生理前や生理中になると生理痛になり、腹痛や頭痛などに悩まされる女性が多くいらっしゃいます。でも生理期間でも無いのに突然下腹部にチクチクとした痛みを感じた事はありませんか?
いつもと違う時期に痛みを感じたら卵巣痛かもしれません。ここでは卵巣痛について詳しく見ていきます。
卵巣について
まずは卵巣の事を詳しく見ていきましょう。卵巣は生殖器のひとつで卵子を作る器官です。卵巣は2つあり、子宮を挟んで左右に位置しています。
卵巣の表面は1層の細胞からできている漿膜と白膜に覆われています。卵巣では卵子が作られるので、女性の月経に大きく関わってきます。
卵巣の働き
卵巣の大きな働きは「卵子の生成」「女性ホルモンの分泌」になります。
卵子の生成
卵巣の中には卵子の元になる素になる原始卵胞が何万個もあります。思春期を迎えて月経が始まると原始卵胞は成熟卵胞になり、1ヵ月に1個ずつ卵子を出します。これを排卵と呼びます。
女性ホルモンの分泌
女性ホルモンは思春期になると分泌され始めます。女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があり、卵巣からだけでなく腎臓などからも分泌されていますが、卵胞だけから分泌される女性ホルモンがあります。エストロゲン(卵胞ホルモン)と呼ばれていて卵胞の発達と共に増えていくので、生理後の排卵時期が近づくにつれて血液中の濃度が上昇します。
女性ホルモンの中でもエストロゲンは大きな働きをしています。
- 骨を形成する
- 自律神経のバランスを整える
- 子宮や胸を発達させる
- 肌の調子を整える
- 血中のコレステロールを減らす
などの役割があり、女性ホルモンのバランスが崩れてしまうと生理不順・子宮内膜症・不妊・子宮筋腫などの病気になる可能性が高くなります。
卵巣が痛くなる原因
ではいったいどんな原因があるのでしょうか。
卵巣の腫れ
卵巣が腫れる原因にも色々あります。
●排卵による卵巣の腫れ
生理が始まる前に生理痛のような鈍い痛みと腰痛を感じる場合は、排卵による痛みかもしれません。卵巣は左右に1つずつありますが排卵は交互に行われます。ですので痛みを感じる場合排卵を行った卵巣の片方に症状が出るというのが特徴的です。
排卵が行われると卵巣の中に黄体が残ります。黄体が残ると卵巣が少し腫れて張りを感じるようになります。
●排卵誘発剤による卵巣の腫れ
不妊治療を行っている人で排卵誘発剤を投与している場合OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を引き起こし、卵巣が腫れてしまう場合があります。OHSSとは排卵誘発剤などによって卵巣内の卵胞が過剰に刺激されてしまい卵巣が膨れ上がる事を言います。
ほとんどは軽症で済みますが、まれに重症になり下腹部の不快感や痛みが酷くなり、腹水や胸水が増えてしまいます。血栓症や腎不全に発展する事もあり、ただの卵巣痛と思っていると大変な事になります。このOHSSについては後程詳しくご説明します。
●ストレスによる卵巣の腫れ
ストレスは自律神経に大きな影響を与えます。自律神経のバランスが崩れてしまうと体のあちこちに影響を与えます。女性の場合はデリケートな子宮や卵巣などに影響が出ます。卵巣の腫れの他にも生理不順や生理痛などが起こります。
妊娠初期
妊娠超初期の頃に下腹部痛が起こる場合があります。妊娠すると子宮が変化し、子宮内膜に卵子が着床します。それに伴ってホルモンバランスが変化を起こすので、卵巣が腫れます。この腫れは暫く経つと収まるのですが、戻らずに激しい痛みが続く場合もあります。
病気
●卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)
卵巣腫瘍の1つで卵巣の中に液状成分が溜まり、水風船の様に腫れてしまう状態の事です。この病気は子宮筋腫に並び発生する可能性が高いものになります。こちらも後程詳しく見ていきます。
OHSS(卵巣過剰刺激症候群)
不妊治療を行っている人で起こり得る病気なので詳しく見ていきます。
原因
OHSSにになる原因は先ほど説明した通り、排卵誘発剤がほとんどです。この薬は卵巣を刺激して卵胞を成長させ、排卵を誘発させる薬です。体のバランスが崩れてしまったり人によっては刺激が過剰になってしまい、大量の卵胞が一斉に成長して卵巣が膨張してしまうのです。
元々自然に排卵する時に排出される卵胞は1つ(まれに2つ)なので、大量に卵胞が成長すると卵巣が耐え切れなくなり痛みを発します。
- 35歳以下
- 痩せ形の人
- 多嚢胞性卵巣症候群になっている人
以上の人がOHSSになりやすいと言われています。
症状
OHSSの症状は軽度の症状から最重症の症状に分けられます。
軽症:卵巣の腫大6センチ以下 腹部の膨満感
