破傷風の症状とは?原因や治療法、予防方法について紹介!

破傷風という病気をご存知でしょうか?名前は聞いたことがあるけれど、どのような病気なのかというところまでは、詳しく知らないという人が多いかもしれません。しかし、なぜ「名前は聞いたことがある」のか思い返してみると、小さな頃に受けた予防接種にヒントが隠されていました。

そうです、混合ワクチンの対象疾患の一つとして、破傷風も含まれているのです。あまり馴染みのない病気のように思えますが、現在でも、なんと致死率が約10%にものぼると言われています。

そこで、ここでは、破傷風がどのような病気なのかを、改めてご紹介いたします。

破傷風の原因は?

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破傷風は、土の中にいる「破傷風菌」と呼ばれる菌が、傷口から感染することによって発症する病気です。なぜ医療の発達した現代でも、いまだに発症者が途絶えないのかというと、破傷風菌は、土の中なら“どこにでもいる”菌で、“誰でも感染し得る”病気だからです。

破傷風がどのような病気なのかを見る前に、まず、この「破傷風菌」の実態について見ていきましょう。

破傷風菌とは?

破傷風菌は、酸素がある場所では生きていけません。そのため、地表から数cmほど入った土や泥の中で生息しています。

土や泥の中では光合成が行われず、蓄積された有機物の分解に酸素が多く使われるので、結合せずに、単体として存在できる酸素が、非常に少ない環境になっています。

では、傷口に触れた瞬間は、酸素があるので、死滅するのかというと、そうではないところがまた、厄介なのです。

破傷風菌は、熱や乾燥、薬剤にも強い耐性を持つ、「芽胞」と呼ばれる硬い膜で自らを覆い、身を守っています。そして、傷口から体内に侵入し、深くまで潜り込んだところで、芽胞を脱ぎ捨て、毒素を放出し、私たちの身体に広がっていくのです。通常、破傷風に感染するのは、深い傷口からだと言われていますが、浅い傷口からの感染も0%と言えないのは、このためです。

また、ケガをしたときにできる傷口のみではなく、分娩時に、へその緒の処理が不適切だった場合や、開腹手術で感染するなど、感染経路もいろいろなパターンがあるようです。唯一、救いと言えるのは、人から人へは感染しないという点です。

破傷風菌の持つ毒素とは?

破傷風菌は、体内に侵入すると、芽胞を脱ぎ捨て、発芽・増殖し「テタヌス毒素」という毒素を放出します。この毒素は、脊髄内の細胞と結び付くと、感覚・運動・呼吸など身体のあらゆることに関するコントロールを行う中枢神経系のシナプスが、神経伝達物質を放出することを阻害します。その結果、筋肉が持続的に収縮する「強直性痙攣」を引き起こすのです。

また、破傷風菌が放出する毒素には、このテタヌス毒素の他に、赤血球膜を破壊する「テタノリジン」という溶血毒の2種類がありますが、このうち、破傷風の主な症状である痙攣は、テタヌス毒素によるものだと考えられています。

どのような症状が出るのか?

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破傷風に感染すると、異常な筋肉の収縮が続く「強直性痙攣」という症状が見られます。しかし、感染後すぐに症状が見られるのかというと、そうではなく、じわじわと菌を増殖させた後に発症するのです。

さて、それでは、破傷風の症状はどのように進行していくのか、段階ごとに診ていきましょう。

潜伏期

破傷風菌が体内に侵入すると、3~21日の潜伏期間を置きます。この時期に増殖し、徐々に毒素を体内に広げていくのです。

潜伏期と呼ばれるこの時期には、自覚症状がありません。しかし、潜伏から発症までの時間が短ければ短いほど、死亡率が高くなる傾向があるようです。

この潜伏期に病院で適切な治療を受けることができれば良いのですが、自覚症状がないため、そうはいきません。釘を踏む、棘が刺さるといった、深い傷口を追うケガをしたときには、念のため、病院で診てもらうと良いでしょう。

第一期

潜伏期を終えると、症状が出始めます。まず最初に、全身の倦怠感が出てきます。そこから舌がもつれるようになったり、首筋のハリや、寝汗といった症状が次々と出るようになってきます。

そして、徐々に口を開きにくくなり、ずっと上下の歯が噛み合わされた状態になるため、食事をするのが難しくなってきます。喉周囲の筋肉に強直が始まることから、食べ物や唾液などが飲み込みにくくなる嚥下障害や、歯ぎしりも、この時期に見られる特徴的な症状の一つです。

第二期

口を開けにくくなる開口障害が、第一期に比べ、さらに強くなってきます。そして、顔の筋肉の緊張・強直から、額にしわが寄った状態になり、唇を左右に広げ、歯をむき出しにさせる「痙笑」と呼ばれる、ひきつり笑いをしているような顔貌になります。これを「破傷風顔貌」と呼び、この病気特有の初期症状と言われています。

また、発語障害も第一期よりも強くなり、歩行まで困難になってきます。少なくとも、この時期までに、病院へ行かなければ、大変危険です。自己判断で、筋肉疲労やストレスと判断して放置せず、第一期の開口障害などの症状が見られた時点で、すぐに診察してもらいましょう。

