まばたきをするとまぶたが痛い、目がごろごろする、腫れている・・・。まぶたの異常には様々な種類があります。
まぶたは目を守るための大切なシャッターです。まぶたに異常があるとそれにより視界が遮られたり、まぶたの異常のために目にまで悪影響を及ぼす可能性もあります。
ここではまぶたの病気とその原因についてご説明します。
麦粒腫(ばくりゅうしゅ)
麦粒腫とは、一般的な呼び方でいわゆる「ものもらい」のことです。地方によっては「めいぼ」「めばちこ」「めんぼ」などと呼ばれます。
麦粒腫の症状
麦粒腫がまぶたにできると、初期は部分的に赤く痒みを感じる程度ですが、症状が進むとまぶたが赤く腫れ、痛みを伴います。押さえるとズキズキ・チクチク痛み、まぶたがごろごろすると感じます。白目の充血も見られます。
麦粒腫の原因
麦粒腫の原因は、まぶたのふちや内側が細菌に感染することです。感染するのは黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌などです。まつげの根元にできると「外麦粒腫」、まぶたの内側にできると「内麦粒腫」と呼ばれます。
もしも麦粒腫が治ってもまた繰り返しできてしまうようなときは、糖尿病など別の病気によって引き起こされている可能性もあります。そういった場合は眼科に相談し、診察してもらいましょう。詳しくは、ものもらいの原因とは?ストレスや疲れとの関係についてを読んでおきましょう。
麦粒腫の治療法
麦粒腫の治療法ですが、あまりひどいものでなければ2~3週間で自然に治ります。発症から徐々に赤みと腫れを伴いながら炎症が進行し、最後に膿んだ部分が破裂してしまいます。膿が出てしまえばあとは腫れもひいていき治癒していくことがほとんどです。しかし症状がひどい場合には眼科を受診し、点眼薬や内服薬を処方してもらいましょう。膿がなかなか出ない場合には膿を外に出す外科的な処置が行われる場合もあります。
麦粒腫の予防法
麦粒腫の原因は感染ですので、細菌からまぶたを守るために清潔にすることが大切です。汚れた手で目をこすったりしないように注意しましょう。また、女性であればアイメイクをしっかりと落とし、目とまぶたの清潔を心がけましょう。
霰粒腫(さんりゅうしゅ)
まぶたにしこりができる病気です。麦粒腫と混同される事もありますが別の病気です。
霰粒腫の症状
まぶたに硬いしこりができ、徐々に大きくなっていきます。大きくなるとまばたきの度に異物感があります。本来痛みはありませんが、しこりが細菌に感染し炎症を起こすと赤く腫れ、痛みを伴います。
霰粒腫の原因
何らかの要因により脂を分泌する瞼板腺(マイボーム腺)が詰まってしまうことが原因です。分泌物が溜まって半円球のしこりがまぶたの中でき、その後も溜まり続けて大きくなっていきます。
霰粒腫の治療法
基本的に眼科を受診して治療してもらう必要があります。炎症を起こす前の痛みのない状態では、抗生物質の点眼やステロイド剤などでしこりが解消されることもあります。ただしこれは完治ではないので、再発する可能性もあるようです。繰り返ししこりになってしまうようであれば手術が必要になります。
また、ひどい炎症を起こしている場合にも手術になりますが、まずは抗生剤などで炎症を抑える治療が行われます。膿が溜まっている場合は切開して膿を出すこともあります。手術は15分から30分程度が一般的です。手術によってしこりを全て摘出できれば、再発に悩まされることはなくなります。
霰粒腫の予防法
霰粒腫は予防できないといわれることもありますが、やはり麦粒腫と同じように目とまぶたを清潔に保つことが重要です。
睫毛内反(しょうもうないはん)
難しい言葉ですが、「逆さまつげ」といえば聞き覚えがあるのではないでしょうか。何らかの原因によってまつげが眼球に向いてしまって角膜を刺激するために痛みを伴う病気です。
睫毛内反の症状
まつげが眼球にあたるために、目がごろごろする、涙が出る、目が充血するなどの症状があります。さらにまつげが角膜を傷つけてしまうと痛みが伴い、そこに細菌が入ってしまうと角膜潰瘍などの病気へ発展してしまう可能性があります。
睫毛内反の原因
まぶたの皮膚が多く余ってしまうことでまつげが内側に向いてしまうのが原因です。睫毛内反のほとんどは先天性で、一重や奥二重が多いアジア人によくある疾患だといわれています。
睫毛内反の治療
まつげを抜く、まつげパーマをかけるなどの対症療法によっても痛みは軽減されますが、根本的解決には手術が必要です。まぶたを切開して余っている皮膚を切除したり、プチ整形のような埋没法が施されることもあります。
睫毛内反の予防法
原因が先天性である場合には予防方法はありませんが、自分もしくは配偶者が睫毛内反であるか睫毛内反の治療を受けたことがある夫婦では、子供への睫毛内反の遺伝に気をつけましょう。
赤ちゃんの目が充血していたり目やにが多かったりしたら、注意が必要です。子供のまつげは柔らかいので角膜を傷つけずにすむことが多いようですが、治療が必要な場合もあります。