軽症の場合「お腹の張り」「むくみ」「下痢」などの症状が現れます。
中等症:卵巣の腫大6~12センチ 腹水が少し溜まる ヘマトクリット45%以下
腹水が溜まり始めるので「お腹の張り」が強くなり、腹水で内臓が圧迫される事によって「下腹部痛」や「吐き気」といった症状が現れます。
重症:卵巣の腫大12センチ以上 腹水が大量になり胸水も ヘマトクリット45%以上
腹水だけでなく胸水も溜まり始めるので胸が圧迫されて「息切れ」など感じます。
最重症:腹水と胸水が大量 呼吸困難を引き起こす可能性あり ヘマトクリット55%以上
最重症まできてしまうと胸水が大量になってしまうので、呼吸が出来なくなってしまいます。
OHSSになると脱水症状になり「喉が渇く」「尿が少なくなる」などの症状が見られるのが特徴的です。
ヘマトクリットとは血液の濃度を表すものです。重症・最重症にまでなると「低たんぱく血症」「乏尿」「急性腎不全」「血栓」などの合併症を引き起こす可能性があります。
また、腫大した卵巣部分が根本で捻じれてしまう茎捻転が起きてしまうと、卵巣が壊死してしまいます。
治療
軽症の場合は入院する事無く自宅で安静にして回復を待ちます。数日ごとに病院に受診し、超音波検査や血液検査などを行います。
中等症の場合は入院が必要になる事もあります。腹水が多く溜まりお腹の満腹感が強い場合は入院が必要になります。
重症以上になると入院が必要になります。尿が少なくならないように輸液を行います。これで尿の量が増えない場合は利尿剤などを使用して治療します。腹水と胸水の影響で呼吸困難などの症状が出た場合は、針で刺して水を抜きます。
卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)
原因
卵巣嚢腫には多くの種類があり、原因はそれぞれ変わってきます。大きく分けると4種類に分類する事ができます。
●漿液性嚢腫
卵巣の表面を覆っている漿膜と白膜から発生します。漿液という液体が卵巣の中に溜まってしまう状態の事を言います。この漿液性嚢腫が一番多いタイプで年齢問わずに出る卵巣嚢腫です。
●粘液性嚢腫
ゼラチンのようなネバネバとした液体が卵巣の中に溜まってしまう状態の事を言います。これは若年層よりも閉経緒の女性に多いタイプです。
●皮様性嚢腫
人体の元になる胚細胞に発生します。半ば成長した人間の元になるものがドロドロと卵巣に鉛腫瘍になった状態の事を言います。卵巣は人間の元を作る部分なので髪の毛や歯を作る細胞が増殖して、ドロドロとした腫瘍の中に髪の毛や歯などが含まれている事があります。これは20~30代の女性に多いタイプです。
●チョコレート嚢腫
子宮内膜症が原因になり嚢腫になります。子宮内膜症は子宮の内膜組織が別の部位に飛んで、飛んで行った先で増殖と剥離を行います。子宮は血液を排出する出口がありますが、飛んだ先には排出する出口が無いのでその部分に血液や剥離した細胞が溜まってしまう状態の事を言います。
症状
卵巣は沈黙の臓器と呼ばれていて、病気が発生しても初期段階ではほとんど自覚症状が出ません。膿腫が大きくなってくると下腹部痛や腰痛が起きたり、外側から触ると何か出来ている事が確認できるようになります。
治療
嚢腫が小さい時は経過観察になります。しかし嚢腫が7cm以上になると卵巣の根本が捻じれてしまう茎捻転になる場合があります。これを引き起こしてしまうととても危険なので卵巣を摘出しなければいけなくなります。
摘出する場合は嚢腫の状態によって変わってきて、嚢腫だけを切除、嚢腫が出来た卵巣を切除、嚢腫が出来た側の卵管を切除と別れてきます。
嚢腫が卵管に癒着している場合は不妊になる事があるので医者に相談しましょう。
痛みが酷い時の対処法
痛む部分を温めて血液の流れを良くすると痛みが改善される事があります。ホッカイロや湯たんぽで痛む部分に当ててあげたり、体を動かして体全体が温まるように心がけて下さい。食べ物にも体を冷やす物があるので気を付けて下さい。
体を冷やす食べ物は「砂糖」「小麦粉」「トマト」「きゅうり」などがあります。逆に体を温める食べ物は「発酵食品」「生姜」「玄米」などがあります。これらを上手に食事に取り入れる様にしましょう。
ストレスが原因の場合は私生活の見直しをして下さい。出来るだけリラックスできる時間を作り睡眠をしっかりとりましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。生理痛とは違った痛みを下腹部に感じたらお医者さんに相談するようにしましょう。卵巣は症状があまり出ない臓器なので痛みを感じた時は、病気がだいぶ進行している事がほとんどです。
卵巣は女性の大事な部分ですので、何か病気にかかって痛みを感じている時は早めに治療をする事が大事になります。