第三期

この時期にさしかかると、生命に関わってきます。首周辺の筋肉が強直し、それが徐々に、背中の筋肉、そして全身にまで拡がって、発作的に強直性痙攣を起こし、弓のように背中が反り返る「後弓反張」と呼ばれる状態になります。

小さな音や光、わずかな接触などに反応して痙攣が誘発され、発作回数や持続時間も増え、痙攣によって、筋肉損傷や、背骨・四肢の骨折を起こすこともあります。さらに、筋肉の収縮と弛緩が交互に起きる「クローヌス」や、足の指が大きく開くといった症状も見られます。

呼吸筋も痙攣するため、呼吸困難になり、ひどい場合は窒息死する可能性もある、非常に危険な時期と言えるでしょう。感染から第三期までの間が、48時間以内である場合、回復の見込みは、かなり厳しく、死亡率も非常に高くなります。

第四期

第三期を無事に乗り越えることができたら、回復期である第四期に入ります。神経に結びついた毒素の作用が低下するため、筋肉の強直が残るものの、全身痙攣は治まり、徐々に回復に向かいます。

治療法・予防法

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聞いたことがある程度の病気が、これほど恐ろしい病気だったのかと驚いた人もいるのではないでしょうか?さて、ここからは、破傷風に感染してしまったら、どのような治療が行われるのか、また、未然に防ぐにはどうすれば良いのかを見ていきましょう。

治療法

破傷風と診断された場合、まず傷口を開き、壊死してしまった組織や傷口に入り込んだ異物を取り除き、きれいに洗浄します。その後、破傷風菌を減らす抗菌薬を点滴します。

そこから、TIG(抗破傷風ヒト免疫グロブリン)を投与し、破傷風菌が放出した毒素を中和させていきます。しかし、まだ中枢神経系の組織に結合していない、「単体の毒素」は中和することができますが、すでに「結合してしまった毒素」に関しては、中和できないため、出きるだけ早い段階で投与する必要があります。

痙攣症状には、抗痙攣薬や筋弛緩剤を様態を見ながら使用し、鎮痛剤や鎮静剤も投与しつつ、痛みを緩和します。

そして、破傷風は運動神経や自律神経に異常が出るため、全身管理も併せて行っていきます。気管を切開し、呼吸の管理をしながら、投薬や、場合によってはペースメーカーを使用して、急激な血圧脈拍の変化を防ぎます。

徐々に症状が治まり、回復してきた際には、関節拘縮を起こさないように、身体の関節を動かすリハビリを、早めの段階から始めます。

予防法

普段の生活から、破傷風菌を防ぐために何かを行うというのは、非常に困難です。そのため、予防ワクチンを接種するのが一番確実な予防法と言えるでしょう。

子供の頃に予防接種を受けているから、大丈夫、と思っている人も多いかもしれませんが、ワクチンの効果は5~10年ほどです。また、予防接種を定期的に受けるのが幼少期のためか、子供が感染しやすいイメージがあるかもしれませんが、大人も子供も関係なく、感染する可能性は平等にあるのです。

ワクチンを接種する際、気を付けておきたいのが、「基礎免疫があるか、ないか」という点です。これによって、ワクチンの接種方法が異なります。判断基準は、予防接種を受けたことがあるかという基準で、

  • 子供の頃に予防接種を受けたことがある場合には、「基礎免疫がある」 
  • 1968年~1981年生まれの人、または、子供の頃に予防接種を受けなかった人は、「基礎免疫がない」

というように判断します。

基礎免疫のない人は、3回に分けてワクチン接種を行います。まず1回目は、受傷時に抗破傷風ヒト免疫グロブリンを接種し、3~8週間後に2回目のワクチンを接種します。そして、受傷時から12~18か月後に、3回目の追加接種を行います。

3回目の接種から5年後、4回目のワクチン接種を受ければ、その後は、10年に1度の予防接種で問題ありません。

基礎免疫がある人も、以前ワクチンを接種してから10年経っていれば、予防接種を受けることをおすすめします。ワクチンの種類は以下の通りです。

  • DPT-IPV(四種混合):ジフテリア(D)・百日咳(P)・破傷風(P)・ポリオ
  • DPT(三種混合):ジフテリア(D)・百日咳(P)・破傷風(P)
  • DP(二種混合):ジフテリア(D)・破傷風(P)

生まれたばかりの赤ちゃんや、これまで予防接種を受けたことがない人は四種混合ワクチンの接種が原則となりますが、それ以外の人は、三種か二種どちらを受けるべきか、病院で相談すると良いでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。このような恐ろしい病気を引き起こす破傷風菌は、日本国内のみではなく、世界中どこでも存在しています。

海外旅行に出かける前には、もう一度、自分が最後に予防接種を受けたのはいつ頃かを確認し、ワクチン効果の持続年数が過ぎているようでしたら、予防接種を受けるなどして、未然に防ぎましょう。

  
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