欲望のままに食べ続け、1日の摂取カロリーは常にオーバー。それに加えて、毎日の飲酒、運動不足、喫煙など、知らず知らずのうちに自分の体を痛めつけていませんか?食が豊かな時代へと成長した近年では、生活習慣の乱れから「脂質異常症」に悩まされる人が増えています。
そこで今回は、重大な病気になるリスクを高めるともいわれる脂質異常症の、原因と対処法を見ていきましょう。
脂質異常症を知ろう
年を重ねた中年と言われる方々は、健康診断で「脂質異常症の疑いがある」と診断されたことがある方も多いのではないでしょうか?自覚症状がないためそのまま放置してしまいがちですが、またひっかかった……と見て見ぬふりしても良い疾患では決してありません。
ここでは、脂質異常症の詳しい症状を紹介していきます。
脂質異常症とは?
端的にいうと、「血液がドロドロの状態」です。では、なぜドロドロになってしまったのかというと、血液中のコレステロールや中性脂肪が必要な量を超え、血管の壁にコレステロールがたまることによって、血管の内腔が狭くなってしまったからです。このまま放置すると、動脈硬化を起こしやすく、心筋梗塞、脳卒中など重大な病気にかかるリスクが高くなると言われています。
脂質異常症になる原因
ではなぜ、脂質異常症にかかってしまうのでしょうか。原因の多くは、生活習慣の乱れです。なかでも、直接的な原因になることが多い食生活は、見直しと細心の注意が必要です。主な原因を挙げてみましょう。
- 肉や乳製品など動物性脂肪の多い食品、卵や魚卵など高コレステロールお食品をよく食べる
- 食事は常に腹8分目以上、毎食カロリー過多
- 過度なアルコール摂取による中性脂肪の増加
- 運動不足や喫煙による善玉コレステロールの低下
脂質異常症を予防・対処する食事
原因を理解したら、続いて対処法を見ていきましょう。ここでは、食生活で気を付けるべき3つのポイントを教えます。
動物性脂肪は控え、主食は毎食しっかり摂取
食が豊富になった現代では、気を付けているつもりでも知らず知らずのうちにカロリー過多になりがちです。脂質が少ないごはんやパンなどの主食は毎食きちんと摂取し、肉などの動物性脂肪は控えめにしましょう。
しかし、肉を全く食べないのはバランスが偏るので、牛肉や豚肉の場合、ロースではなくヒレを選ぶなどの工夫をしましょう。鶏肉の場合は、ささみ肉がおすすめですが、もも肉などを選んだ場合は脂身をなるべく避けましょう。
青魚料理を毎日1品食べる
動物性脂肪の中でも、サバやイワシ、サンマなどの青魚は積極的に食べましょう。
青魚にはDHAとEPAが多く含まれており、悪玉コレステロール値を下げる上、肝臓での中性脂肪の合成を抑える働きもあります。刺身や焼き魚、サバの味噌煮や水煮の缶詰にもDHAとEPAはたくさん含まれています。調理法を変えて、できれば毎日1品青魚を使ったおかずを食べるのが理想です。
ただし、毎日魚を食べるのが難しい方は、毎日の食事に加えてDHAとEPAのサプリメントを摂取するのもいいでしょう。
豆類と繊維質でコレステロールを撃退
植物性たんぱく質と食物繊維は、いずれもコレステロールや中性脂肪を減らす働きがあります。植物性たんぱく質といえば、豆腐や納豆などの大豆食品です。比較的食べ続けやすい食品なので、毎日の献立に取り入れましょう。
食物繊維を多く含む食品は、豆類、穀類、野菜、きのこ、海藻類です。現在、日本人の食生活は欧米型に変化し、食物繊維の摂取が減少しています。過去、20gを超えていた摂取量が、現在では15gに満たない程です。生活習慣病の予防には必要不可欠な栄養素なので、積極的に摂取しましょう。
問題に合わせた対処法
食生活の見直しをしたら、最後にあなたの問題に合わせた対処法を実践しましょう。脂質異常症は「コレステロール値」と「中性脂肪値」の高さが原因で発症するリスクが高くなりますが、あなたはどちらの数値が問題でしたか?
