現在、肺炎が日本での死亡率第4位です。なぜこれほどに肺炎の死亡率が上がったのでしょうか?その理由をこれから解明していきます。
肺炎とは
肺炎は多くは病原体(細菌・ウイルス・マイコプラズマ・クラミジアなど)による炎症性の病気です。また、アレルギー反応を基礎にした過敏性肺炎も注目されてきました。
入院中に発生する院内感染も問題であり、対策が求められています。日常的には細菌性(ウイルス性)がほとんどで、原因不明な場合も結構多く、抗生物質で治癒することが多いです。
肺炎の分類
感染性肺炎
- 一般細菌・ウイルス性肺炎・まれにリジオネーラ肺炎
- マイコプラズマ肺炎
- クラミジア肺炎(オウム病)
- カリニ肺炎:カリニ原虫による
- 肺真菌症
非感染性肺炎
- 夏型過敏性肺炎
- 放射線肺炎
原因不明(特発性)
間質性肺炎:発症原因および医学的な分類として、沈下性肺炎・吸引性肺炎・院内肺炎・市中肺炎・老人性肺炎(誤嚥性肺炎)などがあります。
肺炎の主な特徴
1)細菌性肺炎は市中感染と院内感染では病原菌が異なります。
- 市中感染:肺炎球菌がもっとも多く、ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌、クレブシェラ(肺炎桿菌)がそれに次ぎます。若い世代ではマイコプラズマの発症率が高いです。
- 院内感染:何らかの病気のために抵抗力が弱り、入院して48時間以降に感染した状態のことです。多くは緑膿菌などのグラム陰性桿菌であり、ブドウ球菌(MRSA)、肺炎球菌などがそれに次ぎます。
治療上難しいのは院内感染による肺炎です。しばしば抗生物質への耐性を持つ病原菌感染によることが多いからです。
2)クラミジア肺炎
鳥類との接触の確認、補体結合反応、単独で32倍以上、ペア血清検査で4倍以上の抗体価の変動があります。
※ペア血清検査とは:病変の進行時期の異なる2点の血清を、同時期に測定し、その抗体価の変化を評価することです。
3)カリニ肺炎
原虫感染症であり、癌患者や化学療法・副腎皮質ホルモン剤大量療法を行っている免疫力の低下している患者に発症します。診断は痰からの虫体の確認ですが検出率は低いです。確定診断は肺生検による組織診(肺胞内虫体の確認)によって行われます。
4)肺真菌症
肺がんや間質性肺炎のように抗癌剤や副腎皮質ホルモン剤大量療法を行い、免疫力が低下している場合に発症する可能性があります。喀痰検査、血中抗体価、胸部レントゲンなどから総合的に判断します。
5)夏型過敏性肺炎
6~9月くらいまでに発症し、レントゲンにてびまん性粒状陰影が見られ、低酸素血症、発熱は入院で解熱し、帰宅すると発熱・呼吸器症状が見られます。真菌(トリコスポロンクタネウム)の感染によるアレルギー反応と考えられています。肺生検で肉芽腫の確認を行います。
6)誤嚥性肺炎(老人性肺炎)
食べ物を飲み込む時に誤嚥(食べ物が食道ではなく気管に入ってしまうこと)で引き起こされます。主に加齢や脳梗塞による食べ物を飲み込む機能(嚥下機能)が低下することが原因になります。
誤嚥性肺炎は脳血管障害と併発して起こるため、一時点滴や抗生物質で治癒しても、もともと嚥下機能が低下しているため、すぐに再発しますので、日頃の予防対策が大切になります。
詳しくは、誤嚥性肺炎の症状を紹介!高齢者や子供は要注意!を参考にしてください。
肺炎の症状
どのタイプの肺炎にしても、共通しているのは咳、痰、胸の痛み、息苦しさ、高熱または微熱が続く、全身倦怠感、脈や呼吸が速いなどです。特に4日以上続く発熱または微熱、咳や痰には要注意です。
肺炎というのは、言葉のとおり肺に炎症が起こったために起こる病気です。風邪が悪化して肺炎になった、というのはよく聞くお話です。上記の症状にいずれか当てはまるようなら、なるべく早めに病院へ受診しましょう。
肺炎の診断と必要な検査
肺炎の診断は通常、胸部レントゲン、喀痰検査、血液検査などを行います。必要に応じて血液培養もします。
痰の検査は細菌・結核菌・細胞診はセットでできるだけ抗生物質投与前に行います。肺結核が疑われる時に、痰が出ない時は胃液を培養します。
肺炎の治療
1)化学療法(抗生物質、免疫抑制薬、消炎薬)
2)気道確保、酸素療法
3)安静
4)対症療法
- 解熱・鎮痛
- 鎮咳薬・去痰薬投与
- 輸液療法:特に高齢者は脱水も併発している場合があります。
5)基礎疾患に対する治療
糖尿病、慢性肝疾患、アルコール依存性などでは感染性があるため、難治性の肺炎であったり、肺化膿症、膿胸などにすすみやすいので注意が必要です。肺気腫や肺繊維症があって肺炎を合併してしまった場合、急性呼吸不全に陥り、予後が悪いこともあります。
治療の実際は、まず
1)抗生物質
基本的には入院治療が必要ですが、軽症の場合は外来治療もできます。抗生物質を即座に使う場合が多いですが、投与する前に喀痰の培養を行います。
肺炎治療の効果判定を行う場合は抗生物質投与後3日目で行います。3日目で解熱傾向があれば、抗生物質はそのまま続けます。通常はセフェム系かペニシリン系の抗生物質を朝夕1gずつ使用します。痰の原因菌が判明すれば最も効果の高い抗生物質に変更になります。
セフェム系の抗生物質は、日常診療の場でもっとも使用頻度が高く、その種類も多いです。感染症の種類、病態、重症度に応じて使い分ける必要があります。
マイコプラズマやオウム病などの肺炎が疑われる時は、エリスロマイシンやミノマイシンを投与します。
2)補助的治療
状況に応じ、酸素療法、補液などを行います。
特に死亡率が高いのはどのタイプ?
