき、収まりきらなくなると歯茎から漏れ出すことになるのです。
治療法
根の治療が何よりも大切です。根の仲を消毒し、中にいる細菌をきれいに取り除きます。これだけだと再び感染する可能性があるため、厳重にこの袋を封鎖します。しかし、これで膿の発生が止まらない場合には、袋ごと取り出すことが必要になります。
袋は歯茎を切開して取り出し、袋がなくなったところは自然と骨で埋めらていくわけですね。歯茎を切り開くというのは少し怖いですが、袋をなくすことが治療には重要なのです。
歯周病
歯周病になると、周りの骨が溶けて歯周ポケットが深くなります。深くなった歯周ポケットには、たくさんの細菌や歯石などの汚れが蓄積しますから、それと戦うために白血球が出動します。
こうして細菌と白血球が戦い、どちらか(もしくは両方)が死ぬと、その死骸が膿になるのです。膿が溜まることによって歯茎は柔らかくなり、押すと膿が出てくるというわけですね。
治療法
歯茎の腫れは、周辺に細菌や汚れが溜まっていることで引き起こされますから、しっかりとブラッシングして、歯茎を清潔に保っておきましょう。次に、歯周ポケットに溜まった膿や歯石などの汚れをきれいに取り除き、膿が溜まらないようにしていきます。
歯周ポケットの深さは軽度のものから重度のものがあり、あまりにも深くなると抜歯が必要になりますが、それ以外は歯石や細菌を取り除くことで改善が可能です。日々のオーラルケアで、歯周ポケットを作らないよう心掛けましょう。
歯根嚢胞(しこんのうほう)
通常、歯は歯茎の下にある骨に覆われているため、がっちりと固定されています。しかし、歯根嚢胞になると、歯の先端の骨が徐々に溶かされ、空洞が形成されていきます。この空洞は徐々に大きくなり、ちょうど膿を溜める袋のようになっていきます。
特徴的なのは、歯根嚢胞になるのは神経が死んでいる、もしくは神経を取り除く治療中の歯で、生きている歯には起こらないということです。もともと神経があった場所が空洞になり、そこに細菌が感染することで膿が溜まるのが歯根嚢胞というわけです。
症状
歯根嚢胞になると、以下のような症状が起こります。
①歯が痛む
歯の先端にある袋が押されることにより、物を噛んだ時に痛みを伴います。膿は粘り気がって柔らかいですが、袋の外側は硬い骨で覆われているために、押されると圧迫されて痛みを感じるのです。
②歯が浮いたような感じがする
これも、歯の先端に膿の袋があるためです。この袋が圧迫されると、外側の硬い骨が歯を押し上げようとするため、浮き上がるように感じるのですね。
③歯茎にオデキのような腫物ができる
膿が溜まっていくと、歯茎に小さな穴が開き、膿が溜まって歯茎が腫れ上がります。中身は膿なので、オデキを押すと中から膿が飛び出し、すべて出ると腫れは引きます。ただし、再び膿が溜まって腫れる、というのを繰り返すことになります。
④就寝中に痛む
これは、主に急性の歯根嚢胞で見られます。膿の袋の成長よりも、膿が溜まっていく速度の方が早いために、圧迫されて痛みを感じるのです。膿が溜まれば溜まるほど、袋内部の圧力は高まるため、早期治療をしないと悪化するばかりです。
人によっては、このような自覚症状がでないケースもありますが、症状がなくても袋は大きくなります。大きくなればなるほど治療は難しくなっていきますから、早期発見・早期治療が何より大切です。
治療法
歯根嚢胞は、その原因が根の汚れにあるため、根を治療することに重きを置きます。ただし、進行具合によっては根の治療だけでは完治しない場合もあるため、治療法は複数存在します。
感染根管治療(かんせんこんかんちりょう)
根の治療によって完治を目指す治療法です。
①膿を取り除く
一番の原因である、歯の中の膿を取り除きます。そのために、神経が通るための空間を通じて、膿の袋につながるための穴を開けます。穴を開けることで、袋の内部に閉じ込められていた膿を取り除くことができるわけですね。
②歯の内部を洗浄する
膿を取り除いても、歯の内部には細菌が残っています。この汚れを針金のような専用器具を使って削ぎ落とし、さらに薬品を使って無菌化します。
③歯の内部に詰め物をする
膿を取り除き、細菌を削ぎ落とし、無菌化しても、隙間を残したままでは再び細菌が入り込む可能性があります。そのため、歯の内部の隙間という隙間に、まんべんなく詰め物をすることで細菌の進入を防ぐというわけです。
歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)
感染根管治療で効果が見込めなかった場合や、細菌を十分に削り落とすことができない場合にはこの方法をもちいます。
①CTレントゲンで患部を確認する
どの箇所が原因なのかをしっかり把握することで、施術箇所を絞り込み、傷口を小さく済ませることが目的です。
②歯根嚢胞を取り出す
麻酔をかけ、膿の袋を取り出します。歯の中に膿や細菌が残らないよう、しっかりと洗浄を行います。
③根の先端を切除し、隙間を埋める
感染源となっている部分は切除し、そこに、歯を再生させやすいMTAセメントというものを詰めていきます。その後、歯茎を縫合し、順調ならば7~10日で抜糸ができます。
④骨が形成されるのを待つ
骨が再生するまでにはおよそ半年かかるため、経過観察となります。
再植術(さいしょくじゅつ)+歯根端切除術
これは、歯根嚢胞ができているのが奥歯などの大きな歯で、骨が厚いために歯の先端を切る手術ができない場合に行います。1度は抜歯して膿の袋を取り出し、再び歯を埋め直すという手術です。
部分抜歯
歯根嚢胞が奥歯にできている場合に行います。奥歯には根が2~4本あるため、その内の1本を歯根嚢胞と一緒に抜きます。歯根嚢胞と一緒に根を抜くことで、ほかの根を守ることができるためです。
やってはいけないこと
歯茎に膿が溜まった時、絶対にやってはいけないことがいくつかあります。しっかりと治療するためにも、きちんと把握し守るようにしましょう。
自分で膿を出さない
膿が溜まっているのを見つけたら、ついつい出したくなりますよね。でも、針などを使って穴を開けると、そこからさらに細菌が入って悪化することがあります。素人判断では危険ですから、速やかに歯科医に診せましょう。
飲酒や入浴は控える
身体が温まって血行がよくなると、歯茎の痛みが増すこともあります。入浴はぬるめにお湯で短時間またはシャワーなどにして、飲酒は控えましょう。
まとめ
膿の原因は細菌ですから、オーラルケアをきちんとすることが何より大切です。
ブラッシングをしっかりとして、歯の隙間などに細菌や歯石など、汚れが溜まらないようにしましょう。また、定期的に歯ブラシを交換するのも大切ですよ。歯茎に痛みがある時はついつい歯磨きが疎かになりますが、汚れを溜め込んでしまっては症状は悪化するばかりです。痛みがある時には柔らかめのブラシで優しく磨くなど、工夫をしてきちんと汚れを落としましょう。
膿が出てしまったら、放置したり自分で処置せず、早めに歯科医に診せることも大切です。早期発見・早期治療で、快適な毎日を過ごしたいものですね。