眼瞼炎(がんけんえん)
眼瞼炎とはまぶたに起こる炎症の総称で、まぶたの皮膚が炎症を起こす「眼瞼皮膚炎」、まぶたのふちが炎症を起こす「眼瞼縁炎」、目尻になどに起こる「眼角眼瞼炎」などの種類があります。
眼瞼炎の症状
代表的な症状としては、目に異物感を感じる、目とまぶたに痒みと灼熱感を感じる、目とまぶたにピリピリする痛みを感じる、まぶたの縁が赤くなる、などが挙げられます。まぶたが腫れ、まつ毛が抜け落ちることもあります。
ひどい場合には膿を持った小さな膿瘍ができたり、かさぶたができて固まってしまったり、厚い鱗屑(白くて薄いかさぶたのようなもの)ができてしまうこともあります。
眼瞼炎の原因
細菌やウィルスの感染によって起こる「感染性」の眼瞼炎と、薬品や化粧品などにかぶれたりアレルギー反応を起こすことによる「非感染性」の眼瞼炎があります。
アレルギー反応のもとは花粉や、ときには点眼薬であることもあります。
眼瞼炎の治療
まず原因となった問題を取り除きます。たとえば点眼薬に対するアレルギー反応が原因であれば、その点眼薬の使用を中止します。
また、まぶたのふちを清潔に保つための洗浄などをします。必要であれば、抗生物質や人工涙液なども用います。症状が軽い場合は自然治癒することもありますが、時間とともに炎症がひどくなる場合もあるので、早めに眼科を受診しましょう。
眼瞼炎の予防法
感染性の眼瞼炎であれば、麦粒腫の予防と同様に目とまぶたを清潔に保つことが重要です。
非感染性の眼瞼炎については、化粧品を替えたときなどに起こりやすいとの報告があるようですので、新しい化粧品や点眼薬を使い始めるときはよく注意し、異常を感じればすぐに使用を中止することが大切でしょう。
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)
眼瞼痙攣ではまぶたが痛いと感じるわけではありませんが、眼瞼痙攣による目の乾きで痛みを引き起こしてしまう可能性はあります。
眼瞼痙攣の症状
痙攣ときくと、目の周りなどが自分の意思とは関係なく勝手にピクピクと動く症状を思い浮かべるのではないでしょうか。しかしそれは「顔面痙攣」と呼ばれ、眼瞼痙攣とは違う病気です。
眼瞼痙攣は不要なまばたきが増えたり、自由に目の開閉がしにくくなるのが主な症状です。そのため目が乾いたりごろごろすると感じたりし、ドライアイと勘違いされる人も多いです。ちょっとした光でも眩しいと感じるようになることも特徴的な症状です。
40~60代の女性に多く見られます。症状が進行すると目を開けていられなくなり、視力には全く問題がないのに失明と同じ状態にまで陥ってしまうケースもあるようです。
眼瞼痙攣の原因
眼瞼痙攣の原因は、はっきりとは解明されていません。直接的な原因はまばたきの制御機能がうまく働かなくなっていることですので、脳神経の異常であるとされています。
また、うつ病などの精神的疾患を併発していることもあるようです。
眼瞼痙攣の治療
自然に治ることはほとんどありません。症状が進行しつらい場合には医師の診察を受けることになります。そのときにドライアイと診断されてしまうこともあるので、なるべく詳しく自分の症状を伝えるようにしましょう。ドライアイか眼瞼痙攣であるかを診断するためにまばたきのテストなどを行う場合もあります。
眼瞼痙攣と診断されても原因は不明であることが多く、そのため根本的治療方法も確立されていません。対症療法としては薬の投与による治療もありますが、昨今ではボツリヌス療法が主流になっています。ボツリヌスという菌や毒素については、美容に興味のある女性なら耳にすることも多いでしょう。
筋肉を麻痺させてしまうその強い毒性を、しわ消しなどアンチエイジング治療に活用していることで有名です。その毒素を、痙攣を起こしているまぶたに注射することで眼瞼痙攣の症状を軽減します。ただし効果の持続期間は数ヶ月ですので、継続的に治療を行う必要があります。
他に、より重度の場合には眼輪筋切除の手術を行うこともあります。
眼瞼痙攣の予防法
原因不明であることから効果的な予防法もはっきりとはありませんが、目と精神に日頃からストレスを与えないように気をつけましょう。テレビ、パソコン、スマートフォンなどの長時間の使用は目に負担が大きいので、目の休憩時間を取るように心がけましょう。
また、十分な睡眠や適度な運動などで心にもストレスの少ない生活が大切です。
まとめ
「まぶたが痛い」と一言でいっても、多様な病気があることがわかりました。誰しも目が私たちの生活にとって重要な器官であることはわかっていると思いますが、まぶたもまたその目を守る大切な働きを担っています。常日頃から負担をかけすぎないこと、汚れをためないことなどを心がけ、労わってあげましょう。
また、痛みなどの異常を感じたときにはよく観察し、必要に応じきちんと眼科を受診するようにしましょう。