肺炎は毎年死亡率が3~4位と常に上位ですが、近年、高齢化に伴い急激に増加しているのが、誤嚥性肺炎です。肺炎の中でも誤嚥性肺炎の死亡率は70%以上の割合を占めています。
若いうちの肺炎とは違い、誤嚥性肺炎は加齢による嚥下機能の低下により、1度治癒しても再発を繰り返してしまうため、徐々に抗生剤に対して耐性ができ、薬が効かなくなってくることにより、肺炎が重症化し、死亡してしまうことから死亡率が高くなっているのです。
誤嚥性肺炎とは
上記にも記述したとおり、飲み込む力(嚥下機能)が低下してしまうことにより、食物残渣(食べかす)や細菌を含んだ胃液や唾液が気管に流れ込んでしまい感染し、肺が炎症を起こす病気です。
高齢者(特に寝たきりで介護が必要な高齢者)に非常に多く、全身機能が低下しているため、症状そのものが出現しにくく、気がついて病院へ受診させる頃には重症化してしまっているケースはよくあります。
誤嚥性肺炎の症状
以下のような症状が見られたら要注意です。
- 元気がなく、ぼ~っとしている。
- 1日中うとうとして眠っている
- 37.0~37.3度ほどの微熱が1週間以上続く
- 食事するとしょっちゅうむせ込む
- 食事を始めると喉がゴロゴロと鳴る
- 唾液、水分が飲み込めない
- 食事にやたらと時間がかかる(1時間以上)
- 冷や汗、呼吸が荒く、浅いなど
- 痰がからんでいる
- 顔が白っぽくみえる、または蒼白
誤嚥性肺炎の予防策
ここでは誤嚥性肺炎にならないための予防策をいくつかあげてみます。
1、食後2時間は横にならず、なるべく座っているようにする。
食後は眠くなってしまうものですが、誤嚥しやすい人は2時間程度(最低でも1時間)は座って過ごすようにしましょう。
寝たきりで座っている姿勢が保てない場合はベッドの頭を30~40度くらいに下げ、食物残渣や唾液が気管に入ってしまわないように工夫をしましょう。
2 毎食ごとに歯磨き、口腔ケアをしっかり行う。
口の中に食物残渣が残っていると、細菌を繁殖させる原因となり、それが引き金になって様々な病気を引き起こします。
ただでさえ嚥下機能が低下している人には感染の原因になってしまうので、毎食後の歯磨き、口腔ケアはとても重要です。ですが、口腔ケアで使用する水や唾液で誤嚥しないように体位に注意し、入れ歯の場合はしっかり洗浄をしましょう。
3食事を工夫する
ご飯を普通より柔らかめ~おかゆ、硬いものは一口大~きざみ、煮物は歯茎でも潰せるほどにトロトロに柔らかく煮込む、市販の水分にトロミをつける粉を入れるなど食事形態を嚥下状態によって変えていきましょう。
寝たきりの人には食事をすべて極きざみかミキサーにかけるなどするとより食べやすいです。
4水分をしっかり摂る
口の中が乾燥していると、細菌が繁殖しやすくなってしまうので、水分補給をしっかり行い、乾燥しないようにしましょう。
5嚥下訓練を行う
氷水を染みこませたガーゼを口に含ませたり、口の中を蜂蜜を使ってマッサージするなど刺激を与えて嚥下を促す嚥下訓練を行い、飲み込みが上手にできるように日頃から訓練をしましょう。あと、「あ、い、う、え、お」など簡単な発生練習や息を吹きかける練習をする訓練も効果的です。
嚥下機能が低下した人にはその人にもっとも適した食物の形態、温度、体位を選んで少しづつ慎重に開始してください。基本的には誤嚥せず、普通に食事ができることを目指していきましょう。
誤嚥性肺炎になってしまったら
誤嚥性肺炎は症状に気づきにくい病気です。ほとんどの場合入院治療となり特に寝たきりの人には注意が必要です。
中でも37.0~37.3度前後の微熱が1週間以上続く、冷感がある、呼吸がやや荒くて浅い、顔が白っぽいまたは蒼白になっているなど、「何か様子がおかしい」と感じたら、手遅れにならないうちに気がついた時点ですぐに病院へ受診しましょう。
退院後は再発しないための予防を行うことが大切になります。その際には援助する人は決して焦ってはいけません。援助者のあせりは相手に伝わります。ともに長く苦しい闘いのプロセスになりますが、上手くいかなくても、気楽に構え、少しづつすすめていきましょう。
まとめ
肺炎の死亡率は高齢化とともに年々高くなってきています。心疾患などと違い、肺炎は風邪と同じような扱いで軽くみられがちですが、放っておくと死に至る病気です。
特に誤嚥性肺炎は高齢者に多い病気ではありますが、若い年代でも、うっかりむせ込んで誤嚥したものが感染源となり肺炎をおこすこともあります。肺炎を甘く考えず、症状に気がついたらすぐに病院へ受診して治療するようにしてくださいね。