ここでは、コレステロールと中性脂肪の数値を下げる方法を学んでいきましょう。
コレステロール値を下げる
コレステロールが多い食品を控える
コレステロールは、肝臓や皮膚などで生成される分と、食品から摂取する分があります。食品に含まれるコレステロールは余分になることが多いので、量に気を付けて摂取しましょう。注意すべき食品は、卵、レバー、魚卵、うなぎ、生クリーム、プロセスチーズなどです。
しかし、これら食品には必要な栄養も多く含んでいるため、全く食べないのではなく食べ過ぎない程度にしましょう。
「ムチン」で肝機能を高める
オクラや山芋に含まれるムチンという糖たんぱくは、肝機能を高める働きがあります。コレステロールを作り出したり分解するためには肝臓の働きが欠かせなく、ムチンが肝機能を高めてくれることでコレステロールのコントロールが問題なく行われます。
ビタミンをたくさん摂取
中でも、ビタミンCとビタミンEを多く摂りましょう。ビタミンCとEは、悪玉コレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化を予防する、とても大切な栄養素です。これらは、トマトやニンジン、ほうれん草やピーマンなどの緑黄色野菜に多く含まれています。
また、サケやサバなどの魚にも豊富です。ビタミンCはビタミンEの消費を節減する効果があり、一緒に摂取することで強い抗酸化作用や相乗効果が期待できます。
禁煙
タバコは善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やします。1本吸うたびに悪玉コレステロールが酸化し、動脈硬化を引き起こしやすい酸化LDLコレステロールが増えるため、喫煙者は非喫煙者に比べて動脈硬化のリスクが高くなります。
同時に、狭心症や心筋梗塞、脳卒中の可能性も高まります。喫煙は百害あって一利なしです。これを機に禁煙しましょう。
ストレスを溜めない
人間の体は、ストレスを過剰に受けると交感神経が活発になり、遊離脂肪酸が増えて、コレステロールの増加につながります。仕事や人間関係、家庭の問題などで、ストレスを抱えていませんか?解消法はそれぞれですが、暴飲暴食で発散するのは良くありません。
運動や音楽鑑賞、睡眠や旅行など、あなたに合った健全な解消法を見つけると良いでしょう。
有酸素運動をする
有酸素運動をすると体の筋肉が酸素を必要とし、心拍や脈拍が早くなります。これにより血行が促進され、善玉コレステロールの増加につながります。有酸素運動には様々ありますが、なかでも効果的と言われているのが水中歩行です。地上と違って抵抗が強い水中歩行は、負荷が大きく、消費カロリーも高まります。
さらに、水中では体温の低下を防ぐために体温を上げようとする作用が起きるので、より多くのカロリーを消費します。他にも、心肺機能をバランスよく鍛えられるウォーキングも有効的です。軽く息が上がる程度のペースを意識して、1日30分~1時間程度、1週間に最低2~3回を目安として、習慣にしましょう。
中性脂肪値を下げる
腹八分目を心がける
中性脂肪を下げるためにいくら食事に気を遣っていても、毎食のように食べ過ぎていては意味がありません。どんなにお腹がすいているときでも早食いはせず、ゆっくりとよく噛み、腹八分目を目指しましょう。
実は、空腹を感じているとき体内では、中性脂肪が分解されています。お腹がすいたらすぐ食べるのではなく、30分程度経ってから食べるという方法もいいでしょう。食事中は、テレビを見たり本を見ながら食べると惰性で食べてしまうことも多いでしょう。食べることに集中するのも得策です。
お酒は飲みすぎない
本来アルコールは、適量を飲む分には血行が良くなり、善玉コレステロールを増やす効果があると言われています。しかし、摂取量やおつまみなどを摂り過ぎることによって害になってしまうのです。それぞれのお酒の適量は、ビールは350ml缶1本程度・生中ジョッキ1杯弱・サワー1杯・日本酒1合弱・ワイングラス1~2杯程度です。
そして、お酒の量と同時に気を付けなくてはいけないのはおつまみ選びです。唐揚げなどの揚げ物は避けて、枝豆や冷奴、サラダや刺身など低カロリーのおつまみを選びましょう。また、アルコールを分解する際にビタミンBをたくさん消費するため、レバーや豚肉、卵などを摂取するのもいいでしょう。
有酸素運動で内臓脂肪を減らす
コレステロール値を下げる方法と同様に、中性脂肪の数値を下げるには有酸素運動は必要不可欠です。
ウォーキングや水泳、水中歩行をはじめ、ヨガやエアロバイクなどの有酸素運動で体に負荷をかけながら、生活習慣病の原因となる内臓脂肪をどんどん減らしましょう。1日30分程度でもいいので、週に最低でも2~3回、継続することが何よりも大切です。
夜食は食べない
人間は食べたものをエネルギーに変えて日常生活を送っています。しかし、夜は日中と違い、体や頭を使ってエネルギーを消費することはほとんどなくなります。寝るときに使われるエネルギーはごく少量のため、寝る直前に摂取したカロリーは消費されないまま蓄積します。
仕事や家事で難しい人も多いと思いますが、睡眠3時間前に食事を済ませるのが理想です。どうしても難しい場合は、量を減らし、雑炊など低カロリーで消化に良いものを食べるなどの工夫が必要です。
まとめ
健康診断などの血液検査を受け、はじめて知る場合が多い脂質異常症。自覚症状がないため軽く受け止め、そのまま放置してしまう人も少なくありません。
これこそが、脂質異常症の怖いところです。対処法として「コレステロール値」と「中性脂肪値」を下げることが分かりましたが、その方法は、細かい食事療法と継続力が要される運動療法など安易なことではありません。
脂質異常症と診断される前に、現在の生活習慣をぜひ見直してみてください。まずは身近なところから、3食の食事について考えてみてはいかがでしょうか。